イマワノキワ

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菜なれ花なれ:第2話『って感じで…』感想ツイートまとめ

 菜なれ花なれ 第2話を見る。

 動き出した六人それぞれの夢と運命、果たして孤独な星たちが作り上げる星座はどんな形か…って感じの、横幅が広いスケッチのような回。
 正直やや散漫かつスローモーな印象を受ける話運びではあり、令和の速度感にすっかり舌が慣らされている自分を、見終わった後改めて思い知らされたりした。
 もう話の主軸、主人公が主人公たる所以、目指すべき到達点あたりが、二話で明瞭に示されていないと『遅い』って感じる体になっちゃってるなぁ…。
 しかしこのどっしり構えて、思いの外陰影が濃い部分もある作風だからこそ描けるものも当然あると思うので、蒔いた種がどう芽吹くかは楽しみだ。

 

 小父内さんのパルクールアクションで惹きつけた第1話に比べ、文字通り地に足がついた展開になったこの第2話。
 その分何かが唐突に、協力に動き出していくパワーはやや弱まったが、玄関から建築物に入ると死ぬ呪いをかけられてる珍獣が何を嫌がって、誰が好きか見えたのは良かった。
 突飛に過ぎる行動でブンブン飛び回っている小父内さんだって、勝手に撮影されればイラッと来るし、気になってる女の子もいる。
 空中を飛び回っている間は見えなかった、当たり前の少女としての顔にちょっと近づけたのは、彼女が気になっていた自分としては嬉しい踏み込みだ。
 そっか、”そっち”か…学校同じだしそらそーか。

 今回は6人それぞれのキャラクター性、抱えた小さな悩み、それぞれの差異と摩擦の予感がじっくり積み上げられていた。
 物怖じせずバンバン突っ込む杏那の行動力がとにかく凄くて、状況を転がす役目はだいたい彼女が担っていた。
 先頭に立って引っ張る仕事を期待される主人公がトラウマ持ちなので、チアの本分である”勇気づける”という価値を堂々突き出せる状況じゃないのが、サブに物語のエンジンを任せる主因かな~、と思う。

 チアをやる自分に、かなたは現状全く確信を持てない。
 それはチアという行為にどういう価値があるのか、主役を通じて作品が吠えれてない状況を作る。
 セレクション本番で過去の傷が疼いて、目を塞いでしまったから受け身も取れず落下する描写は、タンブリング時の姿勢制御において何が大事かという具体的描写ってだけでなく、主役の精神状態を雄弁に語ってもいた。
 かなたは怯え、目を塞いでしまっている。
 自分がどんな人間で、ずっと夢見てきたチアの何が凄くて、どこにたどり着きたいのか見れていない。
 そういう状況だと自分自身安全に高く翔ぶことも出来ないし、そうすることで何が生まれるのか、誰かに示すことも難しい。
 怯えてつぶった目を、しっかり開けて自分と世界を見ることが、なによりまず主役に…彼女が牽引するべき物語に必要なのだろう。

 

 つまり一番最初にチアされるべきなのは、チアの魅力を仲間と視聴者に伝えるべき主役…というややこしい状況になっていて、話の足がもつれている印象がある。
 思いの外湿度が高く重たい連中が雁首揃えた、美少女六人組。
 それぞれ個人差がある外向性と前向きさのグラデーションが、動画作成にノンストップで走る杏那の力強さと、憧れと才能を小さく抱え込んでる詩音の対比で良く見えた。
 ここら辺の性根が一色で塗られておらず、一般的な”チア”のイメージからかけ離れた、内気でうじうじした連中こそがチアに向き合っていく手応えがあるのは、個人的には結構期待している。

 そういう影の生物にこそ、誰かを勇気づけるチアがいる。
 そういう陰の生物だからこそ、誰かを勇気づけるチアをやれる。

 そう堂々告げられたら、メインテーマの強みを鮮明に打ち出せる面白い話運びになってくると思うわけだが、現状チア経験者たるかなたが目を塞いでいるので、ルートが開かない感じだ。
 激ヤバ動画投稿野郎を撃退して、小父内さんとの絆値稼ぐ仕事も、カポエイラマスター・杏那がやっとるしなぁ…。
 今回競技チアという居場所を失って、部を追い出されることでかなたのエンジンが回りだし、六人の青春と噛み合っていく感じ…かな?
 一番バランス良さそうで、体の自由が効けばバンバン状況突破してくれそうな恵深がベッドに縛り付けられているの、なかなか面白い不自由の作り方ではある。

 

