イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ぷにるはかわいいスライム:第12話『いい旅ぷに気分』感想ツイートまとめ

 二期が約束されとるんなら…アニオリで別離展開ブッ込んでもかまへんよなッ!?
 マンガ金持ちの恩恵に預かる、ホッコリバカンスイベントと思いきや、痛烈なクリフハンガーをぶっ込んで二期に続く、ぷにるアニメ”一期”最終話である。
 いやー…見てるアニメが軒並み、放送直後に「二期決定!」してて、嬉しいやら時代の変化を感じるやらだよ…。

 さておきお話としてはアリスちゃんのマンガ金持ちっぷりを最大限活用して、レギュラーメンバーがいい感じのリゾートで冬を楽しむ息抜き回…なんだが、アニオリで相当盛られて結構様相が変わっていた。
 ぷにるの可愛い修行がどうなるかは、まぁ二期の楽しみとしておこうッ!!

 

 幼年期のトラウマに足を引っ張られ、なかなか積極的には生きられないコタローがクラいモブ野郎であり、だからこそようやく出来た友達を結構大事に思っている様子は、ここまでも描かれた。
 アニオリでホネちゃん達とのキャッキャウフフ描写が盛られて、奇妙ながらも得難い友情がコタローを支えている様子がより鮮明になったわけだが、今回はぷにるを取り囲む女子サイドの描写が補強されていて、色んな人に見守られながら生きてる主役コンビの立ち位置が、最終話に照らされる回だったかなと思う。
 なにかとぷにコタの関係性に集中しがちな物語なので、ここで外側に広げていくのは妙手だな…。

 タイトルにある”かわいい”の意味を、過去に潜りつつ掘り下げしっかり描き直した前回で、物語全体としての総括は終わっている感じもある。
 では肩の力を抜いたバカンス回に何を刻み込み、二期までの休止期間を繋ぐかというと…性徴を迎えたコタローがぷにるを見つめる視線と、人造生命体であるがゆえに変化から縁遠いぷにるの思いの、甘酸っぱいすれ違いとなる。
 男の子チームと女の子チームに分かれ、悩める二人を賑やかながら優しく見守る様子を描くことで、その助言を素直に…素直すぎるぐらいダイレクトに受け止めてすぐさま前に進めるぷにると、聞き流して自分の物語を始められないコタローの対比が、プラットフォームに映える。

 

 「ぷにるちゃんを雑に扱うなよ!」というホネちゃんの助言は、まことぷにコタの核心をえぐっており、変わらないと信じたいけどどんどん変わっていってしまっている自分たちの関係を、それでも永遠だと思い込みたいが故のコタローの怠惰が、自分たちを再定義するチャンスを奪っている現状を鋭く照らしてもいた。
 コタローの変化を受けて、ペンギンから女の子へと形を変えたぷにる自身に、女という性への欲望や祈りはない。
 この形ならもっとコタローに、可愛いと言ってもらえると思ったから、ぷにるは女の子の形へと変じたわけで、「無性ゆえにどの風呂入っても大丈夫」つう認識は事実を正しく見抜いている。

 しかしそれでもこんなにワーワー騒ぐのは、形でしか無いはずの”女”が、”男”であるコタローとの間に壁を作ってしまう季節に二人が差し掛かっていて、しかし生物としてナチュラルな性徴ゆえにそういう意識が強くなったコタローに比べ、ぷにるには性への自発的な意思が欠けている、発育と性のギャップゆえである。
 実は相当にセクシャリティジェンダーを、無生物のホビーを主役に据えたゆえに、あるいは未成熟の幼子がヒロインであるがゆえに、話のど真ん中に据えたラブコメだってことを、一期最終回に改めて確認する構成である。

 どんな形だろうとぷにるはぷにるであり、その唯一性は揺るがず尊いものであるはずなのに、付随する形に揺さぶられ、実体がない世間の目に怯えて、コタローはあるがままのぷにるを視れない。
 前回クリスマスにおいては、迷い道の果てに自分たちの”今”に素直になれたわけだが、それはあくまで聖夜の奇跡、平凡な中学生にとって”性”とはなんとも乗り越えがたい難題であり、自分の中の真実への歩みを阻む鎖ともなる。
 コタローとぷにるが自分たちの中の/間にある真実にたどり着く道はなかなか遠く、だからこそ色んな人が楽しく優しく、彼らの道を支えてくれる様子は微笑ましくもありがたい。

 

 

 

 

