少女終末旅行を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月10日
故障したケッテンクラートの上でチトは焦り、ユーは板金をしゃぶる。飛行機を修理し、他人と対話し、歴史を記録し、下層へと墜落する。
絶望と仲良くなるための幾つかのレッスンを、どっしりとした筆致で書き綴る、いつものように異色回。
と、いうわけで。一話まるまる飛行機の修理をし続けるお話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月10日
小さな欠片を寄せ集め、みんなで頭をすり合わせ、何かが生まれる! という希望を積み上げておいて、イカルスの翼は堕ちる。
あの修理は何だったんだ…という失望感は、絶望と仲良くなるメソッドが身にしみていない証拠であろう。
飛行機が飛ぶ/飛ばない、イシイ(やチトやユー)が生きる/死ぬは、大事だが大事ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月10日
終わってしまって、歴史が継続できないことが確定した世界において、個人が納得して前に進んだり、停滞したりを選ぶこと…狭い自己満足以外、選び取る自由は与えられていない。
今回の飛行準備と墜落は、『目の前の人生を、精一杯生きる』という博報堂あたりがひねり出しそうな、空疎なキャッチコピーではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月10日
何が出来るかは分からないが、とにかく黙っていれば気が狂ってしまいそうだし、実際飢えて死んでしまうので、兎にも角にも手を動かし、もぞもぞと動こうとしただけだ
そういう動物の寝返りにも似た、しかしとても工業的で高度に人間的なあがきを、ずーっと切り取る話だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月10日
プラグを回収し、パーツを取り出し、板金を溶接し、骨組みを接合する。
癒やして、また歩き直す。失敗しても、そこで終わりにはならない。何一つ劇的ではない、世界最後の飛行ドキュメント。
ただただ彼女らなりの現実を切り取る筆は、しかし語らずに妙な焦り…『絶望と仲良くなろう』と言いつつ、形のない希望へ想像力を伸ばしてしまうカルマも切り取ってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月10日
ユーほど現実的/動物的になれないチトの焦燥と恐怖が、薄暗い工場の中で燐光を放つ。
飛行直前の壮行会は、彼女らの絶望と希望のショボさとほの暗さが巧く照らされていて、すごく好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月10日
酒ではなく水で送り出す時点で、イシイの墜落は確定していたのだろうし、チトの肥大化した想像力が見ようとしない『落ちた後』もまた、語らず語られている気がする。
飛行機という鉄の家、どこへでも行ける魔法の切符は、簡単に壊れた。冒頭故障して、幸運にも修復できたケッテンクラートも、多分そういう風に脆いものなのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月10日
この終末世界では、現実の基盤はありえないほど脆い。しかしそこに体重を乗っける以外の選択肢はない。想像を麻痺させる器用さも必要だ
チトは『イシイは下層で元気にやってる』という物語/都合の良い妄想で、死の可能性を遠ざける。ユーはそもそも、未来を考えもしない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月10日
それもまた、絶望と仲良くやっていくメソッドの一つなのだろう。光の方向に想像力を伸ばしつつ、都合の悪い陰りは意識して/無意識に見落とすこと。死を忘れること。
そういう近眼的で必死な生存戦略と同時に、すごーく広い光景も今回、一瞬映る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月10日
狭っ苦しい工場の風景と、飛翔/墜落した一瞬見えた世界のように、イシイは遠い過去の設計図を受け取って、チトの記憶と歴史に未来を託す。カナザワが写真機を託して、画面から去っていったように。
だだっ広い世界で一人、生きて死んでいく。そういう動物的な生き方は別に、ただ現実というだけで絶望ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月10日
はずだが、言葉と想像力を手に入れてしまったヒトは、自分の思いと歴史を世界に刻み込み、継承されることを望んでしまう。己は虚しく死ぬ動物ではないという物語で、絶望と仲良くしたがる
そういう贅沢は、あまりにも人間が減ってしまった終末世界ではめったに許されない。二回も描写されたお風呂シーンのような、魂の洗濯だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月10日
そういう時間を、イシイ個人の、そして長い人類飛行史の臨終前に確保できたのは、一種の救いなのかな、と思う。この慰みも、絶望と仲良くするメソッドの一つか。
イシイが先に飛んだように、チトとユーも墜落するだろう。そこに飛翔は必要ない。終わった世界にはそこかしこに穴が開いていて、落ちるのは簡単だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月10日
そうして、死という一番大きな絶望が隣人に迫った時、彼女たちはどう絶望と仲良くするのか。遠くて近い未来への暗喩にも、みっしり満ちた回だった。
イシイが己の人生を飛んだのを見届けて、少女たちは薄情に去る。食料は少なく、電気は枯れかけだ。動かなければ死んでしまうからこそ、彼女たちは旅行を続ける。終わるまでは終わらないのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月10日
ほんと、物語を簡勁にまとめ上げるキー・フレイズの出し方、使い方が巧いアニメで、一言を色々考えてしまう
カナザワ役の石田彰と同じく、イシイ役の三石琴乃も素晴らしい演技だった。型にはまらず、終わった世界で孤独に歩くヒトの、乾いて湿った内面が巧く声に乗っていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月10日
基本ハスキーな感じなんだけども、妙な湿り気と色香が残響してるバランスが良かったな。効果音含め、音響がとにかくいいアニメ。
そんなわけで、希望の物語を匂わせつつ、すっぱり都合のいい筋立てを拒絶する世界の無関心を、メロウに描くエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月10日
湿り気と乾きのバランスが元々いいアニメなんだが、イシイという魅力的なキャラを配置することで、その強みがより際立ったと思う。来週も楽しみですね。
あ、今週はユーのまんじゅう顔、板金もにゃもにゃ顔、お風呂、電波歌と、俺の大好きな要素しか乗っかってない超豪華版お子様ランチでもあったので、ほんと素晴らしいと思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月10日
ホントマジな~、あの可愛い可愛いまんじゅう顔が一生もにゃもにゃ出来る、きらら見てぇな都合のいい時空だったらなぁ…