イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

クロムクロ:第2話『黒き骸は目覚めた』感想

富山の土着性とロストテクノロジー兵器が核融合を起こすPAロボアニメ、今週は主人公ロボ出陣回。
衛星軌道上から攻めてくる戦国メカ軍団でシッチャカメッチャカになってる世界の中で、訳わからんなりにサムライさんと即席バディになり、ナビ任務をこなし、県警本部とかNHKとか新聞社とかぶっ壊しつつも、主人公が敵を撃退する話でした。
サイズ比を重視したロボの見せ方も良かったし、身体感覚を強く感じる戦場組討には緊張感があり、とても良かったです。
アクションの中で自然とキャラも見えてくる作りで、興奮しつつ気づけばこのお話のことが伝わってくる、絶妙な第2話だったと思います。

良いところが沢山あった回ですが、兎にも角にもロボットアニメの華はロボアクション。
対比物を常時画面に捉えることでサイズを実感させる、怪獣映画の文法を見事に自分のものにしつつ、第1話で見せたローカルな土着性をスパイスに使うセンスで良い味付けをしていました。
コックピットブロック兼移動ユニットを『ウマ』といったり、いかにも発車シーケンスしそうなハンガーからのっそりと出てくるところといい、基本文法をしっかり抑えつつ気持ちい捻りを加えるセンスは、ホント信頼できるなこのアニメ。

富山ののどかな風景を武将ロボが侵略する異質性も良かったですし、無駄に市民の犠牲を出さず、自衛隊を噛ませ犬にしない抑えのきいたピンチの見せ方もグッド。
BOSSには歯がたたないけど、中BOSS程度なら全力の飽和攻撃でなんとか、赤い足軽ロボ相手なら互角以上という現状のパワーバランスは、主人公を特別な存在に仕上げるために世界のすべてを間抜けにしてしまうという、ありがちな愚策からうまく逃れています。
名前もない人たちの必死な生き様に敬意を払うお話が俺は好きだし、ある程度の成果が出たほうが、『世界中一丸となって対応するほど、マジヤバい危機』に説得力が出るわな。

主役ロボ・クロムクロの描き方は、コックピットブロックが入ってアカハライモリ色になる気持ちよさといい、ドタバタした発車シーンといい、ちゃんと峰を走る山の抜け方といい、泥臭い説得力満載で素晴らしい。
敵側の人格描写が一切ないのに対し、クロムクロは非常に人っぽい動きを徹底させていて、主役と敵役の温度差をアクションで出すのは非常に良いです。
敵の武将ロボが周辺被害お構いなしで大暴れするのに対し、良いもんサイドであるクロムクロは周囲を壊さぬよう慎重に動いている対比も、中にいる青馬さんの人格描写含めていい感じでした。
先に武将ロボが田んぼに軌跡を描く様子をやっておいて、クロムクロは重力制御で足跡つけないシーンを入れる所とか、細かくて好き。

殺陣の方はバリッバリの合戦組討でして、多人数を相手に斬り合うべく組み上げられた実戦性をうまく表現し、殺るか殺られるかの緊張感と鍔迫りからの息苦しさがしっかり詰まった、非常に良いものでした。
常時飛び回って囲みを破りつつ、体を浴びせて姿勢を崩し、必殺のタイミングを逃さず刺す殺気が常時漲っていて、『戦国ロボという題材で、で見たいもん見れたなぁ……』という感慨を強く受けましたね。
投げで姿勢を崩してとどめを刺す組討術や、周囲に落ちている市電(人間サイズなら石なんだろうね)をぶん投げて隙を作る抜け目のなさで、青馬さんが身をおいていた戦場がどういう場所だったのか、説明しなくてもよく伝わるのが最高。
あれだけ気を配っていたクロムクロが、いざ実戦となると周辺被害お構い無しで大立回りするところも、静と動のメリハリがあり、戦場のヤバさを教えてくれる良い演出でした。
アクションの中に説明が埋め込まれている描写は、血液が熱くなっている隙間をぬって情報が脳味噌に届くので、圧縮率が高くて有り難いね。


