怒涛のごときスピード感大正男子プリキュアが結成された後、敵さんの事情やらキャラやら、あからさまなツッコミどころを先回りして潰すムーブやらやる回。
その後ヌルっとノリきれない怪人が出てきて、美少年五人のトボケた会話にペースを乱され、スルッと倒され次回に続いた。
味方チームにモチベ全く無かったり、その結果キャラが現状記号の集積体でしかなかったり、やっぱ敵さんのほうが陰影深かったり、色んな意味で独自の味。
令和に食えるテイストではないので、なかなか面白い。
百目鬼くんはシンさんに明らか巨大感情抱いてる風味だったり、キャンさんとの出会いが絆深そうだったり、戦いに赴く理由が明確だったり、ぶっちゃけ主役より主役っぽい。
というか浪漫団があらゆる会話を、それぞれの単色な属性に引っ掛けるカタチでしかやれないので、現状人間っていうより自動的な反応返してくるマシーンみたいで人間味が薄い。
このプラスティックな人造感、僕にとっては魅力なので頑張って維持してほしいが。
それにしても赤はハイカラ青はナルシー、緑はお母さんで黄色は腹ペコ、そして紫はハラグロという要素に絡めないと言葉が紡げないの、一種の呪詛みたいで独自だ。
この極限まで記号論で編んだ手応えが、どこ由来かは僕にも判別つかないけども。
自由を金看板にした責任逃れでもって、主役チームに自発的な決断させないままヌルリとヒーロ稼業になだれ込んでいる現状は、作品に食い込んでいく足場をドンドン消失させていって、全体的に凄くユルい。
この力みにない緩さでもって、ヒーロー物語の力みを解体させていくお風呂感覚こそが、入浴ノルマを背負った作品の特色…ってわけでもないんだろうけども。
それこそ防衛部シリーズ自身が魁となって、力んだヒロイズムへのカウンターがやり尽くされたこの時代に、ユルさだけではアンチテーゼ(を通じたジンテーゼ)張るのは難しかろうと思う。
バンカラ部がおバカながらも結構生真面目に、未来の危機を乗り越えるべく秩序を最優先し、キャンさんも腹割ってなすべきことをちゃんと伝えているのに対し、主役サイドはとにかくヌル公が胡散臭く、またハイカラ部もそれに気づいている。
なのにキツめのツッコミを当てることなく、スゲーヌルっと流されてヒーローをやってて、そういう主体性のなさ、戦う理由のなさにも自覚的だ。
そんな自覚を置き去りにするように、男五人の緩やかで生ぬるい距離感は程よく維持され、まったり特に被害もない日常がゴロリと転がっていって、大正は今日も平和である。
…一体何を見せられているんだと、正気になると呆然ともする。
この掴みどころのない独自の雰囲気、僕は全く嫌いじゃないので、このまんま自覚的なのか無自覚なのか、どっかに行きたいのかヌルリと流されていきいたいのか、最後まで判然とせず転がってくれても問題はないけど。
もしこの手応えのなさを前座に、おとぼけ五人組がちょっとずつ自分を見つけたり、そうしてお互いの繋がり方が変化していったりしてくれると、また面白い味わいがでてくるかなぁ、とは思う。
いわゆる日常系のレイヤーでも、こーんなに目的も意思もなく漂い続ける作品今どきないと思うので、そういう意味で特異点というかタイムカプセルというか…とにかく独特だ。
ギャグも満座大爆笑をかっさらう強い感じの笑いではなく、どっか古ぼけた力みのないトボケがヌルリと飛び出してくる感じで、どうにも懐かしい。
大正のはずなのにひどく現代的なネタがピョコンと飛び出してくるのは、まぁそういうモンだと既に納得しているが、そのミスマッチが笑いになる時代はまー、とうに過ぎ去ってるとは思う。
そのレトロなオフビートをどっぷり楽しんでくれって話なのか、惰性でシリーズ特有の雰囲気をぶん回しているのか、ここもいまいち判別つかないが。
浸っていて気持ちの悪い温度でないのは、大変ありがたい。
ボーッと見てて心地よくはあるんだよな、テンポとか絵面とか。
物語開始時点でかなり仕上がってる、まったり五人組のユルい仲良し感を今後見出したり壊したりして、ドラマの波風立てるつもりがあるのかないのかも、ちょっと良く解らない。
このまんま記号でしか喋んねぇ美少年装置が、ずーっと微温な距離感に浸ったまま状況が進んでいってもいいけど、個人的にはこのプラスティックな味わいはその硬い表層を削って、地金に魂の血が滲む様子を見たくなる歯ざわりをしている。
次回酸ヶ湯くんの担当回っぽいので、そこでどんくらいぬるま湯に薪焚いて、属性を越えたキャラクターの体温を見せるつもりか、ちったぁ理解る…かなぁ?
あんだけヌルが自由を建前に責任から逃げている描写を入れているのは、後々発火させるための露骨な前フリだとは思う。
ただこのまんま体重も乗っからず流されるまま放課後正義の味方やってても、正義と悪が反転する展開には全然インパクトないだろうし、どっかで作品のメインに据えられてる活動に主役が腰を入れる瞬間を、ちゃんと描いて欲しくはある。
あるいはそういう硬い質感がないからこそ、美少年の外形を消費しやすい…っていう構造なのかも知れないけど、そういうネタを消化する酵素が自分の中にはないからなぁ…。
戦う理由が鮮明な分、現状どうしてもバンカラ部に体重預けちゃうのは勿体ない気がする。
という感じの、敵サイドの結構カッチリした手触りと、味方チームのファジーな味わいが見えてくるエピソードでした。
敵味方ともに未来改変を目的とし、認識介入で正体バレを防いでいる描写とかとても面白かったが、このぬるま湯な温度を今後どう扱っていくかは全く未知数。
ヒーロ活動への向き合い方含め、今後どういう角度で話を転がしていくのか…注目していきたいところです。
次回は酸ヶ湯くん主役の大正ツイッター回みたいだが、結構コスり方にセンスが要るネタだと思うので、どう仕上げるかは楽しみ。
個人的にはもうちょい主役に陰影が見えてくれると良いけど、さてどうなるか。
次回も楽しみ。