中華姑娘再来猫猫颱風!
魅力的な新キャラも投入され、いよいよカオスな祝祭が加熱していく令和らんま第14話である。
やっぱシャンプー、ヒロインとしての造形が凄いな…これがサブなんだからつえーわ。
というわけで猫飯店組が物語に合流し、乱馬とあかねを巡る恋模様はさらなる混沌へと突き進んでいく。
ここにうっちゃんが混ざって大体の形が出来てくるわけだが、一対一でしっとり心を探り合う余裕があった序盤とは味が変わって、カオスで騒々しく、だからこそ楽しい永遠の祝祭が本格的に動き出す。
可愛いキャラによる恋模様は複雑に絡み合い、いがみ合いすらあくまで明るく、何もかもがハイテンションに転がる楽園。
こっから手を変え品を変え、永遠の宙ぶらりんで仲良く喧嘩し続ける足場が、ドッカンドッカン整っていくエピソードである。
…こうして考えると、シャンプー初登場で一期をまとめたのは的確なシリーズ構成だったんだろうな。
明確に、このあたりから作品全体のトーンと方向性が変わっていく。(メタ的な話をすると、サンデーの看板、ラブコメ新時代の寵児として、続けれるだけ続けきる長期連載コースに乗ったんだと思う)




お話としてはいきなりシャンプー再来っ! …という感じではなく、前回の猫騒動を結構しっかり着地させて、乱馬くんとあかねちゃんの不器用な純情をちゃんと描いた上で、さらなるカオスが加速する塩梅。
冒頭怒りの大集合をかました男衆に、積極的なアプローチを見せるシャンプーと、それを追いかけてきたムースが加わって、恋のコロシアムは満員御礼だ!
この頭数の多さでワイワイガヤガヤ、無差別格闘アクションの熱量も交えてドッタンバッタン大騒ぎ、ラブコメとしての結末をドンドコ先送りできたのが、全407話にわたって楽しいカーニバルを続けられた一因なのだろう。
そのためには投げ込まれるキャラが魅力的である必要があって、その可愛げやら元気を視聴者に理解らせる、ある種のショーケースともいえる回である。
今後を見据え、カタコトながら日本語喋れるようになってるシャンプーとか、目ざとい調整だなと思うね。
乱馬の誠実さや純情は、エピソードごと場面ごとに都合良くフラフラするわけだが、基本的には心の機微がちゃんと解っていて、そのうえで素直になれない思春期ど真ん中ボーイである。
猫恐怖症による疑似酩酊下でのキスでも、あかねがどう受け取るかが大事だということは彼なりに解っていて、あかねもまたもはや唐突な許嫁を憎からず感じている。
つまりもう”答え”はでているわけだが、そこにたどり着くまでの長い長い回り道こそがラブコメの本道、素直になっちゃったら楽園は終わりになるしかない。
なので甘酸っぱい純情をチラ見せしつつ、ドカバキ暴力的にしばきあう距離感が保たれていく。
キャラが増え話が派手になるほどに、”答え”を迂回するべくあかねがぶん回す暴力はより過激に戯画化されていく。
それは擬音満載のお約束であり、ダメージは後を引かずに消えて、見え見えの気持ちに素直になれない若き激情が、あかねの中に燃えていることを示す記号だ。
あかねを格闘家たらしめているシリアスな暴力性が、この後色んなライバルとガチンコしていく彼女の王子様と違って、今後かなり薄くなっていくのは面白いなぁ、と思う。
既に氷上格闘あたりから気配はあったが、話の構造上あかねは多くの男に求められるトロフィーになるしかなく、そういう女がガチで強く自立してると、色々厄介…なのだろう。
なのでぶっ飛び人間どもが巻き起こす騒動に引っ張られて、ドカバキ想い人をぶっ飛ばし、素直になれないままならなさに泣きじゃくる記号化された不器用さが、今後のあかねにはつきまとうことになる。
無論繰り返されるバトルの中で、色々蓄積される感情や変化なんかはあるのだが、らんま達が”強さ”でその蓄積を体現できるのに対し、あかねは話の真ん中に立つ正ヒロインであり、騒動に巻き込まれ求められるトロフィーだからこそ、そういう変化から取り残されていく感じがある。
まぁそれが本格化するのはまだまだ先だが、序盤結構時間を使って描かれた純情が、あっという間にシャンプー再来のドタバタに飲み込まれている様子を見てると、
長期連載ラブコメの”軋み”みたいのが、既にこの段階のあかねにも結構分厚く顔を出しているなぁ、などと思う。
ここら辺の俯瞰は完結後30年近くたってるからこその視線で、リバイバルだからこそのある意味醒めた見方であり、個人的にはかなり面白い。
