UniteUp! -Uni:Birth- 第2話を見る。
3ユニット群像劇という構造を早くも活かし、オラオラ系と思わせておいてめっちゃナイーブなダンス三人衆・LEGITへ掘り下げの刃が向かう回となった。
一期第3話で瑛士郎ちゃんと高尾クンがガチった場面で、作品のキモを掴み取れた手応えがあったので、今回そういうクリティカルな筆が風雅に向いてきたのは、大変嬉しい。
現役組最年長の一人として、若造達を受け止め導く便利な存在が、年食ってるのに一番遅れてると自信を欠き、微笑みの奥に修羅の顔を隠している姿に切り込んでくれたのは、キャラを役割に押し込めないフェアさにも繋がるしね。
俺は公平なアニメが、いつでも好きだ。
モノを活かし幾何学的な構図で感情と関係を見せてくる作りがバリバリにキレてて、「誰がコンテ切っとるか!」と思ってたら別所誠人監督で思わず笑ってしまった。
アニナナで美男子たちの拗れた感情を描きまくってきた彼は、明るく前向きなようでいてメチャクチャ内向的なこのお話にピッタリの選出で、作品の善さ(と僕が感じるもの)がゴリゴリ前に出てきてた。
抱えた思いをさらけ出せない遠さ、それを乗り越えて近づいていく気持ちを、情景に託して大胆に描こうとする筆の強さが、LEGITが新たな一歩を踏み出す難しさ、リリースバトルに挑む気構えを支えていたのは、今後の展開を補助する意味でも有効だと思う。
やっぱこー…「アイドルモノに良くあるイベント」をこなしてる時より、ツルンとしたイケメン顔の奥に複雑怪奇な心情を隠した連中が、記号を超えて自分のこと告げてくれてる時のほうが、このアニメだけの面白さが煮出されてる感じを受けるんだよな。
これはもちろん僕のフィクション受容体が、そういうジメジメ重たい栄養素に特化して好んでるって話なんだけども、そういうのにビリビリ響く画作りと話運びを、確かにやってくれる作品でもあると思っている。
なので未だ問題未解決、ようやっとLEGITが抱え込んだ病巣があらわになってきた所で次回に続いた今回は、めっちゃ好みだし客観的にも良かったと思います。
もー開幕からレイアウトバッキバキなんだけども、華やかな光に囲まれつつその真中に立つ楓雅だけが、暗い影の中に沈み込んでいる様子は、後の展開を見事に暗示していて素晴らしい。
前回明良くんが朗らか主人公に相応しく、迷いつつも全力で未来の扉を開けたのとは明らかに異なる、重たく暗い一歩。
ここら辺を開かずの扉に向き合う足先で表現する演出とか、心繋いだ運命の仲間なはずのREGITを曇りガラスの向こう側に伺う視線とか、全てが屈折してて重たい。
背景においたモノが喋りまくるこの感覚…やっぱビリビリ来やがるぜぇ…。
トドメにロッカーと鏡が作り出す縦の構図で、一期で魂のぶつかり合いを果たした二人が境界線を超えて隣り合っているのに対し、風雅は壁の向こう側に踏み込めない様子を明瞭に示してくる。
ここら辺の隔意の表現が分厚いからこそ、それを乗り越えるべくもがき、偶然出したクリティカルヒットに手応えを感じ、しかし結局何処にも行けていないと後戻りし迷う二十歳の鬱屈が、色濃く見ているものに届いてくる。
一期の印象では、何でもそつなくこなして余裕ある感じだった風雅がどんだけヤバいもん抱え込んでいるのか、開示と裏切りの心地よさもある展開だ。
いやー…爽やかお兄さんのドス黒いハラワタ見るトキほど、気持ちいいもんないわ。
合間合間にPROTOSTARのフレッシュ仲良しノンビリっぷりを挟んで、程よくガス抜きしつつも、年下のエースたちに後ろめたさを感じ続けている風雅の世界がどんなものか、伝える筆は重たく的確だ。
かなりREGITにリソース寄せつつ、他ユニットの様子も手際よくスケッチしてくれたことで、リリースバトル全体の雰囲気が見えてくるエピソードになったのは巧いなと思う。
ここら辺は一期から二年、育まれたファンへのサービスって側面もあるんだろうけど、テイストも得意分野も性格も異なる三ユニットがせめぎ合うからこそ面白い、作品の強さを表に出してきたなって感じ。
バトルといっても事務所の仲間、なんだかんだ手を差し伸べ懐に入ってくれるありがたさが、REGITとJAXX/JAXXの間を繋げている。
高尾くんと奏太兄さんがバスケコートで語らう場面は、ツンツン尖った高尾くんがまとった鎧の分厚さを、フェンスに覆われ柱に隔たれた遠景がまず教えてくる。
ちと的を外しつつも、悪気なく優しさ満開、高尾くんの抱えたボールを受け取る姿勢を見せた奏太に根負けして、鎧を脱いで相手を受けいる姿勢を向けた時、カメラはフェンスの内側に入り、ボールの受け渡しをする二人を切り取ってくる。
風雅にクローズアップする今回見えてくる危うさは、彼が他二人のように真っ直ぐ自分の気持ちを表に出せず、最年長のまとめ役という立場と、その癖表現者集団としての推進力は若い二人に頼り切り(だと思い込んでいる)負い目が、複雑に絡み合って生まれている。
この交錯したネジレを顕にし、ぶつかって解くことが今のREGITには必要なわけだが、そこに至るまでの道のりはかなり湿度高めに面倒くさくて、その味わいが良い。
