グラグラ揺れつつ突っ走れ!
コスで繋がるアタナとワタシ、五条くんと海夢ちゃんの楽しい日々を追いかける、着せ恋アニメ第14話である。
前回はバニーコスを準備し制作し撮影し活動するところまで、腰を落として一本繋ぎで描く帰還の挨拶だったが、今回はカレカノトークに動揺したり、風邪っぴきを看病したり、水族館でのコスイベで新たな出会いがあったり、バラエティ豊かな展開。
自己評価低すぎて海夢ちゃんにコスっちゃってる五条くんの暗さ危うさとか、そういうモンぶっ飛ばして人間が一番つれぇ時にメシ食わせてくれる優しさと繋がりとか、アップテンポで賑やかな話運びの中に、色んな明暗がきらめいていた。
人間が表情を変え体を動かす機微を、あますところなく伝える細やかな作画が、いま複雑な思春期の真っ只中にいる子ども達の実在感をグーッと高めて、大変良かった。
海夢ちゃんのオタギャルっぷりがだいぶファンタジーなので、下手すると凄く嘘くさくなってしまう話なのだが、メッチャ力の入った繊細さで真っ向勝負し、プラスティックな手触りを遠ざけているのは凄まじい。
ほっとくとすーぐ暗い場所に沈み込む、五条くんの生っぽい重たさを、軽やかに蹴っ飛ばす海夢ちゃんの頼もしさ。
その奥に、実に繊細な乙女心と風邪引く生身があることを、しっかり思い出させてくれるエピソードだった。
こういう体温の作り方好きだァ…。
結構いろんなことが起きる回だが、五条くんが考えすぎな気質を飛び越えて思わず手を伸ばしたり、学校サボってでも家に押しかけたり、メッチャ海夢LOVEなところが芯に入っていて、大変良かった。
あまねさんに自然に手を差し伸べている姿からも解るように、五条くんはあらゆる人にジェントルなのだが、海夢ちゃんを前にした時はちょっとタガが外れた勢いの良さで、思わず前のめり突っ走ってしまう。
それは間違いなく愛のなせる技なのだが、そんな自分を素直に出したら嘲笑われるという過学習は、早々簡単に根暗ボーイから消えてくれない。
それでも、だからこそ、五条くんはピカピカ光属性ギャルの隣に居続ける。
海夢ちゃんが人間の暗いところをあんま想像しきれない、完璧で都合のいい”オタクに優しいギャル”ではないからこそ生まれる、すれ違いと思いやり。
ここの手触りが思いの外生っぽく、なかなか解決しない障壁として二人の恋を阻んでいる所が、この物語が甘酸っぱいラブコメたり得ている大きな理由であるし、二人の関係の面白さだなぁと思った。
最高の友達であり、衣装職人とコスプレイヤーなんだけども、それだけだと乗り越えられない異質性がお互いを繋いでいる。
真逆だからこそ補い合え、根っこにある優しさが同じだからこそ響き合う、なんとも甘酸っぱくまどろっこしい、素敵な距離感。




傍から見てりゃ「付き合っちゃえよ!」なこのゴニャゴニャが、当事者にとってはかなり微細で難しい問題なのだということを、冒頭しっかり描くエピソードでもあった。
五条くんの過剰な自虐は、彼のことが好きな海夢ちゃんの思いごと、根暗ボーイを暗い場所に引っ張り込んでいく。
そこに滲む複雑な感情は重たい鎖で、でも眼の前で海夢ちゃんに危害が迫る(と思い込む)と、そんなモン振りちぎって体が勝手に動く。
その瞬発が最早”答え”なわけだが、考えすぎボーイは自明な気持ちを「そんなコトない…」と封じて、うさぎのキグルミで体育座りに戻る。
そこに気づかれぬよう口づけする海夢ちゃんの純情と、それを苛立ちと勘違いする五条くんの影の濃さが、程よいコミカル&チャーミングでリボンをかけられて、大変かわいい描写でした。
この冒頭は二期第1話のヒキとして大変力強い「二人って付き合ってんの!?」を、しっかり笑えるギャグとして巧く転がす。
同時に当事者が背負う複雑な陰影、そこに宿る繊細な感情をちゃんと刻み込んで、「まぁ難しい問題なので、どっしり見守ってあげてください…」と、作品から視聴者へお願いを手渡す描写だったとも思う。
明るく楽しく素敵なものだから一緒に笑ってもいいけど、ネタで消費して一気に答えを出すものでもない、血の通った”今”。
そのど真ん中に二人がいて、沈んだリムーっとしたり思わず体が動いたり、色んな感情を煌めかせながら一歩ずつ、幸せに前へと進んでいってる。
そういうモノをこそ、怪物みてーなクオリティを平然と維持しながらみっしり、丁寧に描いていくというスタンスが、良く見える冒頭でした。
そういうありふれた青春の難しさと輝きに、”コスプレ”がどれだけ助けになるのかってことも、前回1話使ってそれが形になるまでの追いかけたことで、とても鮮明になっている。
楽しいこと盛りだくさん、ちょっと苦い味も交じる二人の青春が、どういう空気と温度の中で紡がれているのか、丁寧に追ってくれる落ち着きを、感じられる二期第2話であろう。




