ヴァンパイア男子寮 第5話を見る。
『メイン王子様のルカくんはカラッと強火でだいたい揚げきったので、今度はサブ王子様の蓮くんを煮込みマース!!』といった塩梅の、すれ違いラブコメ~えっちな血の定めを添えて~という回。
外付け倫理装置として小森を据え付けたのが良く効いて、いい具合にお互いの本心が見えないすれ違いシフトが発生。
ここに滑り込む形で、実は半分獣の血が混じってた蓮くんがワイルドさを全面に押し出したり、それを抑える純情を見せたり、グイグイ距離を詰めてきた。
『やめてー! 私のために争わないでーイケメン二人~~!』っていう、ヒロインの値段挙げる定番状況まで、一気に駆け抜けたな…。
『吸血鬼』という題目はっつけておけば、どんなドキドキシチュエーションも合法になる。
ブロムダイク”倒錯の偶像”に示された知見を正統に受け継ぎ、ペニスの代わりに牙を、処女喪失の代わりにヴァージンブラッドの痛みを、ワイルドに耽美に描くところから物語はスタートである。
どう考えてもファック目前なのだが、『ファックではない吸血だ!』という言い訳が立つので”なかよし”でも書けるという、創作脱法行為が常時唸り続けているの、ほわほわ可愛い外見に反してあらゆる知見が動員されてる手応えがあって、気持ちよく脳がバグる。
人間、夢見る乙女に素敵な淫夢を届けるためには、どんな知恵も絞るのだなぁ…。
俺はこういう努力をマジで尊敬しているので、手を返しなお変えあらゆるトキメキを貪欲に盛り込んで、常時画面キラキラエッチな雰囲気目白押しで話を満たしてくれる、このアニメは偉いなーと思っている。
求められるものに応えるべく、本気の本気で嘘を紡ぐことはマジ大変だ。
欲望に応えすぎた結果色々無茶があるわけだが、そこももはや愛嬌と言うか、『んなワケあるかいッ!』とツッコミながら楽しめる燃料になってて、かなり”無敵”である。
美人の男装要素が一番のツッコミどころかな…あれで『この俺が男にドキドキしてる…!?』と、擬似BLまで飲み込んでいくのだから、ホンマこのアニメは乙女界隈のカリュブディスやでぇ…。
えっちな胸キュンを燃料にバンバン加速していく、心地よい乱雑さもありつつ、美人ちゃんがルカへの恋心を自覚したり、そのくせ甘えた蓮くんからの思いには無自覚だったり、三角関係の中で揺れる感情というトキメキエンジンも、大変元気である。
美人ちゃんがあんまりにピュアで幼気なのは、何かと縛りが多い吸血鬼を攻略する上で武器になるわけだが、度が過ぎて無防備な結果罪作りになってるのは面白い。
そらー蓮くんも己の中の獣を呼び覚まされ、嫌悪する父の血筋と向き合うことを余儀なくされるよ…。
最初は獣に負けそうになってたのが、話終わりでは冷静に添い寝するだけに抑えれるようになってるの、地道な成長描写で好き。
ルカくんとの関係性が血を吸うこと前提、『主が愛す/血袋が愛される』という勾配込で成立しているのに対し、蓮くんは血を吸わないこと、吸血鬼に落ちないことを盛り込みつつ、親に愛されなかった子どもとしての共感で水平に繋がっているのは、良い差異化だと思う。
美人ちゃんは無邪気顔の奥に結構欲張りな心を隠していて、恋人として愛されていちご味の美味しい血になるだけではなく、家族に愛されなかった虚しさを解ってもらい、埋めてもらいたい気持ちも強い。
前者をルカが、後者を蓮くんが担当する形で、イケメントライアングルが成立しているのは面白い構図だ。
片方だけでは満たされず、しかし手放すわけにもいかない。
ルカへの慕情を自覚した今、美人ちゃんが自分の欲望(ねがい)と向き合う準備も整ってきた感じだが、ここを切り崩すとHappy End…まっしぐらなので、しばらくは不鮮明なまま残しそう。
先取りする形で、寝しなに溢れた涙と愛しさを蓮くんが受け取って、『山本美人はこういう子』つうのを理解し守護る立場になったのも、面白い話運びだった。
美人自身は理解しきれていない、寂しさや苦しさを蓮くんは見届けてしまって、その事が彼が獣ではなく人で居続けるための、大事なアンカーになっていく。
ダンピールのの呪われた血を生かした、ルカとはちょっと違う繋がり方を作れていて、大変興味深い。
これは蓮との関係を恋愛から切り離して、紆余曲折すれ違いアリつつも思い思われなルカくんで話を落着させるための、一種のフェイルセーフでもあるかなと思う。
ルカにとって美人は、吸血鬼のしきたりに反してでも愛するに足りる血袋であり、蓮にとっては吸血鬼にならないための最後の鎖。
お互いの求めるものが、性別だの種族だの越えて求める強い気持ちがなけりゃ成り立たない”真実”だと解るまでの、チャーミングな回り道。
それが物語の大部分を占めて、楽しくヤキモキさせてもらっている。
『バレバレなんだから、早くくっつけー』って言える、俯瞰の特権を読者に与えるのが、ラブコメでは大事なんだな…。
まぁ想定読者の年齢が上がると、ここら辺の絡み方がよりネトネト複雑になっていって、作中の当事者はおろか俯瞰で見ている読者にとっても、誰が何を思って何を願っているか、全然見えなくなる(そこが楽しい)話にもなるんだろうが。
美酒の代わりに赤い血を、セックスの代わりに吸血を、クッションかけて不鮮明な恋の美味しいところだけを楽しみ続ける、シンプルで精妙な作り込み。
愛と性の面倒くさくて怖い所を全部ぶっ飛ばして、一番ときめけるファンタジーをゲップが出るほど過剰にきらめかせて、全力で届けてくれる心意気。
そういうモノを堪能できる回でもありました。
やっぱ欲望充足装置としての創作物は、想定される消費者層事に物語の画角、描かれるべきモノと描かれてはいけないモノが変化すんだな。
その積層とグラデーションが、ジャンルとメディアの空気を作るのだ。
すれ違いが色々転がった結果、彼シャツ朝チュンNTRキメたわけだが、自分がぶん投げた爆弾には無邪気に無自覚なまま、美少年美少女を取り合うイケメン二人の間でハワハワ。
困った状況だが、待ってましたの激アツシチュエーションでもある恋の決闘場が仕上がって、さー面白くなってまいりました!
美人ちゃんの男装要素が、恋も愛も性も知らねぇ女としての未成熟と噛み合って、一種独特のエロティシズムを生んでいるのは大変いい。
えっちなのは偉いからな…特に、極限的にえっちであることを求められている、このお話においては…。
どう転がっても面白い状況なので、次回どういう走り方するのか大変楽しみです!