イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

・アイカツ!:第156話『YOU! GO! KYOTO!!』感想

四年目だ! 販促だ!! それはさておき旧キャラの因縁整理だ!! というわけで、灯ちゃんの初代ルームメイト・服部ユウちゃんの個別エピソードでした。
キャラクターがいろんな事情に振り回されるのが女児アニの宿命とはいえ、『雨漏りで部屋が使えなくなったから』という理由でルームメイトの地位をスミレちゃんに譲り、交換留学生として地方巡礼の旅に放り出されたユウちゃん。
お話しのメインストリームから遮断された功労者に報いるのに十分以上の、可愛くていじらしい、努力と意地の物語となりました。

凡人・大空あかりが本当に凡人だった二年目後半、彼女のルームメイトとして側にいた女の子は、あかりちゃんが主役としてお話しの真ん中に飛び出すタイミングでお話しの袖に下がり、不自然さを目立たさせないために学園を去って行きました。
数字が全てのサバイバルレースをキャラクターに強いり、お話しの都合で個人の物語がねじ曲がるのもアイカツの名物ですし、それに報いるべく美月に劇場版を、しおんに第148話を、トライスターに第150話をそれぞれ用意するのもアイカツ
今回のお話は、そんな服部ユウちゃんに報いるべく、彼女がこれまでどんなアイカツをしてきて、そこにどんな思いが込められていたのか、丁寧に追いかける展開になります。

あかりちゃんがお天気という武器を手に入れたように、旅キャラという強力なフックを手に入れていたのは、彼女の成功に説得力を出すいい流れでした。
ぶっちゃけユウちゃんの諸国行脚は制作上の都合以外の何者でもないんだけど、そこをひっくり返して魅力に変える今回の話運びは、なかなか頼れる豪腕。
こういう開き直りが、色々なものに振り回されるシリーズアニメには大事だと思うわけです。

ユウちゃんが旅アイドルとして頑張ってました! というだけなら『ハイハイ、後出しのアリバイ作りお疲れ様です』で終わるんですが、京都でのテキパキとした仕事ぶりには説得力があり、実際の番組パートも『こりゃ人気出るわ』というキュートな仕草、衣装、表情。
あまりに大きな空白を埋めるのには十分ではないかもしれないけど、ユウちゃんの充実した今を見せるのには余りある、良い描写になっていました。
やっぱり有無を言わせぬ絵の説得力があると、話運びもスンナリ飲み込めるなぁ。
自分で移動の手配するどころか、ルミナスというゲストを出しにあまふわまでブッキングしてくれる中学二年生って、セルフプロデュース能力が基本のアイカツ世界でも、かなり稀有なんじゃなかろうか。

それ以上にユウちゃんの物語の足場になっていたのは、あかりちゃんへの複雑な思い。
ただの仲良しという枠を超えて、凡人がアイドルになっていくその端緒からずっと見つめていたからこそ抱く、『置いて行かれた』という焦燥感が、ちゃんと言及されていました。
アイカツのルールに従って絶対に明言されないそれに背中を押されて、先に走って行ってしまったあかりちゃんに追いつくべく、自分なりのやり方で走りだしたユウちゃんの、今の姿。
それをしっかり切り取り、あかりちゃんに受け取らせてくれた今回の話は、後出しのアリバイ作りを遥かに超えた充実感がありました。
あかりちゃんへの焦燥感・敗北感というプライドに纏わるエピソードを、あかりちゃんが眠った後に語らせる柔らかさってのは、僕はとても好きです。


ユウちゃんが見上げる星になったあかりちゃんも、本当にユウちゃんと一緒にいると嬉しそうな表情を見せ、スペシャルでハッピーな空気が漂ってました。
何度も繰り返されるハイタッチは確実に何かの暗喩だとは思いますが、そうなるのもまぁしょうがねぇという濃厚な感情表現。
あまりにも切れ味鋭いので、じっと見つめるスミレちゃんの『殺すか……』オーラも尋常じゃなくなってたけどね。
ユウちゃんと出会って開口一番『お前、京都で降りるんだろ?』とジャブを入れる所とか、あかりちゃんが寝た後ソッコーで布団かけに行く所とか、今週のスミレちゃんは美しき刃過ぎた。

うまく情報を隠し、関西組の登場が劇中のみならず視聴者にもサプライズになっていたのも、嬉しい作り。
みやびちゃんの萌え媚びムーブが更に洗練されてて、『関西帰った後相当ここねに揉まれたな……』と推測させるのに十分なみやびーむだった。
久々に見ると、あまふわなでしこのビジュアル的完成度を思い知らされるね。

今回はWステージだったわけですが、二度目のルミナスステージは夕日のライティング表現が非常に切れ味鋭く、また新しい領域にサムライピクチャーズが踏み込んできた印象を受けました。
久しぶりに聞いたキャラメリゼはやっぱり可愛い曲だったし、こういう使い方ならWステージもありがたい。
ユウちゃんのCGモデルは流石になかったけど、しおんたんの奇跡もあったわけで、サムライピクチャーズを信じろ……って感じだ。
アイカツ五年目があるのか、未だ分からんけどさ。

置いてけぼりにされた一年の時間を埋めて余りあるような、鮮烈な感情が迸るエピソードでした。
Wステージで時間を使っているのにこの充実感は、シーンの配置が巧いってことなんだろうなぁ。
来週はおいけてぼりにされたののリサのデザイナー回のようですが、先輩がいない状況をどう乗り切るんでしょうね。
楽しみです。