イマワノキワ

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UniteUp! -Uni:Birth-:第10話『ホラーナイト』感想ツイートまとめ

 UniteUp! -Uni:Birth-第10話を見る。

 前回長い無言で描かれた勝者と敗者の、内側に潜っていく合宿回である。
 大毅くんを舳先に立てて、負けた悔しさと勝者への信頼、お互いへの敬意を特別な時間に語らう…ってところに行くまでに、このアニメらしい内省的な遠景をさまよい、ホラーっぽい匂いを漂わせて怯えるアイドルちゃんたちを愛でる構成。
 まぁ第7話の”反抗”と同じく、「どーせ不穏なのは表面だけで、ベリっと皮剥げばいつもの仲良しホンワカだろ…」という、先が読めてるナメが発生しているのは難しい所だが…。
 ここら辺、手品の種が割れてる感じはあるわな。

 

 前回あえて無言で見せた敗北の内側に入り、キツいこと言うのが一番”らしさ”に繋がる大毅だけを物わかりの悪い子供にして、PRTOSTARにぶつける構成は良かったと思う。
 他の誰かがご不満勢に加わっても空気濁ったと思うし、しかし誰かが強めにぶつかんなきゃいけないし、明良くん相手には頼れる先輩ッ面出来てる大毅くんの中にある、収まりの悪いガキっぽさも削り出せたし。

 そんな悪ガキの面倒をしっかり見る、お兄さんチームの頼りがいも、か…。
 分かりやすく明るく振る舞うキャッキャウフフなサービスシーンは、二期の空気感に合わせて減らしつつも、こういう関係性や内面の掘り下げには時間を使うの、なかなか良いと思う。

 

 

 

 

 

画像は”UniteUp! -Uni:Birth-”第10話より引用

 いかに身内からはみ出さないとはいえ、勝負は勝負。
 負けた側にはそれなりの痛みがあり、勝った側にはそれなりの重さがあり、それぞれどう向き合っているのか描いてくれないと、長い時間使って積み上げたリリースバトルのエピローグを、腹に収めることは出来ない。
 このアニメらしいナイーブな中景を活かし、そこら辺の心情を雪景色に丁寧に積み上げていくAパートは、大変良かった。

 やっぱこの牛嶋アングルをたっぷり味わうために、このアニメ見ている部分は大きいからな…。
 ほんと、アイドルアニメでやる画角じゃなさすぎてウケるぜ…。(ある意味高雄統子直系とも言えるが)

 

 二期はユニット単位での深堀りと、それを超えた交流が一つの軸だったと思う。
 今回大毅くんのモヤモヤをケアする兄貴担当が、楓雅だけでなくほまれにも回ってきたことで、そこら辺の味わいはいよいよ濃くなった。
 ユニット内部で複雑な感情を処理し、後輩相手に爽やかな顔を作れる自分たちに戻るのは、前回無言の内に終わらせる。
 今回どっしり描くのは、その感情をユニットの外側で共有し、広げて手渡し直すという、事務所内部の共鳴である。
 これは各ユニットがどんな感情で繋がり、どんな温度で生きているかを描いたからこそ意味を持つわけで、二期だからこその表現だなと思った。

 負けという荷物をどう下ろすか、LEGITは未だに心の持って生き方に悩んで、JAXX/JAXXは爽やかに決着を終えている。
 ここの温度差が瑛士郎くんが香椎くんに、大毅くんがほまれに、それぞれの思いを自分の心とユニットの内側から、吐き出して手渡す足場になっている。
 サバサバしてるように思えるJAXX/JAXXも、メチャクチャネットリした感情を持っているとは思うのだが、全員下向いてると出口がなくなるので、あえて顔を上げて終わった風味を演じる。
 ここの役割分担は物語の必然性からでてきているものだと思うが、同時に場の空気を感じ取って必要な役割を探す小さな社会性を、感じられる描写でもあった。

 

 

 

 

 

