UniteUp! -Uni:Birth- 第3話を見る。
心地よい陰湿さでREGITの物わかり担当を深みに引き込んだ前回を引き継ぎ、破天荒侠気俺様ユニット…に見えてクソボケメガネ以外は湿度高いトライアングルが、すれ違いと自己開示を経て対等な運命共同内になるまでを描く後編である。
元々ズレたまんま真っ直ぐな気質を持ち、一期でそこを突き抜けさせるエピソードも貰った瑛士郎くんを舳先に立てて、俺様ぶってるくせにナイーブな大毅と、ようやっとセクシーな仮面の奥に秘めた湿度を開放してきた風雅が、影を抜けて光の方へと進むまでを丁寧に積み上げた。
やっぱこういうナイーブな描き方してる時こそが、僕は好きになれるアニメだ。
前回メチャクチャ暗くて遠い場所に取り残されていた風雅が単独主役になると思いきや、ぶっきらぼうなクセにグジグジ思い悩むことの多い大毅くんにもしっかりカメラが当たって、思いの外湿り気強いREGITの現在地がよく見えた。
こんだけ後ろに引っ張られがちなメンバーが多いと、真っ直ぐすぎてズレてるアホバカメガネの存在は、一気に大事になってくる。
言葉足らずだと気づいたら、過剰かつズレた位置から自分の一大事をスライドで開示してくるの、ホント人生のアクセルをベタ踏みしか出来ない男である。
俺はそういう、真っ直ぐ過ぎるバカさに惹かれたんだよ、瑛士郎くん…。
というわけで今回は、メチャクチャ足が喋る回である。
個人的には”アイドルマスター シンデレラガールズ”の高雄統子を思い出す足の演出であったが、それは先に進むための器官であると同時に、立ち止まり停滞する部位でもある。
前に進んできたようでいて後ろ向きで、自分たちがどこから来たのか歩き直さなきゃ未来が見えてこない、矛盾に満ちた若者が、今どこにいてこれからどこに進むのか。
足先のクローズアップは、雄弁に彼らの心境と運命を語っていく。
ここら辺のモチーフに統一感があるの、好みの演出だなぁ…。
足元顧みないし足踏みもしない瑛士郎くんは、靴を描かれないのが今回のキモだと言える。
既に答えを見つけ、だからこそ世間や他人とズレて巧く伝わらない真っ直ぐ過ぎる男は、かつてその生き様で道を示した後輩たちに助けられ、心をつなげた同志にもっと言葉を尽くし自分を示さねばいけないと、進むべき未来をひと足早く見つける。
立ち止まらずゴールを先取りする彼は、悩んだり戻ったりする大毅と風雅と同じ場所には立っていなくて、だからこそ先に進んで手を引ける。
こういうREGITの三角形が鮮明なのは、ユニットエピとしてとても良いことだと思う。
面白いバランスで転がってるよなぁ彼ら…。
無論瑛士郎くんのぶっ飛んだアプローチは中々に伝わりにくく、謎掛けめいた誘いに二人は迷い、その寄り道が自分たちがどこから来たのか、どこへ行くのかを顕にもしていく。
急に二条瑛士郎人生プレゼン劇場始まって、ドン引き気味ながらバカの言いたいことも伝わって、大毅くんが最初に光の方へ進み出し、始まりのステージに上る。
瑛士郎くんの心根に嘘は一切ないし、真っ直ぐすぎてネジレてるだけで言ってることは正しいのだが、そのストレート一本槍な伝え方は、どんだけ自己開示しても本意が届かない。
ここでの翻訳作業を、まだ動けない風雅と同じように悩める感性をもった大毅くんがやってのけ、初めて後ろ向きボーヤは前を向く。
今回のお話は解ったつもりで言語化と自己開示を怠け、自分たちの原点がどこにあるか共有できてなかったユニットが、己を刷新するエピソードだ。
実はメッチャクチャ湿度高く後ろ向き、自分がここにいる資格があるのか疑い続けていた風雅が、物分かりよく作り上げてた仮面を引っ剥がし、自分をさらけ出すまでにはかなりの時間がかかる。
この難しさに、前回同様ほまれ兄さんが優しく寄り添っていたのは、瑛士郎くんが道を見つける手助けをPROTOSTARがやってたのと合わせて、このアニメらしい描き方だった。
数字で競い合うにしても同じ夢に集った仲間であり、ユニットの枠を超えて大事なものを手渡ししあえる。
そういう助けに支えられて前に進んでいく物語は、明暗の境界線も非常に明確だ。
同じ部屋にいるはずなのにめっちゃ濃い陰りを一人背負う楓雅が、大毅くんと合流して共に迷い、ようやっと瑛士郎くんの居場所…自分たちの原点であり未来を指し示す光を見つけた時、ずーっと暗かった画面に電車の明かりが通りがかる。
見つけた。
