イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

空色ユーティリティ:第3話『スペシャルなお仕事』感想ツイートまとめ

 ゆるふわ青春ゴルフアニメ、三話目にして湿度限界突破!
 ”六歳差”の断裂から生み出されるポテンシャルが、作品の新たな地平を切り開く、空色ユーティリティ第3話である。
 いやー…キタねぇ…。

 

 とはいうものの今まで積み上げてきた爽やかさが、”狙ってる”ヤラしさを巧く遠ざけて、学校を舞台にしないからこそ、高1-高3-大3という歳を超えた繋がりがゴルフから生まれていく特別な手触りが、上手く宿っていた。
 カラッと爽やかな遥お姉さんとは、ちょっと違った湿り気と頼りがいで美波にグイグイ近づき手を引いてくれる、彩花お姉さんの存在感を、初登場話数に刻み込んでくれた。
 良いよ…エンジンかかってきたよ…。
 真っ直ぐに青空を見上げる透明度はこの作品の大きな魅力だと思うので、ネタっぽく戯画化された感情と関係ではなく、サラリと自然な…しかし特別な思い入れがずっしり宿った距離感でもって、”三人目”が連れて来る新たな体験を描けていたのはとても良かったと思う。

 自分を特別にしてくれるかもしれないゴルフのために、初のアルバイトに勤しみ、本物のキラキラを目の前に気後れする。
 可愛らしい百面相でやる気十分、猪突猛進なだけじゃない美波の陰りも顕になって、キャラクターとドラマの立体感が増した感じがあった。
 思わず可愛がりたくなる、一生懸命な後輩力をしっかり書けているので、主役が構われるのに納得できるのも良い。

 恋のアプローチ大作戦を通じて、三人の実力が可視化されたのも良かった。
 上手い下手が分かりやすくなったつうより、そういうの越えて一緒にいられる、この作品が書こうとしてる”ゴルフ”の顔が、具体的なプレイを接写することで鮮明になった感じ。
 お下がりクラブでフルアーマーに武装し、色んな経験へお姉さんに手を引かれて飛び込んでいく中で、美波のゴルフも上手くなっていくだろう。
 競技性にガッツカないからこそ、そこに宿る純粋な喜び…あるいはゴルフやるだけで無心になれた時代が終わっていく寂しさみたいなものも、面白く描けるかなという期待もある。
 作品に埋め込まれた沢山の歯車が、ガッチリ噛み合い動き出す第三話でした。

 

 

 

 

画像は”空色ユーティリティ”第3話より引用

 というわけで前半戦、今日も美波ちゃんは百面相可愛い!
 遥お姉さんから拝領したゴルフセットで、特別になれたと舞い上がっていたのも一瞬、そこに刻まれた”金”の重さで押しつぶされ、初めてのアルバイトに一生懸命になる流れが、トンチキ主人公なりの誠実さを宿していて良かった。
 自分が何を譲られたのか、”特別”に舞い上がって見落としているように思えて、結構しっかり見据え高1なり返そうと頑張っているところが、大変可愛らしい。
 デフォルメを効果的に活用した分かり易い記号で押すと同時に、こういう魂の地金で主人公への好感度稼いでくれるのありがたい。

ヘンテコながら真っ直ぐな情熱を有する3コ下を、微笑みながら導き誘導する遥お姉さんが、美波を見守る視線も良い…。
 色々世話を焼きたくなる可愛げが自然に立ち上がっているので、クラブだのウェアだの、ゴルフに必要なツールを貧乏高校生が揃えていく歩みが自然で、趣味道進むための足場が整っていく手応えもあって良い。
 やっぱこういうお話では、ガジェットが揃っていく手応えってのはかなり大事だと思うので、そこにキャラ感の繋がり、経験者が初心者を大事にする手触り、何かと危なっかしい高1を見守る高3の視線が宿っているのは、凄く好きだ。
 俺はこのアニメを、”ゴルフ”が繋いだ疑似姉妹物語として見始めているッ!

 

 そこに飛び込むゴルフ系インフルエンサー、”長姉”星見彩花!
 初手から美波への好感度ブリバリで、超グイグイ来る押しの強さが、何もかも自然体でスルスル乗りこなす遥お姉さんと良い対比になっていて、「今夜はWお姉さんで末っ子可愛がりだな!」って気持ちになる。
 オトナの完璧さで全部飲み込むって感じじゃなく、腕前もJAPANジャージ着こなす遥ほどではなく、くだけたショボショボ感も程よく出してきて、大変いい感じの味付けである。
 後に描かれる立ち回りの上手さを見ると、ここら辺の隙は美波が恐縮しすぎないよう、意識して開けてんだろうなーって感じ。
 そこも…”姉”でいい…。

 ここまでド素人美波が流されるままゴルフやってきたこのお話、恋のアプローチ大作戦で具体的なプレイの巧拙が描かれたのは、かなり良かったと思う。
 どんだけ肩の力を抜いて楽しむにしても、客観的事実として”上手い下手”ってのはあるはずで、大事なのはその凸凹をどう均し、あるいは活かして、楽しくゴルフしていくか。
 朗らかに交流しながら、遥の指導を活かしてアプローチに挑む二人の姿は、そういう緩やかな競技性を可視化していたと思う。
 こういう角度から、「上手くなると、ゴルフはもっと楽しい!」に切り込んでいくアニメなんだなぁ…。

