イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ラブライブ!スーパースター!! 三期:第2話『トマカノーテ』感想ツイートまとめ

 新天地へと踏み出す王者の一歩は、深海を超えて人魚姫に光をもたらす。
 ウィーン・マルガレーテ陥落ダービー、想像以上の急速度で澁谷かのんにズブズブ祭りが原宿を彩りつつ、クールな新星・鬼塚冬毬の謎めいた視線が”スクールアイドル”を睨む、スパスタ三期第2話である。

 負けると知りつつ、火花散らす思いを世界へ解き放つ。
 傑作中の傑作、無印アニメ一期第3話をリフレインさせつつ、ユニットメンバーの名前を繋ぎ合わせてサブタイトルとするのはスパスタ一期第3話の匂いもあり、三期どころか10年以上文脈積んできたコンテンツ特有の、心地よい共鳴に満ちた回だった。

 

 三年生になっても、長い時が過ぎても。
 いつだって、出会った瞬間がスタートライン…というラブライブの背骨を、オレンジ色のカリスマが若造二人に堂々手渡し、待ってましたの頼りがいを見せる展開は、見たいもん見れてかなり満足である。

 やっぱ二年間待ち望んでいた”三年生の澁谷かのん”の強さと優しさを、ユニット別けたが故に色濃く味わえるのはありがたいし、いい加減とっとと好きになっておきたかったマルグレーテちゃんの、思いの外素直でチョロい様子を堪能できたのも素晴らしい。
 紫色のマルチーズが想定より早く墜ちてるので、冬毬が姉者LOVEを匂わせつつややツン強め、奥が読み切れない塩梅なのは良いと思う。

 

 やっぱ”ラブライブ”をその結末まで引っ張ってきた、全国一番のスクールアイドルを目指す旅路を既に走りきってしまっているのは、厳しいところでもあり乗りこなせば面白くなる課題でもあろう。
 学年を重ね”先輩”になっていく少女たちの姿を見届ける嬉しさは、(約一名除いて)どっしり構えて揺るがない三年見てると強く感じるわけだが、ガムシャラに上を目指すラブライブ・スタンダードを既に終えている中で、何を描くのか。
 鬼塚姉妹が乗り越えるべき課題を、じっくりコトコト煮込む様子からは、そこを色々考えてくれてる気配が感じられる。
 逆にマルガレーテちゃんは、ライバル時代書けなかった可愛さを大炸裂させて、あざとくて最高。

 まさかまさかの共同生活、かのんとマルガレーテちゃんの距離が近いのが、疑似姉妹的な関係構築の面白さを上手く照らしていて、大変良い。
 こうして描かれてみると、澁谷かのんは想定より”姉”であり、ウィーン・マルガレーテは想定より”妹”であり、歌とスクールアイドルで繋がる二人は、真逆に見えて凸凹がピッタリハマる、相性抜群な”姉妹”である手応えがあった。
 同時に挫折を乗り越えスクールアイドルに挑み、確かに揺るがぬ答えを手に入れた先達として、頑なに震えている後輩を導き、見守る先輩としての…あるいはLiella! のカリスマとしての眩さも、しっかりあった。

 ニ期での敵役稼業で積み上げたヘイトに、作品内部で向き合う形でマルグレーテに禊を果たさせる展開の中で、三年生になったかのんちゃんがどんだけパワフルで暖かなのか、改めて描く第2話でした。
 ニ期では物語リソースをアンバランスに割り振られすぎていた部分も確かにあったけど、俺は鮮烈なヴィジョンと持ち前の情熱で、周りを照らし奇跡を成し遂げていく澁谷かのんの姿がやっぱり好きなので、スクールアイドル道に迷う後輩相手に締めるところは締め、抱きしめるべきタイミングでは全力の抱擁に飛び込む勇姿を見れたのは、とても嬉しい。
 やっぱかのんちゃんこそが、Liella! の真ん中、オレンジ色の太陽なのだ。

 

 

