イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ラーメン赤猫:第5話『ブラシは猫を饒⾆にする/先輩⾵は凪/やるじゃぁ~ん』感想ツイートまとめ

 ラーメン赤猫 第5話を見る。

 猫に鰹節、人にネコ。
 ”好き”を目の前に釣る下げられたときの反応は様々で、接客一番の本格麺処でありながら、ネコが運営するという唯一性でコンセプトカフェ的な側面も持ち合わせる赤猫を相手にした時は、なおさら様々な色が滲んでくる。
 そこら辺のグラデーションを、あらためてすくい取っていく第5話である。

 冒頭、寡黙ながら心底赤猫を愛する常連さんが、運命の店に出会った時の描写が大変良かった。
 運営サイドとしてはごくごく真面目なラーメン一本気なんだが、立って喋る猫がやるとなりゃ否応なく、それ以外の色もついてくる。

 そこにこそストレス社会に生きる現代人が赤猫を求める理由もあり、特別なストレスケア施設として赤猫が機能している様子を、客の目から描く筆が良かった。
 ここまでは社さんに視線乗っけて、職場の内側から赤猫を描いてきたわけだけども、良好な人間関係に助けられて着実に地歩を築いてきて、カメラを厨房の外側に回す余裕が出てきた感じがある。
 視線を増やすことで、舞台となる場所が顧客に何を提供できているのか、ラーメン喰う以外のどういう楽しみや癒やしががあるのか、赤猫を立体視出来る回ともいえる。
 一方的に可愛がられる立場のヤダ味を、”飲食提供”っていう業態が跳ね除けている善さと面白さも際立ったなぁ…。

 

 後に御所川原さんエピでフォーカスが当たるけども、いわゆる”猫可愛がり”な姿勢には相手を一人格として尊重せず、自分の”好き”を押し付けるヤバさがある。
 喋る猫(そして僕らの世界にもいる、喋らない猫)が自立した存在だからこそ、赤猫は自力で稼いで人を雇う”職場”たり得ているわけで、何でもかんでも人間様が助けてやらなきゃいけない、無力で幼いからこそ可愛い弱者として猫を扱うのは、文蔵くん達にとってはストレスだ。
 人間と同じ判断力や知性、尊厳を持つ相手を、それ相応に扱う。
 あたり前のことながら難しいから、社さん雇う時『猫好きじゃない人』つう注文も付いた。

 しかし猫が持つ天性の魅惑に狂ってしまうのも人のサガで、その魅力を自覚すればこそ赤猫は『接客一番』でもある。
 無遠慮に一方的に”好き”を注ぎ込まず、適切な距離を測って当たり前の商売として…そこを半歩踏み越えた親しみと人情を、美味しいラーメンと優れた接客に交えて手渡す。
 そういうコンセプトを打ち立てた赤猫には、弁えたお客がしっかり付いて、カウンターを乗り越えることなく猫たちを尊重し、彼らと触れ合う自分たちをもっと”好き”になれる時間を、楽しく味わっている。
 職場環境もそうだけども、お客との間合いもまた、理想的な夢を描きつつ、ザラリとした現実味も上手く盛り込んで、独自の味を煮出している。

 

 そんな職場にすっかり馴染んだ社さんが、ちょっと踏み込んだ過去を同僚に聞いていくエピソードは、この作品の特徴である『ゆったりとしながら、着実な変化』が感じ取れてよかった。
 前のブラック職場では思いもしなかっただろう、仲間のプライベートにちょっと踏み込んで、お互いを知っていく歩み寄り。
 ポスター制作の対価をしっかり払おうとする事含め、社さんは腱鞘炎になりかけるくらい赤猫で必死に働くことで、自分を取り戻している感じがある。
 客側が感じてる癒やしとはまた違った、キツい人生をなんとか乗り越えていくための糧を、従業員である社さんは赤猫からお出しされているわけだ。

 ここまで5話、赤猫という舞台にもそこで頑張る猫たちにもすっかり馴染み、愛着が湧いてきた頃合い。
 立って歩く奇妙な猫たちの人生を覗き込んでみたくなるタイミングで、色んなモノを彼らに語ってもらう話が来るのは良かった。
 踏み込んで見れば猫それぞれ、色んな苦労があってそらーブラッシングもして欲しくなるわなッ! という塩梅。
 生まれついての長毛を短く刈り込み、ツンツン詮索をはねのけるハナちゃんの過去に何があるかは…アニメ最後に見せ場として力入れて描いてくんかなー。
 俺あのエピソード凄く好きなので、ぜひともアニメで見たいわね。

 

 赤猫の従業員は愛玩動物ではないわけで、その間合いで抱きしめようとする御所川原さんは…悪い人ではないけども、確かに困る。
 猫に狂わされちゃった人がやりそうな事、赤猫メンバーに軒並みぶっこんだトホホな感じで笑いを誘いつつ、作品が彼らをどう見てほしいのか。
 ナチュラルに適正距離が取れている社さん視点だと、ちょっと描けないものに踏み込んだ回でもあった。
 それぞれ事情と矜持を背負って、猫たちも二本の足でスックと立っているわけだし、猫可愛がりだけを売りにするならラーメン屋じゃなくてもいいからな…。
 しかしなんもかんも切り捨てて、ストイックにやるのもちょっと違う。

 店長である文蔵くんの職人気質が柱になって、ラーメン以外のところで銭稼ぐ道は拒み気味だけども、”接客第一”を掲げる以上、客との触れ合いは大事だ。
 媚びるでなし、拒むでもなしの適正距離を客ごと、丼ごとにどうお出しするか、文蔵くんたちも悩みつつ、それぞれのデコボコを良い感じに噛み合わせて取り回している。
 ただひたすらにモリモリ食う滝くんの一本気な客ぶりに、なんだか救われる思いのする回でもあった。
 そらラーメン出してんだから、ラーメンいっぱい食って喜んでもらうのが一番いいわな。
 でもラーメン以外の全てを、切り捨てる厳しさもちょっと違う…働いてるの猫だし。

 店側があざとく差し出さなくても、猫好きの客は懸命に働く猫たちの頑張り、誠実な心配り、”二番”と言いつつ探求を怠らないラーメンの味に、しっかり満たされている。
 あふれかえる”好き”を押し付けず、『いいラーメン屋』の職分に自分と相手を収めたうえで、細く長く幸せに付き合っていく。
 そういうお客との応対を、赤猫がどう頑張っているかを削り出す回でした。
 常連さんとの付き合いだけじゃなく、逆ナンで流れ着いた滝くんが赤猫と出会う話をいれることで、良い感じの横幅があったと思う。

 

 

 様々な出合いを重ね、今日も赤猫は生真面目にラーメンを作る。
 そういう”仕事”がどんな物語を紡いでいくのか、次回も楽しみ!