輪廻の獄を抜け出すために、銀の鍵に叡智を捧げよ。
ループ構造からの出口がぼんやり見えてくる、グノーシア第4話である。
そろそろ推理投票処刑交流襲撃の繰り返しに慣れてきて、ラキオも画面の外で吊るされるようになってきたが。
宇宙人狼に勝ってもループに抜け出せない事実が判明してから、一生懸命人狼やって銀の鍵ゲージを高め、ループを抜け出す大目的がセツによって示された。
…んだけどもそのセツが倒すべきグノーシアで、ループ仲間の絆に絆されて掟破りのグノCOブッコみ、それを知ってなお主役が無実のステラを吊るという、小ゲームの基本ルールを裏切ったゲームが展開された。
その前の周回では夕里子の異様なスペックと、一周目にラキオを吊れなかった結果主役が即襲撃されて脱落という、これまた初お目見えの展開に。
「ああ、こういうゲームでこういう世界観でこういうキャラね…」という予断を、誰も信用できない緊張状態の中で深く埋め込み、それをひっくり返して衝撃を生み出す話の運び方が、相変わらず巧みなお話である。
何が本当なのか、誰を信じたらいいのか。
何も解らない状況だからこそ、目の前にぶる下げられた予断には飛びつきたくなるし、すがりついた糸を切られたときの衝撃もデカい。
でもそれが裏切りではなく、新鮮で楽しいものだと感じられる語り口がさすがだ。
銀の鍵関係の設定が明かされることで、人狼ゲームの勝敗それ自体ではなく、「ループを繰り返す中で仲間の深い所を知っていき、異質生命体の好奇心を満たす」という大きな目的も見えてきた。
それを成し遂げるためには生存時間を増やさなければいけないわけで、一周目で襲撃されて脱落しているようでは目的は果たせない。
人としてグノーシアを見破るにせよ、グノーシアとなって人を死による救済に導くにせよ、一回一回のゲームを真摯にやり切ることが大事なのだ。
その上で周回ごとの生き死にを真摯に受け止め、過剰に”ゲーム”にしない倫理観の維持も求められるので、ピーキーなバランスで成り立っとるな…。
僕らの感情が乗っかる窓としてのユーリが、すごくナイーブで誠実な描かれ方をしていることで、ここら辺の柔らかさが新鮮さを失わないまま保たれている感じはある。
コールドスリープに寝ている間の襲撃と、決定的に生々しい遺骸を描かない”死”の描き方にしても、もし生身の死体が描かれてしまったら過剰に絶望してしまいそうな所を、ギリギリ”ゲーム”に保つための工夫…といえるだろうか。
あり得ないループが実際発生してしまっている以上、それを超えていく契機は繰り返される疑念と処刑にしかなく、しかしその繰り返しですり潰される命に過剰に入れ込めば、もう出口のない旅から抜け出すことは出来ない。
ここら辺、周回前提のローグライト・アドベンチャーというゲームジャンルを生かした構造だと思うけど、アニメになってもそのバランスが保たれるよう、見せ方を工夫してくれているのがありがたい。
新キャラは「コイツはこういうヤツ!」と決めつけて安心したくなる怪しさと、それを超えて踏み込めば新たな発見が待っている期待感が両立している。
何気ない交流の中に大きなヒント(と思えるもの)が隠れていて、それを描写の中から自力で見つけたときの嬉しさ、思わぬ角度から真実で殴られたときの驚きが、アニメの中でしっかり元気だ。
ここらへんのヴィヴィッドなサスペンス力は、やっぱ凄いなと思う。
例えば戯けてエッチなSQちゃんが「生後一年の箱入り娘」であることを自供したけども、これが真実何を意味しているかはまだ分からない。
星と時を飛び越えていく恒星間宇宙船が舞台で、グレイにイルカに首から猫人間までいる不可思議な世界を舞台にしている以上、何が起きてもおかしくはないのだ。
ここら辺のSF的常識はずれでもって、こっちの「あーそういうこと?」をひっくり返してくる物語的地雷は、恐らく全キャラクターに埋め込まれている。
そういう「掘っていく理由」がないと、全キャラと対話し好感度を高め、銀の鍵ゲージを埋めていく行為を、ループ脱出構造に組み込んでも機能しないはずだ。
異様な外見と態度、人狼ゲームの中での強さや弱さが生み出す、個々人への印象。
これを裏切り、あるいは補強するように、一日を生き延びた後の交流があり、白紙の記憶の中で手渡される個別の温もりがある。
それは時にゲームの構造自体を破壊するほど、大きな力をもっている…と示すために、グノーシアと人間両方が人狼ゲームの基本ルールを破り、それでも作品全体が破綻しなかった、今回のループがあった気もする。