画像は”ラブライブ! スーパースター!! 三期”第2話より引用

 というわけで二期ラストのハチャメチャなクリフハンガーを捻じ曲げ、歌に追い詰められたツンツン少女と、澁谷の太陽の共同生活が今始まる!
 決まってしまったことにプリプリ怒るフェイズは、一応前回で一段落ということで、まー色々ツンツンはしつつも、マルガレーテちゃんは柔らかな表情も、不安げな顔も晒すようになってきた。
 こうして高圧的な憤怒相以外を見れると、やっぱ可愛いし好きにもなれるね。
 そしてその人間的揺らぎを、澁谷かのんはよく見ているし、積極的に手を差し伸べ親身に面倒を見る。
 澁谷かのん…この姉力こそが見たかったッ!

 思えばマルグレーテちゃんが”一番”に過剰にこだわるのも、優秀な姉へのコンプレックスが揺らいだし、生活圏を重ね二人を疑姉妹として扱うことで、彼女の心の奥底が見えてくるのは必然の一手かなと思う。
 意固地なようでいて、一回結果が出たことは素直に認める部分もあって、自分を打ち負かしたかのんちゃんに防壁を下ろして、自分の柔らかい部分を告げ始めたツンツン少女の表情は、思いの外豊かだ。

 

 そして澁谷かのん相手にそういう場所を明け渡すことは、『殺してください』と言っているのも同義であり、遠くない将来燃え盛る愛で全霊ヌポヌポにされる未来が確定してしまった…。
 いや良いんだ、それこそが見てーんだから俺は。

 一期の恋以外、あんまビシバシ風当たりが強い相手とマイナスからの関係構築してなかったLiella!が、マルグレーテちゃんをズブズブにする様子は結構新鮮でもあり、困ってる誰かを見捨てられないかのんちゃんの”義”が熱く燃えてもいて、大変良い。
 めっちゃ面倒見よく、異国で頑張る少女に近寄る様子優しくて好きだし、頑なな鎧を必死に守りつつ、どんどん砂上の楼閣が崩れてきてるマルガレーテちゃんも良い。
 受けた恩義は返したい義理堅いところとか、結局二人が真心を”歌”にして距離を縮めていくところとか、正反対に見えて共鳴する要素の多い二人の姿が、可愛くも元気な回であった。
 こりゃ”ある”ぜ、”かのマル”が…

 

 

画像は”ラブライブ! スーパースター!! 三期”第2話より引用

 この原宿義姉妹音楽日記に、スルリと割り込んでくるのが鬼塚の姉妹(おんな)たち。
 ナッツが二期で乗り越えた、傷つかないための言い訳としてのマニー主義を引き継ぎ、姉者を夢という呪いに引き戻したスクールアイドルの真実を自分の目で確かめるべく、少女は姉からあえて遠い場所を選ぶ。
 …既に自分の中ではある程度答えが決まっているはずなのに、わざわざ汗かいて舞台に上がって確かめようとするあたり、冬毬ちゃんの性根は真っ直ぐで好きだ。
 トーテムとして扱われているのも、フラフラ不確かに揺れるクラゲだし、冷徹の奥に秘めた迷い、深いと見た…。
 つーか姉者と距離取らなきゃ冷静には見れない、自分の”狂”に自覚的って、かなりカルマ濃いシスコンで好きだね。

 約10cmの身長差が宿す”迫力”に、思わず喉もゴクリと鳴ってしまうが、まーどう考えても姉者が好きすぎて若干頭がおかしい系妹であるのは間違いなく、ステージの熱に炙られてなお冷静さを崩さない仮面が、引っ剥がされたときが大変楽しみではある。
 夏美も急に扉の向こう側に遠ざかってしまった、愛妹の心をノックする姿勢は全然失っていないわけで、ウィーン包囲がかのんちゃんの完勝に終わったくらいの頃合いで、こっちの”姉妹”にも切り込んでいって欲しい。
 血縁ある鬼塚姉妹は想定の範囲内だが、まさかかのマルの描き方がこんなに姉妹感漂うとは思っていなかったので、そういうの大好き人間としてはありがたい限りだ。