画像は”ぷにるはかわいいスライム”第12話より引用

 「ゴージャスな季節イベントを唐突にぶっこみたいけど、リアリティを考えるとなかなかなぁ…」みてぇな、面白くねぇ思考をぶっ飛ばすアリスちゃんのマンガ金持ちっぷりに助けられて、コタロー達はホッコリ温か雪のリゾートを舞台に、リラックスした姿を見せる。
 女将姿のぷにるにドギマギしつつも、「かわいい」と思ってしまったら男の子である自分からぷにるは奪われてしまうと、過去のトラウマに囚われたコタローは「かわいくない」の壁を創る。
 人間の子どもが誰しも通る性徴と成長の迷い道は、生を受けて日も浅い、人と違った理で生きる人造生命体には、難しい道だ。

 コタローが作っちゃった、「可愛いも好きも素の自分も、他人の前では見せてはいけない」つう檻は、結構致命的に彼をモブの立場に閉じ込めている。
 世間に嘲笑われた痛みを避けて、自分を偽って傷つかぬよう前に出ない生き方が、いつの間にか染み付いてしまったコタロー。
 そんな彼が熱くダサくカッコよく、自分が大事に思えるもののためにガムシャラにぶつかっている様子を、実は世間は結構ちゃんと見ている様子も、このアニメは描写の中で積み重ねてきた。
 ホネちゃん達がコタローの本性を笑わず、むしろ「なんでバレバレなのに隠してんだろ?」くらいの距離感で向き合ってくれてるからこそ、コタローも秘密に怯えず油断する。

 

 コタローが作っちゃった、「可愛いも好きも素の自分も、他人の前では見せてはいけない」つう檻は、結構致命的に彼をモブの立場に閉じ込めている。
 世間に嘲笑われた痛みを避けて、自分を偽って傷つかぬよう前に出ない生き方が、いつの間にか染み付いてしまったコタロー。
 そんな彼が熱くダサくカッコよく、自分が大事に思えるもののためにガムシャラにぶつかっている様子を、実は世間は結構ちゃんと見ている様子も、このアニメは描写の中で積み重ねてきた。
 ホネちゃん達がコタローの本性を笑わず、むしろ「なんでバレバレなのに隠してんだろ?」くらいの距離感で向き合ってくれてるからこそ、コタローも秘密に怯えず油断する。

 思い出の中で泣きじゃくっていたこの子に、そうやって鎧を外せる友達が出来たのって、やっぱメチャクチャ良いことだし大事だなぁと、一期最終話に思った。
 気楽なHappyしかないこのバカンスは、だからこそコタローがたどり着いた居場所のあったかさを良く語ってくれてて、ここがあればこそどっか新しい場所へ踏み出し、鎧を脱いで「かわいい」に素直になれる未来を掴むのだと、未来に期待させてくれる。
 こういう手触りがあるエピソードで二期に続くのは、やっぱ良いなと思うのだ。

 

 そしてぷにるにとっても、自分を受け止めてくれる人たちの存在は大きい。
 つうかぷにるが縁を取り次いで、アリスちゃんときらら先輩が仲良くなってくのが良いんだよな…。
 威嚇にサバイバルナイフ抜いてくる宝大の、怪物的母性愛のヤバさを考えると、アリスちゃんの世界が狭く閉じたまんまなのはどう考えても良くないし、聖母という立場ゆえに等身大の自分を中々見せられないきらら先輩に、信奉者じゃなくて友達ができるのはめっちゃ良い。

 ここら辺、母性で一方的に抱き潰しているようでいて、偏見に縛られず何事にも素直なぷにるが先輩を受け止める形にもなってて、”ぷにきら”はかなり在る派です自分。
 そこにアリスちゃんも加わったとなりゃあ、ぷにるを支えるサークルもガッチリ堅牢ってもんよ。

 

 きらら先輩はイカれきった母性怪異にしておかないと、優しすぎ正しすぎてコロコロでレギュラー張れない、大変成熟した自我の持ち主である。
 ゲキヤバ要素ばっかり目立つけど、世に生を受けて日が浅いぷにるの感情に名前を付け、戸惑いに片手を引き両手で抱きしめ導いてあげる”大人”の仕事を、きらら先輩は立派にこなしている。
 そんなぷにるが魂を得た奇跡に、一度は嫉妬したアリスちゃんもまた、そこでの迷走を学びに変えて、自分だけの夢を掴み取るための努力に余念がない。
 己の物語の主役であるために、必要な対価をしっかり払っている先輩は、「可愛いって言ってもらいたい」つうぷにるの夢は、厳しくも優しく応援する。

 第4話からのアリス連作で、彼女が何を得たのか。
 ぷにるの幼く真っ直ぐな悩みをアリスちゃんが受け止める場面は、彼女なりの成長が感じられて、短くも印象的だった。
 きらら先輩の人間力は物語開始時からカンスト気味なので、作中の事件によって変化や成長を見せるってことはあんまないんだが、その分揺るがず安定した導きを見せてくれていて、こっちも頼もしい。
 そんな二人のエールを受けて、すぐさま行動できてしまえるのがぷにるの特長であり、強みであり、大暴走の危うさでもある。
 …幼くなくなってしまったコタローに、これが欠けているのは成長の必然でもあるんだろうな…。

