深夜の公園に響き渡る、超絶の打撃音と燃え盛る愛。
異様なテンションで怪人とライダー志願者たちが突っ走り続ける、東島ライダー第5話である。
集った戦闘員軍団はライダーワナビ異常者に瞬殺され、「やっぱ情熱がある人(”狂人”のソフトな言い換え)は違うな!」と思ってたら、蜘蛛男さんが桁違いの暴力を引き連れ空気を一気に塗り替える。
と思ってたらライダーマン参戦で窮地を脱し、「今ッ!?」な過去トークから真実の愛がぶっ放され、怪人が真の姿を顕にする。
笑ったりビビったり、緩急激しい展開の中に異様なメリハリが効いてて、大変いいエピソードだった。
ちゃんと愛が勝ってるのが、とても良いなと思う。
命がけで怪人と殺し合いしてる最中、急にライダーマンへの思い入れを長尺で語りだす三葉の異様さに飲み込まれる回だが、戦闘員瞬殺で人間の枠を超えた強さを見せたライダーワナビ共を、味のない冷徹な暴力で圧倒する蜘蛛男さんの迫力も凄く良かった。
奇人たちのドッタンバッタンに趣を感じ、語り終わるまで黙っててくれる風流も宿していて、人さえ殺さなければとても良い人だ。
でもまぁ、生粋のバケモノなんで人間ドロドロにして証拠隠滅するんだけどさ。
ここら辺の不気味さと可愛げの同居は、この作品らしい味わいだなぁと思う。




そんな彼を圧倒的な脅威として描くべく、気合の入ったバトルシーンがしっかり描かれていたのは良かった。
やっぱ場の雰囲気を掴んだやつのBGMが鳴るシステムは、誰が主導権を握っているのか凄く分かりやすくしてくれて、凄みバトルの側面が大きいこの作品のアクションと、メチャクチャ相性が良い。
それもこれもTeddyLoidの劇伴が冴えまくってるおかげなので、力入れるべきところに力入れれてるなと思う。
愛と定めに引き裂かれた女の、顔面から溢れ出る汁とかね…。
ユカリスの顔面芸、ホントお話独自のテンションを体現してくれてて偉い。
ライダーマニアゆえの激情とこだわりを叫びに乗っけて、騒々しい力みでぶん殴ってくる東島たちの打撃に比べ、蜘蛛男は一切構えず力まず、冷たく状況を制圧してくる。
戦闘員風情なら圧倒できるだけの戦闘力を支える、東島たちの過剰な思い入れが、どんだけ物理的に強いのか。(そして社会の枠組みから逸脱しているか)
ここまでしっかり描いてきたからこそ、蜘蛛男の体温のないバトルスタイルはよく刺さる。
一葉をぶん投げた剛力投げにしても、兄貴が合気の術理で東島の力押しを制した場面があるからこそ、異様な迫力が出る。
人間が苦労して身に付けなければいけない技。
あるいはそれを超えうる強い思い。
時に思わず笑っちゃう人間味として発露するそれらを、蜘蛛男は生来の剛力と鋼の身体で弾き飛ばし、無慈悲に叩き潰す。
この異質性がしっかり描けている(そしてどっか心通じ合ってしまう、シニカルなユーモアが宿っている)ことで、人間では太刀打ちできない怪物の凄みがしっかり出て、やりたい放題のドタバタやっても緊張感が抜けないのだ。
命がけなんだけども笑っちゃう。
あるいは、命がけだからこそ笑ってしまう。
そういうユーモアとシリアスの境目にある熱を、実は細やかなレトリックを駆使して掴み取り、そういう巧さをメチャクチャな熱と勢いでぶっ飛ばしているお話なのだ。




不倶戴天の敵であるはずの、ライダーワナビと怪人。
彼らが面白い対照をなしているのも、個人的には面白い。
仮面ライダー志願者はお面だの衣装だの、色々乗っけることで「ライダー」になっていくわけだが、蜘蛛男は拳に化けの皮を剥がされ、洗脳を打ち破られスーツを引き破ることで、怪人としての本領を顕にする。
そんな二者が演じる闘いは命がけでありながら、どっか笑っちゃうユーモアが随所に溢れ、平等にド付き合う島村兄弟が示すように、拳は大事なコミュニケーションツールでもある。
命の危機にこそ真実の愛は試され、洗脳を打ち破る愛に脳髄を焼かれたユカリスの顔面からは、ま~た出るべき汁が全部ダダ漏れる。
自分の魂に一切ブレーキを踏まず、本気で人生という戦いに挑む時、人間は異常に力み思わず笑ってしまうものなのだ。
ここら辺のユーモア感を、完全なバケモノながら独自の真顔ボケで上手く噛み砕いている蜘蛛男さんは、とても魅力的な存在だ。
ライダーボケどもの異様な熱さを、冷徹なクールさで冷やすことで、よりイケてるメリハリも生まれてきてるしな…。
家族の仇、倒すべき宿敵なのに呼吸があってリズムが生まれちゃってるの、その言葉の真の意味で「プロレス」的で良い。
命がけの窮地だからこそ真のコスチュームに着替え、颯爽乱入キメてピンチ救ったはずなのに、三葉は熱い自分語りを空気読まずに敢行し、蜘蛛男さんが本気出す…「変身」する隙を与えてしまう。
そこでブレーキ踏めない業を持つからこそ、極度のライダーオタクたちは戦闘員をぶちのめし怪物に殺されない、人間離れしたパワーを得てもいる。
殴ったり殴られたり腕折られたり、島村兄弟がなんだかんだ仲いいところが好きだし、バイトのJKに手ェ出すヤバ店長が、真実愛の戦士だったのも良かった。
結婚or惨殺、中間地点が一切ない一葉兄貴のライダーバカっぷりは、彼の逸脱と本気を示し、三葉の本気を問う良い問いだったなぁと思う。
あの問いかけと全滅の危機が前に立つことで、三葉はファミレス店長として社会に馴染める器用さを投げ捨て、ライダーマンのコスプレキメたヤバい戦士として、ユカリスを愛する一人の男として、本当の自分に「変身」出来た。
仮面を被ることでしか、日常から離れた異様な戦場に身を置くことでしか、真実の自分でいられないバケモノが、闘いの中己を吠える姿はしかし、異様に眩しい。
この嘘のない本気っぷりが、思わず笑っちゃう勢いを生んでもいるわけだが…。
まぁそういう風にしか生きられない連中が、バケモノとして生まれついた存在と向き合う中輝かせる魂には、異様ながら真正な自己実現のきらめきが、確かにあるのだ。

まぁそんな事言うたかて、眼の前で本性顕にしたマジの怪物相手に生き延びないと、結婚もライダーもないわけだが。
「どうしてお前らは命の危機が迫ってるのに、そんなに嬉しそうなんだ…」と、思わずツッコまされるライダー廃人どもが待ち望んでいた、命がけのワンダーランド。
その眩さに比べりゃ、生き死にも常識も大したこたぁない。
社会に馴染めず戻れないボケどもが、脱輪したまま異様な加速を見せているこの非日常バトルの果てにどこにたどり着くのか、来集も凄いものが見れそうだ。
正気にて大業はならず、ライダーバトルはシグルイなり。
次回も楽しみ!