そのうえで猫騒動が暴いた恋心に嘘はなく、それに報いるように結構時間を使って、ちゃんと謝ろうとする乱馬くんと、それを受け取りきれないけど純情なあかねちゃんの様子は、とても可愛かった。
主役たちのこの可愛げこそが、作品をロマンスたらしめる心臓なわけだが、この甘酸っぱさのまま延々話が続くと、まぁ独特の味わいも出てくる。
難しいなぁラブコメは…。




ともあれ猫飯店の騒々しい面々が乱入し、乱馬くんは驕った暴君モードに入る…と思いきや、あかねが凍りついた笑顔で負けじとぶっ飛ばし返して、二人の関係は騒々しくも対等である。
俺はこの物語、「素直と謙虚」つう美徳に若き拳士がたどり着くまでの寓話としても読んでるんだけど、なにかと自分の都合のいい妄想に踊り、横っ面張り倒されてぶっ飛ぶ乱馬の姿は、風通しが良くてかわいい。
大変いい温度感の「ざまぁ!」が、ちゃんと主役に降り掛かってくれる気持ちよさ…というか。
まぁこんだけ美少女に求められて、殴られもしねーならバランス取れないからな…。
昭和でも許されざる亭主関白でもって、相手に歩み寄るのを拒否してビンタぶっかまそうとした最悪を、あかねの芯の強さは綺麗に張り飛ばす。
可愛くねぇ許嫁が自分をぶん殴ってくれることで、乱馬くんは持ち前の傲慢を削られて、より善い(かわいい)天性を表に出せるわけだが、そういう掣肘をありがたがれるほど、人間出来てもいない。
常人が這いつくばる地上を軽やかに飛び越えて、高いところで超越的に振る舞える特権は、驕り高ぶったナルシズムという悪徳と裏腹だ。
それを地面に繋ぎ止めて、「分を知れ」と殴りつけてくる暴力女は、実は得難い自意識へのカウンターでもある。
ここら辺、ラブコメと人格的成長がリンクしてて、かなり面白い配置だなぁと感じる。
さて、コロンという妖怪ババァが乱馬くんより軽やかに高いところを駆け抜け、その思い上がりを圧倒的実力で制圧してきた今回。
作中最強存在として思うまま天狗にもなれた乱馬くんが、絶対勝てない最強存在が設定されることで、必要なタイミングでその鼻をへし折れる体制が整った。
これまで乱馬くんの独壇場だった、軽やかに日常から遊離する高い場所だが、そこは人間の形してるかも怪しいコロンによって制圧され、否応なく地面を歩くことになる。
そんな力関係の発露として、今まで自在に男/女の境目を往来できていた自由が奪われ、女の形に固定されて騒動が始まるのは興味深い。
呪泉郷の力を借りて、性差や人間/動物の境目を軽やかに移動できてしまえる自由が、このお話の大きな魅力なのは間違いない。
コロンは今回、そういう作品一番の勘所をしっかり抑えて、話全体のコントロール権限を握り込める最強存在として、必要十分な凄みを示してきた。
この妖怪ババァが要所で乱馬を殴り飛ばし、思い上がった高みから叩き落さないと、謙虚の美徳から遠い所まで浮き上がり続けるからな…。
「この怪物は、まぁそういう仕事を今後します!」というサインを、ドタバタ大騒動の中で視聴者に差し込むためのエピソード…とも言えるだろう。
こういう役割のキャラをちゃんと途中で挿入し、ただの物語的機能だけでなく、独自の魅力と凄みを交えて”キャラ”に出来てるのが、まぁ傑作の傑作たる所以、か。
コロンという底しれぬ強者が乱入したことで、バトルものとしてのスケールが広がってしっかり定まり、乱馬たちが追うべき強さがよりクッキリしていく感じもある。
若造が何人がかりでも妖怪ババァには勝てないわけで、その高みに追いつくべく努力する形を作ることで、修行と努力が拳士たちに積み上がる手応えが作品に宿る。
そうやって手に入れた強さがどんな意味を持つのか、示すためのキャンバスとして、素直な心が試されるラブコメが機能もしている。
バトルとラブコメ、水と油な主題を見事に混ぜ合わせているから、このお話は面白い。
そういう”らんま”の基本構造が、シャンプーが愉快な仲間を引き連れて再来する騒々しさに整っていくエピソードでした。
くっつきそうでくっつかず、強さに至れそうで果ては遠い。
沢山の若造どもが元気に泳ぎ回れる、見事な水槽をしっかり作り上げたことが、ジャンルの魁となる傑作の成立要因なんだなぁと、改めて思わされました。
やっぱ自分はキャラの可愛さと同じくらい、作品や連載が成立する構造それ自体に興味があって、この素敵なリバイバルを通じてそこら辺を見たいんだなぁ、と感じる。
令和らんまは愛と賢さでそこら辺、相当頑張って再構築してくれてると思うので、今後も色々見つけさせてほしい。
次回も楽しみ!