変人揃いのるーみっく格闘ラブコメ、堂々の恋敵第一弾!
自称・風林館高校の青い雷、九能帯刀颯爽登場!! な、令和のらんま第2話である。
前回は我が家たる早乙女家に舞台を限定して進んでいったファミリーコメディだったが、今回は騒々しくも活力に満ちた風林館高校の日常を元気に描き、学園ラブコメとしての表情をよく見せてくれた。
木刀による斬鉄を可能にする凄腕剣士なのに、頭のネジと行動力が明後日の方向へぶっ飛んでる超変人・九能先輩を起爆剤にして、とても賑やかで楽しい回だったと思う。
こっから続いていく、学園という時間の止まった聖域での祝祭がどんな空気を孕むのか、しっかり書けていた。




今回もアニメ表現のバリエーションが多く、大暴れする本筋の合間にかなり攻めた演出が沢山楽しめた。
主線の太いイラスト調、どこかトボけた素朴さがある水彩、影を大胆に塗りつぶしたバトルカラー、薔薇の赤が鮮やかなコミカル・モノトーン。
多彩な表現をサクサク挟み込み、ドラマだけでなくヴィジュアル方面でも元気に跳ねて、色んな面白さを作ろうと頑張ってくれている。
キャラが多くネタもカオスなこのお話、それを形にしていく表現もまた多様であってくれたほうが、展開していく物語の味わいにはシックリ来るだろう。
挑戦にはいつだってコストがかかるので、どんだけ続くかは判らんがね…。
ともあれ状況が落ち着くことなく、アップテンポにゴロゴロ転がっていく、愉快な学園狂想曲。
九能先輩のイカれっぷりに引っ張られる形で、全体的なテンションが高く、祝祭のような興奮をむしろ基礎として物語が進んでいくことを、この第2話は告げてくる。
あかねに殺到してくる告白予備軍からして、随分イカれた連中なわけで、面白くもねぇ現実味なんぞ蹴っ飛ばし、水をかぶれば女になっちゃうフザケた物語は、ブレーキを壊した全速力で駆け回っていく。
バトルと絶叫と追いかけっこが物語を覆い尽くす合間に、制服姿の学園の日常が結構挟み込まれていたのも、作品が自己紹介する話数としてはなかなか良い。
メインヒロインが宇宙人だった”うる星”のトビ加減に比べると、比較的地に足がついたリアリティで進行するこのお話。
今は九能先輩が一人で担うトンチキ要素も、今後チャイナ経由で適度に舞台をかき回し、どんっどんとんでもな方向に加速していくことになる。
その萌芽は今回のドッタンバッタン大騒ぎに既に感じ取れるわけだが、72年の日中国交正常化から15年、未だ奇妙でエキゾチックな隣人だったあの国なら、どんなトンチキもやってきそうな気配というものが、あの時代には漂っていた…とも言えるか。
話数ごとにリアリティフレームぶっ壊してた”うる星”に比べると、やっぱやや血圧が落ち着いてんだよな…。




SFテイストを抑え、騒々しい格闘学園を舞台に何が描かれるかというと、やっぱり素直になれない二人の甘酸っぱい青春である。
見よ、この背中合わせのツンツン様式美…。
つーかこの二人でもって、”「ふん!」「何よ!」な許嫁”というラブコメ様式が完成し、後の作品に継承されていく感じなわけだが、あかねと乱馬の視線は絡み合ったりすれ違ったり、相手に謎の恋敵を挟んだりして複雑にうねる。
東風先生に向ける純情を見届け、九能先輩に襲いかかられ、恋の羅針盤は行ったり来たりトキメキ迷走記!
…と思ってたら、恋敵が主人公(女性態)に惚れてエピソードが終わった…。
ここは画期的物語装置である呪泉郷の呪いで、フツーじゃないからこそ面白いツイストがかかっている部分だ。
九能先輩の一目惚れは、あかねくんを狙う不届き者たる乱馬と、むにゅっと柔らかいおさげの女が=だと気づいていない、誤解によって成立している。
らんま以降の作品なら作品の中核にも据えそうな、許嫁と同居の事実はとっとと白日のもとに晒され、ワイワイガヤガヤ大騒ぎになるのに対し、性別というアイデンティティを混濁させるフザケた呪いは、誤解を深めつつ秘密の源であり続ける。
「知ってる」と「知らない」の間に生まれるポテンシャル、ギャップが生み出す物語の加速度が、作品をどう勢いづけていくのか。
今回のエピソードは九能先輩を主役にしたそのショーケースであり、凄腕の奇人が集う風林館高校がどんな場所か、僕らに教える話数でもある。
つーか序盤の九能先輩しっかり強いし、コミカルな追いかけっこの中でそれをちゃんと見せようと描き方を考えてくれてる感じが、大変良かった。
強いし声も顔もいい感じなのに、思い込みの激しすぎる剣術奇人すぎて、フツーの枠に収まらない。
こういう連中が手を変え品を変え、どんどこ押し寄せてくる扉を開く役として、フザケた主役に負けない濃さをゲップ出るほど押し込んでくる九能先輩。
花束のようなキャラたちの魁として、大変良かったと思います。
先輩の出番が多いと、クラスメイトであるなびきも目立つの良いわね…銭ゲバ要素は抑えめで行くのかな?




