マポ泥棒が抱え込んだ、デカい想いは炸裂寸前!?
SNSの数字のために、お前も、お前も、お前も、私のために死ねッ!!
前橋を舞台に展開する魔法少女業界の最下層(ボトムズ)、第三の事件を描く、前橋ウィッチーズ第4話である。
前回は人間力あふれる凛子さんに、アズちゃんの棘を受け止めてもらう形で良い感じに収まったが、今回はいいね亡者の承認欲求モンスターが、幼馴染からの一方的な思慕を抱えて殴り込んでくるという、三度目にして地獄みてーな状況になった。
まぁこのお話、今僕らを包囲している生っぽい問題と、軒並み殴り合う気概でパンパンなアニメなので、こんぐらいのシビアさはむしろ必須と言えるか。
やっぱ話運びに独自の軽妙さとスピード感があり、マポ泥棒が誰かはとっととケロッペがバラして、それにショックを受けたユイナも凹みすぎずに暴走超特急、あっという間に頭上に数字が出るマウント地獄が展開されて、さぁ次回何を暴くッ! …って所まで、一気に駆け抜けた。
あまりにも唐突な男塾の引用だとか、異様に気合が入ったレトロゲー要素だとか、気持ちの良いクスグリを贅沢にぶっ放しつつ、ふわっと楽しい空気に満ちてたお花屋さんが、みるみる現代的な地獄色に染まっていくテンポは、元気が良くて大変良かった。
このドタバタメリハリ効いた勢いの良さは、お話しの強みだなぁと感じる。
同時に丁寧にキャラを見せる部分も沢山あって、前回の戦いを経て皆と同じ制服を切るようになったアズちゃんが、間違いなく”善く”なってる姿を堪能も出来た。
何事も程々無難にこなし、波風立てずに乗りこなしていく低体温系だと思ってたマイちゃんが、幼馴染のお姉ちゃんに異様な感情をメラメラ燃やし、自滅的なまでの献身ぶっ込んでる姿とかも、あの子の新しい顔が見れてよかったなぁ…。
ここら辺の唐突な自己開示を、作中ちゃんと「急なキャラ変やめろし」と突っ込ませて飲みやすくしてるところとか、本当に巧みだと思う。
巧さでトンチキをコーティングさせて、奥にある生真面目を食わせる感じの調理法だよなぁ…。
マポドロつう生っぽい問題が顔を出したことで、ユイナがマジいがみ合いとか無理な人であり、それに向き合うくらいなら問題をなかったことにしてしまう幼さと危うさを持っていることも見えた。
それは他の四人が比較的現実的に、他人を押しのけ傷つけることで自分の居場所を確保するよう囁く、クソみてーな現代に適応/対抗出来てる年頃少女なのと、面白い対比だ。
ユイナは温かいおまんじゅう食べれば、みんな仲良くイヤなこと無しで生きれると、本気で考えている馬鹿だ。
でもその思いつきのために全力ダッシュして、本当に温かいおまんじゅうを持ってくる女の子でもある。
その必死な元気さを、僕は嗤いたくない。
自分が感じたエモとオシャのためなら、全力で走って体当りするユイナの行動主義に対して、同じく幼いチョコちゃんの流されっぷりというか、何も考えてなさそうっぷりも見えた。
間違いなく奇人であり成長できてないガキなんだが、ユイナには主役張るだけの”芯”が確かにあり、常識だとか世間体だとかに睨みつけられ、動けないフツーな連中を置き去りに、思いのまま突っ走るパワーがある。
それはマポを枯渇させる騒動も引き起こすし、何かが変わっていく原動力にもなる。
余計なものにとらわれず、自分の衝動のままに突っ走るユイナの、真っ直ぐな幼さ。
それが、同じく幼く見えるチョコには欠けているように見える。
このお話、魔女たちの経済レベルとか知的水準がバンラバンラで、話が噛み合わないタイミングが凄く沢山ある。
学校なら友達にならない…どころか、高校に上がるまでである程度棲み分けが済んでいそうな、多彩な断絶と分断を前提において、考えてることも価値観も違う五人は、同じ店に集っている。
ここにどう橋をかけて、ちったぁ話が通じるようにしていくかが、作品のミッションの一つだと思っているわけだが。
アズちゃんが棘の刺し所を考えるようになって、マイちゃんがキャラ変…つうか地金見せるようになって、ジワジワだけどお互いが解ってきた感じがある。
まぁまだまだ、全然解りあえてなんかねぇんだけど。