繰り返すときの中をたった二人、共に進んでいく仲間への敬愛は、人を殺すバケモノの定めも、それを駆り立てる人の役割も、ぶち壊してしまう。
でもやっぱりそれは、例外でルール違反だ。
二人が「今回の周回、ちょっとお行儀悪かったね…」と、寂しく美しいユーリの心象の中で微笑み合うラスト。
そういう爽やかな秘密を共有し合うには、人狼ゲームは残酷すぎステラの犠牲は重いわけだが。
共犯者であることを確かめた後、ケジメをつけるために自分を犠牲に選ばせるユーリの決断で、上手いことヤダ味が抜けた感じがあった。
あそこでセツとラブラブ生き延びてたら、正直「なんだコイツら…」となっていたんだろうけど、人狼ゲームの摂理と人命の重さに向き合って、人の尊厳を汚さずに果たしたのはすごく良かった。
死によって不正を禊ぐ決断が可能なの、ループゆえの強みだよなぁ。
同時に強い絆はグノーシアの本能を乗り越え、自分こそがバケモノだとカムアウトさせる意志を生み出すことも解った。
その領域まで行けたのは、セツとの絆が初手からバリ高いからだと思うけども、他のキャラとも同じくらい絆を深められれば、不自由な鎖を引きちぎって新しい場所へたどり着くだけの可能性を、皆が秘めているのだろう。
記憶もなく、理不尽な宇宙人狼を強要されている初期状態の不自由が、お互いの深いところへ踏み込んでいくアドベンチャーの成果で書き換えられ、自分たちが自分たちだからこそ生み出せる何かを、たしかに掴み取れる希望。
そういうのを描く回だったのかな、と思う。
そういうキラキラした眩しさは、仲間であるはずの存在を必ず疑い吊るし殺す、残酷な非人間性と必ず隣り合っている。
この物語は不完全な情報化で推理を巡らせ、自分が背負った役割にふさわしい勝利を、他人の命を踏みつけにするゲームを繰り返すことでしか先に進まないのだ。
アドベンチャーパートにおいては、深く知り合うべき大事な存在として扱われる者を、人狼パートにおいては冷酷な計算のもと殺したり、利用したりしなければいけない矛盾。
この相反も、封鎖空間で超倫理的決断を迫られる状況だからこそ、人命の尊厳を問いかけるお話の強力なエンジンだ。
タブーに触れているからこそ、それを生み出す摂理を感じられるのだ。
未だユーリがグノってないので、グノーシアを殺戮に突き動かす価値観がどういうものなのか、まだまだ解んないけども。
殺人者が隣に潜んでいればこそ、「生きていたい」という始原の欲求は掻き立てられ、しかし疑念に満ちたゲームはそれを許してくれない。
だからこそそれぞれどんな風に未来を願い、過去の重荷を背負っているかを知り、ループの先へと受け継いでいく行為は重たい。
ループに巻き込まれたユーリだけが、一個一個の周回で砕かれた命の価値を覚えていることが出来るし、皆で生存できる未来…グノーシアというゲームを終わらせる唯一性を持っている。
これは極めてゲーム的な当事者性を獲得する、妙手といえるだろう。
繰り返す地獄の中、宝石のように瞬く一つ一つの思い出。
今回セツ・グノーシアとの触れ合いと逸脱を描く筆は、それがアニメにおいても凄く眩しいものであることをしっかり描いてくれて、たいへん良かった。
誰かを知っていくことは銀の鍵を満たすためのパラメーターであるだけでなく、かけがえない一つの物語としてユーリの…彼の背に乗って作品世界に潜る僕らの、心に確かに刺さった。
ここからの周回は戦略的な好感度稼ぎであると同時に、各々事情と願いを抱えて船に乗った仲間の奥深くへ入り、当人すら忘れてしまう輝きをたった一人覚えていく、特別な旅になっていくのだ。
銀の鍵という超越的な物語装置を用意することで、個々人との触れ合い、そこで生まれる輝きがけして無駄にならず、疑念と殺戮の定めを乗り越えていく大きな鍵であると示されているのも、凄いなと思う。
グノーシアのルールを乗り越えて、セツはユーリとの絆を守ろうとしたし、ユーリはゲームのルールと人としてのタブーを壊してでも、セツに報いようとした。
その逸脱と意志は、確かに大きな理不尽を超えていく力になりうるのだ。
今後ユーリは今回の思い出を胸に刻んで、もっと色んな人と触れ合い、より残酷な決断を果たし、様々なものを知っていく。
その都度不鮮明な旅の出口が見えてきて、謎めいた世界が鮮明になる。
それはつまり、己と他者と世界を知っていくという、極めて普遍的な物語が、極めて異様ながら効果的な構造の中でしっかり果たされていく、ということだ。
最悪なゲームからの抜け出し方も、隣り合う仲間の真実も、自分自身の記憶も。
