イマワノキワ

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うる星やつら:第39話『渚のフィアンセ/妖精のパラソル 』感想ツイートまとめ

 うる星やつら 第39話を見る。

 水乃小路飛鳥を巡る物語も一段落、今回は幽霊と妖精でファンシーに行くぞッ! …と思ってたら、やっぱり激ヤバ親父と許嫁が出てきて、妖精も大概にぶっ飛んだ感じで、いつも通り騒々しい感じ。
 40話積み重ねてきた日常が育んだ、あたると面堂くんの距離感だとか、テンちゃんとの気のおけない付き合いだとか、まったりたっぷり堪能できる回でもあった。
 終わりも変化もない永遠の狂騒の中で、何もかもがまったりいい感じにまとまっていってしまう”引力”みたいなものが、キャラクターの棘を微笑ましい感じに抜いてった挙句の果て。
 そこにしか満ちてない空気を、たっぷりと吸った。

 

 つーわけでAパートは、竜ちゃんもうる星名物変人許嫁を喰らえッ! というお話。
 『幽霊少女とデートする』つう筋立ては名作たる第33話とほぼ同じだが、望ちゃんに比べて渚は色々アレだったため、あの時みたいなエモい感じにはならん。
 というかいつも以上にやりたい放題、不憫も死別も笑い飛ばして全力で突き進む、このアニメの元気っぷりが前に出たお話となった。
 幽霊であることより、すーっかり悪友となったスケベ少年二人がアプローチできる性別かどうかのほうが問題視されてるの、友引町の人間は怪異に慣れすぎてる感じするな…。

 そんな陽性の話運びは、幽霊渚のタフな生き方に支えられている部分が大きく。

 『最後のデート』と比べると、エピソードゲストの人格で話のトーンも大きく変わる証明として、なかなか面白い手触りである。
 この図太さで生身を得て半レギュラーに昇格までするんだから、どんだけ爪痕残せるかってのは大事だなぁ。
 まぁ望ちゃんは一話完結でキャラの抱えた物語とエモーションを、燃やしきったからこそ忘れられない名ヒロインになったわけで、色んな語り口を許容する”うる星”の横幅が、同じネタを違う味わいに料理した結果…て感じか。

 男装女子な竜ちゃんに対比するキャラなので、渚は女装男子で凸凹ぴったり噛み合わせる造形である。
 連載当時には”オカマ”しか言い表す語彙もなかったもんだが、 四十数年の時を経て”クィア”だとか”男の娘”だとか、色んなグラデーションで渚の在り方を言い表せる様になったのは、令和に”うる星”やる面白さだなと思う。
 つーか数十年たってようやく時代が追いつくような造形を、山盛りぶち込んだからこその傑作だとも言え、細やかな調整入れつつ『原作通り』でやってなお、同時代性を手に入れてしまうのは面白くも力強い。
 竜ちゃんのジェンダーアイデンティティは、クソ親父のクソっぷりと合わせてなかなか扱いが難しいネタであるが、渚が鏡になって向き合ってくれることで、ネタで終わらせるだけでない確かな手応えを、どうやら描けそうな気配もある。
 次回以降の活躍にも、期待大だ。

 

 Bパートは久々にテンちゃんがポヨポヨ空中を泳いで、じゃりんこ天使の穏やかな日常…といった塩梅。
 水鏡の向こう側から表れた妖精に、夢を叶えてもらうべく虹色のパラソルを追いかける、ファンシーな舞台建てがなかなか良い。
 まぁこの素敵なファンタジーをダイナシにぶっ飛ばして、妖精さん”が夢”という言葉を杓子定規に叶えすぎる、ぶっ壊れたコンピューターみたいな奴っていうオチをつけるの、”うる星”って感じで良かった。
 こういう崩す笑いだけしか出来ないわけじゃなく、しっとりいい話でまとめる運び方も出来た上で、今回はガッタガタに切り崩して終わるんだって見せれるの、4クールあればこその語り口だよなぁ…。

 僕は令和うる星がテンちゃんを描く、赤子っぽさを強調したヨチヨチした動きが本当に好きで、楽しく騒がしくあたる兄ちゃんとじゃれラム姉ちゃんに甘えながら過ごす、彼の平和な日々を見れたのが良かった。
 ある意味日常系テイストというか、宇宙人がいる風景すら当たり前になった友引町のスケッチみたいな味があって、いよいよ終盤戦にさしかかりそうなタイミングで、このアニメが何を描いてきたのか、改めて堪能できたのはありがたい。
 幽霊も妖精も宇宙人も、男の格好した女も女の格好した男も、色んなやつがいてハチャメチャで楽しい。
 そういう場所で展開されてきたお話は、自由で野放図でとても素敵だ。

 

 ワーワー騒がしくも不思議と落ち着いた味わいの、奇妙な客人を向かいいれるお話二つを通じて、そんな”うる星”の善さを感じ取れる回でした。
 しっとりエモいイイ話ではなく、コミカルにやりたい放題している”いつものうる星”なんだけども、不思議な愛着と可愛げを感じ取れたのはエピソードの力か、僕の思い入れか。
 40話かけて培った作品との共犯関係を噛み締めつつ、つぎなる”うる星”を楽しみに待つ。

 …僕はアンソロジーとして令和うる星を楽しんでいる部分があるので、第33話との呼応を感じられるAパートは特に楽しかったな。
 こういう自分なりの角度で作品に切り込めるのは、幸せな物語受容だと思う。