イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

くまみこ:第2話『険しき道』感想

開幕60秒の桜色空間、深夜の茶の間に大炸裂!!
業の深いくまが可愛い巫女を可愛い可愛いするアニメ、今週はユニクロクエスト。
24分まるまる一つの話をやって、各キャラクターを掘り下げて撮る回でした。
大量の可愛い成分を原液でぶち込みつつも、村の面々が抱えるカルマの濃さがどんどん積み重なって、独特の視聴感となってました。
この砂糖と毒液をないまぜにしたような独特のテイスト……嫌いじゃないぜ……。

アバンで思わず『長っげーよ!!』と突っ込んだ、カルマと情熱を大量に叩きこんだ回想シーンを見ても分かる通り、まちは可愛いです。
可愛いだけのアニメとして逃げ切れそうなくらい可愛いし、逃げ切る気まんまんでむっちゃパワー入れてんだけど、それで終わらず田舎ゆえの過疎っぷりとか、クマとよしおのクソ動物っぷりとか、ヤダ味漂う部分もしっかりやり切ってるところが、巧くお互いを引き立てているように思います。
まちも可愛いだけじゃなくて、相当に良い性格してるからな……ポンコツだし、自分勝手だし、思い込み激しいし……。

このアニメがコメディとして切れ味鋭いのは、このギャップを生み出すためにまちを雑に扱うことを躊躇わないところだと思います。
クソペドクマに無理難題を出され、橋は流され、自転車は爆発四散し、酔っぱらいにはセクハラされ、人の心がわからないよしおにはオモチャ扱いされる。
まちが可愛い可愛い描写一本で押しきれるくらいにパワーを込めつつも、そういう気配を押し流す薄暗いヤダ味もゴリッゴリに強調して、まちがマジでヒドい目に合う様を嘲笑う、暗い楽しみも強調する。
そしてその笑いが抜けない内に、やっぱり可愛い可愛いまちをたっぷり描写する。
この振り幅の大きさと、一気に畳み掛ける攻めの速さこそが、このお話の独特さであり武器だなぁと痛感しました。

稀代の田舎者(を通り越したなにか)であるまちが、どんどん状況を悪化させていくシチュエーションの地滑りも、笑いを生む大事な要素。
暗い愉悦を孕みつつその誤解を煽るクソクマのクソっぷり含めて、まちのトンチキな発想力と、ためらいつつも実際にやって大変なことになる行動力の合わせ技が、お話を加速させる強力なエンジンになってます。
今回の話も、出だしのようなくまみこイチャイチャだけやってたら、最高に甘くて美味しいけど起伏がないお話。
そこから話を転がすべく、くまは慣れない習字をし、みこは『ヒートテック』なる謎のアイテムに思いを巡らし、クソダセェ自転車で事故り、よしおに回収させる。
まちの奇想それ自体が面白いんだけど、それが行動によって状況をちゃんと動かしていることが、このアニメのコメディとしての強さだと思いました。

あと大きく拾わないけど、くすっと笑いを生む細かいネタの鮮度ね。
『まちちゃん、ヒートテックのサイズタグ取ってないよ!!』とか、『ナツ、鼻に墨付いてるよ墨!!』とか、サラッと移して視聴者に突っ込ませるコンパクトなネタの扱いは、細かく場の温度を上げてくれてとても好きです。
『クマの鼻には神経が集まっており、人間レベルで太刀打ち出来る数少ない急所』とか、笑い以外のネタもちゃんとやってるしね……パワー勝負に見える笑いを機能させるためには、細かいテクニックが大事なんだなぁ多分。


無論かわいいかわいいまちちゃんをイジメるだけでは悲しい気持ちになってしまうので、まちちゃん可愛い神輿をしっかり組み立て、日本海沿いの曇天の下を練り歩くような可愛い要素も、たっぷり詰まってます。
クソクマも可愛いまちを溺愛していることが伝わってはきて、まちイジリも可愛さゆえなのだろう……ということは想像できる。
愛があればこそひどい展開も笑って『トンチキ日常の一コマ』として楽しむことが出来るわけで、まちが自転車を漕ぐ脚とか、ヒートテックを着込んだ胸とか、傷だらけの脚とか、ペドさとか、そういうのはただ歪んだフェティシズムだけで生まれているわけではない。
作中のキャラクターと同じように、視聴者もまた『まち可愛い』と思ってほしいからこそ、歪んだ愛情と執着を抱いてほしいからこそ、気合入れて描くわけです。
そしてそれはバッチリ成功している。

そしてさりげなく、しかし注意深く描写されている田舎の田舎っぽさとか、まちのリラックスした傍若無人っぷりとかから感じられる、『これは視聴者から見たら異常事態だけど、作中人物とすれば日常なんだ』という感覚。
トンチキな勘違いと邪悪なクマを含みつつも、この不自由で楽しい暮らしがまちにとっては日の常であり、色々ありつつも心安らぐ瞬間なのだとちゃんと理解できるよう、色々穏やかな瞬間を切り取ってるのも、このアニメの良いところです。
こういう安心感は『衣食住』をしっかり描くことで生まれると思うわけですが、そういえば今回は『ヒートテック』という『衣』を買う話でした。
トンチキながら楽しそうな毎日を覗き見させてもらってるありがたみが、ちゃんと感じられるのは素晴らしい。

可愛いまちが時にヒドい目にあい、時に砂糖細工のように可愛い漬けになる落差と、『可愛いからこそヒドい目に合わす』奇妙な一体感。
そしてトンチキ巫女のトンチキなれど楽しい、平和(?)な田舎の日常。
このお話の楽しい基礎をしっかり見せる、どっしりとしたお話だったと思います。
可愛いまちがただ可愛いだけではなく、エグい部分もあればヒドい目にもあう、世界に過剰に保護されていない女の子だと見せたのは、この子のことを好きになれる大事な一歩だったなぁ。
そしてこの凸凹した扱いにニタニタしてしまうと、まち可愛い神輿最大の担い手であり、同時にまちを一番イジっているナツに心がシンクロし始めるという……上手い配置だ。

今後もクソフェティッシュ力を衰えさせることなく、生々しくイヤーな笑いを研ぎ澄ませ、楽しくて気持ち悪いいい塩梅で進んでいってほしいものです。
いやー、良いアニメ化だなぁホント……まち可愛いし。
……今回の感想、『可愛い』って何回言ったのかなぁ……。(こたえ:24かい)