アズちゃんが現実世界の”在るがままの自分”を仲間に見せれてないのもそうだけど、早々簡単に人間は変われないし、変わっていく姿を見せても大丈夫だと思える、心理的安全性を共同体に感じるためには、色々乗り越えなきゃ嘘にもなる。
どうやったら誰かを信じて自分をさらけ出せるのか、どっしり構えて1クール追いかけていくだろうこの物語が、主役回終えたアズちゃんをすぐさま”いい子”にせず、毒吐きまくりの無理無理ガールのまんま、ちょっと”善く”したのは凄く好きだ。
他人にとって心地良い、当たり障りのない己だけが、肯定されるべき”いい子”じゃないのは、多様性ってヤツの外面剥いでハラワタを掻き出し、その臭気を嗅ぐ気合に満ちてる。
マポドロやった理由を秘密にして、なんでそんなに優愛に全部捧げちゃうのかも見えないマイちゃん。
そんな風に彼女を描いた今回は、ある種の”出題編”なのだろう。
依頼人を鏡にして、魔女が自分の中にある課題と取っ組み合っていくという、お互い様な構造を持ってるこのアニメにおいて、正しく依頼を解決すること…その過程でバンッバン間違いまくることは、とても大事だ。
問題山盛り未解決、最悪の承認欲求略奪で引いた今回のエピソードは、マイちゃんがどんな子で、何に縛られ苦しんでいるかを掘り下げるための、素材を積み上げる回でもある。
そういうのちゃんとやってこそ、それぞれの”色々”が削り出されていくのだ。
無難無難といいつつ、マイちゃんは12万フォロワーを誇るSNS強者であり、全然無難じゃない。
そんな自分をどう考えているのか、未だベールの向こう側に隠されているわけだが、これをぶっ飛ばすために流行りの承認欲求に燃え上がりつつ、未だ満たされない優愛姉が鏡となる。
凛子さんはアズちゃんの棘を受け止め、深く対話してくれる優しい鏡だったけど、あの承認欲求モンスターはマイちゃんの心を見ず、即物的な願望ばっか投げかけてくる、優しくない鏡だからなぁ。
でも世の中、自分を覗き込んでくれる優しい鏡は少数派で、修行の足らねぇ我利我利亡者ばっかが、時流に乗れてるマジョリティ面しとるわけでね…。
キョウカちゃんが作中述べていた通り、承認欲求は誰にでもある。
重要なのはそれをどう満たし、欲求充足にすべてを捧げず手綱をつけるか…なんだが、僕らを包囲する過剰消費社会は、欲望という奔馬を好きなだけ暴れさせ、乗り手を殺すくらい加速することを求める。
数字の亡者となった優愛姉はそんな時流の最前線に押し流された、ある種の犠牲者なわけだが、前橋の魔女たちはそんな彼女に、どんなステージを用意するのか。
生々しく根深い問題なだけに、次回出されるだろう答えは大変気になる。
それをどう出すかで、マイちゃんのデカい感情がどう報われるかも、決まってくるだろうしね…。
つーか”そこ”なんすよ…。
低体温だったマイちゃんが優愛姉に向けてる感情はあまりに巨大で、それがどんなものであるかがあまりに不明で、いつ破裂してもおかしくないパンパン加減でホント凄い。
「このアニメ…もしかして女と女の間にあるデカい感情も取り扱うのか!? そのための”姿勢”が整っているのか!?」と、意外な角度から殴られた感じで、めっちゃ気持ちよかった。
ユイナのおまんじゅうダッシュもそうだけど、俺は胸の中湧き上がる衝動を抑えられないまま、メチャクチャな方向に突っ走るやつが好きで。
そっから一番縁遠いと思えたマイちゃんの胸に、こんなデカいエンジン積まれてたなんて、思ってなかったよ…。
優愛姉のあまりに即物的な生き様を見てると、マイちゃんの前のめりな献身が全然報われなさそうな怖さがあるわけだが、次回はここのひっくり返しも期待したい。
12万アカウント捧げても優愛姉の渇きは癒やされず、むしろ数字に縛られてどんどん乾いていく道しか見えないわけだが、そんなSNS餓鬼道は(こうしてキーボード叩いてネットに公開する文書書いてる自分も含め)極めて僕らに身近だ。
だからこそ、この執着をひっくり返して新たな道を見せる物語には、鮮烈な説得力と炸裂する感情の熱量が、必ず必要になる。
そのど真ん中にマイちゃんが立ってくれると、とっても嬉しいなぁと思う、優れた出題編であった。




というわけで今回次回は青がメイン担当ッ!
