帰るべき原点を持たない少年たちが、たどり着いた星の高み。
UniteUp! -Uni:Birth- 第9話を見る。
ドキュメンタリー風にここまでのリリースバトルを振り返り、PROTOSTARが自分たちの答えとして選んだステージを描き、その結果訪れた決着を切り取り、その先へと続いていく景色を浮かび上がらせていく。
1話の中で結構色んなことが起きているが、そのどれもがこのアニメらしい異質性に満ちていて、そこが好きな自分としてはとても面白いエピソードだった。
特に結果発表フェイズの長い長い無音が本当に凄くて、二期が追いかけてきた”答え”が出る瞬間を、こういう形で描くんだなぁと驚愕した。
知名度足りてないと明言されてたド新人ユニットが、後出しでかっぱぐ展開に関しては…結構難しいな。
話数を使って地道に悩み、土の匂いがするローカルな努力に向き合ったPROTOSTARの姿は、両エピソードの仕上がりが大変良かったのと合わせて、勝つだけの説得力(というか好感度)はあったと思う。
歌い手時代のファンに届いたからこそ、あと一歩を詰め切って勝ちをもぎ取ったというロジックも、スタート地点に置き忘れていた宝物を二期終幕のまえにちゃんと拾った感じがあり、大変良かった。
振り返るべき”後ろ”が少なく、前を見続けてきた姿勢は、とても無垢な三人らしいアイドル活動だったとも感じる。
同時にREGITやJAXX/JAXXが、自分たちなりの歴史を刻んでいたからこそ悩みたどり着いた場所も、同じように素敵だった。
そこから生まれる表現としては、正直先輩グループのほうが(それを生み出す過程の懊悩も含め)圧力を感じていて、特にJAXX/JAXXのステージはモチーフ選択と横浜という土地がしっかり噛み合い、今の自分達を誰より強く表現できていたと感じた。
ここら辺は、俺がmasaさんの声が持ってる説得力に相当痺れてて、「勝てる歌」として一番納得してる部分が大きいかもしれない。
ボーカルワントップ、残りは演奏で聞かせるバンド編成が好み…てのもあるか。
二期は一期でライトを当て損なったキャラとか、当てられたキャラの成長なんかを上手く活かしつつ、すでに多くのファンを獲得しているアーティストがどう、その視線と熱量に報いるかという、報恩の構図が強く出ていたと思う。
コレは心地よく競いつつもあくまで”身内”でぶつかり合う、外部に敵を作らない構成が許してくれた、ある種の甘さでもあるんだろうけど。
そんな内向きの引力が内省的な作風と噛み合って、じっくり考えた上でステージを作り、ファンと自分の答えとする方向に、爽やかに駆け抜けていった。
その終幕が、「みんな勝ってほしかったな…」になるのは、結構成功なのかもしれない。
同時に衝突しても結局は事務所の内側、仲間の懐に戻ってこれてしまう外部性の薄さが、ある種のベタつきを生み出していたのもまた事実だろう。
地道なドサ回りに精を出し、ヒネクレたお祭りおじさんをヒロインに1エピソードやりきったPROTOSTARが勝つのは、そういう”Unite upらしさ”から上手く逸脱した(逸脱するしか道がなかった)からなのかもしれない。
縁もゆかりもなく、ツラも別によくないしメインターゲットでもない。
老人や子供、普通のオッサンやオバサンと触れ合い、支持を集めていく新しい星たちの姿は、なんか新しいことが始まりそうな手触りが確かにあって、それが決め手になったのなら納得ではある。
どっちにしても、3ユニットそれぞれの形で陰気にしっかり悩み、重たい感情を重ね合って自分たちだけの答えをしっかり出したという、話数使っただけはある手応えを、最後に感じ取れるユニットバトル決着だった。
俺は表現者がしっかり何かを作ろうと足掻き、真剣だからこそ思い悩んでいる姿、そうして世界に飛び出したものが誰かに響く様子が好きなので、ユニットバトル…というより自分たちのステージづくりを真ん中に据えた二期は、凄く良かった。
そうして出た勝敗が皆に響く様子も、じんわりたどり着いた高みが染みてくる姿も、PROTOSTARとこの作品らしい清涼感があって、とても好きだ。
こっから必死に頑張った先輩たちの魂背負って、最高のフィナーレを描き切る責任がPROTOSTARに宿るわけだが、次回の合宿やそっからの努力・協力を上手く描いて、幸せな結末をやりきってほしいなぁと思う。
