背中合わせの愛と青春…俺たち一体どこへ行く!
謎の転校生来襲以来どんっどん狂って地金が出てきている、アクエリオンMoE第7話である。
正直世間のウケはあんま良くないだろうけど、俺はどんどん好きになっていってるぜ…。
つーわけでサンくんが巻き起こす不思議事変に引っ張られて、サッコもハナちゃんも様子がおかしくなっていっとるが、それはぶっ壊れた自分に素直になって真実を見つけてる途中でもあるような、なかなか奇妙な味わいのお話。
生徒がガンガン消えるのも、明らかヤバい人たちが街に増えていくのも、元々狂っていた世界がようやく素顔を見せてくれた感じで、不思議に安心するんだよな…。
モモヒメとサヨちゃんへの想いに引っ張られる形で、サンくんに突っかかり本当の気持ちに気付かされてしまったサッコもおもしれーけど、バカにするべき端役だと思ってたカミサマに背中を押され、自分の生きざまを貫いて世界をピンチに陥れるハナちゃんも、ブレーキぶっ壊れてて良かった。
愛した存在を殺すしか無い異端者ならば、当然愛してもいない相手は殺せないわけで、こういう形でロボアニメ三大ダルい展開『殺しの現場に顔出してるのに、殺せませんとか言い出す』を叩きつけてきたのは、大変ユカイな変化球だった。
まぁお陰で世界改変まで杭打ちあと一本だが、いざとなったら死ぬだけよ!
気持ち一つでロボが動かなくなり、世界が救えなくなるMoEは、道理や責務や常識よりも個人の思いこそが大事な場所であり、サッコが招集に応じなかったのも、ハナちゃんが敵を見逃したのも、何がどうなろうと自分の気持ちに従う”正義”に、素直に生きることにした結果といえる。
その超感情主義が正しいかどうかは、学園の外に広がる常識の足場…”社会”ってのがどういうものかで決まってくるわけだが、このお話は(古典的陰鬱ロボジュブナイルの文脈にも則り)広範で客観的な社会なぞ、あんま書く気がない。
売り飛ばされされ囲われてきた救世主候補、不穏な居心地の悪さを残した日常、押し付けられるままにこなす救世主業務。
何もかもがしっくりこない不安定をここまで積み上げてきたからこそ、それを蹴り飛ばす主役たちの叛逆が、不思議な気持ちよさを伴ってぶっ刺さるわけだが。
この世界規模の反抗期の果てに何が生まれてくるかは、正直全然見えてない状況でもあり、このワケのわからなさが残り半分の物語で、なんらか目鼻を付けて走りきれるか、判断つききらない感じではある。
まーヤバい10代がヤバい状況の中、自分で満足できる結末を探り当てるまでやってくれれば、自分的には満足なんだけども。
世界の謎や裏設定の方に軸足を置かれると、そこら辺のドラマを置き去りにされそうで怖くもある。
元気でチャーミングなぶっ壊れ方を前回暴れさせ、人間味のない子なのかなぁ…と思ってたハナちゃんが、まさかのカミサマと縁を結び、自分が自分でいるために大事なことを掴み取って一歩踏み出す展開は、想定外で面白かった。
モモヒメがそういう仕事を果たすとばかり思っていたので、陰謀論に脳髄染められたイカレ人間が背中押すとは思っていなかったが、思い上がった選民主義がプンプン臭う学園の外から、意外な一撃がぶっ飛んでくると、これがなかなか気持ちいい。
あのイカれた世界にも自分だけの物語を生きてる人たちがたくさんいて、そういう人の意思全部無視して、世界の命運エレメントが握り込んでる状態だもんな…。
狂った世界においては、狂人こそが賢者なわけで、カミサマがほざいている寝言は全部、世界の真実を言い当てている。
そのイカれた背景をあまりに当然と飲み込んできた連中に、引っ張られてその異質性に気づかなくなってた自分に、新鮮に驚き何かを見つけようとするハナちゃんの動きで、改めて気付かされた感じもあった。
こういう、気づけば作品に根付いてしまっていた”常識”を揺さぶる仕事は新キャラにしか出来ないわけで、サンくん共々テコ入れいい感じに効いているな、と思う。
ハナちゃんピュアなので、何かに驚き気付いていく立ち回りが可愛くて、たとえ世界がぶっ壊れようが好きに突き進めと、応援したくなんだよな…。




というわけで薄汚れた狂人が救世主の導師となり、まーた凶器振りかざしてきた輩を地面に打ち据え、イカれた鮮紅の空間で自分の心に潜り、愛なくしては殺せないと仇敵を見逃す、構成要素の全てがイカれているアニメである。
こうして並べると本当に何もかもが歪んで狂っていて、しかし作中人物たちはなんでもない風に低体温に状況を進めていて、だからこそサッコやハナちゃんが自分だけの答えを見つけて、感情に素直に動く様子が気持ちいい。
正気と狂気の狭間を彷徨いながら、本当に信じられるものを捕まえる…と書くとなんか教導的に聞こえるが。
