イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アイカツスターズ!:第8話『小さな輝き』感想

アイドルのてっぺんまでの一日一歩三日で三歩なアイドルカツドウを切り取るアニメ、今週は眼鏡小悪魔小春CHANGのお話。
前回のローラエピに引き続き、これまで主役を目立たず支えてきた女の子に悩むチャンスを与え、思う存分自分らしさに戸惑う時間を作ってあげるエピソードでした。
とにかく前向き活動的なゆめ、何事もそつなくこなすローラに挟まれて美点が目立ちにくい小春ちゃんの、控えめで内向きな魅力をしっかり輝かせるお話で、とても良かったです。

予告を見た時点では新キャラ・真昼ちゃんを掘り下げていく展開かと思いましたが、カメラはずーっと小春ちゃんからブレることなく、地味メガネとしての自分に悩む彼女を捉えていました。
一エピソードの中で何を描くかハッキリしているのはとても良いことですし、優秀なサポーターである小春ちゃんを脇役から引っ張り上げ、その人格を見せる話は今やるべき物語。
登場キャラクターや舞台の解説が一通り終わり、キャラクターの掘り下げが欲しいタイミングを見計らって、いいお話を出してきた印象があります。

時節の追い風を受けて、では中身は? となりますが、これもとても良かった。
夜空パイセンの魔性の魅力に引き寄せられるように、美組に席を置いたは良いけれども、小春ちゃんはビジュアルで勝負するには地味な性格と外見をしています。
グイグイと自分を押し出していかない環境で、ヴィジュアルエリートとして圧倒的存在感を放つ真昼と出会い、気後れしてしまうのも無理がない話です。

しかしその後ろ向きな視線は同時に、静かに状況を見極める知恵や、他人を押しのけず後押しする優しさといった、これまでのエピソードでも発揮された小春ちゃんの個性でもあります。
ゆめやローラが自分の物語の中でそうしてきたように、今回小春ちゃんは道を一旦見失い自分らしさを手放してしまうわけですが、他ならぬゆめとローラの言葉を受けて再び立ち上がり、自分らしく進むことを決意する。
自分が自分であるという確固たる信念があってこそ、ピンチにひるまず何度も立ち向かうという『らしくなさ』もまた生きてくるわけで、他者の支えで迷い路から抜ける早朝のシーンは、やはりとても良い見せ方だと思いました。


今回は小春とゆめの繋がりが非常にクリアに見えたのがとても良くて、ゆめをアイドルの道に導いた頼れる親友としての姿が回想として描かれたことで、二人が共有している時間がぐっと身近になりました。
長い付き合いだからこそ、小春が秘めた分かりづらい魅力をしっかり言葉にして伝え、彼女が自信を取り戻す支えにもなれる。
ドン亀主人公として他人に引っ張られるばかりだったゆめが、他人を引っ張る側になることで立体的な魅力が出てくるのは、前回のローラエピとおんなじ感じです。

幼馴染のゆめだけではなく、学園で出会った新しい風たるローラも、親友を信じて励ます中学生おかんっぷりを全開にしていて、『ホンマこの子ええ子やな……』って感じだった。
相変わらずゆめCHANGの世話も焼きまくりだし、過剰にベタベタはしないけどお互い支え合う、三角形の親友模様がスターズはとても魅力的ですね。
歌組と美組に開いてしまった距離を序盤で見せておいて、小春の特訓に付き合う二人を中盤の軸に据える間合いの操作の仕方が、風通しの良さを産んでるんだろうなぁ。
あと他の子はちゃん付け基本なのに、ローラちゃんだけど『ローラ』呼びなところになんかその、強キャラっぷりを感じるよ小春ちゃん……。

前回はアンナ先生の頼れるっぷりを見せてましたが、競うことに尻込みする小春の背中を静かに、しかし確かに押した美羽先生も、今回良い仕事をしていました。
『お前ら一年はあくまで前座、オーディションは度胸試し。失敗を恐れず、どんと飛び込め』というアドバイスはあの時の小春にまさに必要な言葉でして、そういう助言を的確に出せる先生が美組にもいるという事実は、四ツ星学園という舞台を信頼する大事な足場になります。
子供が夢にむかって真っ直ぐ走る話は、走る子どもたちを見守る助ける大人への信頼感がかなり大事だと思うので、前回・今回と先生たちの地金をコンパクトに見せてくれたのは、すげー良かったな。


小春が追いかける『アイドルの天井』たる夜空パイセンは、今週も圧倒的な色香を漂わせ存在感半端無かったです。
いつも背筋を伸ばして『憧れの先輩』足ろうと努力しつつも、その足掻きを軽やかに隠してゴージャスでいつづける彼女のプライドが、僕は結構好きです。
『あくまで客は夜空のステージを見に来ているのであって、一年のステージは刺身のツマ、ステーキのクレソン』という描き方も、S4と一年トリオの距離を正確に測量することが出来る演出だったなぁ。

ステージの方はアラビアンな空気を取り込んだドレスと、靭やかな腰使いが印象的な新曲でした。
スターズになってから、脚への視線誘導がより強まった気がする……まぁセクシー属性のトップやし、グイグイ視線集められないと説得力無いしな!
しかしここで小春ちゃんのステージがぶっ飛ばされるのは、まぁ話の流れとしては当然ではあるんだが、無印のしおんやユウちゃんにぶっかけられた大量の砂を思い出して、不安にもなるわいね。
女児アニが生きるのはみんなに平等なお伽の国じゃなく、稼いだ銭がシビアに反映される資本主義のジャングルやからな……どうなることやら。

『出来ない』小春に圧力をかける仕事をした新キャラ・真昼ちゃんですが、今回はあくまで顔見世であって、そんなに中身を掘り下げる展開ではありませんでした。
しかし孤高ながらも気立ての良い性格や、ウォーキングを姉の夜空パイセンがずーっと目で追いかけている関係性など、興味を引く要素も沢山ありました。
今回『飴』を渡すことでコネクションを作っていた小春と、やがて来るであろう個別エピソードでどういう絡み方をして、どういう魂の地金を見せてくれるのか、今から楽しみです。
姉妹そろって小春CHANGに惹かれてるところを見ると、香澄姉妹にだけ届くあま~い匂いとか出してんじゃねぇかなあの子。


と言うわけで、地味メガネのサポーター気質を否定することなく、新しいことに飛び込む勇気を優しく称揚するお話でした。
頭に乗っけるペットボトルの大きさで凄みを表現する無茶さといい、とりあえず体動かしてもやもやを吹っ飛ばす体力主義といい、ちょっと無印っぽいお話でもありましたね。
小春の個性を掘りあげつつ新しい挑戦もしっかりさせてて、前回のローラエピといい、個別回のターンに入ってからスターズキレてんなぁ……って感じだ。

メイン三人の掘り下げを終えての次回は、さらなる体力勝負のバラエティ回。
こういう賑やかな話をどう捌くかでスターズ全体の方向性が見える気もしますが、そういうこと抜きにして心底楽しみたい気持ちでもあり。
風雲アイカツ城を舞台に何が飛び出してくるか、期待に胸を膨らませつつ待ちたいと思います。