 後のライブで、約束された敗北をあんまダイレクトに描かなかったのもそうだけど、鬼塚姉妹の断絶と反目も早いタイミングで奥にあるぬくもりを感じさせて、あんまストレス強くしない運びなのは面白いなぁ、と思う。
 まー”ダイスキだったらダイジョウブ!”は世界の真理なので、今後ピリ付いた展開を維持していくにしても、根っこではLOVEで繋がっているよと見せておくことで、いらない不安抱えて先を待つこともなくなるしな…。
 CoolがHotになっちまう瞬間ほど美味しいものもないし、冬毬の冷たい実利主義は新たなスタートを切った三人の大きな武器にもなっているので、なかなかいい塩梅の煮込み方だと思う。

 

 

 

画像は”ラブライブ! スーパースター!! 三期”第2話より引用

 W姉妹がエピソードのメインエンジンを担当するので、Liella! 他メンは出番控えめ、可愛さマシマシ。
 色々含むところも(主に香港産のアイドル弾頭に)ある学内ライバルの初ステージを緊張した趣で見守り、見事水底から花開いた後には喜びに表情をほころばせる。
 クゥクゥが生来のヤバっぷりを元気に暴れさせるほど、どっしり構えて推移を見守る嵐部長の頼もしさが際立つの、結構残酷な構図だな…。
 でも的を絞って話を転がす中で、おもしれーコトバンバンやって存在感をアピールしてくれるクゥクゥは、マジ偉いとも思うね。

 挑む前から負けることが見えている、マネタイズもしないステージ。
 それでも…そこにこそ意味があることを、負ける辛さと夢を追う虚しさに呪われた所から自分の物語を初めた、澁谷かのんはよく知っている。
 クールな実利思考、勝利最優先の苛烈さが見落とす大事なものを、抱きしめて駆け抜けた先で、見つけた揺るぎない光。
 それを後輩に届けようとするかのんちゃんの頑張りも、今回大変良かったです。
 好きをガムシャラに追いかける主体から、その素晴らしさをどうにか伝え導こうとする立場に、かのんちゃんの物語がちょっと角度を変えた感じもあった。
 それは寂しいことではなく、豊かで優しい変化だと思うのだ。

 

 

 

画像は”ラブライブ! スーパースター!! 三期”第2話より引用

 マルグレーテちゃんは一度背を向けようとした、なんの勝ちにも繋がらない”Bubble Rise”を歌い上げた後、「久しぶりに歌うのが楽しかった」と笑う。
 それはつまり、いま頑なにしがみついている勝利への執着は、彼女を深海に閉じ込めて息苦しい檻に閉じ込めているということだ。
 それは幼い日に初めて心を揺らした”歌”と、それが繋げてくれる温もりと、もう一度出会い直す喜びを少女に告げ、その眼を開かせる。
 歌えなくなった人魚姫たちは暗い海の底から、何にもならない舞台に全力を注ぎ込むことで、想いを閉じ込めた泡を世界へと解き放つのだ。

 この見立てだと、かのんちゃんが歌えなくなった所から彼女の物語を始めたことに、新たな文脈が生まれもしてくる。
 数字に現れる具体的な意味にしか価値を見いだせないでいる冬毬の窮屈さも、初めて心が揺れた衝撃を忘れて勝ちに呪われていたマルグレーテちゃんの苦しさも、かのんちゃんは自分自身の体験として見知っている。
 自分自身深く暗い場所に身を置き、誰かに手を引かれて踏み出すことで、夢が眩しく輝く場所へと駆け上がった経験に救われているからこそ、甘っちょろい夢に確かな重さを宿して、悩める後輩を導ける。
 一足先に陸を目指したマーメイドとして、かのんちゃんは一年生二人の吐き出した泡を、心から祝福する。

 

