イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

プリパラ:第89話『み~んなトモダチ! み~んなアイドル!』感想

ゲームとの連動! 大量の新キャラ!! アク強すぎて制御出来ない濃い目のキャラ付け!!!
色んなものと戦い続けたプリパラ二期もついに最終回、前回情感豊かに話をまとめた分、退場していくひびきとふわりに重点したお話になりました。
気になってた細かい目配せはさておき、安藤やジェンダーの問題など、取りこぼしていた大きな問題をちゃんと回収し、二人のお話はしっかりまとめて終わった印象。
タイトル通りみんな仲良く楽しい、ハッピーハードコアなプリパラの強さが全面に出た回となりました。

今回は悪い子としたまほちゃんを適度にイビりつつ、旅出す彼女が手に入れたものを追いかけていく展開でした。
悪意が存在できない世界律を選びとった”アイカツ!”とはまた別で、プリパラは基本的にネアカでポジティブな世界観が支配する、『明日はきっと良い日になる』と言わんばかりのアニメです。
その前向きさはいつでも救いだったし、キャラに奥行きを出す小さな影にこだわるより、メインテーマに立ち返って明るく終わる話数だというのも、良く分かる。
実際悪態つきつつも、らぁらを軸に世界が押し付けてくる善意と明るさを受け入れ、まんざらでもなさそうなまほちゃんの姿を映像にされると、『ああ、これが俺は見たかったんだなぁ』という気持ちにさせられました。

まほちゃんがずーっと嫌そうなのが僕は凄く好きで、『み~んなトモダチ! み~んなアイドル!』というらぁらの、そしてプリパラの理想は、どう足掻いても今のひびきには認めきれない。
反りが合わない現実だからこそ、ひびきは自己防衛と自己愛を極大化してセレパラで塗りつぶし、他者を利用し使い潰して走り続けてきたわけで、そんな彼女らしい身勝手さが消えてしまうのは、『み~んな』という言葉が持っている暴力性でキャラを殺すのと同じでしょう。
ここら辺はドロシーにも言えますが、ドクズで身勝手な部分をむしろ愛おしく受け止め、現実の泥臭さを取り入れる窓として使いこなす手管は、プリパラの強みだと思います。
そういう強さを否定せず、まほちゃんらしいしかめっ面が終始維持されていたのは、とても良かった。

過去のトラウマは早々簡単に消え去りはしないし、ヒネくれた性格も安易に治りはしないけど、好きな人には素直になれるし、他人の好意も無碍にはしない。
かつて徹底的に孤独になり、世界を自分で塗りつぶすことを望んだひびきに比べると、やっぱ今週のひびきは生きるのが楽そうでした。
ボーカルドール化という現世からの逃避を綺麗に昇華して、プリンセス・ファルルを永遠の憧れとして大事にし続ける収め方は、夢とのつきあい方の描写として結構好き。
大神田校長がそうであるように、ひびきも現実世界で経験を積み重ね時に歪みつつ、輝く時間を求めてプリパラにやってくるわけだけど、電子の世界でファルルは永遠に若く、美しく、幼い憧れとして残り続けるってのは、ファルルの孤独を背中合わせの美しさだろうね。


自分の理想通りには行かない、美しくない現実の中で生き続けることをひびきが選んだのには、やっぱりふわりの存在がとても大きいわけで。
ふわりの中にあるプリンセス性を認めることで、自分の中の女性性を(ギャグの装いを維持しつつ)認め、『女』という生物学的性を『あるがまま』に許容できるようになった取り回しは、プリパラが持っている性差意識の高さを確認できて、好きな収まり方です。
その時餞の言葉をかけるのがレオナであることも引っくるめて、本筋を進める上であえて脇にのけていた『男を装う女の女性性』に立ち返って話をまとめたのは、とても良かったです。