そんなメカ戦の合間に、キャラクターたちも沢山描写されてました。
青馬さんはタイムスリップ武士にやってほしいロールプレイをたっぷり演じつつ、『主人公=姫』という誤解は早々に解いて、いわく『私怨』で鬼との戦闘。
時間旅行に戸惑う様子はしっかり見せつつ、クロムクロでしか倒せない脅威への対応を再優先し、自分のなすべきことをまっすぐ果たす迷いのなさは、凄く良かったです。
どうやら『姫』を助けられなかった過去があるっぽいし、超人的能力を持ったサムライというだけではなく、震えや弱さを押し殺して戦う人間味をしっかり切り取ってるのは、好きになれるところだな。

むっちり主人公由希奈ちゃんは、むっちりサービスを随所にはさみつつ、典型的巻き込まれパイロット(仕事の方はオペレーターだけどさ)導入を、文句言いつつこなす。
異常事態に巻き込まれたふんわり高校二年生としては、いきなりロステクロボの後部座席に投げ込まれた状況に混乱するのは当然なんだけど、『よく判んないけど、判る』主人公力を存分に発揮して、青馬さんとの即席コンビはいい感じでした。
この子も震えて怯えつつも為すべきことをしっかり果たしていて、ストレスになるほどギャーギャー騒がないバランスが良いですよね。
才能(血統?)を活かしたオペ子としての活躍も、青馬さんが良いリアクションでほめてくれるのでしっかり目立ってたし、ふつーの子部分と物語に選ばれた主役部分の塩梅が、凄く良かったです。
主人公二人はすげートンチキな出会い方をしたけど、戦闘的な意味でも性格的な意味でも相性悪くなさそうだと感じられるのは、お話全体の道行に安心できてグッドよね。

実は今回、キャラ描写で良いなと思ったのは由希奈ちゃんのママンでして、『国連直属の異質技術研究所所長』という立場に似合った優秀さと、それが自分の中で完結してしまっている性格と、それでも娘のことを大事に思っている人情が同時に伝わってくる、見事な描き方でした。
混乱する状況をちゃんと分析し、有効手をしっかり打ってる才覚は、自衛隊の誤射を防ぐべく手早く根回ししてるシーンを見ても判る。
しかし携帯をうっかり忘れて由希奈の脱出に使われるヌケ作っぷりとか、ぽわぽわな娘を置いてけぼりにしつつも、根っこには愛情がある行動の数々とか、体温のない仕事マシーンではない描き方ができていて、ママンのことを好きになれました。
アクションで視聴者を気持ちよく押し流すのに忙しい中、いろんな側面があるキャラクターをバランス良く、コンパクトに見せる巧さってのが、このアニメの強みの一つなんだろうなぁ。

この二話は結構なジェットコースターで気持よく進んだので、骸という存在の謎とか、敵さんの事情とか、青馬さんの過去とか、大量に撒かれた『?』は話が落ち着いてから回収するのでしょう。
かなり高速なテンポで進めつつも、キャラクターや世界についての情報は的確にアクションの中に織り込まれており、今後解説するときも唐突な感じは薄いと思います。
高精度で独自性のあるアクションをしっかり仕上げつつ、ドラマに必要な要素も随所に盛り込み、それが悪目立ちせずむしろアクションを盛り上げる足場になっている作りの上手さは、何回褒めても褒めたりん。
ここら辺は必要な情報を短い尺で伝えるために、的確な見せ方をしっかり選択している証明でもあるので、お話全体の演出力への信頼感にも繋がるのよね。

と言うわけで、激動の富山市街地決戦でした。
アクション良し、出会いのドラマ良し、戸惑いつつも自分にしか出来ない使命を果たす主人公たちよし。
お話のこの段階で何を見せ、何を説明し、何で視聴者のアタマをぶん殴るのか。
自分たちの武器を徹底して把握し、有効活用した素晴らしい第2話だったと思います。

面白ぇし、キャラ好きになれるし、SF設定練ってあるの随所に感じるし、サムライムーブは泥臭いし、伏線上手く撒いて今後が気になるし。
ホント良いアニメだな”クロムクロ”マジよー。
あ、由希奈ちゃんの清潔感あるムチムチ力はすっげー最高なので、今後も清潔にムチムチしてくださいお願いします。