 Liella! として活動する中で、観客席の…あるいはモニターの向こう側で自分の歌を聞く人に、飛び出す勇気を手渡せたらと願って、かのんちゃんは歌ってきた。
 三期初ステージとなる今回、部活の新しい仲間であり、スクールアイドルの”妹”である二人の一番近い所で、とにもかくにも実際歌ってみる強さを、導き守れたことは、大きな意味と意義を持っている気がする。
 かのんちゃんにとっては原点回帰であり、二人にとっては初めての歌。
 二学年分遠く隔たれているように見えて、そこで繋がる心は確かに、美しい共鳴を生んでいた。
 三人のスクールアイドル活動は、約束された敗北の中確かに、未来への希望を燃やしている。

 最初から負けているこのステージ、マルガレーテちゃんが自分を縛り付けてる価値観からすれば無意味なわけで、震えながら自業自得の敵意に向き合う値打ちも、それでも全霊を込めて歌い切る必要もないはずだ。
 でも彼女は歌おうとしたし、歌えないかも知れないと顔を伏せた時、手を繋いでくれる誰かが隣りにいることを、強く思い知らされてしまった。
 それに支えられて自分を叫びきった時、勝ち負けを超えて胸に燃える炎が、自分を笑わせてくれることも思い出した。
 もーさー…無理なんだよね、ツンツン嫌味なライバルッ面するのはッ!
 こういう場所につれてきてくれた”姉”と、バチバチしてるだけな関係維持するのも!!

 

 屈折したコンプレックスに絡め取られ、なかなか海面に浮かび上がらなかった心の泡は、解き放たれ世界へと弾けた。
 こっからはもー、ウィーン・マルガレーテズブズブ絆され祭りを開催し、素直になったマルグレーテちゃんかわいい神輿で原宿界隈を練り歩くしかなかろうよ…。
 スクールアイドルが大好きだからこそ、甘えは許さず程よくガチるかのん先輩の指導も、鎧を切り崩されたマルガレーテちゃんが今欲しいところに、ドンピシャでぶっ刺さるだろうしなぁ…。
 おまけに同居と来たもんだ…どんだけデロデロになっていくか、マジで楽しみです。
 このおニューな関係性がグツグツ煮込むほど、嵐千砂都との古馴染みが渋く輝くしね…。

 形になるバリューがないステージに演者として上がり、歌姫二人の熱量を間近に浴びたことで、冬毬氷の仮面にも変化があるのか。
 ナッツのマネー主義は正直、ニ期でキッチリ掘り下げられたとはあんま思えないので、妹を触媒に改めてグツグツ煮込んで、美味しいダシが味わえると嬉しくはある。
 つーかあの無表情の奥で、姉者が好きすぎて頭がおかしい魂が煮え立ってんのはもう解ってんだから、はよう鬼塚姉妹激煮え感情祭りへと、百合色満艦飾の山車を繰り出せって言ってんのッ!
 絶対美味しくなりそうな期待感を、キッチリ煽って次回以降に物語燃料を引き継いだの、良い話運びだったと思います。
 大変良い、三期第2話でした。

 

 

 

画像は”ラブライブ! スーパースター!! 三期”第2話より引用

 そして今日も今日とて、リエラのうたは最高ッ!
 本編でマルガレーテちゃんの幼少期が描かれたことで、お人形遊びに新たな文脈が加わったのも良かったし、本筋では未だ頑なさを残す氷の妹が、イノイチ姉人形と手を繋いで美しい空へ飛び出していく女(ひと)だと描かれたのも、大変グッド。
 やっぱリエラのうた、補助線としての強度が高いわ。

 あとおすまし顔で唯一の同級生の頭に乗っかってくる紫マルチーズ、マジで可愛すぎ。
 トマーテの関係がこのライブを経てどう深まっていくかも、今後の大きな見どころだと思います。
 次回はLiella!本体……とくに四季を掘り下げる感じの話になりそうで、こっちも大変楽しみです!!