お避け飲めるオトナになっちゃったからこそ、立場ってもんを勝手に感じ取る人の善さがあるからこそ、目の前にある壁を、貼り付けた微笑みの仮面を、中々壊せない。
め、めんどくせー東郷風雅!(歓喜)
今回極めて効果的な小道具として、ハタチを超えてる二人だけが飲める”酒”が活用されていた。
それは心の壁を壊し本音を吐き出させる助けになるはずなのに、そんなモノ飲んだ所で風雅を縛る鎖は解けない。
もっとなにか根本的なモノをぶち破らなきゃ、風雅は後ろめたさや手応えのなさを突破できないのに、それが何なのか…多分見えているからこそ飛び込めない。
この大人びた足踏みの仕方と、REGITと仲間に自分なり報いたいという、愛ゆえの焦りが濃く描かれていて、大変良かった。
一期は子どもサイドの描写が多かったので、こういうの新鮮だし補完的だなと感じるね。
高尾くんはツンデレだし瑛士郎ちゃんは真っ直ぐすぎてバカだしで、REGITは何かと衝突が多いユニットだ。
相互理解が難しい連中の間に立ち、バランスを取ってきた風雅は、掛け替えない仲間であり共に挑む戦友でもある。
…はずなんだが、そういう仕事じゃ自分がユニットに貢献できないと思ってしまうのが、風雅の面倒くさい所である。
もっとダイレクトに、REGITのクリエイティビティに関わる部分で貢献したいって気持ちが強いのかなー…。
ここら辺、書いては消ししてた自分の過去が関わってそうで、次回明かされるのが楽しみである。
ぜってーメンドクセーのが眠ってるぞ!(歓喜)
そうして高尾くんに追いついて夜の公園…境界線の描写が執拗で強い!
やっぱ一期で一回メイン貰って、迷って答え見つけてる男はちゃんと前に進んでいて、傷や痛みもひっくるめてしっかり目を向けたい思いも、そのためには気持ちを整える時間が必要なことも、そうやってムッツリ黙りこくっていたら周りに気を使わせてしまった事を謝る優しさも、既に兼ね備えている。
そういう年下のエースの成長から置いていかれている自分を思い知らされて、休憩所の格子を上から覗く構図は二人の間にある隔たりと、高尾くんだけが顔を真っ直ぐ見せてる様子を描く。
大急ぎで駆けつけた優しさは、既に自分の願いも進むべき道も見つけた高尾くんにはハマる答えじゃなかった。
形だけの思いやりを手渡すコーラの贈り物を、高尾くんは「欲しけりゃ獲りに行け」と告げるけど、自分では飲み干さない。
そういう不器用な形でしか自分の優しさを示せない高尾くんに、風雅は憧れと後ろめたさと、それだけで終わらないドス黒いものを多分感じていて、そんな自分にここで、ようやく気付かされたのだと思う。
ほじくり返せば痛みしかない過去を、見つめようとしない自分の弱さを覆い隠したまま、物わかりの良い年長者ッ面で微笑む貼り付けて、仲間に顔を向けてない現状も。
「画の強い年下二人と、縁の下の力持ちなオトナ一人。バランス取れて安定してんだから、それでいいじゃん」と流してしまいそうな風雅の現状の、奥に潜んでいる窮屈な束縛と、底から飛び出したいと願いつつ道が見えない無明を、今回の丹精で執拗な描線はしっかりなぞる。
風雅はかなり複雑な造形をしている…と、今回で理解ってくるキャラクターなんだけども、それを可能にしているのは物言わぬ情景に言葉にならないものを語らせる、豊かな演出のおかげだと思う。
大事だからこそ踏み込めず、挑んでみたいのに諦めてしまう。
複雑な矛盾を抱え込んで、オトナであることの鎖を自覚した風雅が一体、何を選ぶのか。
ようやっと秘めたる”獣”を一瞬むき出しにしたその顔が、鳴り響く鎖を引きちぎれない苛立ちが、一体何を生み出すのか。
急に突き出してきたコンセプト変更は、和を乱す手前勝手なワガママと、変革の機運を同時に宿している。
ここでもオトナの象徴である酒が画面に映り込み、年少二人と机の溝で隔たれてる構図が顔を出して、とにかくモチーフの扱いを徹底してんなーと感じた。
酒を飲んでも酔えないものが、楓雅の腹の奥にグツグツ煮立っていて、物わかりの良いオトナの顔を引っ剥がし、今更な提案を叩きつけてきた。
それは、良い兆しかと思う。
PROTOSTARのオコチャマたちには、セクシーな態度で煙に巻いたけど、鳴り響く携帯電話は捨て去りたいけど消えてくれない過去からの響きで、風雅を生々しく苛立たせている。
そこに踏み込まなきゃ道が見えない、置いてかれて自分の顔も作れないって現状を、夜の公園で分からされたのなら、まー足踏みしている場合じゃあない。
仮面引っ剥がし鎖引きちぎり、むき出しの自分へ一歩踏み出す時間なのだ。
……ここら辺のワイルドさに踏み出す足取り、全然REGIT的じゃない風雅が真実REGITになっていくための歩みでもあるんだろうねぇ。
東郷風雅が壁の向こう側に進むに当たって、何が問題で何処へ行きたいのか。
それを問う解決編に向けて、重厚かつ的確に彼を縛り付けるものを描いた、素晴らしいエピソードでした。
やっぱ好きだわ、別所監督の作り出す物語空間…。
次回も楽しみ!