イマワノキワ

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ガールズバンドクライ:第4話『感謝(驚) 』感想ツイートまとめ

 ガールズバンドクライ 第4話を見る。

 鮮烈なデビューを果たした”新川崎(仮)”であったが、人にはそれぞれ事情というものがある。
 祈りと呪いの間で引き裂かれそうになりながら、なんとか立ってる難しさを、人生アクセルしか踏まない正論モンスターが学んでいくすばるちゃん回である。
 相変わらずパワー全開で状況を引っ掻き回し、事情を斟酌せず突っ走る仁菜が元気でウゼーが、だからこそ生まれる力強さと可愛げが何を生み出していくのか、改めて確かめれるエピソードになった。
 やっぱ桃香さんの後方姉ッ面が、暴走超特急を肯定的に見るためのスポットライトとして、有効に機能している感じだなぁ…。

 初ステージに浮かれ倒す仁菜は、すばるの脱退騒動にいちいち動揺し、自分の思いを叩きつけ、他人を振り回して突っ走る…つまりは子どもだ。
 バンドとしても人間としても経験値が太い桃香さんにとっては、”よくある事”なアレソレが仁菜には新鮮で、耐性もなく動揺し、だからこそ上手く乗りこなすのではなく思ったままんま生の意見が、ズバンとお出しされる。
 それは青臭くむき出しで、配慮と嘘がないからこそ力強く、ロックンロールを発火させていく一番プレーンでシンプルな燃料だ。
 そういうモンを主役が持っていると、事情ってやつに雁字搦めで、だからこそロックで弾けたいお姉さんたちと、絡めて描く回である。

 

 何事にも新鮮なリアクションを返す、素直で元気な仁菜の様子と、それを『うぜー…』という顔で見つつも微笑み楽しんでいる二人の姿が、三話構成のロック爆弾を正面から受け止めた後に、心地よく響く。
 仁菜が突っ込んで二人が見守る、”新川崎(仮)”の基本姿勢は、暴走ばっかの正論モンスターから力強い真っ直ぐさだけを取り出して、肯定する姿勢を僕らに伝えてくれる。
 仁菜を仁菜らしく暴れさせたまま、その余波を不快には思わせない魔法のタネとして、世慣れた二人が末っ子を愛しく見つめている様子、大人だからこそ囚われる影を仁菜が壊していく様子を積み重ねていくのは、とても有効だ。
 クセ強い仁菜のアクを抜かないまま好きになれるの、ホントデカい。

 同時にこの大暴走は力強くも当然間違っていて、仁菜はブレーキの踏み方も覚えていかなければいけない。
 フツーの青春物語で幾度もコスられた、『ありのままの自分に素直でいること』を上手く捻って、『複雑に折れ曲がった事情と情をそのまま飲み込んで、嘘っぱちの現状維持を続けること』を結論にしたのは、なかなか面白く、このアニメらしい選択だった。
 ある意味”ラブライブ!”以降のアニメだからこその展開と主人公造形というか、『既に鳴った音楽と同じフレーズ、奏でてもしょうがない』と、自作のポジションに極めて自覚的というか。
 仁菜が今学ぶべき答えとして、願いと願いが衝突する複雑さは適切で、とても面白い。

 世界が仁菜が思うほどシンプルではない事実を、メチャクチャシリアスな大問題で教えられると重すぎるわけで。
 仲良くコミカルな脱退騒動のなか、窮屈さと愛着を同時に感じているすばるちゃんの内面と重ねつつ、大人の複雑さを少し学ぶ展開はとても良かった。
 あんだけ良いデビューして即脱退なパンチもあるし、凸凹が噛み合った良い距離感を更に深めていく善さもあるしで、”第4話”に相応しい一手だったと思う。
 俺は”新川崎(仮)”の三人が既に好きになっているので、騒がしくイチャイチャしてもらえると…嬉しいッ!
 欲しい元気さと仲良しが、毎回特盛でお届けされるのは、欲しいところにタマ来てる気持ちよさがあるわな。

 

 

 

画像は”ガールズバンドクライ”第4話より引用

 ノーブレーキで思いっきり突っ込む、仁菜の真っ直ぐ勝負。
 それはすばるちゃんにぶっこむ前に、桃香さんの過去へと切り込んでいく。
 二人の私的空間であるキッチンにおいて、桃香さんが隠したがっている(だから影になる)”ダイヤモンドダスト”の事情と感情。
 光と影を相手取り、二人がどういう距離感で立ち回るかが、過ぎ去った過去に当事者と今のバンド仲間がどう向き合うかを、明瞭に可視化していく。
 普段の騒がしい高速展開が鳴りを潜めて、メロウに鳴らす心理主義的描線が繊細で強靭なのは、やっぱこのアニメの強みだなーと思う。

