イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

うしおととら:第30話『不帰の旅』感想

傷つき魂の血を流しても走り続ける少年たちの詩、今週は決戦前夜の状況まとめ。
ジエメイを装った白面が暗躍し、流にーちゃんが敵に回り、HAMMR機関と協力関係を築き、家に帰ってのんびりしようと思ったら黒炎改が襲いかかってきて、超カッチェアーマー着込んでぶっ倒した後、茶番を通じてモチベを確認する回でした。
纏めて書き出してみると、ホント色々起きたな今回!!

全体的な状況としては、白面に踊らされた自衛隊が要石をぶっ壊そうとしているので、HAMMRのオジサンたちが状況をまとめ追加戦力を与え、決戦に向かう準備を整える回ですね。
流兄ちゃんはあくまで挨拶代わりに車の上半分吹っ飛ばし来たくらいで、メインの出番はまだ先。
まぁジュビロ式の『いい笑顔』のインパクトが凄いし、兄ちゃんは飄々として頼りになる仲間だったので、挨拶だけでも衝撃力はデカいんだけどね。
むしろ今回の重点はHAMMRと別れた後、自宅で大事な思い出の品を確認して、物語が始まった場面を再確認することで一年間の変化を確かめるところにあります。

白面の暗躍で記憶が吹っ飛ばされた結果、潮が戦う理由もなくなってしまったように思えるけど、モノという形で戦いの日々はちゃんと残っているし、HAMMRや(今は石だけど)光覇明宗のように記憶を維持して潮を支えてくれる存在もいる。
戦いはかなりのっぴきならない状況になってはいるものの、希望は未だあるということを確認する回だった気がしますね。
厚沢さんが思い違いをして大ピンチに追い込まれているのも、『潮の記憶』という要を奪った上で味方のフリして陰謀を巡らせてる白面の悪辣さのせいだしなぁ……。
ここら辺のロジックがちゃんと整備されてるのは、うしとららしい巧さだと思います。

物語の最初を再び演じることで決意を固め、あの時はいがみ合うだけだった化物と人間が、気づけば相棒になっているという不思議を確認する茶番のシーンは、今回のエピソードの核ともいえます。
ふざけた喜びを共有できるくらいに二人は仲良くなったし、その絆があれば絶望的な状況でもなんとか出来るんじゃないか……と、ちょっと楽観的な気持ちになる、良いシーンでした。
こういう良い話でガードを下げさせた後、本気の絶望を顔面にブチ込んでくるのが藤田先生なんで、全く油断はできんけどね。
『正義は常に尊いけど、世界は常にそれに挑戦状を叩きつけてくる。俺はその両方から逃げん!』という信条をインクに込めてる漫画家二人の作品が、ジョジョとうしとらつー形で同時期にアニメ化されてるのは、何らかの運命を感じるのう。


かつての敵は今の友つーのも少年漫画の王道でして、大暴れ狂科学集団だったHAMMRとの衝突と和解も、さくさくと進みました。
やっぱこのアニメ、いろいろ拗らせた連中が潮と衝突し、分かり合うことで本来の自分を取り戻す構造を持っており、主人公の真っ直ぐな行動が世の中を良くしていくという、物語のベーシックな心地よさが強いわけです。
今回HAMMRと和解したのは、色々解説してくれる彼らが便利な立場だとか、これから激化する戦いをひっくり返す上で、いい感じのアイテムを供給できる立場だとか、色々理由はあるけれども、潮が持っている『敵をも味方にしちまう魅力』を確認する意味合いがデカかったのかなぁ。
それは心の力なわけで、つくづくその足がかりになる『記憶』を奪うという白面の策略は、陰謀としても作劇上の一手としても妙手だといえる。

かつて敵だった時は見せなかった人間味を、欲しい情報の共有やらヘレナ博士の遺影やらでしっかり見せて、感情的なわだかまりもちゃんと潮にぶつけさせて。
『何だ、こいつら良い奴じゃん』としっかり思わせてから協力体制を作るのは、感情の流れる水路がしっかり整備されて、不自然さがない展開だと思います。
ただでさえ色々ぶっ飛ばされてるからな……こういう気持ちの部分が滞ると、色々不都合が出てくるわけで。
『その時は、ボクシングでお相手しよう』とか茶目っ気があってすげー良いシーンなんだけど、前回のヒョウさんとの酒盛りの約束といい、潮が『絶対叶わない約束』を山盛りにしてきてツラい……。

黒炎との戦いはまぁ何だ、HAMMR謹製のちょうかっこいい鎧のお披露目と、蒼月家をぶっ壊しすことで『守るべき掛け替えのない日常』の値段をぐっと上げる意味合いが強いかと。
『石になった坊主たちをぶっ殺すぜぇ!!』っていう脅しもそうなんだけど、かけがえの無いものは危機に晒されてこそその重たさがよく伝わるわけで、『エゲツない奴らにボロッカスにされても、大事なもんは残ってるぜ!!』っていう気分にさせるのは大事だ。
しっかし字伏アーマーのデザイン、マジだっせぇなぁ……。

つーわけで、最終決戦その1に向けて、敵と味方の状況、戦いに挑むモチベーションを確認整理するお話でした。
滑走路をしっかり整えてこそお話しは飛び立つわけで、こういうエピソードをやや駆け足ながらちゃんとやるのは、クライマックスを盛り上げる上ですげー大事だと思います。
麻子を助けるあの人とかあの人とかが顔を見せてないけど、一体どういう再構築をするのかも含めて、迫り来る決戦をどう描くのか、期待が高まりますな。