異郷からの転校生として、軽功に長けた凄腕の武闘派として、乱馬は常に高くて危うい場所を軽やかに駆け抜け、フツーの道を歩かない。
川べりのフェンスを道路代わりに駆け抜け、階段代わりに窓から飛び出し、手すりを滑り降りて移動する。
面白くもない当たり前に縛られず、自由に生きるトリックスターの気質が、日常的な仕草にしっかり反映されていて好きな演出だった。
猫恐怖症なのに、普段の仕草は猫っぽいの面白いんだよな…。
そんな彼があかねが身を置く地べたに降りて、隣を並んで学校へ向かう契機は、東風先生に見せたときめきの表情…その真意を問う時だ
あんだけハチャメチャな好意の押し付けに巻き込まれりゃ、そらー「男の子なんて大ッ嫌い!」にもなろうが、その例外たる幼い純情が、一体誰に向いているのか。
さんざん色気がねぇ可愛くねぇと煽りつつも、乱馬がボヘミアンの軽やかさを投げ捨て、足を地面につけて確認したいのは、やっぱりそこなのだ。
いがみ合いばっかしてると思いきや、結構良い距離感で”学友”出来ている学園での描写といい、このお話の主役は既に結構ヒロインのことを気にかけているし、その自覚がない。
このネジレと素直になれなさが、作品全体を牽引していくメインエンジンになる。
今見るとスタート時点から、乱馬は相当あかね好きだな…。
むき出しの二の腕にがっしり付いた筋肉の、隠し難い男ぶり。
心配りが足りない部分はあれど、フツーのイモ男どもが重力に縛られて不自由な、ツマンナイ場所を軽やかに飛び越えて、中国からの転入生はとてもハンサムだ。
この軽やかさはアクションの中でも活写されているし、異様な暑苦しさでガンガンに迫ってくる九能先輩が鏡となり、軽妙さを強調されてる感じもある。
(キャラクターとしての、そして作品としての)らんまの魅力はとにかく軽やかなことにあり、ワガママな意思を押し通す実力を持った主人公は、基本軽快に高い場所を駆けていく。
しかしその独走を許すまじと、変人が赤いバラで胸を刺してきたり、寸胴女が「カンケーねーし!」の壁を突き破って、真っ直ぐ向き合うには気恥ずかしい心の地べたへ、否応なく引きずり込んだりもする。
泥臭く当たり前の道を進まなくてもいい、爽やかで自由な主役の特権/常態が崩れ、ハチャメチャなラブコメ時空に引きずり込まれたり、喧騒からちょっと離れた場所にあるマジな気持ちに向き合ったりする時、生まれる特別な面白さ。
それを賑やかな話運びの中、じんわり感じれるエピソードでもあったと思います。
基本アップテンポ&ハイテンションで転がしてんだけども、要所要所でどっしり腰を落とす場面があって、それで全体の勢いが落ちてもいないの、巧妙な手綱さばきだよなぁ…。
学園の有象無象皆が求めるマドンナを、寸胴で色気がねぇと蹴り飛ばす自由さを乱馬は振り回し、あかねをムカつかせちょっと傷つけている。
しかし乱馬が口にする異性の魅力は現状、”彼”自慢のプロポーションに代表される、女の外形にしかない。
自分の恋心(あるいは情欲)が何に引き寄せられ、女が女である価値や意味…あるいは”女”というフレームを超えて自分が引き寄せられるものが何か、高校一年生の乱馬少年は、当然あんまシリアスに考え抜いてはいない。
そういう彼が、フザケた体質から生み出された誤解と、研ぎ澄ませた格闘技術、ご自慢のプロモーションで九能先輩に告白されるオチ、やっぱ良いなぁ…。
わざとらしく腰を落としたベタ足で、「ジェンダーとは、セクシャリティとはなんぞや!」とやる話じゃないけども。
軽快に性別をスイッチしながら転がる特級ラブコメの切れ味は、男であること、女であること、自分であることに向き合う季節に、主役たちが確かにいることを喧騒の中、確かに描く。
そういう湿って重たい質感と、軽やかに暴れまわる格闘学園コメディの妙味が、大変良いバランスで活写されている第2話でした。
らんまのおもしれートコロ、ギュッと濃縮して丁寧に元気よく仕上げてくれた感じで、マジ良かった…。
九能先輩を皮切りに奇人軍団もガンガン来襲してきますが、さてはて一体どうなるか。
次回も楽しみ!