サイレント・ウィッチ 第7話を見る。
Q 龍の群れすら瞬殺する最強魔術師を一時的に弱らせて、サブキャラに見せ場を作るにはどうしたら良い?
A 毒(ヒヨスチアミンが含有された眼薬など)を盛る。
という、あまりに治安最悪で生々しい回答が突きつけられる、素晴らしいエピソードだった。
血に飢えた野犬が、か弱いヒロインにけしかけられた”シュガーアップル・フェアリーテイル”でもそうだったが、繊細でかわいい乙女デザインの華やかな世界観に、身も蓋もない殺しのリアルが溢れ出す瞬間のケミストリーが、俺はいっちゃん好き。
たまらんね…イザベルちゃんも大活躍したし。
前回お茶会で早熟天才児の小さな成長と幸せを描いたのが、今回の悪役令嬢ガチ殺人未遂を引き立ててて、なかなか面白い構成だなぁ、とも思った。
王子に微笑みの仮面を付けさせてる、社交一つで国がなくなる怜悧な現実は確かに、あの幸せな夢の外側に存在してて、今回それにモニカが毒ぶっかけられた。
嫌がらせのために軽率に致死毒盛る貴族の思い上がりが、国家を深く浸してるクソっぷりとかも良い感じに見えて、モニカ主役だとなかなか書けない視点から世界観を掘り下げる、とても良いエピソードだったと思う。
コミュ障少女の生き直し奮戦記だと、こういう生臭い毒ガスなかなか匂い立ってこないからな…。
王子もイザベルちゃんも、腐った貴族が人命を軽く扱うクソみてーな世界をなんとか生き延びてて、体面取り繕いつつ毒針で刺す政治のやり口を、ちゃんと身につけているのが頼もしい…と同時に哀しい。
お姉様に故郷を救われた大恩を、冷酷な演技(それは本性の一部でもある)で返すしかないイザベルちゃんの鎧は、貴族社会に身を置けばこそ培われた殻なのだろう。
おんなじモンを、被害者なのに号泣土下座キメたモニカに己を重ねていた王子も身につけているかと思うと、あの人の中身は結構柔らかいのかもな、と思った。
だからこそ、若くして命の際に立たされてもいるんだろうけど。
クソボケどもが毒盛ってくれたおかげで、モニカの過去が一枚顕にもなったが…想像してたよりさらに悲惨だなッ!
この世界の宗教権威(”異端”つう呼び方されてたからには、お父さんの処刑にはそこが関わってんだろう)がどーなってるかは判らんけども、科学的知見を世に広めようとして、貴族をトップに抱く社会構造にぶつかって焚刑…って話か。
抗うことの出来ぬ権力の炎の中で、父の意志を数字として都合とした結果がモニカの天才だとすると、やっぱアレ一種の呪いだな…。
ここら辺ずっしり重たいのは、可愛くコミカルな演出を過剰に浮かび上がらせない、良い楔だと思う。
この炎の記憶を抱えた上で、そんな自分に良くしてくれる人に報いようと、モニカは震えながらクソアマ共の申し出を断り、毒で死にかけつつ涙ながら謝る。
前回微笑ましくも健気に描かれた、小さな成長への必死さが反転すると、こうも痛ましい手応えになるとは…やっぱ貴族最悪だな!
この切なさに冷徹王子が、拳を固く握りしめながらも感情を寄せてくれてる様子が見て取れて、ジワジワ好感度が上がってきている。
前回最悪だったクローディア嬢が、結構なオモシロ女であることが解ってきたり、キャラクターへの印象をひっくり返す手腕が冴えてんなーと思う。
かなりのオモシロだったし、いい人でもあったなクローディア嬢…。
ここら辺の胸糞悪さを、今までお姉様LOVEしか見せてなかったイザベルちゃんがモノホン悪役令嬢っぷりでぶっ飛ばし、腐れ貴族ざまぁ! なカタルシスを炸裂もさせた。
沈黙の魔女に故郷壊滅の危機を救われたイザベルちゃんからすると、憂さ晴らしの嫌がらせで失われるにはあまりに偉大すぎる才能…以前に、惚れ込んだ相手ぶっ殺されかけてんだから、そらー黙ってられはしない。
毒入り紅茶の意趣返し、必死に「ちゃんとしよう」とすることが大きすぎるモノを守る社交界の、ヤバすぎるレッスンが唸りを上げていた。
いやー…偶然善良権力者の目に入っただけで、こういう死に至る横暴、この世界の至る所にあるんだろうな…。
想定してたより作品世界が最悪っぽいのにウキウキしつつ、生き馬の目を抜く政治の世界で戦えるだけの、覚悟と分厚い仮面でイザベル嬢が武装してて、頼もしく爽快でやっぱ淋しい。
七賢人という、実力だけで特別な地位に上り詰めれる人生の裏道とはまた違う、権力者に生まれついたがゆえの獣道を進むしかない定めが、あの子に刻まれてんだなぁと思った。
同時にそういう修羅の巷で、人間がなすべき”仁”を忘れてねーからイザベルちゃんはモニカに全部を捧げるし、悪役上等で芝居もやり遂げる。
タフな女(ひと)だぜ…おまけに笑顔がとびきりチャーミングときてんだから、大変素晴らしい。
国家保有の最強暴力装置として、一気に社会の番外地を駆け上がったモニカが、思いの外悪意と智謀に弱いことが示されたエピソードでした。
相手が魔術戦最強だってんなら、謀略戦で殺そうぜ!!
そんな彼女にとびっきりのLOVEで寄り添うイザベルちゃんが、ただ面白かわいいだけじゃなく政治の戦いを生き延びるに足りる、牙と仮面を備えた戦士だとも、しっかり解った。
この頼もしさに支えられて、また新たな事件がモニカに襲いかかってくるんでしょうが…そういうヤバさに触れるのって、王子が身を置いてる嵐の激しさを、幼き天才が解っていく助けにもなんだろうね。
友情あり毒薬あり、モニカの青春生き直しはまだまだ続く。
次回も楽しみ!