イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

甲鉄城のカバネリ:第1話『脅える屍』感想

ゾンビ! スチームパンク!! 和風!!! 疾走する鋼鉄の城ッ!!!!
好きなもん全部まとめて、美樹本晴彦絵が常時動き続ける超作画でまとめたら、とんでもねぇアニメができちまったぜッッ!!! っていうノイタミナ4月期、勝負の一本。
『進撃のキングゲイナーオブ・ザ・デッド』『もののけエグザムライ大戦Z』などなど色々言われてますが、キチったレベルで細部まで書き込まれた作画パワーと、常時異常なテンションで世界観を作りこむ緊張感が相まって、なかなか新しいアニメ視聴体験でした。
オッサンTRPGゲーマーとしては、やっぱ『天羅万象』と『獣兵衛忍風帖』を思い出すね……三輪さん世界設定で入ってるし。

やはりまず目を引くのは『幕末にゾンビパンデミックが襲ってきたら……』という奇想と、それに説得力を持たせるべく退場に積み上げられた世界設定。
鋼鉄の心臓を持つ屍の軍団、それに対抗するべく握られる蒸気の凶器、死都を疾走する鋼鉄の弾丸、リベット、蒸気、蒸気!!
画面全てが『異質なもの』で埋め尽くされているので、そこに違和感を感じるより先に世界に飲み込まれていってしまう気持ちよさを感じる、パワー勝負の酩酊感が最高に気持ちいいですね。

同時に細やかな設定に拘るのではなく、『人類、マジギリギリなんだよ』という劇的状況を最優先で見せる、ドラマ主義の展開もありがたい。
とにかく画面を血しぶきで埋め尽くすゴアゴアな表現が、美樹本デザインと合わせて90’SOVAを思い出させつつ、ゾンビと死が日常となった極限状況を一発で伝えてきます。
お話が『ゾンビまみれの世界を疾走する巨大列車』という、疾走感とパワーに溢れた場所で進むのも、世界を覆うバイオレンスを強く感じさせて良いですね。
『あ、この街ゾンビに沈むな……』と五秒で分かる街も開幕20分でゾンビパニックであり、舞台となる甲鉄城と同じように、暴力的に疾走するドラマの破壊力がとても高く、興奮します。

この暴力に満ちた世界を彩ってるのが、美麗通り越して異質ですらある作画のカロリー。
アニメにしたらどうしても取りこぼしてしまう設定レベルの情報量を常時動かし続ける、キチったパワー勝負を見事に勝ち切った細やかな作画は、ダラダラ口で説明するより遥かに雄弁に、この蒸気と死体で満ちた世界を語ってくれています。
バイオレンスが炸裂して状況が動くときも、この強い作画が味方になって血液が沸騰する興奮が生まれるので、正しく乗りこなしているなぁという印象です。
蒸気パイルバンカーが炸裂した時、後ろのカーテンを貫通して窄まる描写とかマジ最高だった。


そんなバイオレントな世界で主役を張るのが、蒸気鍛冶にしてカバネリ人間の生駒くん。
別の世界では獣の槍持って正義の為に体張ってる声してるだけあって、ナード野郎かとおもいきや、心臓がビス止めされた覚悟完了主人公でした。
ゾンビ化して腕切り落とすかと思いきや、異形のギミックで全自動スーサイドキメて生き延びるところとか、ほんと鋼の心臓を持っていやがる男です。

何かと世の中の理不尽に抗う生駒くんですが、この狂った世界で彼がアウトサイダーなのは『正気』だからだというのが、面白い塩梅です。
少しでも傷を受ければ奇っ怪な炸薬による自死を共用され、恐怖に怯えた結果守るべき人民すらも殺してしまう、狂った時代。
そんな時代に一度飲まれた負け犬だからこそ、二度と理不尽に屈したくないと願い、実際に暴力を手にして立ち上がる生駒くんの姿には、濃密な魂の迸りを感じます。
またねー、彼が覚悟を見せる時の作画が最ッ高にキマってて、見てて気持ちが良いんだ。

彼が主張しているのは『”武士は人民を守る”という、自分たちで決めたルールを守れ』『人間らしく生きろ。『脅える屍』として生きるな』『カバネに噛まれても、絶望せずにすむ手段がある』『理性を維持し、現実に対抗しろ』という、苛烈なまでに『正しい』主張です。
しかし世界はそれを認められるほど正気ではなく、差別と偏見と恐怖が世界を支配する極限的な状況だってのは、カロリー高い映像に夢中になっていれば、自然と分かる。
生駒くんがアウトサイダーとして苛まれる姿は第1話で幾度も描かれているし、『カバネと同質の存在』になってしまった以上、『正気ではない』世界が彼の『正しさ』を責め立てる状況は、更に加速するでしょう。