脇にのけてたという意味では安藤もそうで、まほちゃんがエゴイズムを暴走させてはねのけた彼の優しさを、ちゃんと取り戻す時間を最後に作ってくれたのは、必要なピースがしっかりハマった感じがあります。
ひびきがどんなに一人でいたいと願っても、周りの善人たちは今回押し付けた送別会のように放っておいてくれないし、ド屑色をちょっと混ぜつつも夢と希望に満ちたプリパラ世界は、そういう女の子を一人でいさせてはくれない。
『み~んな』というテーマが持っている、暴力性と背中合わせの優しさの良い部分が、(ギャグの装いを維持しつつ)安藤も救い上げてくれたのは、とても良かったなぁ。
すげー単純に、誰かのために必死になってた奴が、その誰かからちゃんと愛される終わり方になったのが気持ちよかったってのも、勿論ある。

先週グッダグダ垂れ流した色んな引っかかりですが、一週間の冷却期間を置いたのと、往くキャラと残るキャラがハッキリ見えたことで、ちょっとは整理できた感じもあります。
あじみ先生話に残るなら、そら簡単に自分の狂気を乗りこなさせて、キャラとして完成させる訳にはいかないよね……ここら辺はそふぃとしおんの身勝手さも同じ。
ストーリーとしての必然性よりも、IPとしての『戦えるっぷり』が重視される女児アニの世知辛さが、なかなかキャラクターが自分の物語を走り切ることを許してくれない事情みたいのを、勝手に感じたりしました。
願わくば、二年目で目配せしていた部分を三年目で掘り下げて欲しいもんだけど、三年目は三年目の物語があるし、なきゃいけないんで、なかなか難しいところだとは思います。

しかしまほちゃんの送別会が賑やかで、楽しく、おバカで朗らかな瞬間として常時演出されていたのは、二年目のプリパラのエンドマークとして、凄く強いことだったと思います。
やっぱりプリパラは、勿論細やかな気配りと繊細な創作意識を土台に据えつつも、『み~んなトモダチ! み~んなアイドル!』という明るい理想を大真面目にやり切るポジティブさが最大の武器。
まほちゃんとひびきの旅立ちを寿ぐエピソードが、”コノウタトマレイヒ”の夫婦漫才感含めてとにかく楽しかったのは、自分たちが何を大事にしてきたかよく解っている、良い終わりだったと思います。


というわけで、二年目のプリパラは一応終わり、一時カメラの前から去る人あり、残る人ありの終わり方となりました。
まほちゃんのお話が終わった後貪欲に始まる三年目の前フリを見ながら、休む暇なんぞ一瞬足りとも与えられない女児アニのハードコアなワークスタイルを思い知らされもしましたが、ふわりとひびき、そして一期の物語を終えた後のファルルのお話は、結構しっかり終わったと思います。
僕はまほちゃんが好きなので、とにかく生きづらそうだった彼女が、自分の性差も引っくるめて周囲を取り巻く色んなモノをすこし受け入れて、生きやすくなったこの終わり方は良かったと思います。

二年目のプリパラはキャラも多く、一視聴者の無邪気な立場から見ても『色々大変そうだなぁ』と感じる部分が多かったです。
拾いきれなかった要素もあるし、逆にキャラクターの物語を完走してしまったように見えて、来週以降の三年目に物語的アイデンティティをどう確立していくのか、余計なお世話ながら心配になるキャラも居る。
二年目で登場して三年目も残るあろみか、あじみ、ガァルルをどう使っていくのかとか、色々気になるところはある。

しかし今回、紫京院ひびきという生きづらさを拗らせた女の子と、彼女に愛され傷つけられ、それを糧にして圧倒的に強くなった緑風ふわりの人生が、より善い方向に収まって終わったこと、その光景が多幸的祝祭として朗らかに進んだことは、とても良いことでしょう。
もう一人のプリンセスであるファルルに関しては、やっぱ第86話でパルプスの生きた花の美しさを前にして己の寂しさを呑み込んだ瞬間キャラが完成した感じがあるし、一期で展開した物語が分厚すぎるんで、あくまで補佐的立場というかね。
しかしファルルの寂しさに正面から立ち向かったのがふわりだということを考えると、やっぱこのこ人格的強度は作中随一であり、まほちゃんが尻に引かれるのも当然ではある。

一つの区切りが終わり、また新しい物語が始まる。
何がどうあれ、プリパラはまだ止まらないし、止まれません。
三年目のプリパラが何を見せてくれるのか、来週からの新展開を楽しみに待ちたいと思います。