何もかも不鮮明なNEW GAMEから、一個ずつ真実のカケラを掴み取って未来へと進んでいく旅路。
それが表層的な残酷さや冷たさと真逆に…あるいはだからこそ、濃厚なヒューマニティに満ちているという感覚を、今回のエピソードからは受け取ることが出来た。
”時空の難破船”つう閉鎖極限状態だからこそ、ここら辺の眩しさがより鮮明ってのは上手いなと思う。
主人公ユーリの描き方が巧いからこそ、この舵取りが難しい物語が成立していると思うんだけども。
アニメの主役として独立した意識を持つ、プレイヤーに紐づいていないキャラクターである”ユーリ”が何を感じ、何を選んだか、適切に描けていることが、彼に対する好感度を高め、信用して視点担当人物に選べる、大きな足場になっている。
その内心を覗き込める唯一性ゆえに、彼の肩に乗っかってこの人狼オデッセイを見守る僕らは、同時にユーリが白紙の記憶に怯え、勝っても終わらない肩透かしに失望し、それでもゲームを続けていく決意を固める過程を、ちょっと遠いところから見守っている。
その白紙の感覚は、”グノーシア”にいきなり飛び込んだ僕の見ているものと上手くシンクロして、共鳴できる感情客体として、立派に機能している。
好きになれるキャラ、その決断を尊重できる人間として描いてくれているからこそ、様々な謎が暗闇の中に蠢き、その一個一個に手を伸ばし輝きに出会っていく過程が、大きな価値を持つのだ。
そういう主役とのシンクロを強める意味でも、人狼ゲームの基本ルールを裏切り、人間として為すべき正解に背を向けてでも、セツという人間に誠実に向き合おうとした今回の決断は、たいへん良かった。
こういう意思の輝きを見せてくれるキャラは、やっぱ好きになれる。
魅力的なキャラや世界を見せるために、透明化された窓としてだけ存在する”主人公”でも、主張が強すぎて視聴者が相乗りするには厳しい存在でもなく。
そんな両極の中間地点で、難しいバランスを保ちつつしっかり未来へと進んでいく存在を打ち立てれたからこそ、色んな意味でギリギリ成立しているこのお話に、心地よく飛び込めるのだと感じる。
ここら辺、ゲームだとプレイヤーの一人称的体験として当事者性を確保できている部分を、アニメだとしっかり三人称的視聴として変換しなきゃ並ん部分で、キッチリやりきったのはつくづく凄い。
普通はもっと透明にするか、シンクロ性を諦めて色を濃くするかだよなぁ…。




というわけで動き出す新たな物語…強めの巫女がいきなり詰めてきたッ!
夕里子の存在感、一周目襲撃エンドのあっけなさを描くためのループだったと思うが、後半の展開を考えると一番大事なのは、「目覚めた時にセツがいてくれない心細さ」なのかもしれない。
同じ銀の鍵に呪われた犠牲者同士、繰り返す運命を共有できる仲間として、特別に心を寄せる相手。
それが自分に寄り添ってくれないと、こんなにもあっけなくゲームは終わる。
つうか夕里子の盤面掌握力が高すぎて、彼女が起きてるループは別個の戦術を立てたほうが良さそうだ。
いままで安定して初手吊りされてた(今回だと、それが正着でゲームが終わっていた)ラキオから、夕里子が目をつけただけでターゲットはしげみちに移る。
ロジックより他者への影響力とカリスマ、嘘を隠し尽くす面の皮が問われる初回において、押し出しの強い態度と世界の真相に近い知恵を持つ夕里子は、非常に強力なプレイヤーだ。
今後周回を重ねていく中で、星の巫女だけが知りうる世界の真実とか、そこにどうグノーシアが関わってんのかとか、個人としての夕里子はどういう人間なのかとか、色々彫り込んでいくんだろうけど。
初めて一周目で終わってしまった今回は、とにかく夕里子つえー! ということだけが印象に残った。
せっかく勝ったのにループが終わらなかった失望感に押し流されて、人狼ゲームに向き合えなかった結果、ユーリは襲撃されて終わった。
気分に負けてやるべきことに向き合えないとどうなるか、描くための周回だったと言えるかもしれない。
この次のループが周回を繰り返す意味とか、追い求めるべき目標とか、そこで生まれる魂の輝きとか濃厚に描く分、「それがなかったときどうなるか」を、色んな角度から切り取る周回だった…のかもしれない。
銀の鍵を満たすべく、未知を既知に変えていく。
誰かの好物から、秘めたる哀しみや痛みまで、他人の内側に踏み込み、色んなことを覚えていく。
せーっかくワケが分からねぇからこそ魅力的な、SF奇人博覧会が眼の前で開催されてんだから、色々関係も深めたいし仲良くもなりたい。