このお話は可愛らしい絵柄の奥に、マジでブレーキぶっ壊してどこまでも突っ走ってくれそうな”本気”を時折感じられるので、物わかりの良い結論なんぞに落ち着いてほしくないなと思う。
どんっどん正気を欠いていく学園の風景、よりにもよって主人公がいの一番にヤバ転校生に染め上げられる展開、一番倫理的に思えるのが愛と殺意が直結したシリアルキラー。
色んなモノが逆立ちを始めていて、しかしその転倒の先にこそこのお話だからこその味が滲み出してもいて、僕としてはこのままガンガン、行くところまで行って欲しい気持ちである。
この急転は前半、息苦しい不協和音で日常を満たせばこそなので、鬱屈が面白い効き方してきたね。
先週ハナちゃんがモモヒメ先輩にモノホンの殺意≒愛をブッコンできて、その勢いとスピード感にかなりユカイな気持ちになってきたわけだが、狂気の度合いを増していく世界の中で今週も物騒な襲撃が発生してて、のっぺりした作品に唐突な”暴”が混ざっても来た。
カミサマが本当のことを言っていると考えると、あの連中は異世界勢力の手先ではあって、エレメントが勝ちきってないことであっちの侵食が始まり、家族をぶっ壊されたオヤジがキレて襲いかかってきた…つう話なんだろうか。
こういう泥臭い悲惨さは、のっぺり清潔な学園の描写に多分ずっとあって、戦いに勝ちきれていないことでようやく、主役側に染み出してきたのだろう。
主役とは関係ないところで広がり転がる”社会”てのと、極めて接点薄く作られている作品ではあるが、しかしそれは”社会”の不在を意味するわけじゃない。
電波渦巻く超前世系オカルトをブン回していようが、家族狂わされてマジモンの絶望に叩き落され、バット手に取るしか無くなったオヤジは、たしかにそこにいるのだ。
そういう存在を今後、どんくらいの濃度で拾い上げていくのかは、一応とはいえ”救世主”なエレメントのお話に、結構大事なんじゃないかなと思う。
ぶっ壊れてるのが前提条件だけあって、ホント他人に興味ないからな、エレメントたち…。
遠くにいる顔の見えない誰かへ思考を伸ばすためには、近くにいる名前を知ってる誰かをちゃんと知ることから始めなければいけない。
己の心に潜り、自分の中でうずいているものが、サンくんへの”好き”なのかもしれないと向き合い始めたサッコにしても、無貌の怪物を”人間”として認識し、ぶっ壊れた殺愛感覚でその始末を拒絶したハナちゃんにしても、冷たい無関心を超えてちょっとずつ、自分の外側に関心を広げていった感じがあった。
ここら辺、表面上社会性を取り繕えてるモモヒメやリミヤが舳先に立たないの、面白い配役だなぁと思う。
そういう小器用さが、このお話が描く他人と繋がる意味じゃないんだろうね。
モモヒメがサンくんに惹かれる…あるいは狂わされる感情は、恋ではないと彼女は言う。
インパクト抜群なラストの告白も、サッコがサンくんに恋愛してるという意味ではない…かもしれないし、別に恋でも良いなぁ、と思う。
リミヤはすっかり”モモヒメ姉さま”だし、ハナちゃんは愛した相手殺しちゃうし、世間一般で”ノーマル”とされている恋愛や性別を、持ち込んでどうにかなる話じゃない気がする。
そもそもが濃厚なオカルト電波に浸されて歪んだ物語だし、前世はバリバリ顔出して因果関係は歪むし、今更同性愛がどーのこーので騒ぐのも、的外してる感じあるんだよな…。
サンくんが展開した赤い迷宮の中では、サッコは高所から落下しても苦痛の色を見せない冷感を収めて、かなり素直に感情を出しているように描かれていた。
”調律”とか言い出したときは「やっぱラーゼフォンじゃないか! 神林長平にノベライズを頼もう!!」とか思ったが、世の中狂わせまくってるように思えるサンくんの行動は、元から狂っていた世界や人間に、本来の形を取り戻させる、ある種の治療行為にも思えてくる。
自分の狂ったところを合体の悦楽で埋めていくのか、ヤバ転校生のオカルト調律で調整していくのか、どっちにしてもイカれた手法しか用意されてないの、いい塩梅にヤバくて最高。
これで足利峠にも杭が打ち込まれ、世界守護の戦いは現生人類不利となったが、救世主にあるまじき利敵行為をブッコンだハナちゃんを、仲間と世界は一体どうするのか。
ここら辺の応対で、いまいち世界を救う戦いの意味が不鮮明なこのお話に、もう一つ芯が入る感じもある。
ぶっちゃけ、めっちゃ押し付けられ流されたまんま救世バトルやり続けとるからな…改めてその意味や価値を問いただしてくれると、見やすくなってありがたい。
取り澄ました正気を手放すほどに、キャラも作品も自分らしさを掴んでいく作風だと思うので、今後もガンガンGo mad、行く所まで行って欲しいもんです。
次回も楽しみ!