 

 

 

 

画像は”ぷにるはかわいいスライム”第12話より引用

 日常へと帰還するコタローの列車に背を向けて、ぷにるは一人輝きの中へと進み出す。
 性への意識においてはコタローに置いてかれてる感じもあるぷにるが、夢のために自分を鍛え直す積極性においては、彼をホームに置き去りに勝手に飛び立っていくのが、彼らの差異を最終話に照らし直してて良い。
 ホネちゃんに釘を差されても、コタローはぷにるを適切に大事には出来ないし、止まって動かなくても永遠に今が続くと信じている。

 しかしきらら先輩の導きを受けて、ぷにるは今のままの自分では足りないのだと、勝手に思い込んで元気に突っ走る。
 突っ走ることが、出来てしまう。

 

 二期まで解決をぶっ飛ばした、パワフルな投げっぱなしギャグの中に、いつの間にか幼年期を終えて自分を降りの中に閉じ込めている少年と、何者にも囚われず自由な、奇跡のスライム生命体との差異が、確かにあるラストだったと思う。
 常識に囚われず、やることなすこと注目を集めれるセンスを持ったぷにるが、素直に他人のエールを受けて突っ走れる場所へ、嘲笑われた傷を抱え、それを”べき”の鎧で守ったコタローは進み出せない。
 ギャグ調でまとめられた離別は、来たるべき二期で平和に笑い事になるだろうけど、いつかシャレになんない分断が彼らを引き裂いていくかもしれない危うさは、微かながら確かにここに香っている。

 同時に臆病だからこそ不変の永遠を信じたくて、置いてけぼりの断絶を前に自分の物語を前に中々進められない、ありきたりで切実なコタローの足踏みは、とてもチャーミングだ。
 ぷにるのトモダチである以外に、なんら特別なものを持たないコタローには、誰にもあかせない”好き”がある。
 それが少しずつ、自分を大事に思ってくれる人たちの前に漏れ出している様子は、彼が本当の自分を見つけ、解き放つ歩みと重なってもいる。
 そこには気恥ずかしさや情欲のモヤモヤを越えて、女の形に引きずられつつ縛られず、一番大事なトモダチとの本当の繋がりを、捕まえ直す未来も含まれている。

 ”そこ”にたどり着いちまえば、ラブコメジュブナイルも終わるしか無い到達点は、まだまだ二人の先にある。
 足並みを揃えて自分たちのかけがえない真実を探る、華国で大事な旅に進み出す準備すら未だ終えていない、未成熟でチャーミングな二人の姿をアニオリで描いて、物語はまだまだ続く。
 この不定形な状態を愛でていたい気持ちもあるし、変化していく心と体に翻弄されつつ、それでも揺るがない答えをガッチリ掴み取り、結末にたどり着いて欲しい気もする。
 この魅力的なアンビバレンツに身悶えできるのは、やっぱこの物語が良いラブコメであり、青春活劇である証拠なのだろう。

 

 

 というわけでぷにるアニメ、無事一期が終了した。
 週刊コロコロから初のアニメ化、一体どんなモノになるかとハラハラ待っていたが、作品のチャーミングな元気さはそのままに、アニメ独自の表現や解釈を交えて、ぷにるの良いところを沢山味あわせてくれる、とても良いアニメ化だった。
 音楽や声優さんの演技、映像特有の演出の呼吸といった、アニメだからこその魅力をかなり頑張ってくれて、ただただ原作をトレースするだけで終わらず、その強さを何倍にも膨らませて叩きつける、嬉しい体験になったのはありがたい。
 大好きな原作の魅力を、新たに浴びることが出来て幸せでした。

 幼い奇跡、無生物ゆえの無垢、性と社会の檻。
 ありふれてちっぽけな、思春期の怯えと勇気。
 原作が描くものはどれも、僕が大事にして欲しいと思っているものをクリティカルに射抜いていおるがゆえに、あまりに前のめりに見すぎてしまう作品でもあります。
 そういうシリアスな地金の硬さを保ちつつ、ポップで元気なコロコロギャグとして、楽しくかわいい作品にまとめ上げてくれたのは、大変ありがたかった。

 

 この素晴らしい筆致を二期でも保って、ぷにるとコタロー…彼らを見守る愛すべき人たちの物語が、何処にたどり着くのかを見届けさせて欲しいと思います。
 お疲れ様でした、ありがとう。
 二期もとっても楽しみです!