一番でかい仕事を一番の若造に任せる形になって、なんもかんも解ってないピュアピュアな彼らが、経験を積み上げ今を過去にしていく歩みで終わるの、凄く良いと思うんだ。
そういう思い出の地層があればこそ、色々難しいし力強く飛べた、先輩たちの姿を見てもいるしね。
こういうユニット間の差異と共鳴を、じんわり積み上げる意味でも、二期の腰が落ち着いた話運びは好きだね。
というわけでAパートは決戦直前ドキュメンタリーと、星の子どもたちが作り上げたステージを描く。
かなり力の入った劇中劇に、「やっぱデカいよなぁsMiLeaプロ…」と思ったりもしたが。
意味深に刻み込まれていたモチーフ選択からして、星がキーになるのは読めてはいたけど、それを感動路線よりポップでチャーミングな、最年少ユニットだからこそのステージにまとめ上げてきたのは、意外で可愛くて面白かった。
やっぱこういう、表現への驚きを感じ取れるところが、二期の好きな部分だ。
ドキュメンタリーの中でも、決戦に向かう直前でも、PROTOSTARが気取らず構えず自然体、ただナチュラルに誠実で清潔だったのが、凄く良かった。
彼らの圧倒的ないい子感って、半歩間違えると凄く嘘っぽくなる要素だと思うけど、裏表なくとにかく真っ直ぐ、あの子たちは善良であり続けている。
他のキャラも真っ直ぐではあるのだが、経験を積めばこその屈折やら重たい感情やらを背負ってもいて、どうしてもこの初心な透明度は出てこない。
あるいはキャリアを積み上げ、未知が既知に変わっていく中で、PROTOSTARからも失われてしまうかもしれない、一瞬のイノセンス。
その匂いをどう掻き立てるかは、結構気を配って演出されてきたアニメだと感じているので、地域の温もりと向き合い続けた戦い方も、どんな大舞台でも極めて実直な姿勢も、それを貫き補強してくれたと思う。
そういう子達があのチャーミングな舞台を、自分たちが歩いたバトルの”答え”として選ぶのは、意外だけどこれ以上ない正解ではあって。
REGITやJAXX/JAXXに負けない、同じ色に染まりもしない、ここまで彼ららしく歩いてきた、PROTOSTARだけの星だったと思う。
この輝きを見て、返信がないコメント欄に病んだメッセージ出してた亡霊たちも、救われたんだろうなぁ…。
うっかり”亡霊”とかいう、揶揄を込めた表現を選んでしまったけど、結果としてアイドル一番星になったことで置き去りにしてしまった人たちを、一人も見捨てず寄り添いたいと願ったから、PROTOSTARは歌い手時代に立ち返る道を進んだ。
彼らの中で、旧時代を懐かしむファンは活きていたわけだ。
ここら辺、ともすれば時代に見捨てられかねない地方へと赴き、額に汗し土にまみれて誠実に働いてきた足取りと、重なる道なのだろう。
こういう諦観を超えて、ひたすら実直に進み続けるひたむきさこそが、PROTOSTARの原点であり強みだと、気づくための歩みだったわけだ。
良いね。
凄く良い。
というわけでここまでの物語を美しい情景の中無言で振り返り、喋らぬセリフを全て見ているものがすくい上げてくれると信頼した、豊かな沈黙がリリースバトルの決着を告げていく。
いやー凄い…この演出を選び取るのには、相当な覚悟が行ったと思う。
あの中華料理屋とかあの公園とか、今までの物語で大きな意味を締めてきた場所が全部出てくると、やっぱ溢れてくる感慨が凄いな…。
そこで何を喋っているのか、描かないことで聞かせる不親切…好きだ。
あ、かっちゃんがデカ目にフィーチャーされてて、大満足でした(レアなかつあき推しの意見)
クソデカい事務所に選ばれ推されてたけど、PROTOSTARここまでの歩みはやっぱ”修行時代”で。
大毅くんという頼れる先輩に助けられつつ、学生やってアイドルやって、当たり前の日常の当たり前の風景を大事に積み上げてきた物語は、今回の勝利で結構色合いが変わるんだと思う。
そんな青春の一幕、最後に全部思い出せる演出をしっかり入れてくれたのは、俺としては凄くありがたかった。
白面の美少年たちだけじゃなく、銭湯に集うジイさんとか、中華料理屋のオヤジとか、日舞の師匠とか、色んな年の人達が明良くん達の歩みに関わっているの、やっぱ好きなんだよな…。
この公平さ故に、いまいちウケが悪い感じもあるがな!