そういう視聴者の願望が、間違ってないよと示しもする第二周回である。
…俺のセンサーはエロ担当とナメてるSQちゃんの戯けた態度が、相当柔らかいもんを必死に護るための防壁だと告げているんだが、宇宙箱入り娘の真実が明かされたときの衝撃、マジデカそうだな…。
このお話はとにかく巧いので、使えるレトリック総動員して読者に適切な衝撃を叩き込んでくるはず。
現時点でSQちゃんから感じられる物語的ポテンシャルが、実際踏み込んだときどんだけ爆裂するかは楽しみだ。




実は前半と同じく一周目で終わってしまう、銀の鍵の真実に踏み込むこの周回。
コッテリ色んなことが描かれてる満足感は、そこに感情の火花がバチバチ散っているからこそで、冴えた瞳の演出がその導火線として、大変いい感じに仕事をしている。
もともと視線に熱と重たさを宿して、言葉以上の感情を画面に焼き付けるのが巧いアニメであったが、周回者たちの絆が冷たいルールを揺さぶっていく今回は、特に瞳の表現が力強く冴えていた。
場面の切り替わりで変化を出せない、密室を舞台としている話だからこそ、こういうクローズアップで魅せれる腕力は大事よね。
自分がグノーシアであることを、標的であり狩人でもある人間に告げてしまう掟破り。
それは銀の鍵に囚われた同士であり、残酷で真剣な人狼ゲームを繰り返す、孤独なプレイヤーとしての絆が生み出している。
この逸脱を聞き届けてしまったステラの動揺(と、それを飲み込んで告発する誠実)や、相変わらず盤面支配力が強い夕里子の鋭い眼光…それを跳ね除けるセツの意志が、それぞれの瞳に良く宿っている。
こういう魂の交錯が否応なく起こる現場に、絶対必要なある種の圧力を、命がけの人狼ゲームをやることで担保している側面もあるか。
本気で騙し本気で語らなきゃ、明日には死んでいる遊技場が、この物語の舞台だ。
セツが汎性であるというSF的設定が、一般的な惚れた腫れたの情感以上の特別さを、ユーリとの関係に宿しているのも面白い。
別に情愛が輪廻をぶち壊す原動力になっててもおかしくはないが、そういう「最後はやっぱり愛だよね!」からちょっとズレた角度で、より透明度が高い想いが二人を突き動かしているのが、独特で面白い。
その異質な特別さは、たった二人永遠を繰り返す絆を際立たせ、銀の鍵を満たすに足りる叡智…誰かと関係を深めて生まれる、愛でもあるものを追う旅の意味を、より強調もしてくれる。
それは与えられた役割、押し付けられたルールを壊すほど、凶暴で強いものだ。




光と影が交錯する、ユーリの心象風景をセツは、あまりに寂しいものとして一度拒絶する。
顔のない誰かが行き交う、虚ろな騒がしさに満ちたセツの心象を見届けた後に、二人は自分たちだけの真実に殉じて新たに進み出す決意を、眩しい光とそこから生まれる影の中で、共に交わし合う。
ルールに則れば、初手COブッ込んだ間抜けを吊って即ゲームオーバーにするべき盤面で、自分を案じて真実を告げたステラを、あえて殺した理由。
ユーリとセツの離れていた心が、触れ合って繋がる瞬間をドラマティックに描ききる、画面構成力の高さにビリビリ来る。
人狼ゲームに勝ち続けても、それだけでループから抜けられないとハッキリした以上、馬鹿げたコロシアイに乗っかってる理由もない。
そういう局面であえて、グノーシア失格のグノーシアと、人間落第の人間が、凄く人間らしい光の中で手を取り合い、「やっぱ真面目に人狼やろう!」と確認する描写があったのは、大きな意味があると思う。
繰り返すループに疲れ果てても、背負わされた役割をやり切り、一秒でも長く意識を繋ぎ、隣り合う誰かの心に深く踏み込んでいく。
その旅には意味があるからこそ、今回ユーリとセツはゲームから逸脱できた。
その価値を自分たち以外の誰かに広げていく以外、ループから出る手段はない。
そしてそんな旅を続けていくためには、残酷な人狼ゲームに真摯に挑み、「勝ち」を目指すしかない。
今後も物語のフレームが維持されていくために、湧き上がる疑問と失望にしっかり向き合って、描くべき眩さを強く瞬かせるエピソードでした。
たいへん良かったです。
グノーシアの衝動も、人としての倫理も打ち捨てれるほど、ループを超えて繋がる絆。
それが今回しっかり描かれたことで、作品に深く踏み込んでいく足場が確保された感じがあります。
この傑作回をどう活かし、未だ全容定かならぬ世界の謎、共に生き延びるべき仲間の素顔を、鮮明に描いていくのか。
次回も、とっても楽しみです。