イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

外科医エリーゼ:第9話『嵐の後』感想

 医療無双も素敵なロマンスも、今日はお休み……。
 その代わりと言っちゃあなんだが、素敵なお姫様との爆裂濃厚友情絵巻を喰らえッ! という、外科医エリーゼ第9話である。

 いやーマジ、このアニメで摂取できるとは微塵も思っていなかったタイプの栄養素が脳髄へダイレクトに注入されて、俺ァ頭がおかしくなっちまったよ……。
 雨に濡れながらの共同人命救助、カノシャツ借りてのお泊りに髪結い許容、アフターヌーンティーに談笑しながらの『私、貴方のこと嫌いだったの……』と、定番ながらド強いムーヴを山盛り叩き込んできて、完膚なきまでにぶっ飛ばされてしまった。
 思えばエリーゼもユリエン様も相当な人格者なわけで、そんな二人が正面衝突すれば”事件”が起きちまうのは当然といえば当然なんだが、こっち方面にまでカバー範囲広げてくるとは思っていなかったので、嬉しい不意打ちだった。
 顔見世ではキャラの深い所まで掘り下げられてなかった感じもあったので、一話丸々ユリエン様に回すことでその魅力もたっぷり堪能できたし、彼女とエリーゼを取り巻く王室派・貴族派の対立構造もちいと鮮明になった。
 ガンガン医療技術と真っ直ぐな生き様で無双ぶっこむ足取りを弱めて、グレアム先生やユリエン様といったサブキャラとの交流を描くターンに入ってきたわけだが、ヤダ味の少ないド直球な話運びが、作品の持つ良さをしっかり引き出している感じがある。
 善人ばっかり出てくる話なんで、こういう味わいで煮込むと良いコク出てくるわなぁ……。

 

 というわけで、立ち位置的には恋のライバルであり不倶戴天の政敵でもあるユリエン様は、超がつくほど人格者だったので、主人公に嫌がらせをすることもないし、転生を経て修行が成ったエリーゼとは超仲良くキャフフするのであった。
 この世界の貴族、エリーゼ周辺の人達が特別なんかも知れないが、特権に胡座かいて他者を虐げることも、我欲に振り回されて誰かから奪うことも、無能を棚に上げて権力を恣にすることもなく、皆やるべきことをしっかりやってるのがオモロイ。
 泥に汚れて患者を治す、エリーゼの働きに感じ入って手を貸すユリエン様もまた、雨に濡れることを厭わぬ誠実なお人柄であり、『この人善人ですッ!』とわかりやすく示すのが上手いこのアニメの、いいとこ出てるファーストタッチだったと思う。
 転生エリーゼは謙虚で話しやすい人柄しとるので、恋敵に色々感じるところもあったユリエン様も素直に邸宅に真似きれ衣装を貸し、己の心を真っ直ぐ告げる。
 家や派閥がどんだけ複雑に絡み合っていようが、魂が綺麗な女二人がひとつ屋根の下、膝つき合わせ髪を溶かせば、大体の問題は氷解するってのが、百合ジャンルの鉄板である。(多分このアニメ、”百合ジャンル”ではない)
 色々複雑にこじれていそうな権力闘争を遠くにスケッチしつつも、主役とライバルがわだかまりなく率直に心を繋げていく描写は、何かいい感じの未来を引き寄せてくれそうで大変良かった。

 医者であるエリーゼが風邪を貰って、彼女に惹かれて医術を学んでみたユリエン様が看病する構図は、転生チート野郎の才覚に気圧されつつも、憧れを力に変えて新た化可能性を開いた女(ひと)の強さが、自然と出ている良い展開だった。
 何しろ超絶チート女なので、エリーゼはめったに弱みや負け筋を見せることがないのだが、そんな彼女の弱った姿を寝床に受け止め、他でもないエリーゼに影響されて学んだ誰かをケアする技術でもって、優しく向き合う姿は美しい。
 追いつけないかもと心の何処かで思いつつ、負け犬に甘んじてはいられず、しかし足引っ張って恋愛レースに勝つような卑劣は考えもせず、ゼロから医術学びに行くユリエン様、人間が真っ直ぐすぎて眩しかった。
 そういう人が身につけた技術が、誰かのためにびしょ濡れになって頑張った主人公を助け、素直な思いが絆を深める助けになるってのは、真っ直ぐで気持ちの良いもんだ。
 こういう時に幼くすらある透明度の高い善因善果は、俺はこのお話の強みだと感じているので、ユリエン様を鏡に全力でブン回ってくれて、大変良かったです。