円満そうな家庭も描かれ、それと反するマポドロに疑問も膨らむ、魔女たちの新たな日常が楽しく描かれていく。
つーかなんで撲針愚と纒欬狙振弾なんだよ…。
レゲーパロディはマイちゃんのキャラ性と共鳴させる狙いが解るけど、あまりに唐突な男塾パロはその投げっぱなし感がズルくて、大変良かった。
早いBPMでバンバンぶっ放す、クスグリの切れと圧力がしっかり仕上がってることが、魔女コメディの足元を支えている感じがあるね。
アズちゃんをテストケースに、魔女が自分の物語を顧客に反射させる中キャラクターの本当の顔が見えてくる、このお話の語り口も見えてきた。
凛子さんとの魂の対話を通じて、アズちゃんがちったぁ仲間に馴染み、毒舌引っ込めないまま受け入れられている姿は、そういう変化の善い手触りを教えてくれる。
自己防衛のためにトゲ出しまくってた紫色のヤマアラシが、口から吐き出すナイフの切れは変わりゃしないんだが、どっかこー…傷つけることで自分を守るやけっぱちが薄れた感じがあんだよな、制服のアズちゃん。
今後もジワジワ、在るがままの己を許してくれる仲間に甘えながら、自分を探していって欲しい。
マイちゃんがなんでマポドロやったのか、その真相は不明なまんまであるが、優愛姉を鏡に見えた素顔を思うと、まぁまぁ納得できそうな事情が隠されていそうではある。
むしろ「いい子そうなのになんで…? 感情もデカすぎるくらいデカいのに…」と、壁の向こう側を覗き込みたくなるいい塩梅で、上泉マイという謎への興味を作れたかなと思う。
マポ盗んでいたことそれ自体を問題にするのではなく、その事件への対応を通じて各キャラクターの行動理念とか、耐えられるストレスの総量と方向性とか見せる使い方に舵切ったのは、かなり巧いなーと感じた。
犯人探しと疑心暗鬼擦り続けても、面白くなんないもんねぇ。




ユイナが複雑な事情に耐えきれずおまんじゅうダッシュを決めた裏で、態度のデケー女が店に乱入し、アズちゃんは仲間のために時止めて愚痴る。
「魔法が生み出す即物的な解決法は、結局何も解決しない」つうルールで動いているこの話で、棘を友達に刺さないために特別な力を使ったアズちゃんの可愛さが、じんわり心に染みる。
このデレは”急なキャラ変”ってわけじゃなく、前回凛子さんと向き合った結果少しだけ、持ち前の優しさをどう使うか、思い出したからだと思う。
トンチキな仲間たちとワイワイ騒ぎながら、もっと素直な自分になれるといいね…。
ともあれ優愛姉という鏡が前に立ったマイちゃんは、テキトーに話し合わせて人間関係の波を泳ぐ、低体温な顔を引っ込めドマジである。
テキトー女の、そういう顔をこそ見てぇんだよなぁ俺は…。
アズちゃんがまーた同族嫌悪で無理無理ぶっこく、極めてありふれたSNS亡者になんでそこまで入れ込むのか、マポドロ真実と同じく見えねぇぜ!