このどっしり腰が落ちた実在感は、風邪という極めてフィジカルな不調にやられちゃった海夢ちゃんの描写、そのケアに献身する五条くんの手つきに、より鮮烈に弾けている。
扉越し、ふらりと崩れ落ちる時の海夢ちゃんの描写とか本当に凄くて、生々しくしんどい感じが伝わってきた。
だからこそ食材の切り方も丁寧に、心を込めて命の糧を作ってくれる五条くんの優しさ…それが染みてベチョベチョ赤ちゃんに戻っちゃう海夢ちゃんの安心も、特別な手触りで受け取れる。
…この顔を見せれる他人って、もう関係性すごろく”あがり”なんじゃねぇの?
つーか体も心も本当に弱って、一人じゃどうにもならねぇ時にいい子の仮面を投げ捨て、今一番必要なケアを静かに届け、伸ばした手を優しく掴んであげれる人間が、いっちゃん偉いからよ…。
明るく賑やかに満たされた日向が、自分の居場所じゃないみたいに寒々しい窓の外に己を追放なんてセずに、堂々胸を張って自分の凄さを抱きしめやってほしいと、外野のジジイは思ってしまう。
でもまー、どんだけ凄い衣装を作っても、海夢ちゃんに大感謝されても、胸の奥湧き上がってくる黒い泥を跳ね除けられないのが五条新菜という少年だし、そういう根深さと向き合い続けるのは作品として大事だとも思う。
海夢ちゃんという、真逆な天使と一緒にいることでジワジワ五条くんのトラウマがケアされ、あるいはコスプレという創作活動を通じてより深く掘り下げられ、明暗相照らしなっがら自分を見つけていく旅。
作品の柱になっているものは極めてオーソドックスかつシリアスなのだが、その重たさを跳ね除ける明るさと楽しさ(それを体現する喜多川海夢というキャラクター)で、軽やかに踊る姿は頼もしい。
しかしウケがいい明るさを大事にしつつ、主役が背負うありふれて重たい影をちゃんと切り取ってくるのは、誠実な姿勢だと思う。
こういうクラさと、海夢ちゃんを急に襲ったしんどさに全霊で立ち向かえてしまえる、眩しい熱の同居よな…。




病身の海夢ちゃんにおかゆフーフーして食べさせ、心と体を快復させた五条くんのケア力は、彼女一人に限定されるわけではない。
初めてのコスイベで思わぬアクシデントに見舞われた、見知らぬ美少女に手を差し伸べる時、五条くんが取り出したソーイングキット。
繕い、繋げる彼の善性をすごく的確に象徴化したフェティッシュで、めっちゃいいなぁと思ったわけだが。
未だ”女の仕事”と思われがちな裁縫こそが、今自分に出来るケアだと迷わず進み出せたのは、やっぱ海夢ちゃんと一緒に心の影の外側に踏み出したからこそ…だよなぁ。
海夢ちゃんが持つ陽性のオーラを活かし、大声で笑いながら、色んな角度から性に向けられれる歪な視線をぶん殴って来たこのお話。
異性装レイヤーであるあまねさんとの邂逅は、性器であり秘される恥部でもあるおっぱいを、装備可能なファッションとして扱う視座へと導いていく。
ウィッグ糊で貼り付けて輪郭を隠したり、異性装コスのTipsを細かく描く筆が、その凶暴な牙で常識の埒外へと色んなモノを追いやってる”フツー”をどう解体し、”好き”を描くのか。
明るく楽しく、でもネタで消費しては終わらないこの作品らしい筆致が、生きそうな題材でもあります。
着脱式おっぱいという常識の異物に、こーの表情できる海夢ちゃんだからこそ、受け止め描けるものが確かにある。
そんないつもビカビカ太陽小町が曇った時はどうするか…五条くんが心の赴くまま突っ走ってケアするだろーがッ! という、裏打ちの”答え”も描かれて、賑やかで温かいエピソードでした。
割といろんなこと起きてる回なんですが、その賑やかさを看病の穏やかさに対比させる形で、二人をつなぐ絆の強さをしっかり描いてくるのとか、演出プランがしたたかで良かったです。
自分たちが持つリッチな巧さを、どう効かせるか…やっぱ良く考えた作品だと思う。
異性装コスのディープな世界を優しく描く、次回も楽しみ!