 

 チャイルド家令嬢たるユリエン様が話の真ん中に立つことで、貴族派と王室派、リンデン派とロマノフ派で色々めんどくさいことになってるっぽい、ブリチアの国内事情もいい感じに見えてきた。
 このネトネトした因縁と権勢の絡み合いを、エリーゼの真っ直ぐな生き様が快刀乱麻を断つがごとくどうにかしていく話も面白そう……なんだが、アニメの残り話数で描けるものか、ちと不安でもある。
 まぁ医術無双に足場置いてきたアニメの筋立てからすると、ハードル上がってる資格試験を突破さえすれば大筋いい具合に収まる感じではあるし、完全解決とは行かずとも、エリーゼの存在が王国に吹き溜まるイヤーな空気を追い出す気配だけで十分……かなぁ。
 個人的な興味として、”一周目”国が燃えた原因だろう政情不安を、”三周目”のエリーゼがどういう塩梅でぶっ飛ばしていって、ハッピーエンドへと話を引っ張っていくかは見届けたい気持ちがあり、コッチ方面にも話が広がっていくと、なお面白いかなと思った。

 色んな対立に転生者エリーゼが橋をかけていく時、彼女の真っ直ぐな生き方が生み出した数多の縁が足場になるはずで、そういう意味でも今回散々イチャコラした、ユリエン様との絆は大事なのだろう。
 家族がまさかと色めき立つ、政敵の娘との接触を気負いなくこなし、新しい風が女二人を中心に巻き起こっていく脈動がいい感じに描かれたことで、今後(もしあるならば)複雑怪奇な政治に切り込んでいく時も、エリーゼの活躍を飲み込む足場が出来たと思う。
 ここら辺の『良い人が良いことしてたら、なんか未来はいい感じになっていきそうだぞ!』つう漠然とながら気持ちの良い期待感は、リンデン王子とのロマンスにも上手く漂っている魅力で、終盤戦どう効かせてくるのか、なかなか楽しみだったりする。
 バッドエンドまっしぐらだった”一周目”の悪縁を、人生三回目の人間力で軒並み平らにして、生き様一つで運命捻じ曲げにかかっているエリーゼの逞しさをより楽しむ意味でも、国全部を視野に入れたスケールデカい展開やってくれると、面白くて良いと思う。
 そういうデカい部隊でもエリーゼが頑張れるだろう説得力は、今回ユリエン様と大変いい感じの関係作れたことで、しっかり打ち立てられたしね。
 いやー……やっぱ少し前まで感情のわだかまりを抱え込んでいた女から飛び出す、『こんなに素直に、あの女(ひと)に全部話すつもりなんてなかったのに……』からしか獲れない栄養素ってのはあるね!

 

 というわけで、前回に引き続きサブキャラとガッツリ絡み掘り下げる、気持ちの良い寄り道でした。
 本筋を医術と人格でガッシガッシ無双していく爽快感も好きだが、こうしていい感じに横幅広い話をやってくれると、キャラや世界観が持っている面白さがいい感じに膨らんでいって、お話に奥行きが出てくる感じがある。
 今回拡張した政治方面のネタをアニメで扱い切れるのか、正直良く解んないところもあるのだが、単独の話数としても大変いいものが見れて、凄く良かったです。
 マージで想定してなかったからな……こういう方面でのこの”強さ”は……ありがたいッ!
 次回も楽しみです!!