イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

12歳。:第2話『コクハク』感想

世界のモテたい男子(メンズ)よ! 今モテの最前線は『12歳。』(ココ)にあるッ!
と言わんばかりの、甘酸っぱさとモテ力と夢を詰め込んでカクテルにして押し流すアニメーション、二話目。
素直になれないけど優しくてタフで体貼ってくれる系シャイボーイ檜山くんと、体はでかいけど心は繊細ガラス細工のシンデレラ系女子結衣ちゃんが、色々あった末に恋人になるお話でした。
いやー、第1話に引き続きイベント盛りだくさんの高速進行で、テンポよくて気持ちいいわ。
オッサンの心臓をトキメキで爆破するキュンキュンポイントも山盛りで、女子のモテポインツも学習できて、良いアニメだねこれ。

創作物が現実世界では充足できない夢を果たすというのは、基本的かつ健全な機能でして、このアニメには『大人』に目覚め始めた女子の真っ白な夢が爆推しされております。
このアニメから読み取れる『付き合ってやっても良い男子』は、『顔が良く、清潔感があり、他人のデリケートな問題を尊重し、自己防衛としての恥ずかしさから個人的な問題を貶めず、過干渉にならず、しかし相手のことは本気で思いやってくれ、勿論セックスというシリアスな問題は茶化ず逃げずの適切な距離を常時保てる存在』だ。

……ハードルたけぇマジたけぇ、実現できる存在、世の中にいてるのか……いてるからモテ格差が存在してんだろうけどな。

ここら辺の理想をダブルで体現するのが檜山くんと高尾くんでして、常に女の子の欲求に先回りし、少しサディスト風味すら匂わせつつ受け止めてくれる高尾くんのスタイルと、同じ目線で寄り添いつつ真剣に自分を受け止めてくれる檜山くんのスタイルが、モテの最先端と言えましょう。
高尾くんの恋愛後の先剣術は前回たっぷりやったので、今回は不器用男子体張り系檜山くんの体当たり戦法が、メッキメッキと暴れ狂っておりました。
IQと恋愛IQ両方高い高尾くんと幼い感じの花日ちゃんを組み合わせて『リードされる恋』を描き、バチバチぶつかりつつも優しいケアを忘れない檜山くんと結衣ちゃんを組み合わせて『同じ目線の恋』を担当させる両面取りは、なかなか貪欲だ。
W主人公はテーマやストーリーを2つの側面から切り込んで、物語の立体感が出せるのが強みなわけで、すみ分けがはっきりしてるのは強いわな。

檜山くんはややオラオラな側面があるので、女子がボーイに求める『粗暴なのはいや、想像力がないのもいや、でも時々体張ってかっこいいところ見せてね!!』という難しい要求も、きっちり乗りこなしてくれます。
このアニメ、12歳の視線から社会に飛び交う『女らしさ』の強要と抑圧を既に作中に取り込んでんだけど、同時に恋の理想という形で『男らしさ』の強圧的イメージを再生産してしまっている面が少々見え隠れしていて、なかなか難しい。
『テメーら女のセックスは尊重しねぇ。お前らはあらゆる局面で、性搾取のためのオブジェクトだ!』という、悲しいかな一般化してしまっている男の視線にノーって言いたいのはよく分かるんだが、『暴力は男の仕事! 焦げたクレープも空気読んで褒めて!! そういう男らしさ、時々発露して胸キュンさせてね!!』っていう女性からの欲望の強制もまた、女性がそう感じるように男にとっても時にしんどいのだ。
ここら辺の『男の理想』を強要されるしんどさまで踏み込んで二人のボーイの物語が転がると、すげー面白いわけだが、さてはてどうなるかなぁ。


しかしまぁ、『恋』というのを最大のテーマにしつつも、生活を共にする『隣人』として尊重されたいというベーシックな欲求にしっかり向かい合っているのがこのお話の強いところでして。
勝手に伸びる身長に従い、勝手に顔を出す『性』というデリケートな問題を真剣に、しかし繊細に扱って欲しいという当然の欲求が、悪者になった森くんの扱いに透けて見えます。
オッサンとなってしまった僕にとってそうであるように、やっぱ人類にとってセックスは繊細でめんどくせー話題であり、大事なのに秘密であることに意味がある、不思議なネタです。
触り方を間違えば爆発する地雷のような問題に、否が応でも対面しなければいけない『12歳。』というお年頃にとって、膨らみ始めたおっぱいを雑に扱われることは、魂をぞんざいに扱われるのと同じ。
それはセックスの問題であると同時に、人格尊重の問題であり、他者とふれあう距離感の問題なのだ。
……12歳じゃなくても、女子じゃなくてもそうだとは思うが。

