仲間たちの震えを優しく強く、受け止めてきたヒーローの脆い傷。
UniteUp! -Uni:Birth- 第11話を見る。
前回結構ナメた態度で待ってた最終話一個前だが、満を持しての明良くんメイン回であり、ずーっと大事な故郷として描いてきた菊の湯とお母さんを彼の傷として抉り出す描写にも、強い納得があった。
一期でたっぷり時間を使って迷ったからか、二期の明良くんは答えを得て迷わず、他のメソメソ野郎とは違って震えず傷つかず…って感じだったが、ちゃんと彼の頑なな脆さに最後立ち返っていて、すっげー安心した。
このまんま無敵のヒーローで終わってたら、かなりスッキリしなかったんだろうな…。
『故郷と家族』つうのは一期含めて、このアニメの大きなテーマだったと思う。
閉じてベタついた仲良し感を漂わせる事務所の空気も、3ユニットが垣根を超えてそういう存在になれるか、問いかけつつ答えてきた軌跡から生まれるものだが、他人は背負えるのに他人に背負ってといえない、正しくて脆い明良くんの顔をフィナーレ直前に描いたことで、そこにギリギリ、手応えのある筆が間に合った印象がある。
明良くんは確かに、返してもらうに足りるだけの恩義をみんなに手渡してきたし、それに応える侠気がある奴らだと、アイドルちゃんたちを描いてくれて嬉しくもあった。
助ける側に、ほぼ葛藤がないのが良い。
アイドル始めたての頃、明良くんが掴んだ自分なりの答えを悩める仲間に手渡す中で、他の連中の答えにもなってきたのだ。
答えはもう出てるけど、時に人はそれを見失ってしまうもので、なら絆を繋いだ仲間がそれを思い出させれば良いのだ。
そうなるだけの物語と力が、確かに今の彼らにはあるのだ。
キャラクターが持つ個人史や個性は違えど、それぞれの悩みや弱さを埋めるのに足りない部分を持ち寄り合って、時にぶつかることで紡いできた、それぞれの綾織。
糸一つ欠けていたら完成しなかった、自分なり(自分たちなり)の答えを導いてくれた恩人に、手を貸すのは当然。
そういう古臭くも極めて正しい答えを取り戻すのに、明良くんに助けられた仲間たちが最後に支えになるのは、因果がちゃんと巡ってきた感じがあって気持ちいい。
まー明良くんで始まった物語だからな…明良くんで終わるさ。
ローカルな地域共同体に外部から入り込み、それゆえの難しさとも取っ組み合いながら、新たな世代が旧い想いを継ぐ。
PROTOSTARが二期で挑んできた物語には、懐かしい土の匂いがしっとり香っていて、それは菊の湯の匂いでもあったと思う。
明良くんを育んだ揺り籠である番台に、アイドルになっていく息子が立たない未来を、微笑みながら幻視していたお母さんがぶっ倒れ、それゆえ軋轢が生まれていく展開は、明良くん個人の人格がどう作られてきたかを…そしてここまで彼と彼のユニットが何に向き合ってきたかを思えば、そこで揺さぶるしかない一点だったと感じた。
銭湯という空間が宿すノスタルジーと喪失を、扱いやすい記号論を超えて真実適切に削り出しきれたか。
そこには少し疑問も残るが、明良くん個人を父なき菊の湯、小さなヒーローとしてのお母さんが優しく育み、だからこそ彼が挫折を乗り越えヒーローになれたという個人史は、僕に凄く強く響いている。
清瀬家に宿る身近で懐かしい手触りがあればこそ、僕はこの物語の真ん中に立つヒーロー志願の少年を好きになれたし、明良くんへの好意と期待が、作品全体を支える柱になってくれた。
そんな彼を、仲間のピンチに適切な助け舟を出せる無敵のヒーローから、お母さんが本当に大事な…だからこそ誰かに頼る弱さを見せれないただの子どもとして、新たに描いて終わる。。
