魔法使いになれなかった女の子の話。 第9話を見る。
マ組転入か普通科いっぱなしか、少女たちの未来に関わる決断はなお担任不在!
やる気と才能に満ち溢れた奇人共が学園祭に向けて吹き上がる隣で、編入試験のためにシコシコ頑張る主役二人を追うエピソードである。
正月休みが終わって愉快な仲間たちも戻ってきたが、やっぱ彼らが奏じる陽気で前向きな空気は吸っていると気分が良く、このアニメの大きな魅力だと感じる。
そっから編入試験で主役を切り離して、せっかく美味しそうな学園祭準備にあんま深くカメラが入っていかないの、極めて”まほなれ”らしいもったいなさだな…。
俺はもっとあのトンチキ共がなんかしでかす様子や、ワイワイ頑張ってる様子や、そこにクラスメイトとしてユズちゃんやクルミちゃんが混ざってるを見たいよ…。




話としてはノーザン先生の熱烈アプローチを受けて、一度捨てたはずの夢に立ち戻るか否か主役たちが悩み、色んな人のエールを受けてイザ転入試験! という感じ。
なんだかんだいい子が多いのはこのアニメのすごく良いところだと思っているので、ユズちゃんとクルミちゃんの友達達がすげー素直に二人の未来を応援してくれる様子は、ホッコリと楽しめた。
リモーネがこんだけデカい感情をユズちゃんに持っているなら、クルミちゃんにぶつけてバチバチさせたら面白かったのに…と思うが、ここらへんは致命的な発火する前に、このアニメらしい物わかりの良さで収まった。
全体的にとにかくノーストレス、衝突も挫折も無理解も避けてマッタリ温かめな温度感で進んで行くこの物語において、すれ違いや思い込みは物語が発火する材料として選ばれることがない。
悪感情を作品内部に入れないことで、濁りのない飲みやすい物語を展開できているのは強みだが、それはキャラや関係性を深く掘り下げて、「この話は、こういう味がするんだ」つうのを視聴者に堪能させる機会を奪うことにもなりかねない。
社会的には落ちこぼれだし、学園からの扱いも相当ヒドい普通科の連中が、既に自分だけの揺るがぬ夢を手に入れ、そういう扱いに動じることのない強く賢い子どもとして描かれている様子にも、そんな手応えのなさが宿る。
どんな時でも陽気でハッピー、奇妙キテレツながらとにかく前向きに進んでいく普通科の連中は、頼もしくて元気だ。
だからこそ彼らがどういう影を背負っているか、個別に掘り下げたり主役たちとの衝突の中で煌めかせるような、古臭く雑音が多く…多分青春群像劇を描くうえでは未だ有効な描線を、このアニメは徹底的に避け続けている。
有象無象を話の舞台から追い出し、人数を絞ったことでスジも関係性も一気に深まった正月休みに、立ち会えなかったからこそリモーネは、ユズちゃんの”特別”がクルミちゃんに知らぬ間に奪われていたことに、コミカルな怒りを表出させる。
しかしそれは、話の真ん中で暴れる嵐にはならない。
「そういう何度も見た暗い感情のドラマ、もういいですから…」って話なのかもしれないが、こういう衝突や摩擦を避けた結果、クルミちゃんは極めてツルンと表情のない主役になってしまっているとも感じる。
あの子にどういう強さがあって、それが他人とどういう化学反応を起こして運命を変えうるのか、クライマックスが迫るこの段階でなお、クリティカルなモノがないのだ。
ここら辺のフックのなさは、ほんとに原則だけ教えてとっとと教壇を去っていったミナミ先生を、まるで人生の恩師のように扱うユズクルの様子にも感じる。
作中描かれているはずのものと、それを見て僕が感じるものの乖離だ。
こういうノれなさは、友達に励まされたり絆が出来たり、作品が提示しているイベントの内実を問うことなく、形式でそれっぽく飲み干せていれば、あんま気にならない部分なのかもしれない。
古代魔法と現代魔法の描写にも通じるのだが、この作品だけの独特な設定…そこに宿る魅力を力強く掘り下げ、描写を通じてキャンバスに叩きつけ、共感力のある表現に押し上げる力強さ(「アニメとしての野心」と言ってもいい)が、あまり感じられないのは多分、自分との相性が良くないポイントなのだろう。
アリモノのそれっぽさを連ねるのではなく、泥臭くとも自分だけの表現を積み上げていって欲しかった。
あるいはこの濁りのない軽さこそが作品独特の味であり、野心を込めて描くべき唯一性なのかもしれない。
確かに普通科の連中の底抜けな明るさと前向きさは結構好きで、しかしあくまでそれは副菜でしかなく、主役たちは彼らが自らの手で作り上げる祝祭から遠く、転入試験への備えを頑張り続ける。
僕が作品の魅力と感じるものは、あくまで本筋(と僕が受け取るもの)から切り離されたからこその善さであって、作品全体を牽引しうるポジションにないからこその、軽妙で気楽な魅力なのかもしれない。
ここら辺、サブキャラが話の真ん中に座って、ガッチリ掘り下げられる筆が凄く少ないので、作品内部での比較ができないのは惜しいかな?
そういう横幅の狭い作風の中で、「サウナで整って人生が見えた!」つう、極めて普通科的トンチキでもって、堂々転入試験通知を破り捨てたアニクくんの描写は、大変良かったと思う。
彼はユズちゃんやクルミちゃんが選び得なかった未来であり、魔法を諦めても、世間がくだらねーと笑おうとも、自分の意志で夢を追うことには意味があるのだと、別角度から照らせるキャラだ。
ここで彼も転入試験に挑んでたら、魔法に向き直ることのみが”正解”になってしまうわけで、なにやら意味深な危機が迫り、現代と古代の魔法の危うさが暴かれるっぽいクライマックスに向けて、かなり良いカウンターを当ててくれたと感じた。
長々意味深に物陰で微笑み、視聴者が知り得ない危機や真相を睨みつけてきた物語も、ミナミ先生監禁犯がノーザン先生だと明かされて、ちったぁ目鼻がついてきた。
こっからどういう強さと鋭さでもって、無邪気な主役たちの裏側で蠢く運命を描き、主役を成長させる大きな危機として使いこなせるかで、作品全体の面白さも決まってくるだろう。
来たるべき大ピンチで根性出してくれると、クルミちゃんの掴みどころのない無貌にも彼女なりの顔が刻まれ、それが作品全体の貌になってくれるかなという感じだが、さてはてどうなるか。
次回も楽しみである。