イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ブブキブランキ 星の巨人:第17話『要塞島』感想

巨大な力が誰のためにあるのか子らに問う、錬鉄のロボット黙示録、今週は要塞島大決戦。
お兄様の死を切っ掛けにシリアスな方向に舵を切ったお話が、三話分は引っ張れそうなネタを一気に消化して加速するお話でした。
心臓使いそれぞれの決断、囚われの礼央子救出とヒロインレース本格参戦、初のブランキ同士による集団戦にギィの陰謀暴露と、本当に色んなことがあった……。
停滞せずガンガン進むのは見ていて爽快感があるので、ここで手に入れた加速を巧く使って欲しいと思えるエピソードでした。

つう訳で、無茶苦茶色んな事が起きた今回。
軸になっているのは英字サブタイトル"What Would You Fight For?"の通り、心臓たちがなぜ闘うかという問いかけでした。
頭空っぽのままノリで走狗になっているエピゾ、悪魔と取引して健常な肉体を手に入れたいレティシア、迷いの果てにギィの陰謀に背中を向けた薫子。
それぞれの生き様が見える中で、主人公のはずの東が一番空疎な綺麗事で動いている様に見えるのは、いかにもブブキ。
でも今回は、自殺しかけた礼央子を止めたときの獣みたいな表情と声色がいい具合に体温感じさせて、すぐさま笑顔の仮面つけ直す必要ないのになぁと思えたぞ、東。

ブランキという圧倒的なパワーを手に戦う理由は一切不動というわけではなく、デカいイベントがあればすぐさま揺らぎます。
あまりにバカ過ぎて、なんにも考えずギィの手先になりかけていたエピぞは、レティシアのピュアな私欲を覗き見し共感することで、彼女のために戦う決意を固めるし、こじらせたブラコンとギィの外道っぷりの板挟みになった薫子は、『死ぬほど嫌だけど、死ぬより良いし殺されるより更に良い』と自分を納得させ、兄との共闘体制を取る。
空っぽのものが充足されるにしろ、ねじれたものをもう一度ねじり返すにしろ、人間が変わるドラマというのはやっぱ熱があるもので、物語上起きている変化にちゃんと体温を通す、良い見せ方だったと思います。

エピゾが相変わらずの、底抜けおバカな所ひっくるめてな!!
あの子身内にすら『お前は馬鹿だから考えるな、心臓は考えない!』とまで言われるバカだけど、根本的に善人で、レティシアの苦しみに共感して惚れちゃう急展開も『まぁエピゾだし……死ぬなよ』と受け入れられるの、キャラ立ってるなぁ。
世の中の道理を突きつけられても変わらなかった純情醜男が恋と出会って、病弱なお嬢様の切なる私欲と心中する覚悟を決めるって、サブキャラが背負うと死亡フラグ以外の何物でもねぇな……死ぬなよ。


薫子が抱えた家族への愛憎はもうちょい引っ張るネタかと思っていたので、今回かなり高速で自分の考えをまとめ、ギィに敵対する方向に行ったのはちと以外でした
礼央子の脱出が成功したこと含め、今回か大胆に要素を使ってきたのは、この先にもう一捻りツイストを用意してあるのか、はたまた燃料制御を間違えたのか……先見ないとわからんな。
実の親父にはネグレクトまがいの扱いされて、父代わりに認めてくれると思ったギィは子供を虐殺するクズ以下のクズで、薫子はホントシンドい生き方してんなぁ……。
そんな中でも、あんま親しいわけでもなかったマクシム達の死に憤り、自分の生存も込みで反逆を決意した彼女の行動には血が通ってるし、そのために肥大化したエゴを飲み込み、兄に協力を要請する泥まみれには、本当の意味でのプライドを感じた。
まるで主人公みたいだぁ……。(当然当て付け)

そんな妹の熱意を受けての東ですが、血を吐くような協力要請をいつもの綺麗な面相で葛藤なく受け取り、ノータイムで死地を任せて礼央子救出に駆け出した。
そういう圧倒的な『正しさ』があーちゃんの事好きになれない理由なんだけども、礼央子の受け止め方はロマンチックかつ血の通ったもので、2クール目真ん中にして彼の素顔が見れた感じがした。
黄金ちゃんもそうなんだけど、このアニメ猛獣のような怒りをむき出しにしたほうがキャラが生きてくる話だと思うので、東ももっと自分を出して怒り、泣きした方がいいと思う……話半分終わってっけどさ。

戦いの理由を問われる今回、主人公・東のモチベーションが一番共感しにくいことが、心臓たちの戦いを並べる中でむき出しになったのは、残念というか残酷というか、なかなか困ったところだ。
身を挺して礼央子を救った理由の『死のうとする時に死ぬなんて、俺は許さない』という言葉の背後にどういうドラマがあるか見えてくれば、彼の行動にも分厚さが生まれて、色々納得がいくと思うんだが、まるで狙いすましたかのように主人公のオリジンだけ掘らないんだよね、このアニメ。
やろうと思えば東を人間臭く描けることは今回証明されたと思うので、主人公にして一番物語から阻害されている東をこそ、今回薫子がぶっ立てたような『泥まみれの存在証明』にぶち込んでやったほうが良いと、僕は思います。

