イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

甲鉄城のカバネリ:第2話『明けぬ夜』感想

いろいろあって待たせたけども、みなさんカバネリの時間です! という感じの第2話。
迫り来るカバネの脅威に急き立てられるように、甲鉄城はボイラーに火を入れ、無名ちゃんはスタイリッシュアクションで無双し、生駒は己の存在証明を血まみれで叫ぶ。
窮地と安息が高速で展開するストーリー、焼き付けられる濃厚な喜怒哀楽の感情、バトルモードも休眠形態も可愛い無名ちゃん、異常なこだわりで描かれる菖蒲様。
第1話で見せた圧倒的な熱はそのまま、弾丸列車と一緒に運命が転がりだす第2話でありました。

今回も前回同様色々なことをやっているエピソードなんですが、まず印象に残るのは二人のカバネリ。
男と女、血まみれの泥臭さと圧倒的なスタイリッシュさ、アウトサイダーと特権階級。
全く立場の違う二人が『カバネリ』という一点で結び合うことで、お互いの特異性をしっかり強調する構図は、とても興味深いものがあります。

前回あまりの肝の座りっぷりに強烈な印象を残した生駒くんですが、今回はその強さと同時に、血も涙も流しまくる弱さが心に残りました。
カバネリとなり、蒸気輸送管の重さも熱さも感じない体に成り果てても、彼は『甲鉄城』という共同体にどうにかして参加したい、社会の中で有用な位置を占めたいという、非常に高度な社会参画の意図を持っています。
彼が生存だけを望むのなら、愚かで哀しい形でも己の存在を社会に刻み込もうとする跳ね橋下ろしは、けしてしないでしょう。
『カバネをぶっ殺してみんなに認められたい』というエゴイスティックな願いの裏には、仲間を殺すカバネをどうにかして倒し、守るべきものを守りたいという意志が確実にある。

しかしこの作品が置かれているのは、同胞であろうと容赦なく切り捨て、死の同調圧を強制してくるハード・コアな世界です。
親友であり、『カバネはウイルスによる感染であり、抵抗不可能な呪いではない』という生駒と同じ世界観を共有しているはずの逞生(『逞しく生きる』ってすげー名前だな)ですら、彼を素直に仲間とは受け入れられない。
守るべきと感じ、守りたいと願う共同体から爪弾きにされ、殺される哀しみ。
今回の生駒には、感情を迸らせ世界を呪う身勝手さよりも、愛するものに殺意を向けられつつも、それを守るために行動してしまうヒーローの悲哀を感じました。

跳ね橋を下ろすべく死地に飛び込んだ彼は自分自身を『赤い血を流す』存在、甲鉄城の中で生き延びている社会の成員と同じ存在として規定し、そんな存在を見捨てて生き延びる申し訳無さを心に刻めと、呪いをかけています。
しかしそこにあるのは、どうにかして愛するモノたちに認めて欲しいという願いと、過去逃げ出したことによりそれが叶わなかった切なさと、それでも己の身を賭して愛するものを守ろうという、強い決意です。
本当は人間のまま甲鉄城に乗って、色々あるけど希望に満ちた暮らしを営みたかったからこそ、彼は一人取り残されて泣くのでしょう。
『俺を認めろ』『お前たちの仲間に入れろ』と叫ぶ姿は、彼が何度も口にした『俺はカバネじゃない!』という言葉よりも遥かに雄弁に、彼の人間性を証明しています。


そんな生駒に一度背を向けてしまった逞生は、二度目のチャンスでようやく守るべき真実に辿り着き、まるでカンダタの糸のようなワイヤーを生駒に向かって投げつける。
それは感動的な光景なんだけど、あくまで安全圏からワイヤーを投げた逞生の救いを、生駒は取ろうとしない。
カバネリの圧倒的なパワーを以って、生駒が身をおいている地獄に足を踏み入れる資格を持っている無名ちゃんが生駒と同じ目線に立つことで、ようやく生駒は甲鉄城という『人間の生存圏』に戻ってこれる。
ここら辺のシビアな認識は、この世の地獄を今後走り抜けていく物語をどう描くか、ちらりと見える良いシーンでした。