ここら辺のめんどくせー自己/他者境界線をだんだん肌で感じ始めるのが思春期というものであり、性徴のシステム上女子は男子よりもそれが早いので、『男子まじガキ』となるわけだ。
そして、その境界線を時に慎重に、時に荒々しく、圧倒的な適切さで引いてくれる男子が檜山くんであり、高尾くんであると。
彼らは女あしらいが上手いのではなく、人間とのつきあい方が上手いのだな……小学六年生の人間力、マジすげぇ。

素敵ボーイズのモテっぷりを見てて感じるのは、『お前らがいろいろ恥ずかしくて大事な問題(セックス含む)を茶化すのは判るが、大事な問題だから本気で向き合い、素直に感情を表現して欲しい!』というメッセージだ。
そのとおり、大切なことは茶化さずちゃんと向かい合い、それを大事な人と共有したほうが世の中素晴らしくなるに決まっている。
『だが男子……いや大人……いや人間みんな馬鹿でなぁ……その当たり前を頭ではわかっていても、何故か恥ずかしさが先に立って自分をさらけ出せんわけよ……』という感想も、あまりにピュアピュアなお話運びに感じないわけではない。
しかしどんなに弄れても否定出来ない世の中の真実を、世の中と初めて向き合う年代に向かって真正面から言うのはとても大事だと思うし、このアニメはまさにそのポジションをバッチリ担っているわけで、シンプルで強力なメッセージ性は即ちこのアニメの強さだわね。
それをさらに補強する少し捻ったネタを扱うかどうかは、今後次第って感じだ。


とは言うものの常に正解を引き続けてはお話しは盛り上がらないし、発展もしないので、メインカップルたちは自分たちでぶつかり合ったり、自分たち以外からの圧力で障害が生まれたりする。
ここを補うのがお団子頭のまりんちゃんでして、異常なレベルの視野の広さと、空気を完全に読んだ助言の仕方で、やばそうなところをスイスイと切り抜けさせてくれる。
彼女のトス上げ力は半端無くて、『ブラ選び』というナイーブで個人的な問題もこっそりしっかり処理し、素直になれない結衣ちゃんにはそれとなく勇気を与え、お話がより善い結末に収まるよう、巧妙に軌道を修正していました。
こういう頼りになるPC3がいてくれると、色々凸凹はしつつもお話が収まるべきところに収まるという安心感が生まれてくるので、良いキャラだなぁと思います。
……この子もそのうち恋を知るのかなぁ……当事者に為っちゃうとサイドキックとしての性能がなかなか発揮できなくなるので、しばらくは『耳年増な第三者』ポジション堅守だろうなぁ。

そんな感じで、各キャラクターの物語内役割もみえつつ、ふたつ目のカップルが素敵に爆誕するお話でした。
ツンツンしつつも結衣ちゃんの繊細な部分を大事にして、正しい行いを正しくやってのける檜山くんは、高尾くんとはまた違った形で理想のマイ・ボーイであり、結衣ちゃんまじ羨ましい。
主人公たちの持つ小さな『強さ』『優しさ』『正しさ』が、ドラマの中でしっかり見える作りになってるのは、キャラとお話が好きになれるポイントなので、すげーありがたいね。

来週はWデートということで、二週かけてしっかり描写したカップルたちが化学反応し、W、主人公の面目躍如という気配がビンビンします。
取り敢えず状況を整えるべく、イベント盛りだくさんで進んできたストーリー進行が少し落ち着く回でもあるだろうし、これまでの二話では見れなかった物語の手管も出してくるだろう。
『死ね!! トキメキで死ね!!』とばかりに投げ込まれる胸キュン演出がどんだけ冴えるかも含めて、来週も非常に楽しみです。