TRPG的な視点で見ると、PC1東がシナリオに熱のない、つくづく借りてきたようなロールしかしないことにブチ切れた薫子が、予定を早めてPCサイドに胸襟を開いてきた展開だもんなぁ……薫子は偉いし、東はもうちょっと卓全体を見たほうが良い。
薫子はキャンペーン途中参加のハードルを乗り越えるため、『PC1の妹で、過去を恨んでいます。そのうちデレますが、しばらくは敵対ロールで推していきます』と足場を用意したのに、挑発しても暖簾に腕押し、デレようにも情のあるところを見せてくれない、ボケてもスルーがちと、手応えのないセッションでストレス溜まってたのだろう。
そこで当初想定していたキャンペーン運営に拘泥せず、状況を転がす最善手に切り替えられる巧さを見習いたいところだ。
まぁ礼央子救出判定で東が気絶したせいで王舞が起動できず、炎帝ごと要塞島に放置されたのは悲劇だがな!
……ギィのクソ人間が優しく取り扱ってくれるわけないけど、ホントどうすんのかな。


これまでは綺麗なお人形さんという感じだったレティシアも、『炎帝ゲットして健康体に戻りた~い! みんなとおんなじ生き方を、自分の足で歩きた~い!!』という私欲にギラつきだして、一気に人間臭くなった。
彼女の願いは身勝手なだけではなく、ある程度納得がいく切実なものでもあり、今回問われた『戦う理由』に良い答えを返したなぁと思います。
ブランキの使用権がギィに握り込まれていて、大人に媚びることでしか夢を叶える手段がないこと、超常すぎるブランキによって死の運命すらねじ曲がってしまう事実が、悲壮感を加速させてるね。

今回は巨大建造物同士のガチバトルも大迫力で非常に楽しかったですが、異常な再生能力を見せる炎帝の魔力にレティシアが引き寄せられ、どんどん引き返せない道にハマっていく描写とかにも活かされていて、アクションの上手い使い方だなと思いました。
ダメージ箇所が赤く赤熱する表現とか独特で良いんだけど、エピメウは胸部ばっかり狙われて、結果ダメージリンクしてるレティシアのおっぱいが強調されるサービスも発生してましたね。
完全体炎帝の圧倒的なパワーと代償の大きさ、メガララの元気いっぱいアクションなど、各ブランキの個性もよく出せていて、非常に良かったと思います。

そして久々の見せ場でたっぷりヒロイン力を発揮し、圧倒的なキャラ立ち健在をアピールした礼央子様。
今後リアル・ロリババアヒロインとして東と絡むのなら、礼央子様存在感で東が引っ張り上げられ、話しが面白くなる可能性も十分あると思うので、今回見せたときめきは大事にして欲しいですね。
東との共同戦線が想像より早く構築されたので、こっからどう転がしていくのか、四天王含めて気になるところだけどさ。

四天王と言えば、新走以外の二人も表舞台に立って、色々大暴れしていました。
空を飛びワンマンアーミーしても、『まぁ先生だし……同じ天才の静流枠だし……』で納得できてしまうあたり、美味しいポジションだな石蕗……。
絶美はギィの秘書に化けて、薫子が裏切るためのトス上げをしっかりやっていて、相変わらず子供大好きですねアンタって感じだった。
あそこで明確に『ギィは子供を食い物にする極悪人』という情報が手渡されているので、薫子の変化も『急だけど無理とは言い切れない』くらいにスムーズにはなってて、いい仕事してんなと感心しました。

ギィ様は自然あふれる美しい農場で『ゴミみたいなブブキもブランキも、みんな死んじゃえばいいじゃな~い』とゴミカスなことをいって、コッチのヘイトを更に燃え上がらせる見事な立ち回りだった。
絵画の如き美麗なな情景の中で、心底反吐が出る差別理論を平然と口にされると、ギャップでなかなか刺さるものがあるな……ヘイトアーツ巧すぎるな、ギィ様。
子供の保護者どころかガキを食い物にする人鬼であることがバレて、礼央子も奪還されちゃったけどもけども、レティシアとエピゾは残ったし、OPで意味深なシルエット見せてる人達もいるし、まだまだボス張れる戦力は確保してる感じか。
ギィ様が心底憎らしいゴミクズ人間で、早々簡単には倒せない巨悪であってくれるおかげで二期盛り上がってる部分もあるので、今後も思う存分ゴミクズして欲しいもんです。


そんなわけで、一気に話が動く節目の回でした。
これで新旧日本チームが合流してギィに対立、炎帝による身体再生狙いのレティシアと、レティシアに惚れたエピゾがギィに協力という構図が明確になったのかな。
ボーボー燃えた挙句敵陣真っ只中に放置された薫子と、今回出番のなかったアジアチームがどう出てくるかは楽しみですね。

じっくり使えば話を引っ張れる材料を一気に使うことで、キャラのモチベーションが見え、人間臭さがグッと深まり、盛り上がりも加速してきました。
『普通』の話運びとは少しズレた展開が魅力となるか、足かせとなるか。
ちょっと体温上げる気配がある主人公・東の変化もひっくるめて、今後のブブキが楽しみですね。