株式会社マジルミエ 第6話を見る。
コスメティックと災害レスキュー、水と油に思える”化粧品メーカーの魔法少女”の元で、零細にいては解らない新たな発見をカナちゃんが得ていく回である。
頼りがい満点華やぎ零点の越谷パイセンとは真逆の、二足歩行の広告塔・リリーさんを通じて、キャラクター視点でも世界観的にも新たな発見がある回となった。
業務を通じて地元の人に感謝されることはあっても、高知名度を活かして道行く人に話しかけられるような経験は、マジルミエにいたら無いからな…。
しばらく業界の底から見上げていた視点が、上から見下ろす感じに切り替わって、”魔法少女がいる世界”がより鮮明に見えた感じ。
地下駐車場にホウキ専用エリアがあったり、魔力を持つ少女だけが”魔法少女”になれた(ならざるを得なかった?)時代が終わって、産業と技術…あと魔法災害が一般化した時代の空気を吸えたのは、なかなかに面白かった。
やっぱこういう、仮想社会シュミレーターとしての面白さを食いたいんだよなぁ…。
本業にダイレクトに関わるわけじゃないし、業務実態としては真逆の危険と泥臭さがある”化粧品メーカーの魔法少女”だけども、どうも社長肝煎で駆動させてる感じがある。
ミヤコ堂なりの意地とヴィジョンをもって、華やかさを保ったまま災害業務に当たるハードな仕事を、わざわざ引き受けてる…のかな?
そうしなきゃいけない社会からのあこがれが、魔法少女に向けられている様子、リリー先輩がエレガントにそれを乗りこなしている様子は、平時の行いから強く感じられた。
怪異災害に負けない強さ、被害者の顔を見る優しさだけでなく、どんなピンチにも華やかであり続ける美しさまで要求されるの、”少女”特有のエグさでなかなか大変だなと思う。
ここを無視して、実用本位のレスキュー業として取り回せない圧力があればこそ、コスメ会社がわざわざ”魔法少女”やってるのかなとも思うが、それにしたってキツいよね。
花形たる栄誉、結構な高給で報いられなきゃ、続けられない業種なんだと思う。
リリー先輩は中途で魔法少女部署配属になった経歴なわけで、美を売る商売から急にレスキュー担当することになったのに、キッチリ強さと美しさを両立したまま仕事頑張ってて、本当に偉いと思う。
その全力の取り繕い方は、魔法少女業の本音な部分を担当する越谷パイセンとはまた違った形で、大変でもやりがいある仕事を照らしてくれる。
お買い物にお洋服にお化粧に、華やかな美しさで心を豊かにする化粧品メーカーとしての描写の後に、泥まみれホコリまみれ、半歩間違えばすぐさま死にかねない激ヤバ怪異戦に飛び込んでいく展開が、”魔法少女”が背負う矛盾を良く語っていた。
想定外の事態がバンッバン発生し、鉄火場でも慌てない腹の太さと、アクシデントに即座に対応できる頭の切れ、やばい状況を乗り切れる腕前を全部要求される、魔法少女のお仕事。
リリー先輩はミヤコ堂という会社…あるいは”魔法少女”が求められる美しい幻を維持したまま、そっちもおろそかにせず全力で頑張っている。
「こんなことまでしなきゃいけないの?」と思ってしまうハードさだが、まぁやんなきゃいけんのだ。
ここら辺、”少女”を業務名に冠する職業だからこその幻想の重たさ、美しい残酷さが滲んでいて、結構好きである。
幻想を維持してこその、花形ポジションだろうしね…。
こんだけハードコアな仕事っぷりを描かれると、成人女性が中途でコンバーション出来る、持続可能な”職業”に魔法少女がなる前…アマチュアの未成年が才能と気持ち一つで怪異に立ち向かっていた時代、どんだけ壮絶だったかも気にかかる。
ここら辺の時代をくぐり抜けた世代が多分、重本さんとか麻生さんとかなんだと思うけど、やっぱ個人的には彼らが今の彼らになる前の時代…”マジルミエ・ZERO”が面白そうなアニメだなと感じる。
折り返しまでこのペースで話が進んでいると、過去エピやる余裕はないかなーって感じではあるが、可能ならアニメで魔法少女が産業になる前の景色は見てみたいなぁ…。
ともあれカナちゃんがいるのはそんな未来であり、そこには人々の目に触れ社会に一因を為すからこその難しさが、確かにある。
化粧品メーカーが率先して売り出す美の幻想を、体現し保護する過酷な仕事をくぐり抜けるリリー先輩の勇姿を見ることで、社長が期待した通り、カナちゃんが学ぶものは多いだろう。
率先して魔法少女のイメージを背負う必要がない(する余力もない)零細企業とはいえ、トップランナーが守ってくれてるメンツにタダ乗りしてるだけじゃ、なんともダサいからな…。
美も余裕も一瞬で剥ぎ取られる過酷な災害現場で、なお華やかであり続けようとする矜持を前に、新人魔法少女が何を学び取るか。
計算通りには絶対いかない、想定外のアクシデントが必ず発生する怪異災害の厄介さも濃厚に描かれて、なかなかいい感じに盛り上がってきたと思います。
災害特有の一筋縄でいかなさを”怪異”に背負わせたのは、ドラマが二転三転して盛り上がる良い起爆剤になってて、魔法少女をレスキュー職と定義したのが効いてるなぁ、と思う。
人知を超えた災害なら、そらー予期せぬピンチばっかり頻発すんもんな。
それを超えていける個人の閃き、チームの強さも書ける題材で、なかなか面白い視点だと思います。
変異を果たした怪異災害を前に、魔法少女のエレガンスは何を為しうるのか。
次回も楽しみ!