それは脆く震える人間だからこそ、誰かと繋がろうと足掻き、楽曲やパフォーマンスを通じて夢を手渡す”アイドル”の話が幕を下ろすために、必要な物語だったと思う。
非人間的ですらある完璧さで、二期を駆け抜けたヒーローだって、まだまだ星を追う道の途中。
ひたむきに、時に迷い間違えながら走っていく姿を見れるからこそ、作中のファンも、モニタ越し見ていた僕も、明良くんとPROTOSTAR…sMiLeaプロという”家”のお話しを、まぁ結構な凸凹はありつつ、楽しく応援できた。
そういう物語全部の歩みを、明良くんの迷いと答えに宿して描ききった、とてもいいラストエピソードだった。
ここでアイドル同士の衝突ではなく、母子の関係にまず軸足を置いて、そういうプライベートにすら身を乗り出せる仲間の姿を描くと選んだのは、かなり好きなんだよな。
苦い敗北を胸を張って飲み込むこと、力不足を嘆きつつもその祈りを裏切らない決意まで進んで、なおアイドル同士でガチャガチャされても色々困るわけでな…。
時代の波に揉まれつつも逞しく生きている、地域という”家”に外側から踏み込み、お客さんな自分たちだからこそ歌える詩を探してきたPROTOSTARの物語を、最後に飾る星として、清瀬家の輝きはとても良かった。
まぁ俺、絢花お母さん好きだからな…ベタついてないのに愛情深い所が”母”でさ…。
最後に清瀬家に深く踏み入ることで、明良くんが何故ヒーローであったのか…つまりは二度目の夢として追いかけた”アイドル”が何故素晴らしい存在になりうるのかを、すごく確かな手つきで触り直せた感じもある。
夢に進み出し色んな人の上、高く輝く星になっていくほどに、アイドルを育ててくれた”家”は遠くになる。
でも愛すべきそういう場所があればこそ、少年は等身大のちっぽけな自分以上の、誰かの夢にもなれるのだ。
ここら辺、一期第7話で千紘くんが、二期第4話で万里くんが、それぞれの過去…あるいは”家”をしっかり描いておいたことで、清瀬家だけでなくPROTOSTAR全体のテーマとして、筋金入った感じもある。
「強くあらねばならない」という、おそらくは父不在故に明良くんの胸に深く刻まれた、頑なな英雄主義。
それに縛られない柔軟さ、自然さでもって、強いからこそ優しくあれる真のヒロイズムをここまで体現してきた明良くんだが、よりにもよっておかーさんがぶっ倒れちゃ、正しくあり続けるのも難しい。
そういう迷いも弱さも当然、まだまだ少年なピカピカアイドルにはあって、そういう試練を一個一個、仲間の助けを借りて乗り越えていく歩みが、このアニメの面白さでもあった。
だから最後に、色んな人を助けてきたあの子が色んな人に助け返される話が来て、「UniteUp!てこういうアニメだったな…」と思えたの、嬉しかった。
事務所の外側にあんま視線を動かさず、ベッタリした身内感で回していく換気の悪さが、作品が世間に漕ぎ出していく枷になっている気配も、このお話にはある。
俺自身コンテンツにコミットしきれていない、半端な立場で見守り続けてきたわけだが、しかしこうして最後に清瀬の”家”を深く彫り込み、その扉を力むことなく開けて入ってくる仲間たちを描いたことで、それもまた悪くなかったなと、心から思うことが出来た。
次回合わせて合計24話、初回放送から二年。
アニメだけが接点とはいえ、この物語に触れ合えた意味も意義もあったなと…UniteUp見てきて良かったなと、思える最終話一個前だった。
ありがとう。
というわけで普段よりはカメラが人間に寄ってるけど、相変わらずバリバリにキレたレイアウトで、赤毛の少年英雄の戸惑いと頑なさが切り取られていく。
