イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ジョーカー・ゲーム:第1話『ジョーカー・ゲーム(前編)』感想

Production I.Gが春アニメ戦線に殴り込みをかけるのは、戦中を舞台にしたスパイアクション。
暗くて湿って重たい、いかにもIGという感じの画面で展開するのは、女っ気とアクション完全排除の地道なお話であり、舞台設定と相まって"閃光のナイトレイド"思い出す。
あっちは一応超能力という派手目な要素もありましたが、こっちはガチンコに知略と覚悟で一本勝負って感じのストロングスタイルであり、結構好みな味付けでした。

お話の方は『表向きの歴史の裏に実は……』という伝奇要素よりも、D機関という超人集団を最大のキャラクターとして展開していくスパイアクション要素のほうが強い印象。
まぁアクションって言うには、画面で起こってること地味だけどな……ポーカーと新入りイジリだもんな、今回やったの。
しかし動きのない状態でも結構な重量感と緊張感があり、モダンな美術の切れ味とあいまって良い雰囲気でてました。
作中でも『ドンパチメインのスパイとかまじ三流』と言われているので、暴力はあくまで手段であって、メインは智謀と会話になるんかね。

そういう意味では男を男で煮詰めたような、超豪華声優陣は立派な強みであります、
超強そうな結城中佐(中の人は賢雄さん)を筆頭に、静けさの中に威圧感のあるスパイたちの演技を聞いているだけでも結構楽しい。
陸軍の方のメンバーもあまりに男らしい座組で、24分間最高に強まった渋み漬けになれるのは最高ですね。


キャラの物語としてはあんま動きがなくて、現状佐久間さんが驚き役兼イジられ役のヒロインで、スパイたちが軒並み性格悪いムラハチ野郎だということくらいしか解らない。
佐久間さんは主役のように見えて、スパイのメンタリティとか価値観を見せるためのワトスン役であって、ホームズではない感じだなぁ……真っ直ぐな気位と高い志には好感が抱けるので、そのうち凡人なりのホームランを打つ話が来てほしいものだ。
『癖の強いイケメンに揉まれる、真面目な堅物』っていう意味では"アクティブレイド"のあさみちゃんか、乙女ゲーの主人公みたいな立場だな佐久間さん……。

性格の悪いスパイたちは個性が全然見えてこないが、これが物語の捌き方がマヅいせいか、『個人が特定できるようなスパイは三流』という作中の主張を反映させたものか、第1話の段階では判別しきれない。
それぞれ別の顔、別の服のはずなのに、奇妙な統一性を持っているD機関の連中の爬虫類的な気持ち悪さは、なかなかいい雰囲気だと思う。
一見個性のないクローンのようなエージェントたちが、プロフェッショナリズムの中に個性を滲ませてくれるような話はとても好みなので、いい感じの個別回とか欲しくなるね。

今回は設定と座組の説明で結構な時間を使い、事件の方も発端を済ませた所で引いたので、お話の組み方についてはなんとも言えない。
割と淡々と進んだ感じなんだけど妙に楽しいのは、雰囲気の出し方が良いのと、役者(アニメーションの中の演技含む)を活かす撮り方してたからかねぇ。
飛び込んだ罠をぶっ壊す過程でD機関の超人っぷりが見えてきて、作品が目指すカタルシスの形もわかると思うので、今回見せた毛並みの良さをどう活かすか含めて、来週が楽しみです。

と言うわけで、ニッチな時代のニッチなジャンルを男まみれでお送りする、非常に地味なお話でした。
しかしオイラはこういうニッチに首まで浸かったようなアニメがだ~いすきなので、今後も重たく冷たく湿っている、雨の中のコンクリートのような質感をぜひとも維持していただきたい。
この空気を感じているだけで相当に気持ちいいのは、作品のオリジナルな強みだと思うね。

今週『え? そんなに!?』と驚くくらい『……なんだと!』と言っていた佐久間さんが、来週もどんくらい驚いてくれるのか。
くっそ性格の悪いクローンスパイ軍団は、どういう人間味を見せるのか(はたまた見せないのか)
色んな事が気になりつつ、来週を楽しく待ちたいところですな。