欺瞞、猜疑、嫉妬、殺意。
知恵の実を食べた獣たちは、もはや無垢なる存在ではいられない。
アポカリプスホテル第10話は、2025年最高で最悪な”死体を埋める百合”をお届け!
先週の 涙返して 銀河楼 春桜
思わずそんな一句も飛び出す、大変ロクでもないエピソードであった。
殺人…なのか巧妙に分かんねーように話が編まれ、長い時間が流れてすっかり世慣れたタヌキとロボが、人間の悪い部分を彼女たちらしくアレンジして最悪にぶっ放すという、本当に最悪な死体隠蔽コメディであり、大変素晴らしかった。
そらー生と死を己たちの流儀で寿げるくらい”人間らしく”なったんなら、嘘もつくし人も殺すわなぁ!!(殺していません) つう話よ。
すっかり拳の封印も軽くなったヤチヨと、母になってもかわいいポン子の地獄めいた共犯百合に、ただの好青年かと思いきや嫉妬の鬼だったポンスティンも混ざって、おまけにフグリは陶芸特化型世捨て人みてーになって…。
前回とは別の意味でのカオスであるが、まぁこういう行動にブレーキ踏まなそうなヤバさは既に生真面目装っていたヤチヨから、既に漂っていたわけで。
やっぱ大気圏突入とそこでの臨死体験、死んで蘇って反抗期をポン子に鋼鉄抱擁してもらった体験が、あの女のタガをハズしちまったことを痛感する。
さよなら、人類…。
異様に生々しい温度感で展開する、人妻(一子アリ)の死体遺棄奮戦記の汗だくとか。
真顔でどんどん深みにハマっていくヤチヨの、適度なポンコツ加減とか。
メインエンジンがヤバく冴えてるエピソードだが、待ち望んだ盛況を手に入れている銀河楼の現状とか、子どもが出來弟も独立し、時の流れを感じる変化とか、なんだかんだしっかりしてる所はこのアニメらしい。
まぁ前回、極めて思弁的かつハートウォーミングな速球を、見るもの感動袋に投げ込んできた直後に、このロクでもない魔球で側頭部を狙ってくるのは、本当に卑怯だと思うが。
感情グチャグチャにされる体験が、まさか話数マタギの二段構えだとはね…。




というわけでババァが死んでひ孫が生まれ、世代交代の波がワッと押し寄せてきてる銀河楼。
かつての閑古鳥(世紀単位)は昔の話、今はすっかりエイリアンで盛況となった地球唯一のホテルには、危ないお客様も顔を出す。
「まぁちょっとしたサスペンスでくすぐって、ムジナおバアの喪に服すホッコリ回かな…」などという、ヌルい予測を大幅に裏切ってガッツリ速攻で死んだの、マジ面白かった。
そしてその面白さが起爆剤でしかなく、どんっどんヤバくて不謹慎な絵面が飛び出しまくる、死体をオモチャにするタイプのブラックジョーク回である。
サイコ爆弾魔がなんで死んだかはマジ良く分かんないし、この死因は同種であろう強面もおんなじ感じで死んでるので、実は今回、殺しを巡るミステリではない。
キャンディサイズの地球破壊爆弾も、絶妙にスカシて話の真ん中には浮上してこないし、作品が持つオフビート感は殺しにまつわるサスペンスでも健在…と言ったところか。
重要なのは真相の究明でも生死にまつわる倫理でもなく、銀河楼の名誉のために死人を隠し切り、厄介ごとから逃げ切ろうとするセコい保身である。
…ヤチヨーッ!
機械仕掛けのイノセンスを体現していた、序盤のお前はどこに行っちまったんだよーッ!!