画像は”UniteUp! -Uni:Birth-”第10話より引用

 競い合ったり潰されかけたりするような、凶暴な外部を持たない、sMiLeaプロという優しい生態系。
 そこに競い合って高め合う自然の摂理を、身内の捏造だろうが作り上げるために、二期の物語…ユニットバトルはあったんだと思っている。
 そのせめぎ合う本気はこの物語が”アイドル”のお話としてあるためには必要で、しかし本物の厳しい衝突を用意せず、あくまで仲間内のせめぎあいを…お互いを気遣いつつ競い合う、優しい戦いが描かれてきた。

 この閉じた茶番感が、傷つけ合うにしても本物の致命打にはならない優しいサービスが、果たして良かったのか、悪かったのか。
 取って付けたホラー感満載の演出が、冴えるほどに「あー…またスカシでしょ?」と思いたくなる展開を眺めながら、正直疑問でもあった。
 恐怖に震えればこそ温かい暖炉の前で、お互いのユニットへの思いを口にしていくシーンに溢れる、換気の悪い身内な感じ。
 それはとにかく外部を存在させず、ツラの良い選ばれた人間だけで傷を舐め合い前に進んできた作品の膿が、色濃く臭う場面でもある。

 

 自分がそういう味わいを嫌悪していたからこそ、かっちゃんとか地方巡業で関わった色んな人たちを、気に入り大事にしていたのだなぁと、改めて思った。

 枠を壊せ、外に出ろ。
 ”勝負”が終わって、率直に感じたのはそれだ。

 

 思い出話としてそこに至るまでの苦労は描かれつつ、PROTOSTARが身を置いているsMiLeaは雰囲気の良い大手であり、分厚いバックアップと親身な扱いを兼ね備えた、夢みたいな場所だ。
 その恵まれた立場に支えられて、リリースバトルの勝者となったPROTOSTARは、大毅くんという一番受け止めやすい「文句言う役」に戸惑いを切開されて、自分たちがたどり着くべき場所へと(予定通り)進み出せた。
 どうしても、その恵まれた旅路に漂う不徹底な気配、身内でグルーミングし合う閉じた湿気は、この作品から消えない。
 そもそも、そういうモノを追い出すつもりがない作品なんだとは思う。

 あるいは苦言すら心地よく受けいられるような、”本物の家族”を宿り木として得られたからこそ、色んな外部へ出ていける…つう話なのかもしれないが。
 だとすると3ユニットで唯一”外”に出たPROTOSTARが勝つのは一つの必然であり、彼らがリリースバトルで学んだ事務所外の空気を還元する形で、総合プロデュースも行われるかもしれない。
 それはここまで積み上げてきた、色々問題もある”UniteUp!らしさ”を、自分たちが生み出したもので突破していく昇華の結末になるはずで、そっちにこそ僕は期待したいが。
 優しいグルーミングに満ちたあの”優しい”空気は、やっぱ自分にとっては毒だなぁ…。

 

 同時にここら辺の微温ったさを自分自身でぶん殴り、厳しく試してだからこそ良いものだと描こうとする筆致も、このアニメは結構鋭く尖らせてきた。
 悩める思慮深さも、降って湧いたホラーテイストも乗り越えて、いい感じに心の底から仲良し出来た幸せ合宿のラスト、唐突に差し込まれる本物のサスペンス。
 ED明けのヒキはここまでの全部が前フリになっていて、大変素晴らしかった。
 クライマックス直前、最大の試練を叩きつけるのならこのタイミングしか無いわけで、明良くんが何にぶん殴られたのか、気になってしょうがない描き方は大正解だと思う。
 殴りつけろ…ここまでの全てを!

 まぁこれもスカシでしかなく、シビアに試されないナァナァダンドリ感でもって、クライマックスが走っていく可能性も全然あるが。
 2クールに渡る少年たちのアイドル物語が、自分たちだけの吠え声を確かに刻みつけて終わるためには、このサスペンスをしっかり炸裂させて、最後に描くべきものを明瞭に暴き立てることが必須だと思う。

 

 今回特別合宿に紡がれた鬱屈も仲間意識も、別に嘘ってわけじゃない。
 それはずーっとこのお話の中にあって、しかしあと一歩、収まりどころを探して迷っている感じがしている。
 ここまでの物語、そこで選ばれた筆致の全部を嘘にしないために、残り二話どういう話しを叩きつけるか、とても楽しみです。