あと敗者の涙と黄昏を無音で流し、彼らのプライドを極力守る形にしたのと、そういう苦みを振りちぎって勝者を称える大毅くんを書いてくれたのは、大変良かった。
俺マジ、かっちゃんと明良くんと大毅くんが同じ教室にいて、”生徒”やってる姿見るの好きだから…。
事務所の外側にもちゃんと居場所があって、アイドルだけじゃない現在があって、でもこっから全身”アイドル”になっていく明良くんのイノセントな日々を描くのに、そういう時間を超えたからこそ頼れる大毅くんが隣り合ってくれてたの、ホントありがたくて。
そんな彼が大嫌いなはずの”負け”を、晴れやかな顔で受け止めれる誇り高い男だと教えてくれて、何より嬉しい。
もう番台に立たないだろう明良くんの幻を、お母さんが一瞬見つめる場面に一番象徴的だけど、バズっちゃったPROTOSTARはここまでの修行時代に、もう戻ってこない。
今回の勝ちにつながった(と俺は思ってる)真っ直ぐさも、失われないけど時の流れの中で形を変えて、今の輝きとは違っていくだろう。
でもそういうことを繰り返しながら、変わらないもの、変えてはいけないものを幾度も取り戻して、進んでいくことも今回の旅で学んだ。
だからここから進む、もう”アイドル”以外の何物でもない明良くん達は、一つの季節が終わればこそ始まっていくのだと思う。
そこに漂う郷愁と哀惜が、いい色合いで滲む回だった。
自分たちが大きな勝負に勝って、その波紋が広く世界に響いている実感を、子どもたちはなかなか得れない。
この勝利の手応えを、ジジババ子どもに自分たちの星がぶっ刺さってる様子を目の当たりにして、ジワジワ感じ取っていく描写も大変良かった。
美少年に一番食いつく想定客層で留まらず、全世界あらゆる年齢性別の人間に自分たちの歌を届けようとするスケールのデカさは、主役のあるべき姿として相当好きなんだよな…。
作品世界に刻み込まれる”人間”の横幅は、このアニメ特有の野心であり強みだと、僕は勝手に思っている。
自分たちが確かに何かを成し遂げたのだと、実感して真っ先に万里くんが泣くのも、千紘くんが釣られて涙を浮かべるのも、明良くんはずーっと笑っているのも、今までの彼らの在り方を思い出せて、大変良かった。
一期冒頭三話、かなりじっくり時間を使って思い悩んだ末に、明良くんはPROTOSTARの赤いエンジンとして、既に答えを見つけ迷わないポジションに落ち着いた。
そんな彼に導かれればこそ、二期でデカい話もらった二人が自分なり答えを見つけ、三人の足並みも一つに揃った。
だから、明良くんは泣かない。
何かとネガティブだった万里くんが一番に感情を溢れさせるの含め、大変良かった。
この内向きの三角形で終わらず、若きファンに特大のサーヴィスを手渡して笑顔に戻っていくところまで描くのも、”アイドル”のアニメで凄く良かった。
色々摩擦も多かった地方巡りに鍛えられて、PROTOSTARは自分たちがどんなアイドルでありたいのか、もう答えを掴んでいる。
それ故”勝った”後の世界で、彼らは責任重大な仕事を任され、より大きくなっていくだろう。
それを見届けられるのは凄く楽しみだし、3ユニットが混じり合えばこその表現にどうたどり着くのか、ファイナルステージの準備もワクワクすんだよな。
何かを作り出す歩みを大事に描いてきた二期が、この後の話数をどう使い何を描くか。
とても楽しみです。