第1話では謎の美少女だった無名ちゃんですが、今回は菖蒲様が率いた(っても、お飾りとして右往左往してばかりでしたが)民の先頭に立ち、スタイリッシュカバネリアクションで道を切り開く大活躍をしていました。
必死の形相で足止めて防衛戦してる侍たちと比べると、その軽やかさは圧倒的であり、彼女の特別さが上手くアクションに込められていました……超カッコよかった……。
生駒の超泥臭いシグルイコンバットとも、無名ちゃんのスマートでスタイリッシュな戦い方は良い対比になっているわけですが、あんだけ大暴れしても無名ちゃんは顔が見えきらないです。
その戦闘力の源泉は何なのか、一体何が望みで死地を切り開いたのか、どんな過去と価値観を持っているのか。
分かるのは『無名ちゃんかわいい!!』ってことと、『無名ちゃんマジ強い!!』ってことくらいでして、魂の地金までクッキリと見せた生駒とは、そういう意味でも良い対称を成しているキャラです。

しかし無名ちゃんは生駒のことを何かと気にかけ、飄々としつつも生駒の命を幾度も救っています。
甲鉄城に乗り込む前のカバネの襲撃、跳ね橋を落とした後のワイヤー括りつけ、そして自分の立場が危うくなるだろうカバネリの真実公開。
色々危ない橋を渡る無名ちゃんは、世知辛い世界の中で生駒に優しくしてくれる、好きになれるキャラクターであります。
マジで無名ちゃんと逞生、あと遠くからだけと菖蒲さまくらいしか、生駒に優しくしてくれない世界だからなぁ……。
そんな無名ちゃんが生駒を助ける理由はさっぱり分かりませんが、なかなか面白い形でヒロイン力を積み上げていると思うので、今後の展開が楽しみですね。


正しさと勇気を兼ね備えた生駒を拒絶する世界に、視聴者である僕は反発を覚えるわけですが、しかし同時にそうせざるを得ない厳しさというのも、このアニメは肌で感じさせてくれます。
特にカバネがぶっ込んできてからの凄惨さがとんでもないことになっていて、気合の入った音響と美術がいい仕事しすぎ。
あんだけグチャグチャドロドロな世界なら、そう簡単にカバネと同じ身体特徴を持った連中は受け入れられないし、猛烈な同調圧力でもって『人間の生存圏』を守護しようという選択にも、納得はできなくても理解はできます。
そういう感覚をリッチな作画と音、つまりはアニメーションそのもので分からせているのは、このアニメの強さを正しく振り回している部分でしょう。

あまりにもハード・コアな世界になんとか走りだした甲鉄城ですが、その前途は揚々とは行きません。
あからさまに問題起こしそうなオッサンたちはいるし、クルーは素人同然だし、青い侍はカバネ絶対殺すマンだし、世界はカバネでいっぱいだし、このあと厄介なことになりそうなポイントは山積みです。
一番ヤバそうなのは善人だけど(故に)弱々しい菖蒲様がトップに居ることで、気合の入った作画で超絶美少女なのは良いんだが、さんざん世界の厳しさを叩きつけられた後だとどうしても不安になる。
地獄で孤軍奮闘する生駒を放っておけず、『助けてあげましょう!』と言ってしまう優しさが今後どんな厄介事(と救い)をもたらすのか、非常に楽しみです。


兎にも角にも、急ごしらえの問題含みで甲鉄城は走りだし、二人のカバネリは列車に乗りました。
巨大な乗り物が動き出す疾走感と、お話の開始が上手くリンクする、体温急上昇な序章出会ったと思います。
パワフルでリッチな作画に振り回されるのではなく、音響や美術と合わせて使いこなすことで表現力に変える手綱さばきは、この暴れ馬を乗りこなす製作者の力量に信を置くのに、十分なものだったと思います。

閉鎖された楽園であり、地獄と紙一重の避難所でもある甲鉄城は、兎にも角にも走りだしました。
あまりにも厳しい世界で、甲鉄の城はどのような試練の旅を経て、どこを目指すのか。
人間が人間である証明を色んな意味で奪われてしまった世界で、感情と存在の全てを賭けて戦う生駒は、一体どこに辿り着くのか。
天下に轟く可愛さを誇る無名ちゃんは、今後も可愛いのか。
瞬間的に血液を沸騰させるだけではなく、今後の様々なことに思いを巡らせることも出来る、非常に面白いお話が走りだしたのです。
甲鉄城のカバネリ、来週も楽しみですね。