 何気ない世間話を重ねている時はふたりとも、キッチンの明かりに照らされて、眩しく楽しく。
 そこから暗い影に逃げ込み、ギターの音で自分をごまかそうとした桃香さんへ、バンドの末っ子は真っ直ぐ踏み込む。
 上から興味本位で覗き込むポジションではなく、膝を折り曲げておずおずと、仲間だからこそ憧れだからこそちゃんと聞いておきたいと、桃香さんの陰りに共存する姿勢を見せる。

 そうして聞き届けた、終わってしまった過去は桃香さん自身が自覚しているよりもまだまだ輝いてて、青春を一緒に駆け抜けた仲間との笑顔は、思い出の中で何より眩しいままだ。
 この光は、影の中にうずくまる桃香さんの”今”からは見えにくい。
 当事者だからこそ、複雑な事情と感情が絡まるからこそ自由になれない、魂に癒着した思い出…あるいは想い。
 そこに無遠慮に切り込んで、本当の自分がどんな場所に立っているのか客観視するためのメスとして、青臭い正論モンスターはいい仕事をする。
 仁菜が踏み込み、語らせ、聞き届けたからこそ桃香さんは、クチャクチャに絡まっている自分の気持ちを見つめ直し、影の中に遠ざけて忘れようとしたズルさから、もう一度光の中に立ち直す事ができるのだ。
 その眩しさは、ただ真っ直ぐなだけじゃない屈折の若き鬼を、望ましい方向へ導くための力にもなっていく。
 この二人、結構お互い様なのだ。

 

 仁菜が溢れるパワーを正しく制御できない、暴走モンスター系主人公であるのは、二話でぶん回された川崎モーニングスターで良く解っている。
 自分を暗い場所に追いやったモノとなかなか対峙しきれず、弱くて身勝手な己とも向き合えていない未熟なボーカリストは、あくまで暗い影の中にいる。
 そっから既に抜け出して、青春の痛みから遠く大人びた姿勢で導いてくれる…ように見える桃香さんも、色々めんどくせーモノにアタマ突っ込んで、悩んでる当事者なのだと、このキッチンの語らいは上手く描く。
 そっから仁菜が引っ張り出してくれるからこそ、桃香さんは作品を支える”いい先輩”でいられるのだ。

 ここでの桃香さんの描写は、後々”ダイヤモンドダスト”と正面対峙する時への布石であり、まだまだ根治は先の傷なんだろうけど。
 頼れる先輩の奥に潜む難しさと痛さを、助けられっぱなしの仁菜がしっかり知って、同じ影を共有し送り出せる頼もしさを、バンドの末っ子がちゃんと持っていると書いたのは、今後効いてきそうな良い描写だった。
 仁菜の無遠慮な直線勝負が、時に迂回しまくりの大人に必要なのだと、暴走モンスターの強みと正しさをもう一回描いたのも、主役を好きになれる良い手筋だったと思う。
 色々問題山盛りのめんどくせー奴だが、仁菜には…仁菜だからこそ出来ることが確かにあるのだ。

 

画像は”ガールズバンドクライ”第4話より引用

 そう描いた上で、桃香さんの心に切り込んだ仁菜のスタイルが万能の解決策ではないと、すばるちゃんの事情に踏み込む物語は語っていく。
 唐突な脱退宣言に揺り動かされ、机の下の爆速タイピングで本音を隠していたところから、呼び出されてタワマンの一室。
 すばるちゃんは桃香さんとはちょっと違って、暗い場所から積極的に外に出て、大画面で自分の名前の由来、今感じていることを仁菜に曝け出してくれる。
 モノクロと天然色、過去と現在、祖母と孫、湧き上がる思いと押し付けられた嘘。
 色々違えど確かに重なって、そしてズレている思いの形を、仁菜は目を見開いて受け取る。
 こういう感受性も、確かにロックンロール・モンスターの中にあるのだ。