 今回はかなたと競技チア、部活という場所の向き合い方を、その決別まで進める回でもあった。
 野苺先輩も華先輩も、人当たりに少し問題はあれど自分たちがやってる競技に真剣で、分かりやすく”悪役”にしない描き方は好きだ。
 その分陰影を彫り込む尺が必要で、チア部とお寺の六人、どっちに軸足置いて話が回っていくのか分かりにくくなってる感じはある。
 部における過去の見せ方が現在とシームレスで、ヴィジュアル的に分かりやすく差別化もしてくれないので、結構混乱してしまうのも難しいところかも知れない。
 何が既に起こってしまったことで、何がこれから起こることなのか、混濁しがちなのはスムーズな視聴にノイズを入れる

 とはいえ競技チアという、これから六人が挑む領域とよく似ていて違う場所の張り詰めた空気感をちゃんと描いたのは、結構良かった。
 派手なスタンツが、信頼によって成り立っていること。
 極めて高度で危険で…だからこそ安全に気を配って行われるべき競技であること。
 競技チアのシビアな部分が描かれ、そこに目をつぶって向き合いきれていないかなたの現状が彫り出されたのは、なかなか良かった。

 チア部では、かなたは飛びきれない。
 ではどこで、彼女はチアに賭ける熱い思いを形にすればいいのか。
 こういう問いかけが明瞭になると、六人でチアをやる唯一性が分かりやすくもなってくるだろう。

 

 ただ競技チアのシビアさを強調するほど、コンクリの上で飛んだり跳ねたりするかも知れない野良チアのヤバさも際立ってしまうわけで、今後どういう感じで”チア”やっていくのかは気になった。
 マット敷いて補助付けても、トラウマになるほどの失敗がありうる試技。
 高く翔ぶ華やかさ、自由さ、力強さを、小父内大ジャンプでもって前回作品の核に刻んだわけだから、飛ばないわけにもいかないだろう。
 テーマに選んだ競技のシビアなリアリティと、夢を描くために必要なファンタジーのバランスを、今後お話が自分たちだけの”チア”に向かっていく中で、どう取っていくのか。
 そこも結構、難しいかだいかなと思う。

 高く飛びもすれば、落ちて怪我もする。
 ぶっちゃけ想定してたより痛そうな描き方でメインテーマに向き合ってることは、主役たちが抱えた青春の悩みの手応えも、いい感じにザラッとさせてくれる。
 進みたいのに進めない、あるいは進みすぎて誰かの心を踏んでしまう。
 それぞれが抱えた個性や悩みが、結構デコボコぶつかり合いながら進んでいく話になるのかなという手応えは、いい感じに描かていたと思う。
 主役チームの並べ方が、内気・天然・陽キャ・内気・内気・バランス(故障中)なの、描かれてみると”陰”に寄った構成だよな…。
 ここら辺の湿り気を、パキッとしたカラーデザインが遠ざけているのは見てて面白いね。

 

 今後話が進んでいく中で、今は作品を牽引してくれてる杏那のズケズケ感が誰かの虎の尾を踏んだり、応援されようが前に進めない暗い気質に向き合ったり、あるいは応援すること自体の意味を問いただしたり、色々掘り下げていくのだと思う。
 クッソ音痴な自分をさらけ出し、身悶えしてなお前に進んだ詩音の一歩は、そんな小さな歩みを積み重ねて少女たちが自分たちらしく、世界に目を開いて堂々翔ぶ話がこの先待ってる気配を、ちゃんと感じ取らせてもらえた。
 杏那と詩音の楽才だったり、色々噛み合わない部分はありつつも才能のある六人なんだと判ったのは、痛快チア絵巻を期待する良い手がかりだったな。

 まぁ一番ポテンシャル感じるのは、相変わらず小父内さんなんだけども。
 クールに全てを受け流しているように見えて、特定個人に重たい執着見せてるところといい、人間との対話がなかなかな成り立たないところといい、小父内さんを人化した猫として好きになってる部分、かなりあるなぁ…。
 警戒心バリバリの人型ネコチャン相手に、かなたがどういうアプローチを見せるかってのも、今後気になる部分ではある。
 現状小父内さんからの感情値が全然ないので、なんかいい感じのイベント一個ブッ込んで、絆を深めてくれると芯が入って良いと思う。
 オレは小父内さんのこともっと知りたいから、主役が踏み込んでくれなきゃ困るんだよッ!(キャラ萌えに奔る、オタクの身勝手な本音)

 

 というわけで、奇縁で出会った六人がちょっとずつ距離を縮め、あるいはかつての居場所にもはや席がない事実を主役が思い知らされる回でした。
 お寺の本堂がたまり場になることで、本来ミスマッチな仏教と青春が出逢っちまった愉快さみたいなものが、作品独自の魅力として出てきてる様子とか、面白さの種は結構蒔かれていると思う。
 同時にそれを焦らず膨らませていく手際が、ややモッタリした印象を与えるのも事実で、これを長所とブン回してカタルシスをどう叩きつけてくるか…今後を見守りたい。
 シビアな陰がかなり濃かったり、それを柔らかくまとめる朗らかな可愛さが元気だったり、良いとこ沢山あるアニメ。
 次回も楽しみッ!