まぁこの面の皮熱く趣味が悪い隠蔽も、永遠を生きる彼女なり生死の意味を学び取り、己の存在に悩んだ果てあの祝祭のアートをカタチにした”成長”と、同じものだとは思うが。
葬式は良くて死体埋めは悪いと、勝手にジャッジするコト自体が炭素生命体の高慢というか、人類無き地球でかーなり旧世代の倫理が蔑ろにされてる様子は、宿泊代金金庫からパクってくる様子から、既に漏れてたしな…。
ツダケンの脂が乗った渋ボイスもバッチリ決まり、宇宙刑事とホテル従業員の息詰まる攻防戦…というには、あまりに穴だらけで成り行き任せなドタバタが、どんどん腐臭漂う方向へ突っ走る。
ホントこのアニメ、エイリアンってヴェールで覆えば生々しい性欲もエグい死体も、画面に写して問題なしとする、複合装甲めいた面の皮で押し切ってるところが好きだが。
完全に紫斑浮かんじゃってるヤバ色合いの死体が、冷静なパニックに押し流されてるアンドロイドと、もう冷静な判断力をとっくに喪ってる人妻タヌキのオモチャにされてる様子は、落語”らくだ”にも似たコクのある不謹慎味がして、大変良かった。
いやホント、死体隠蔽の絵面、ギリッギリ通り越してもうアウトなんだが、こういうところでブレーキを踏まないからこそブラックジョークが”鋼”になるという鉄則を、良く解った演出だった。
人間が遺した文化と行動規範を、終焉の後も揺るがず守り続けてきた、第1話の静かな滅びの風景。
それと比べると、今回ぶん回されるロクでもねー”人間味”には、隔世の感が確かにある。
プログラムされた正しさを乗り越え、我欲に突き進むホテリエロボを前に眉をしかめる反応自体が、倫理の前提がなんもかんも消し飛んでいる世界に適応できていない、古い霊長類の証…なのかもしれない。
ヤチヨが相当にぶっ壊れたイカレ女なので、サラッと狂ってる行状叩きつけられて、「間違ってんの、俺達の方かな…?」と疑問に揺らぐ視聴感、人外主役のSFらしい味わいで結構好きだぜ…。
そのくせヤチヨ、マジかわいいから困るよなーッ!




隠す、殴る、打ち捨てる。
お客様に特別な一日を手渡す誇り高きホテルの従業員が、身を置いちゃいけない異常事態がワンサと襲い来るが、ポン子とヤチヨはいつだって仲良し、腐臭漂う人妻百合が元気だ。
前回感動の結婚式を経て、激情のあまり夫殴るほどの絆の”先”を見せられた形だが、これでいいのかポンヤチの民よ…。
疑って逆さ吊りにするわ、心くじけての自首志願をグーパンで殴り飛ばすわ、アハハウフフで死体を運ぶわ、ホント今回のヤチヨ全身全霊ロクでもなくてSUKI。
異種族ラブロマンス的な色合いを付与されつつ、実際のところかなりズレたコミュニケーションが展開されていた第6話もそうなんだが、この話はパット見の強烈な印象をかき分けて、物語自体を素直に見つめると全然別の話ってのが、結構ある。
今回も強烈な死臭にどうしても鼻が持っていかれるが、なんで死んだかも…そもそも今の銀河楼が「死=悪」とする倫理に従わなきゃいけないかも、サッパリわかんない状況の中、死を巡るミステリとサスペンスは別に本道ではない。
なので全力で投げっぱなしにもなるわけだが、死体を仲立ちに描かれるポン子とヤチヨの歪な絆は、まぁ今まで通り本物である。
いよいよ倫理のリミッターを外してきた、地球次世代の知的生命体の行動理念は相当にハチャメチャで、ヤチヨは回を重ねるごとにやりたい放題好き放題、イカレ度合いが強くなっている。
そういうヤチヨのぶっ壊れが、客室にポップアップした死体で際立つ今回、しかしどんだけぶっ壊れていてもヤチヨがポン子を思い、ケツに火が付いてなおヤチヨを(夫より!)頼るポン子の絆は…まぁどんだけイカれていても本当ではある。
この関係性をあぶり出し、ハチャメチャにヤベー状況をどんどん引っ掻き回すべく、無邪気なタマ子がいい仕事していたのも面白かった。
死体隠蔽をコメディに落とし込むには、ああいう制御不能な野放図が必須よね…。




かくしてサレ夫渾身の回し蹴りも唸り、涙ながら宇宙の辺境でおっ死んだ正義の使徒に、冷たい土が覆いかぶさる。
前回あれだけの感動を生んだおばあちゃんの墓を、手ずから汚すかのような雑な埋葬…つうか隠蔽を、どう受け取ったもんかサッパリ解らぬまま、全ては無かったことになった。
このまんま後を引かず投げ捨てるのか、それとも連続性を保って次回以降ヤベーことになるのか、さっぱり読めないこの感触…怪作食ってる甲斐があるな!
そのくせ毎回全部リセットはされず、一本芯の通ったテーマ性もしっかり感じるんだから、中々すげぇアニメですよ。
宇宙人たちの死因も、それを隠しきった善悪も判然としないまま、物語はサクッと投げっぱなしに終わる。
そんな事は重要ではないのか、はたまた別の理由か、ぜーんぜん分かんないままスパンと断ち切られる感触は、不思議と心地よい。
涙の代わりにお湯ダバダバ、人間のせせこましい判断基準では計り知れない”進化する機械”を主役に据えた、この物語。
僕らが安住する論理や倫理から、ちいとぶっ飛んだところに全力で駆け抜けていく異質性が、やっぱ好きだなと思える回でした。
ヤチポンの関係性に素敵なロクでもなさが足されたのと、ポンスティンがこのアニメに居座るに相応しいエグさを見せ、大変良かった。
次回も楽しみ!