万里くんと千紘くんは、明良くんが張り巡らせた壁に跳ね除けられ、遠巻きにその心を探る。
それは清瀬の家を守るための壁であり、強く揺るがない存在であらなければならないというヒロイズム…あるいは父不在故のマチズモの結晶だ。
人を傷つけかねないその強さが、柔らかな優しさで折られていることを、息子の匂いが移ったタオルを愛でるお母さんは良く理解している。
鏡の中、追い詰められた自分を見る(見れる所まで自力でたどり着く)明良くんは、この段階で自分に何が欠けているのかを、既に見つめることが出来る。
同じく一度は拒絶されたPROTOSTARの仲間も、前回ラスト明良くんが電話を受けたのと同じ踏切脇で、暗い影の中自分たちがどこに進むべきかを思い知る。
それはなにか新しいことを始めるというより、今まで自分たちが進んできた道を見返し、今どこにいるのか…誰に頼れるのかを、改めて見つめ直す行為だ。
答えはいつでも歩いてきた軌跡の中にあり、思い出は未来を照らしてくれる。
ここまで、PROTOSTARが描いてきた物語のように。
スタイリッシュ過ぎて冷たい印象すら受ける牛嶋中景(勝手に命名)があんま顔を出さないことで、今回のエピソードは一体どこに転がっていくのか解んないハラハラ感を弱め、身近で安心できる雰囲気をまとっていた。
それが既に出ている答えを真摯に探し、大事な友だちの”家”に上がり込む時どうすれば良いのか、慎重に考える千紘くんと万里くんの歩みを、優しく照らしてもいる。
二期で色々迷った(そして明良くんに助けてもらった)経験を踏まえて、少年たちが他人と関わる適切な距離感を、真面目に真っ直ぐ探している感じ、めちゃくちゃPROTOSTARらしくて良かったな…。
彼らが迷いを抜けて星を見つける力があること、それを手に入れるための大事な経験を積み重ねてきたことは、僕らは既に知っている。
だから今回歩いてきた道を振り返り、一緒に進み出したい場所を見つめる形で、あんまギスギスせず着実な一歩を踏み出していくのは、ご都合よりも納得のほうが大きかった。
まぁ最終話一個前に、己のあり方に思い悩む特権はセンター一人に絞って欲しいし、ここで他の連中がブレても困るだけだしな…。
明良くん以外が安定してるの、逆にここまで明良くんがどんだけ人生ガタガタ人間共をお助けして、要所要所を〆てきたかを思い出させてもくれて、フィナーレ直前に相応しい感慨もあったね。
鏡の中に確かにいる僕らのヒーローは、自分がどんな顔をして何をやり遂げてきたのか、いまいち自信がない。
それはPROTOSTARが背負ってきた、とても普遍的な若さを、最後に改めて切り取った肖像画だと思う。
彼らはずっとこういう顔で自画像を見つめていたし、若者はみんなそうなのだろう。
この鏡からはみ出して、困ってる誰かに手渡しちゃった優しさと強さこそが、人間の顔を…英雄の資格を決める。
そこで手前勝手なエゴをぶん回さず、他人の顔をちゃんと見れる人だからこそヒーローなのに、自分がそういう存在だという確信が明良くん(が体現する、道を歩いてる途中の人々)にはない。
でも、それは確かに在るのだ
これを手渡し返せるのが仲間であり家族で、明良くんが忘れちまってんなら俺らが思い出させるぜ! と、かっちゃん謹製のシフト表に従いアイドルたちが銭湯にINNッ!
俺本当にねぇ…ここで奏太が見せてくれた飾らない笑顔が、むちゃくちゃ胸に迫ったの。
一番道に迷った時、導きをくれた恩人に報いるのは当たり前だし、背負わせてもらう苦労はむしろ喜びで、楽しいことなんだと、この力まない表情が全部言ってた気がする。
その自然な手助けと笑顔ってさぁ…明良くん自身がずーっとやってきたことでしょッ!!