この試練を我らが主人公がどう乗り越えていくのか。
狂った世界に『正しさ』を取り戻せるのか。
そんな興味が、生駒くんの決死の生き様(もしくは死に様)を見ていると、ムクムクと湧き上がってくるわけです。
極限状態でもそこにちゃんとあった、小さな人間の幸せをカバネ達は情けも容赦もなく踏み潰していくし、そんな世界を支配する連中は冷酷に他人を押しのけ、自分の生存を確保しようとする。
そんな人類の荒野に全力で中指をおっ立て、暴力と理性で反逆を始めた生駒くんに対する機体と好感度は、僕非常に高いです。
世界の偏見と戦いつつ、カバネという病の駆除方法を模索していくという意味では、このアニメ疫学フィクションでもあんだな……『ワールド・ウォー・Z』原作版やな。

異形の世界観をしっかり描写しつつ、『正気ではない』世界と『正気』故にアウトサイダーとなった主人公の対立を骨太に描き切っていたのは、お話の基本的構図がよく見えてとても良かったです。
今後如何にして、超覚悟決まりまくりのスーパー負け犬は世界とガチンコ勝負し、過去の屈辱を濯ぐのか。
圧倒的な作画に押し流されるだけではなく、根本的なドラマとそれを背負う主人公の魅力がズドンとおっ勃ってるのは、非常に満足度と期待が高まる、良い出だしでした。


荒々しい魂の地金を見せつけてくれたヒーロー・生駒くんに対し、『すっげー! 美樹本美少女が、あらゆる瞬間で破綻なく動きまくってる!!』という感動を産んだヒロイン・無名ちゃんは謎を謎で覆い隠すキャラクターです。
生駒くんが『クソみたいな世界に、人間の証明をぶっ刺す!』という物語のスタートポイントを担当するなら、無名ちゃんはこれから甲鉄城が目指すゴールからやって来た、終わりを担当するヒロインということなのでしょう。
先のことは分からないことなので、彼女の氏素性が謎に包まれているのは当然といえます。

しかし彼女もまた、狂った世界の中で自分の意志を保ち、世界の狂気に対し暴力で対抗できる異質な存在だということは、鳥居が印象的なアクションシーンで鮮烈に印象付けられる。
ガチャガチャと忙しない、それ故に生きるエネルギーの詰まった生駒くんの戦闘に対し、紫電一閃にて首を飛ばす洗練された無名ちゃんの殺陣は、幼い外見に秘められた、彼女の能力の高さを巧く見せていました。
けん玉(この作画も異常だったな)を楽しむ無垢さと、ふわっとリボンを解いた後の修羅の気配のギャップも気になるし、その特権性の理由やここにいる動機などなど、いろんなことが気になるキャラでした。
『お前らこのヒロインよく見とけ……とんでもねぇことになるからな!!』というマーキングをしっかり果たし、今後明らかになるであろう謎に注目を集めたのは、第1話でも成功しているポイントの一つではないでしょうか。

まれい声の手弱女・菖蒲さまとか、生駒くんの同僚とか、『今後極限を駆け抜ける甲鉄城で、ろくでもないいがみ合いをイヤってほど展開してくだろうなぁ……』と思えるメンバーも顔見世してました。
このお話しはゾンビ列車がぶっ込んできて始まったこの修羅場を脱出し、何処かにあるはずの未来にエクソダスを初めて本番開始だと思うので、彼らのクエストが掘り下げられていくのは、ある程度状況が収まってからだろうなぁ。
『世界は死臭と血糊と蒸気と狂気で満載だぜぇ! マジロクでもねぇ!!!!』という挨拶は第1話で十分済ませたので、思う存分ギスギスと罵り合い、人間性のボトムをたっぷりさらけ出して欲しいと思います。


そーんなわけで、弾丸疾走ゾンビパニック幕末スチームパンク超暴力群像劇、良い滑り出しでした。
圧倒的なカロリーで描かれる世界の魅力も凄いし、その狂気の世界をかき分けて行く主人公・生駒くんの鋼の魂もビビッと痺れます。
敗北の経験故に人道を取り戻そうという覚悟と決意を秘めたアウトサイダーが、このクソみたいな状況でどう闘っていくのか。
それを取り巻く人々は正気と狂気の狭間で何を考え、どう動くのか。
この超作画は何話まで維持できて、ゴアゴアな緊張感はどこで内破するのか。(はたまたしないのか)
色んな期待感がむくむくと湧き出てくる、素晴らしい第一話でした。
いやー面白い、凄い凄い。