 一発ベタピンに寄せる遥の技量より、まだまだ修行中な彩花の方が社会全体への影響力、インフルエンサーとしての知名度は大きい。
 ここら辺の書き方も、「上手い下手」だけでゴルフを書こうとしない物語の姿勢を穏やかに告げてて、大変良かった。
 ここら辺、遥お姉さんが自分の上手さを押し付けてこず、極めてリラックスした姿勢で”人間”青羽美波(そして星見彩花)に接してくれてるおかげだな、と思う。
 競技性に汲々としていないので、ゴルフの技量で人間に値段つける理由がなくて、各々の経験や段階に応じて必要なだけ、自分の上手さを貸し出せる感じ。
 イヤな感じの摩擦をとにかく遠ざけて話を作り、透明度を上げようと頑張ってくれてるの、やっぱこのアニメの善さだな。

 

 

 

 

 

 

画像は”空色ユーティリティ”第3話より引用

 そんな感じで勝負に負けて、お姉さんの末っ子可愛がり社会体験大作戦に引き込まれていく主人公!
 普段(というか前半)はあんなにコミカル&チャーミングに、一生懸命自分だけの特別を追い求めて明るく騒いでいたのに、いざ六歳上のお姉さんが実際そういう輝きの真ん中にいるのを目の当たりにすると、ビビってドーナツも食べれなくなっちまう美波のREAL…大変いい。
 こういう性根だからこそ、高校デビューを契機に明るく生まれ変わりたいと願い、エンジン全開超空回りで頑張ってきたのだと解ると、もっと主役が好きになる。
 こうなっちまえば、アニメは”無敵”よ…。

 ど真ん中の感情演出を、ためらわずやり切るのはこのアニメのいいところだと思ってるけど、急に湿度計ぶっ壊れた明暗の交錯シーン、そういう強さぶん回してて最高だった。
 パキッと切り分けられた、光と闇の境界線。
 そこを超えていく強さは高校一年生のヒヨッコにはなくて、この陰りを彼女なり超えて六年先、自分にやりたいと思えることに飛び込んで祈りを現実に変えたオトナが、その手を引く。
 美波のクラさに、いかにも陽キャ…なフリをしていた彩花お姉さんが、しっとりした質感の共感と優しさで近づき、顔を寄せて(寄せすぎて)向き合ってくれるのが…嬉しいッ!
 俺は不器用に悩む年下に、膝曲げて向き合う年長が大好きッ!!

 

 彩花はこうして手を引く関係が、固定されないようにかなり心を配って立ち回っている。
 これから先ゴルフで繋がり、一緒に練習してコースを周る対等で心地よい関係が芽生えていくように、構えない距離感で楽しい思い出が美波の中に残るよう、気を使って力を抜いている。
 この心配りに美波が気づかぬよう、自然を装う微かな力み含めて、大学三年生が高校一年生に向き合う質感が細やかに描かれていて、大変良かったです。
 なるほどなぁ…この湿度と温度と間合いを切り取るところまで”潜れる”アニメなのか。
 こういう、作品のハラが見えるエピソードはやっぱありがたいわね。

 なんとなく流されノセられて、三つ上の彩花に状況の主導権を握られっぱなしなのかと思いきや、彩花お姉さんが大人びた距離から状況全体を俯瞰してたのも良かった。
 そこで一歩引いた立ち位置を選べるのは、新しく友達になった美波が新たな体験を楽しんで欲しいという願いと、それを成し遂げうる彩花への信頼あってこそだ。
 もしなにか良くないことが起こるなら、一歩前に出て状況を変える決意含めて、勝っても負けても自分のフィールドに引き込めるオトナのずるさを、彩花が備えていたと…それを遥がお見通しであると示すラストシーン、大変良かった。
 なーんも気づかない美波のイノセンスを、ふたりとも大事にしたいんだなぁ…。

 今回ピカピカな写真撮影に巻き込まれることで、美波が追い求める”特別”が具体化されて、それを前にして結構ビビっちゃう少女のREALと、それを超えて手を引く仲間の存在意義が顕になった。
 ここはゆるーい作品を牽引する大事なエンジンだと思うので、凄く印象的に描けて良かったと思う。
 一人でいたら影の中に立ち止まってしまう美波を、明るい場所へと連れていける”特別”を持っていると明かすことで、今回顔見世となった三人目の顔も、グッと鮮明になったしね。
 年齢と人生経験が生み出す、人格と関係のグラデーションがかなり美味しくて、今後もどんどんこの味わいで煮出してくれよ! と思わされた。

 

 

 というわけで、遂に揃った三人組!
 ドタバタ楽しいコメディも、シリアスな陰りと眩い光を描くための湿度も、色々こなせるユーティリティなアニメだということを、描ききって証明するエピソードでした。

 やっぱこういう、作品のハラワタにどんなパワーが詰まっているのか見せてくれる話数が来ると、めっちゃ嬉しくなるな…期待したくなるし、信頼したくなる。
 そういう心づもりを整えて、まだまだ出会ったばかりの三人の”ゴルフ”は続く。
 色んな楽しさと少しの苦さと、それを超えていける眩さに満ちた日常を今後も楽しく弾ませてくれると、この先の物語に期待したくなりました。
 次回も楽しみ!!