世界に光を灯すその言葉は、真っ直ぐすぎて何も分かんねぇアイドル総理大臣の真意と同時に、あの時既に光に出会っていた自分たちを、見つけ直したから発せられる。
デビュー後の栄光ではなく、何者でもなかったあの瞬間にこそ、暗闇を照らす光があるのだ。
この原点回帰は、REGITが持ってる荒々しい王道感にガッチリハマっていて、中々良い話運びだったと思う。
「なかなか言葉で自分を伝えない男たちが、己の在り方を曝け出す勇気を手に入れて歩み寄ることこそ、チームに必要だった」という決着も好みである。
ここら辺、”漢”を売りにしているラフ&タフなユニットだからこそ掴みにくい美質であり、そのクセ湿った”女々しさ”をこそ魂の根っこに置いてる連中が、ちゃんと向き合わなきゃいけない根源だからね。
あ、瑛士郎くんは座っててね…キミは本当に、立ち止まらないし振り返らない生粋の侠気人間だから。
そのくせ、ケア意識ブッチギリで高いところが良いんだわ。
瑛士郎くんがアイドル総理大臣目指した経緯も、過剰なくらい鮮明に描かれたわけだけど、”総理大臣”と聴いて頭に浮かぶ権力志向とか他人の上に立ちたい欲望とか全部置いてけぼり、影響力を正しく行使して苦しくない人がより多くなることしか考えてない、生粋の善良バカだったのが、彼のファンとしては大変嬉しい。
思わず疑いたくなるほどに真っ直ぐ、かつての自分が差し伸べてもらったように優しく強く、誰かの手を取って一緒に進むことしか考えていないこの子が、適切に自分の気持ちを伝える言葉を手に入れてしまったら、まぁ”無敵”が過ぎるので、現状のトンチキ加減で丁度いいのかなぁ…とも思った。
…ちょっとトンチキ過ぎるか…。
風雅の後ろ向きな湿り気も前回以上にブン回り、選ばれた理由を明瞭に告げてもらえなきゃ自信を持って前に進めない”女々しさ”を、ようやっと仲間と僕らに開示してくれた。
こういう男が事務所のエロ担当ッ面で、大人な態度に本性隠して頑張ってたってところにビビッと来るわけで、進みたいけど進めず、光を求めても影に沈んでしまうままならなさを丁寧に積み上げながら、キャラクターの深いところを書いてくれたのは嬉しい。
一期ですでに片鱗を魅せていたものの、想定してたよりナイーブな大毅くんの素顔も、一緒に書いてくれてよかったな。
やっぱある程度湿度が噛み合わないと、横並びで同じ感情を共有するのは難しい。
とっとと光に満ちた”答え”にたどり着いて、ヒントも出さず待ちぼうけしてた瑛士郎くんじゃあ、自分たちの思い出を一歩一歩拾い集めてからじゃなきゃ進めない、べとついた歩みには並び立てない。
でも瑛士郎くんがさっさとたどり着くべきに立って、光で進むべき道を示してくれなきゃ、REGITは迷ったまま空中分解していただろう。
そういう凸凹をなんとか噛み合わせながら、もっと自分らしくあるために、過去に戻って未来を掴む。
REGITはそういう事ができる連中なんだなと解るエピソードで、大変良かったです。
前後編どっしり時間を使って描いたことが、作品の強みである湿った詩情と噛み合ってたね。
思わず影に飲まれる暗さバリバリの連中なのに、「これが俺達だ!」とファンに示すステージはワイルドな男っぽさに満ちていて、その相反がツッパる少年達の可愛さに満ちてもいた。
あのステージで結晶化しているものはある種の大嘘ではあるんだが、そうでありたいとREGIT全員が願った夢でもあって、そういう虚実のあわいの中、柔らかで大事なものを手渡し包みこんでくれるのが”アイドル”でもあって。
ここら辺、瑛士郎くんがなんでアイドルに惹かれたかと響いてもいて、REGIT飛び超えて作品全体のアイドル観が示された感じもあった。
残りのユニットを掘り下げていく旅路に、今回描かれたものが生きると、より面白いと思う。
というわけでオラついたフリしてる男たちの、ナイーブな旅路後編でした。
やっぱ僕はこの難渋で詩的な表現でもって、”アイドル”を目指す有象無象の内面に潜り、過去を探って未来へ進み出す描き方がとても好きで、今後もこんくらいの温度感でエピソード積み上げてくれると嬉しい。
ユニット個別エピをこんくらいの深度と湿度で踏み込んでいくよと、テストケースを見せる意味でも、大変良い仕上がりだったと思います。
こっからどういう形で物語を転がしていって、一期よりちょっと頼もしくなった…あるいは覆い隠していた弱さを開示してくれるようになった男の子たちの、放つ光を描くのか。
次回も楽しみ!