イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

魔王2099:第2話『魔王と臣下』感想ツイートまとめ

 勇者との決戦から目覚めてみれば、そこはサイバーシティ新宿。
 敗残と裏切りから土を掴んで立ち上がるリベンジストーリー本格始動!
  …かと思いきや、ユニクロのジャージ着込んで職安巡り、配信業で信仰取り戻してワンチャン電脳成り上がり!! という、泥臭ーい方向に突っ走っていく、魔王2099第2話である。
 大変良かった。

 前回はサイバーパンクの王道を行くキメキメのスタートであったが、今回は庶民的な方向にガッツリ崩して可愛げ満載、思いの外柔軟性と適応力のある魔王様がトワ様参考に新たな職を見つけるまでを、楽しく描いてくれた。
 誠実&生真面目が過ぎて天然ボケな、魔王様のキャラはオラ結構好きだゾ…。
 実力と分厚い個人史を秘めた好漢が、世界の片隅に追い込まれつつも腐らず”生活”に順応し、生きる足場を整えていくって物語類型、やっぱ好きなんだよな……時代劇テイスト結構するの、かなりありがたい。

 ファンタジーと現代地球、二つの世界が衝突して生まれた作品の舞台も、500年ぶりの再生を果たした主人公も、ギャップをどう魅力的に伝えるかが大事だと思う。
 前回いい塩梅にゴミまみれ、玉座から裏路地のゴミ箱まで一気に滑り落ちた惨めさと、それに汚れぬ最後の気高さをちゃんと書いた上で、今回鎧を脱いだ魔王様が結構話せるオモシロ人間であると描いて、なかなか良い角度で刺さった。
 商工ギルドでの面接コントは、魔王様が大真面目であるからこそ笑えるいいユーモアに満ちていて、転生コメディとしてもなかなか良い味するアニメだと教えてもらった感じ。
 笑えるってのはとても大事なことなので、そこ強いのはありがたい。

 

 

 

 

画像は”魔王2099”第2話より引用

 話としちゃーサイバーシティ新宿の”生活”に、魔王様がジャージ着込んで入っていく感じで、彼を舳先に立てて作品世界に流れる空気を視聴者に吸ってもらう話だった。
 ”魔王”が古代文字化してたり、ユニクロが3Dスキャナーでフィッティングする無人店舗になってたり、職安の機能が公的機関からギルドの私業務になってたり、結構細やかに新宿の空気を教えてくれる描写を頑張ってくれたの、大変ありがたかった。
 やっぱそういう手触りを教えてくれると、作品とのシンクロ率もアガるからな…ファンタジーに浸る上で、大事にしたいところをちゃんと押さえてくれた。

 明らか合成シートな食材を心を込めて調理し、魔王様のために心尽くしの朝食を仕上げるマキナの所帯じみ力も凄かったし、それを無下にしない魔王様の好感度も急上昇。
 結構ぶっ飛んだ設定だけに、キャラに親しみをもたせるのはなかなか難しいかと思っていたが、全体的な見せ方、運び方が適切だったので、あっという間に好きになってしまった。
 魔王様がかつての栄光にしがみつかず、変化した時代と惨めな現状をガボガボ飲み干し、部下の忠義に応え日々をたくましく生きるすべを探せる、タフな貴種だったのは素晴らしい。

 

 魔力なし、IDなし。
 500年ぶりに目覚めた、ジャージ姿の浦島太郎を取り囲む状況は厳しい。
 しかしどん底のスラム生活にも腐らず、微かな縁を手繰り寄せて色々あがき、ちょっとずつ新たな人生を前に進めていくたくましさは、見ていて気持ちが良かった。
 その真っ直ぐさが荒廃都市の擦れっ枯らしな現実と上手く摩擦して、オモシロの火が随所で燃え上がっているのも、変則的なタイムスリップモノである強みを、いい感じに使いこなしてると思った。

 魔王様の世間知らずがシャレになんない重さではなく、あくまでサクサク小さな面白さを生み出す程度で収まってるの、見ててストレスなくて好きだな。
 被差別不死族の代表として、どん底から這い上がってったっぽい前世の経験が、いい意味での”負け慣れ”を与えてるのかな?

 

 マキナも忠義一本槍かと思いきや、いい友達も一人いるし、貧乏ながらサイバーパンク世界に適応して、同人活動に勤しむ程度には好き勝手絶頂ぶっこいてると見えてきた。
 魔王様しゅきしゅき過ぎて頭おかしい部分も見えてきて、かなり好きになれるタイプのキャラであると解ってきたのは嬉しい。
 ファミリア適応者であるマキナの一人称を通じて、サイバー化されたアバター・エージェントが日常の全てに食い込んでいる、この世界の”普通”が見えてきたのも良かった。
 社長執念の謀略でもって、ファミリア不適応者に仕立て上げられた魔王様は、この”普通”から排除され、就職もままならない…ってわけだ。

 コミカルな就職コントを通じて、”公”なるものが破綻し私企業が大きな力を持つ(だろう)新宿の現状と、そこからはみ出してフリーランスになるしかない魔王様の立場はスルッと飲めた。
 なにしろ遠い昔に滅ぼされた人類の敵、真っ当な道を突き進んで偉くなられても困るわけだが、信仰力の衰えと合わせてガンガン苦境に追い込み、今後展開されるだろうリベンジと成り上がりの準備をしてくれるのは、大変良い。
 やっぱPCの立場は公的身分保障からあぶれた、SINlessじゃないとな!!(Shadowrunのオタクの叫び声)
 路地裏のゴミために投げ捨てられた所からスタートしてこそ、サイバーパンク浪花節の美味しい部分が食えるって話でね…社会保障からはみ出した、アウトサイダーの動画配信一代記を見届けろッ!

 公的な身分保証制度が破綻したサイバーシティにおいて、ファミリアは便利なツールである以上に、己の立場を証明する社会インフラとして機能している。
 魔王様はこの世界の”勝ち組”になって、世界のルールを定める側になった元部下の執念によって、己が何者であるかを社会によって認められない、何者でもない存在になった。
 それを寄る辺ない不安定ととるか、誰にも縛られない自由と取るかは、サバルタン個人が持つ逞しさ次第。
 …って状況で、貧乏にも環境激変にもめげないしょげない魔王様の性根を、コミカルに描いてくる第2話でした。

 

 

 このタフなオモシロ男であれば、なにかやってくれるかも知れん。
 そう思える期待感と信頼を、何もかもが薄汚れ不穏な空気に満ち、それでもなお色んな連中が”生活”してる新宿のスケッチに重ねて高めてくれたの、大変良かったです。
 やっぱそういう前のめりかな感情が、作品の舞台やそこで活きるキャラクター、背景に透ける文脈にしっかり息づかないと、アニメ見てても面白くねぇからな!

 そんな魔王様を傍で支えるマキナも、かなりのオモシロ女であると解った所で、動画配信でワンチャンと方針は決まったッ!
 このまま四畳半での悪戦苦闘を楽しく描くか、”魔王”らしいハードアクションも織り交ぜてくるか。
 今後の話運びに期待を膨らませつつ、次回も楽しみ!