むしろマポドロ問題にどんだけ踏み込むのか、魔女ごとの応対にキャラが滲んでいたのが面白かった。
キョウカちゃんがあえて問うのは解るんだが、チョコちゃんの距離感が想像以上にふんわりで、この子の課題も根が深そうだ…。




そんな状況下で、我らがピンクの主役は温かおまんじゅうの魔法で全てが解決すると信じて、全力で前に走る。
マイがなかなか切り出せない、常識を超越した”魔法”の話も、ためらわず堂々ぶっ放してしまう。
このためらいのなさは、優愛姉のしょーもない願いのためにマポ使い切っちゃうヤバさに直結しているわけだが、みんなに笑っていて欲しい気持ちに、嘘もためらいもない。
このノーブレーキの善意、あまりにもガキの属性過ぎて、もう赤城ユイナを嫌いになれないんだよなぁ…。
こいつは現実見れてないバカなガキだが、何もかもが本気で嘘はないのだ。
この幼い前のめりがマイちゃんの純情と響き合った結果、あっという間に地獄の準備が整うわけだが。
頭の上に浮かんだ数字で優劣上下を判斷し、それに縛られて荒れ狂う優愛姉の生っぽさは、目の前に鏡ドスンと置かれた気持ちで、マジしんどかったぜ!
そらー俺も五秒に一回インプレッションを確認してニチャニチャする人間なので、優愛姉のヤバさを遠くから笑ってはいられない。
OPで歌われる 「♪人のふり見てChange my mind」が、画面を貫通してリアルの僕らにもぶっ刺さってくる体験、やっぱこのアニメに独特だと思う。
そのゴリッとした手触りが、俺は好きだ。
優愛姉も自覚してアテンションの奴隷に成り下がったわけではないと思うし、透明だからこそ首までハマるSNSの檻の厄介さが、上手く可視化された回だとも感じる。
どう考えても人間狂わせる悪しき道具なんだが、もはやそれ抜きでは生活が成り立たないこの厄介な鏡に、僕らはどう向き合っていくべきか。
極めて現代的で現実的な示唆をしっかり差し出さなきゃ、作品の説得力が減じる展開にもなってきたが、まー凛子さんの描き方収め方を思えば、しっかりやってくれるでしょう。
ポップで明るいテンションで話を運びつつ、こういう所では腰を落とした本気の姿勢でやりきってくれそうな信頼感、やっぱありがたいわ。




かくして冷たい雨の中、思い出を青い冷光に照らして最悪の再会…それでもマイちゃんの瞳は、愛しいお姉ちゃんを見つめて輝いてるッ!
アカウント譲渡を愛の証に迫る優愛姉の、荒みきった眼との対比が、ホントエグくて最高だった。
冒頭、マイちゃんが体重を預けられる温かな場所として描かれた思い出の写真が、最悪の色に染まって次回に続くの、素晴らしい構成だ。
…この最悪なヒキを、マイちゃんのメンカラである”青”に染めてるのも、最悪で最高なんだよなぁ。
盲目な献身も即物的な解決も、お互いを幸せにしないからこの冷たさ、マイちゃんらしさの窃盗と歪曲なんだろう。
流行りに乗っかって孤立してない自分を捏造し、それに追いつくために過大なコストを求めるこの時代。
あきらか魂に良くない味してるのに、もう辞められない地獄のフラペチーノを、どうすれば断ち切り前に進めるのか。
徹頭徹尾、「インスタントな魔法で、解決するもんなんてねぇ!」と叫び続けている正統派魔法少女物語が挑む、極めて現代的な心の戦い。
他人と向き合い、自分を知る。
古臭くも正しい解決法が”答え”だってのはもう解ってるけど、そんな風に真っ直ぐなれないから、数字ばっか見て自分を見ないよう、うわっついた麻酔を携帯電話から摂取もしているのだ。
さー、どうすれば俺等も”正しく”なれるんだ?
やっぱユイナのひたむきな善良さ、足を止めないエネルギーが”答え”な感じはある。
でもそんなガキっぽい生き方、制御効かなくて危ないし、無防備過ぎて傷つくし、誰かのために一生懸命なバカだと食い物にされそうだしで、解ったフリで防衛線だって貼りたくなる。
ここら辺の切実さを、過剰防衛のあまり自分も刺すアズちゃんに託してしっかり描き、ユイナの浅はかな危なさも、それに対するフツーな反感も刻み込んでいるのが、フェアな描き方だと思う。
清く優しく正しく生きる、そんな答えは当然わかっている。
でもそう出来ない僕らが、ちょっとずつ善くなっていくための迷い道が、前橋に足跡を刻んでいく。
次回も楽しみ。