 家族が自分の味方になってくれなかった、むしろ率先して傷つけてきた仁菜にとって、憧憬と愛着と束縛が重なり合う家族の情景には、見知らぬ美しさがあったのだと思う。
 自分には縁遠いはずのものなのに、それは確かに嘘がない美しさを宿していて、でもそのままでは解決しない複雑さを持ってもいる。
 そういう世の中にありふれた難しさを、仁菜が自分に引き寄せて受け止められたのは、彼女がすばるちゃんのことが好きで、同じく仁菜のことが好きなドラマーが躊躇わず、自分の気持ちを伝えてくれればこそだ。
 そのための象徴装置として、綺麗で大きくてさみしいタワマンと大型ディスプレイは、大変いい仕事をしている。

 

 

 

画像は”ガールズバンドクライ”第4話より引用

 お金持ちでお嬢様で有名人の孫であっても、だからこそ満たされないすばるの影に、仁菜の真っ直ぐな生き方は深く切り込む。
 お互いの事情と気持ちを、クッションに乗せてキャッチボールしたことで、仁菜は(桃香さん相手に良薬になった)自分の真っ直ぐさだけが、世界の正解ってわけでもないことを学び取っていく。

 嘘なく、ただ真っ直ぐに。
 屈折した嘘を重ねる”大人”だからこそ、仁菜の在り方に眩しさを感じているすばるちゃんが、憧れの星のように思いを伝え…ロックンロールの爆弾でなんもかんもぶっ飛ばそうとしたのを、仁菜自身が止めていく。
 そんなブレーキが今、すばると自分に必要なのだと思えたから、仁菜は大事な友だちの手を取って嘘っぱちの方へ、暗い影の中へと引っ込んでいく。
 正論モンスターらしくない、逃げた対応だ。
 でもすばるの中の祖母への思いが嘘ではないと、曝け出してくれた心の見つめて解ったなら、逃げることだって時には必要なのだ。

 この決断が、『演技をする』というすばるの現状(押し付けられた嘘っぱち)としっかり共鳴しているのが、とても良いと思う。
 押し付けられた仮面を引っ剥がして、自由に呼吸をしたいと暴れる気持ちと、その嘘を愛しく抱きしめる心は、引っ剥がしたら壊れてしまうくらい繊細に、確かに繋がっている。
 なら山盛りの嘘を貫き通して、優しく守っていくことも間違いではない。
 そう思い直して、すばるが役者として積み上げていく嘘もまた、誰かが自分の中の本当に出会うための、大事な光になっていくかもしれない。

 

 そんな風に複雑な色で明滅する世界を、バンドメンバーの影や光…それが入り交じる嘘のない気持ちを受け取る中で、仁菜は学び取る。
 ここまで3話、『こういうやつです!』と力強く描いてきたものを、あえて曲げることで変化や複雑さ、共鳴する人生を削り出していく、とても良いエピソードでした。
 いやー…確かに仁菜がモンスターなのは間違いないので、人間社会のやり方も学んで、変わってくれなきゃ困るのよ…。

 同時にあの暴走赤ちゃんが、くだらねぇしがらみ全部ぶっ飛ばして突っ走る爽快感が、作品最大武器なのも間違いない。
 ここらへんを肯定するように、すばるちゃんが底抜けの笑顔でニカーっと笑って話が終わるの、大変良かった。
 迷いも暴走も、間違いなんかじゃない。
 ロックンロールと青春を描く、作品全体を新たに照らし直すような前向きな顔は、正論モンスターと後方腕組み理解者顔が、いてくれたからこそ生まれたのだ。
 悪しざま内い草でドラムを叩いて、イイ話を濁しかねない身勝手をキャラクター自身がコミカルに指摘しぶっ壊すの、めっちゃ上手いよな…アップテンポな萌えコメディを暴走させているようで、相当テクニカル。

 

 間にデビューライブを挟み、前回Aパートと合わせて安和すばるがどんな少女なのか、仁菜と僕らに教えてくれる回でした。
 バンド仲間の過去や事情に踏み込むことで、仁菜が持ち前の暴走パワフルだけではなく、他の戦い方でロックしていく可能性が見れたのは、お話の横幅が広がってとても良かったです。
 でも大人しくまとまってしまうわけではなく、力強い爆走が作品と友達を引っ張ってくれる様子も、楽しく見届けられた。

 助けてられてばっかだった仁菜が、すばるちゃんの悩みをぶっ飛ばす手助けを確かに果たせていたことに、安堵と幸せを感じつつ、楽しい奴らの物語をもっともっと見たくなりました。
 次回も楽しみッ!