イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ルパン三世:第7話『ザッピング・オペレーション』感想

キャラエピソードもだいたい揃ってきたルパン2015、本筋が動き始める第7話。
シリーズゲストであるレベッカやニクスを話に巻き込み、運命のボタンが掛け違って戻っていく様子をスリリングに描いていました。
『イタリアの愛』というキーワードも出て来て、スパイスの効いた短編エピソードだけではなく、話数を跨いでの長いお話も盛り上がってきた感じだ。

今回のお話の仕事は3つくらいあって、MI6のキラーマシーン・ニクスを掘り下げること、メインアクターたちの面通しをしておくこと、そしてシリーズ全体を貫くキーワードを共有させることが、機能的にやっておきたいことでしょう。
それをただ平板にこなすのではなく、ニクスの娘ブリジットをキー・キャラクターとして使い倒すことで、お話しの盛り上がりと同時に展開させる手腕が素晴らしい。
やっぱりお話的な盛り上がり、キャラクターの掛け合いの中で消化していったほうが、お話しの都合というのは飲み込みやすいね。

犯罪組織への潜入捜査、不機嫌な日常風景、小銭稼ぎの宝石泥棒。
全くバラバラのスタートからお話がからみ合い、撃った撃たれたの誤解を解いてお話が収まる展開は、それ自体視聴者を前のめりにさせる魅力がありました。
三題噺的な楽しさといいますか、『こうもバラバラな要素を、どうつなぎ合わせてお話にするのか、お手並み拝見』という見方といいますか。
あれよあれよというまに状況が転がり、バラバラだったお話とキャラクターが一つにまとまって、その内側で分かり合ったり誤解したり、追いついたり逃げたりするアクティブな話運びは、とても面白かったです。

そんなお話をまとめているのは、ゲストキャラであるブリジット。
彼女はみんなが追いかけるトロフィーであると同時に、バラバラなメインアクターたちをくっつける接着剤でもあります。
父ニクスは当然として、社会的な地位のあるレベッカにはファンとして、ルパンには偶然の出会いを活かして、それぞれに渡りをつける仕事をスムーズにこなしている。
レベッカのファン』という要素を活かして、レベッカの夫であるルパンに興味を持つ動きとかは、さりげないトス上げを見せた次元とあいまって、思わず経験点欄にチェック入れるムーブだった。
ミーハーにサインやアドレスをねだったり、あからさまな拐かしにホイホイ乗っかったりする軽薄さも、話をゴロゴロ転がすエンジンになっていて、見事なキャラ立てでした。
くまいさんのティーン女子声も久々に聞いて、耳に幸せだったのも有りがたかったですね。

ブリジットという接点を活かして、今後の展開のために面通しをしまくるルパン-レベッカ-ニクスの三人の手際も、ミドルシーンのお手本にしたくなるスムーズさ。
結婚しているルパンとレベッカ、ガッツリ命のやり取りしたルパンとニクスはさておき、ニクスとレベッカは『袖すり合う』程度の薄い縁しか無いわけですが、小さな接点を丁寧に思い出して自己紹介の手間を省く辺りは、綺麗な流れでした。
ニクスの誤解からレベッカを守るルパンを見せることで、ルパンとレベッカの憎からぬ間柄なんかも感じ取れて、キャラ紹介から一歩踏み込んだ関係性紹介のお話として、とっても面白い。

全員目端が利いて頭が良いので、取り違えが軸になっているストーリーを解いて状況を飲み込むのに、そんなに手数がかからないところがストレス少なくてグッドだ。
もちろんこんがらがった状況は前半を回すエンジンになっているので、ニクスとの対決という別のエンジンが起動するまでは『うっかり』間違える物分りの良さも、スムーズさに拍車をかけていた。
こういう『お話しの都合』はヘタな処理をすると悪目立ちするものですが、今回は癖の強いアクターたちがバラバラなスタートからどう絡まっていくのかという、筋立て自体に興味を惹かれる作りになっていて、巧く楽しさで都合をコーティングした形になっていた。
こういう展開は序盤が終了し、キャラクターを飲み込ませ終えたタイミングだからこその楽しさですね。


ただキャラクターの関係性が捻れ手元に戻る大筋だけではなく、ニクスのキャラクターやシリーズ全体のストーリーラインにも踏み込んでいるのが、今回の食いごたえに繋がっていると思います。
超聴覚を武器とするスーパーエージェントでありながら、年頃の娘に振り回される家庭人でもある。
心臓に負担をかける代わりに世界をスローモーションに出来る異能を持ち、過去に暴走した経験もあるらしい。
今回描写されたニクスの新しい側面は、意外であると同時に腑に落ちるものでもあって、彼というキャラクターが好きになれるような魅力的なものでした。

彼が所属するMI6も何やら陰謀を企んでいるらしく、それを代表するキーワードが『イタリアの愛』
レベッカの個人的な過去にも『イタリアの愛』が関係しているらしく、ストーリー全体を貫く大きな芯が見えてくる要素も、今回のお話には含まれています。
衛星からの監視カットを挟みこむことで、MI6の謀略の手の長さ、なにやら良からぬことを企んでいる感じが巧く出ていたのは、演出の妙味だなと思います。
関係性のエピドードでもあると同時に、キャラクターのエピソード、ストーリーのエピソードでもあるというレンジの広さが、お話しの要としての強度を作り上げている感じが、シリーズアニメを見る醍醐味にあふれていて素晴らしかったですね。

そんなわけで、キャラクターという視点、関係性という間柄、グランドストーリーという立場、色んな物がグルっと回転した大きなお話でした。
お話しの都合を回すと同時に、ニクスのキャラを掘り下げることにも重点していて、エピソードとしての瑞々しい魅力があったのが、本当に良かった。
手際の良さと面白さが両輪になって、一気に走り抜けるような爽快なお話だったと思います。
……ところで五右衛門の個別エピは……あ、来週はルパン名物オカルトエピですか、それも楽しいんで良いんですけども……ええ……。(浪川五右衛門結構好きなので出番が欲しいマン)