わっせわっせとイケメンが雁首揃え、仲間のピンチに”家”の敷居をまたいでくる展開は、彼らが述懐する恩義…確かに描かれてきた菊の湯の日常を思えば、納得の必然である。
そうされるだけの手助けを明良くんはしてきたし、そう出来る靭やかな優しさを、ここのお湯は皆に手渡しても来た。
そういう場所に物語の中心が戻って、明良くんが忘れかけていた自分のヒロイズムを仲間が手渡して、最後のステージが憂いなく幕を開けていくのは、やっぱ良い。
どこから物語が始まり、結末に至るまで何を生み出して、どんな繋がりがヒーローの危機を救うのか。
最後に確認して終われるのは、やっぱ良い。
あとまー、ダチ公の思いが刻まれたノートに、明良くんが入ればこそ小さな英雄でいられたお母さんが手を添えるの、素直に良いシーン過ぎて泣いちゃった…。
こういうベタ足で力強く殴りつけるシーンがこのアニメは強くて、最後の最後それブン回してきたのは、”勝てる”終盤戦で素晴らしい。
なにもないからこそ何者かになれる、白紙の挑戦をPROTOSTARは自分たちの物語にしてきたわけだが、その始原として母(そして不在なる父)に最後立ち返って深く掘るのは、メチャクチャ良い。
お母さんがぶっ倒れたのは不幸な試練だが、だからこそ思い出せるオリジンと、そこから進み出して手に入れた光がはっきり見えるのだ。
倉田雅世の名演で暖かな手応えが宿る、母なる存在の小さなヒロイズム。
友の思いを握りしめるわが子の拳に、手を添え伝えたかった思いあらばこそ、明良くんは新たな夢の中で誰かを助け、助けられる自分になった。
ユニットの仲間が美しい夜に、「やっぱ解ってねぇなぁコイツ…」と愛しい苦笑交じりに伝えてくれた、もはや英雄である自分の輪郭を、最後お母さんになぞってもらって走り出すのは、遂に巣立つ瞬間の切なさも混じって、大変に良かった。
色々瑕疵もあるアニメだが、「優しいってことは強いし、強いためには優しくなきゃいけねぇ」っていう、ハードボイルドの根本をやり続けてきたのはマジ好きだ。
これを母に演らせるのが、白紙の歩みで色んな場所に進んできたPROTOSTARらしさだな、と思う。
他ユニットが事務所という”家”、ユニットという”家”にどうしても閉じこもってしまう中、しがらみも過去も業界に刻んでないからこそ、デビューしたての新人ユニットは外部へと漕ぎ出した。
子どもからジジババまで、色んな歳の人と触れ合い擦れ合って、新しい場所に飛び込んだ自分たちに何が出来るのか、どんな波風が生まれるのか、腰を落として取っ組み合ってきた。
そこに描かれたのは、”アイドル”だけがヒーローではないという、極めて逆説的なアイドルアニメの真実だ。
アイドルに救われるファンもまた、それぞれの居場所で必死に戦い、輝いて誰かを照らしている。
そんな事実を泥に塗れ地方を駆けずり回る中で、心底理解ったからこそ、PROTOSTARはリリースバトルにも勝った。
ツラ良くデケー事務所に助けられている、特別な自分たちだけが眩しい星なわけじゃなく、むしろ地上に数多ある星が元気に輝く手助けを、させてもらってる立場なんだ。
そういう謙虚さが、この素直な子ども達には確かにあった。
そしてそれが生まれる揺り籠は、やはり清瀬絢花の仕事に明け暮れガサついた手のひらにこそあって、最後の最後、母は彼女のヒーローにそれを手渡して終わる。
好きだマジ…。
今ここで明良くんに、お母さんが自分を支えてくれたものを明かしてしまうのは、我が子が進むべき場所へ背中を押す努めであり、独り立ちの寂しさを飲み干した決意でもある。
お母さんも震えながら戦ってきたのだと知ることで、明良くんは決定的に大人に…弱さすらも誰かに預けて、だからこそ強く優しくなれる存在へとなっていってしまう。
そうしても良いし、そうなるべきだと思ったからこそ、お母さんはなぜ自分が戦えたのか、壊れそうな”家”を守ってきた秘密の魔法を、包み隠さず我が子に見せる。
これはねぇ…相当決意のいる行動で、強くて優しいことだと思いますよ。
それを最後の最後、ちゃんと書いたのが良かった。
前回の山荘ではベタついたヤダ味が残っていた、ユニットの枠を超えた”家族”全員での包容。
しかし明良くん最後の迷いにフォーカスを絞り、その頑ななヒロイズムに深く分け入ったことで、今回すごく素直に受け入れられた。
コイツラは、確かに一つの”家”で支え合ってんだと、自分の中で納得できた。
そういう気持ちで、集大成となるステージを見届けられるのはとても嬉しいし、ありがたい。
ドラマとしてやるべきことは、この最終話一個前でやりきってくれたと思うので、次回はアーティストとしての答えを、輝く舞台で見届けたいです。
ガチャガチャ色々言ってきたけど、俺やっぱ、”UniteUp!”が好きだ。