イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

花野井くんと恋の病:第4話『初めての初詣 』感想ツイートまとめ

 ロマンティックな出会いの先に、強く拡がる恋の波紋。
 花野井くんと恋の病 第4話を見る。

 トキメキ満載なクリスマスを越え、お試しカップルにちょっとずつの変化が蓄積していく様子を描く回。
 ロジカルで理解可能な感覚だけを頼りに生きてきたほたるちゃんが、花野井くんを自分の中に受け入れ思いを花開かせることで、パッションに溢れ言語を越えたところにある新たな感覚へ、だんだん親しんでいく。
 押し付けられ気味だった恋心と化学反応することで、見知らぬ何かが見えてきて、どんどん自分が変わっていく。
 モノローグ多めの一人称視点が、そんな青春を鮮やかに削り出していた。

 

 お話は年明けて初詣行ったりバイト始めたり、ほたるちゃんのハッピー高校生活に花野井くんが寄り添う様子をゆっくり描く。
 ほたるちゃんが見ているもの、感じている感覚をざーさんの声でじっくり切り取ってくれることで、その死角にある花野井くんという異物、彼と触れ合って生まれる恋心という未知を、ほたるちゃんがどう受け入れ、当惑し、引き寄せられていくかも鮮明になっていく。
 なかなか見えない他人の心に、自分の在り方を反射させることでようやく確認できる、自分が知らない新しい自分。
 花野井くんの在り方と同じくらい、そういうモンをほたるちゃんが知っていく物語である。
 めっちゃ正統にジュブナイルだな…。

 メイン二人の関係をクリスマスまでで分厚く描いた結果、カメラを横に振る余裕が出てきて、ほたるちゃん以外には優しくない(と、自分で思い込んでいる)花野井くんが描かれた。
 愛情を注ぐ相手を限定することで、一心不乱に重たい感情を届ける激ヤバスタイル…というには、お婆ちゃんも助けているし牽制の仕方も可愛いもんだし、ほたるちゃんの意思も尊重しているしで、花野井くんは全然バランスが取れた生き方していると思う。
 ここら辺のバランスがぶっ壊れた博愛気取りのエゴイストが世間には山盛りいるわけで、視野狭窄な愛を自称しつつも、自分と相手がどこにいるのか、ちゃんと見えてる花野井くんは偉いよなー。

 花野井くんが結構紳士的に自分との距離を探り、欲しいものと与えてくれるもののアンバランスを自覚しつつ、自分は恋人(お試し)が求めるものを手渡そうと頑張ってくれる様子を、ほたるちゃんもしっかり見る。
 それに報いる正しさと同じくらい、花野井くんだけを求める熱いエゴが少女の中には燃え始めている。
 しかし清く幼く美しい場所しか知らなかったほたるちゃんにとって、特別な誰かを(情欲を微かに交えつつ)求める気持ちは馴染みがないもので、当惑しつつそれがどんなものか、噛みしめるように花野井くんとの距離を縮めていく。
 そのおずおずと伸ばす手つきが、なんとも純情で可愛らしい。ピュアだなー。

 

 与えすぎていた花野井くんは、自分がしてほしいことをノート越し求めるようになり、受け取りすぎていたほたるちゃんは、未だ痛む自分の過去を曝け出して、人生の柔らかな部分を共有するようになる。
 アンバランスだった関係性を、目の前の幸せから受け取る実感に応じて修正して、もっと幸せになるにはどうしたらいいのか、自分たちなり考えながら見知らぬ何かに手を伸ばす。
 好きだからこそ良く見て、ともすれば相手自身が気づいていないような欲望や願いに先回りして、一緒に近づいていく。

 そんな尊重と願望のダンスが、爽やかで甘酸っぱい距離感の中に踊っていて、なんだか見ていて幸せだった。
 花野井くんもほたるちゃんも、解らないからこそ解りたいものを、お互いを傷つけない速度と強さで追い求めて、踏み込みすぎれば『ごめん』と誤って後ろに下がって、良い距離感を探っている。
 このクレバーな距離調整が、バチバチ突っ込んでぶつかりまくる痛みを遠ざけ、今っぽい空気感でもって初々しい恋を描く、大事な画材なのかもしれない。
 『情熱的にヒロインを求める、美しくて特別な男』つう属性は、これまでの少女漫画ラブコメの男の子と同じでも、同意と尊重をベースにコミュニケーションを図る器用さが、僕にはなんだか新鮮に映る。
 いやまぁ、花野井くんの他者尊重は現状、ほたるちゃん限定なのだが。

