魔法使いになれなかった女の子の話。 第11話を見る。
緑川光声のトチ狂い教師が、ヤバマシーンがヤバくなるのに比例してトチ狂い力をガン上げし、ミナミ先生がそれにマッチアップする裏ッ側で、主人公たちは魔素の真実と向き合うのであった…つう、最終話一個前。
ラストバトルに付き従うポジションに為るなら、マジ研部長に名前くらい付けておいてやれよ…と思わなくもなかったが、意味深フェイスで蓋をし続けた裏設定がドバドバ溢れ出すクライマックスで、色々説明する役が必要だった…つう事なのだろう。
説明。
ことここに及んでなお、感情や物語のうねりを伴った”描写”ではなく、ボッ立ちでセリフを垂れ流す”説明”になってしまうのがこのアニメであり、最後の最後までそうなるしかないよなぁ…という不思議な納得がある。
今回怒涛の勢いで明かされた魔法独占も魔素の乱れも、毎回毎回毎回意味深なだけの微笑みを浮かべて、主役たちが話の中核に近づくチャンスを作らなかったアイツやソイツやコイツの仕業であるのは間違いなく、語るべきものを語らなかった結果として、クルミちゃん達が問題の渦中に当事者性を持って飛び込めない、なんかうわっついた情勢が表面上熱くなってる展開に取り残されることにもなる。
事態引き起こした張本人の感情が、主役たちに一切向いてないのはやっぱスゴイな…。
ミナミ先生が長いこと舞台裏に追放されていたので、ノーザン先生との因縁、感情の拗れが視聴者や主役に開示・共有されるタイミングがなく、こんだけヤバいことになってるのにあくまで部外者というか、行きずりで大災害に巻き込まれてしまったその他大勢感がでてしまっているのは、やはり問題かなと思う。
すんごい勢いでトチ狂っていくノーザン先生の異様なテンションと、テメーの独善と思い違いでヤバ計画が頓挫しかけてるのに、スゲーしらっと「打つ手ないわ!」と魔法手帳を見せてくる面の皮の厚さとかは、このアニメらしい独自の愉快さがあるんだがな…。
そこになんらか、体重乗ったリアクションブッ込める足場が、主役にない。
現代のクルミちゃんとユズちゃんにオーバーラップするように、冒頭回想される二人の魔女の過去。
そこにおいていかれたノーザン先生の感情が、拗れに拗れてヤバいことになっている…ようなんだが、それを切開し語ることが出来るミナミ先生は話の主役ではなく、作品の焦点は今まで通りボヤケ続ける。
現代魔法がどれだけ差別主義的かは、当のノーザン先生の立ち回りでまぁまぁ可視化出来ていたのだが、魔素環境への負荷とかの描写がないため、ゲキヤバ計画を止める理由や説得力がかけたまま、状況だけが加速し続けていく。
作品としてはミナミ先生から受け継いだ古代魔法の教えを、クルミちゃん達が背負って立ち向かう構図にまとめたいようだが、「ミナミ先生のお陰で!」とクルミちゃんが言う度、恩師がどんだけ色んなモンすっぽかし、後継者な二人以外の生徒を放置して来たかを思い出して、首を傾げてしまう。
学園というセッティング、教師と生徒という関係性を活かすには、ミナミ=スズキという人間はあまりに不誠実に見えてしまうキャラになっていて、そんな彼女との多くはない接触に心を寄せ、人生を導く答えを感じ取った主役たちの決断にも、素直には頷けない濁りが宿ってしまう形になっていた。
エリート主義的で環境負荷が高い…とされる現代魔法が、どんだけ良くないかを作中ちゃんと描写してくれていれば、その暴走を止める意義も分かりやすくなったとは思うのだが、のんびりほんわか穏やかなレットランという聖域が、そこら辺のシリアスさを描く妨げになっていた感じもある。
いやまぁ、あのポワポワした空気感は独自の魅力があってよいのだが、んじゃあその良さでトラブルを越えている使い方ができていたかと言うとそうでもなく、妙に真面目な主役二人もそういうおバカな魅力に染まりきってくれるわけではなく、せっかく生まれた作品独自の魅力を使い切れなかった感じが強い。
「あなた達全員に、魔法使いになってもらうわ!」と大見得きったわりに、大した授業も出来ず直系二人だけを継承者にして、ついに発現する古代魔法。
そこには僕が勝手に求めていたワクワクはあんまなくて、ネイチャリズムをハンパにかじった無貌の物語装置が、のっぺりピンチを越えていく手応えが上滑りする。
ここら辺は古代魔法の掘り下げ不足だけでなく、クルミちゃんがどういう人物なのか最後の最後まで解りきらない、キャラクターとドラマの弱さも効いているのだろう。
彼女にとって古代魔法がどんなモノで、古代魔法にとってクルミちゃんがどういう存在なのか。
クライマックスで暴れている要素を物語に着陸させるためのランディング・ギアが、上手く降りないまま胴体着陸(というほど、派手に破綻もしないまま静かに壊れている印象だけども)しているノレなさは、まー話運びと尺の使い方の必然ではあり、やっぱ意味深ボーイズが延々天丼してる場合じゃなかったな…という気持ちは強い。
魔法学園という魅力的な舞台を、魅力的にしてきた数多の作品が作り上げてきたそれっぽさにそのまま乗っかって、世界観的にもキャラクター的にも作品独自の魅力と野心を削り出す努力、届けるための工夫を怠った結果、なんかそれっぽい感じにトチ狂った悪役が大暴走し、学園全体を巻き込む大ピンチを、それっぽい雰囲気の合体魔法で乗り越えていく、このクライマックス。
ゲキヤバマシーンの大暴走っぷりを筆頭に、ヴィジュアル的には大変良いモノがありながら、それを活かして特別な力強さを与える物語の背骨が、軒並み借り物であったり中空であったりしたからこそ、「ふたりなら、きっとできる」特別な物語とは実際なんだったのか、首をひねりながらの決着を見送ることにもなる。
その遠巻きな寂しさには、このアニメを好きになりたくて見始め、それが上手く出来なかった自分へのやるせなさが多分に混ざっているのだろう。
一話で抱いた期待感の後始末、作品が用意している落とし所を見届けての、自分なりの決着。
それが欲しくて、僕は次回も見るだろう。
しかしことここに至って、逆転ホームランを期待するほど初心でもない。
僕が勝手に望んだものと、噛み合わず叶えてくれない作品であったと、一足早く結論を述べておく。