 ここら辺、あまりに公明正大に生きれてしまうほたるちゃんと彼氏彼女していく中で、唯一絶対の相手じゃない誰かにも程よく、敬意を手渡せる器用さを今後学んでいく感じ…なのかな?
 態度のブレーキ/アクセルが極端な、ヤバ人間の恋人として選ばれてる特別感は、ロマンスを発火させるいい材料だけども、作品全体に漂う空気感は換気が良くて爽やかで、あんまそっちだけで押し切る感じがない。
 花野井くん自身にも関心のバランスを取る姿勢がもう見えているし、隣に立つほたるちゃんも花野井くんの重たい愛情と釣り合うよう、自分から歩み寄り何かを手渡す歩み寄りを忘れない。

 

 進んで、下がって、心地よい距離を探って。
 そんな恋の…というか人間関係の根本にある試行錯誤は、相手を好きだからこそ出来ること。
 そんな特別感と、それに全然自覚的でないほたるちゃんのピュア不器用が、微笑ましくも愛しい回だ。
 『なんで花野井くんにだけこんなに前のめりなのかな、おかしいな解んないな』と、新しい自分の取扱説明書手に入れてないまま、真心の赴くまま優しく正しく活きてるほたるちゃん、あまりに眩しく直視できない。
 いい子ねぇ~~~ホント!(ピュアガールに出逢ったときの、ジジイの鳴き声)

 これが恋だと自覚したとき、ほたるちゃんのパッションがどう爆裂するかマジ楽しみだ。
 それは自分の中にある、花野井くんに良く似た部分を真実ほたるちゃんが掴み取って、異物に思えた自分が好きすぎる誰かが、同じ熱を抱えた鏡写しなのだと気づく瞬間になるだろう。
 花野井くんと触れ合うなかで、正しすぎて他人が分からないと自分を縛っていた鎖が、ほたるちゃんから解けていく。
 過去の傷を開陳したことで、そんな未来にも道が拓けたように思う。
 そしてそんな変化は恋心を通じて、与えるばかりで返して貰えてなかった花野井くんに、誠実な釣り合いを教えていくのだ。
 そうやってちょっとずつ、恋の相手とそこに反射する自分の在り方を真摯に見つめながら、変わっていったり取り戻していったりする、凄くオーソドックスな青春物語なのだと分かって、とても良かった。

 

 まーそんな望ましい人間的成長ばっかが世界を埋めるわけもなく、揺れたり傷ついたりもする…のかな?
 この作品世界が想定してるアクシデント発生率、解りたいからこそ解らないもどかしさとすれ違いの強度を、未だ測りかねてる部分があるからなぁ…。
 でもどんな嵐が来たとしても、正反対でありながら相補的でもあるチャーミングな二人を好きになってる自分なら、ハラハラワクワクしながら楽しめそうな感じはある。
 やっぱそういう、キャラとドラマへの期待感、信頼感が作られているかってのは、お話を見続ける上でとても大事だ。
 微笑ましく温かいエピソードを積み上げる中、そこしっかりやってくれて大変ありがたい。

 ぶっちゃけ、ほたるちゃん(≒女)が受取り花野井くん(≒男)が与えるアンフェアなお姫様構造がどう崩れていくのか、探ってた視点が僕の中にもあり。
 微細な波紋を心のなかに積み上げながら、フェアに恋人やっていく姿勢が今回しっかり見えたのは、非常に良かったです。
 『与えるだけの愛、いらないッッ!』って、”泣き虫(クライベイビー)”サクラも言ってたしな…。

 

 あと花野井くんの専売と思われていた、Hotな身体的欲望がおすまし顔の乙女ちゃんにもキッチリ燃えてて、おずおずとフィジカル・コンタクトを測ってきたのもニタニタ出来て最高でした。
 燃えろ、燃えろ…胎の奥で黒く滾るほむらよ…。

 思いっきり振り回せば、関係も心も簡単に壊せてしまえる強い欲望と、どう付き合うのか。
 無いものとして否定すれば潔白に過ぎて無理が出て、首輪無しで暴れさせれば全てを燃やし尽くして。
 人が育つなら必然的に燃え盛る、エロティシズムとも同意と尊重を大事に、良い距離感で向き合えるよう一歩ずつ、間合いを計っていく話なんかなー、と思った。
 バッキバキに欲望滾らせつつも、『触らない』って約束を必死に守って”充電”頑張る花野井くんも、そんな紳士協定を思わずぶち破り、無自覚な恋心に後押しされて身体接触へ踏み込むほたるちゃんも、可愛くて良かった。
 自分たちだけの柔らかさと距離感で、愛欲を抱きしめていきなさいよ…。
 次回も楽しみッ!