このはな綺譚を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月22日
季節は秋、限界女たちのカルマズブズブ煮込みは品切れの季節…というわけで、松本家の奇妙な縁をA・Bに分割してお届け! という回。
時間や人獣、因果まであやふやになりつつも、迷える心を緩やかな幸せに送り出す此花亭の役目がしっとりと強調された、いい奇譚であった。
『今週も前後半分割して、バラエティを見せていく回かな~』と思っていたので、思わぬリンクで話が繋がった時の『そうきたかッ!』感はとても良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月22日
ショタボーイの正体といい、オッサンの本性といい、今回は境界定かならぬ設定を活かしてリードとミスリードを造る構成が、非常に冴えていた。
さて前半、また柚沙弥尼が迷えるナオンを引っ掛け、溢れ出る功徳で道を示す百合色浄霊説話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月22日
岸辺は海と陸の境界線上にあり、また様々な客神が渡来する窓でもある。此花亭とはまた別の意味で、朦朧曖昧とした境地にある場所なので、死にかけの嘘つき少女も流れ着く、と。
礼は嘘と本当の境界線が見定められず、居場所がない現世から放り出される。うっかり生き死にの境界線も跨いでしまったわけだが、そこで出会った人獣不確かなケモミミ少女の超肯定を受けて、彼女の嘘は『幻想』へと変わる。あやふやであることは無益ではなく、捉え方一つで有益な夢へと変わるのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月22日
Aパートだけで終わっていたら、一炊の夢として消えてしまう礼と柚の出会い。しかしBパートで『その後』を描写することで、あの朦朧とした出会いから礼が何を受け取って、自分をどう定めたかも見えてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月23日
時間の条理を飛び越えて、出会いの結果を見せることが出来るのもまた、ファンタジーの力だろう
礼にとって柚との出会いは竜宮城の夢、あるいは臨死体験という『嘘』なわけだが、それは親父さんの支援による芸大進学を経て、絵本作家という職業になり、確かな手触りを持って出版される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月23日
多くの人に共有され、肯定された『嘘』はもはや確かな『夢』。そしてその起因に、『嘘』を善く捉える柚がいる
寄せては返す波に誘われ、幽冥境を超えて帰っていった礼。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月23日
境界の旅館で楽しく働き、曖昧な存在として確かにあり続ける柚。
二人の出会いは淡い夢だが、お互いに確かな思い出を残し、生き方を変えていく。静かな肯定が一瞬の出会いの奥に確かにあって、とても良いと思った。
柚はとにかく生きるのがナチュラルに巧い人格の持ち主で、あらゆる物事の奥にあるポジティブな側面を、的確に見抜いて他者に与える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月23日
持ち前の魂が素直であるし、八百比丘尼の教導も確かなものであったから、生まれた資質だろう。みなが忘れている世界の輝きを、柚は素直な瞳で見つけ直し、伝える。
この『伝える』技術が、柚を人間関係食物連鎖の最強者足らしめている部分で。ただなんとなく『いいなぁ』と思うのではなく、感じた良さを素直に表現し、届くタイミングと言葉で与え、共有出来るからこそ、彼女は陣中の太陽として特別な位置にある
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月23日
アウトプットの上手さと、天然と教導の合わせ子だろう
それは柚一人の強さではなく、柚と出会って『嘘』と『真』の捉え方を変えた礼にも、受け継がれる強さだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月23日
そこで変わったのは、礼に見えている世界そのものではない。それを世の中に受け入れられる形にアウトプットする作家の技量であり、空想の善い側面を受け取るアングルでもある。
この物語は女同士の湿った感情に重点を置きつつも、今回みたいな交流と解放、出会いと変化にも眼が行っている。その横幅の広さはなかなか特殊だし、見ていて気持ちもいい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月23日
Bパートの『その後』も合わせて、奇譚としての鋭さと美麗があるエピソードだったと思います。こういうのガンガン盛っていこう。
そしてBパート。『ケモミミ擬人化』というオタク文法を逆手に取り、視聴者を気持ちよく裏切ってくるショート・ショートである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月23日
オチが分かって描写を思い出してみると、なるほど別の意味が見えてくる。礼が柚から学んだ価値転倒にも通じる語り口で、なかなかに巧妙だ。
少年だけだと甘くふわふわしすぎる話だと思うが、ここでオッサンが良い渋みを出してくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月23日
タバコはスパスパ、態度は荒い、ピンクの綿菓子は煽る。あんまいい印象を抱けないオッサンの事実が見えてくると、スッと話が飲み込めてくる。複数の転倒が響き合うよう組まれている、テクニカルな回だな。
生き死にの境にある此花亭。そこは未練や迷いと向き合い、より前向きに此岸(あるいは彼岸)へ旅立つための宿り木だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月23日
愛ゆえに岸を渡ろうとしないオッサンが、お菊との対話で新しい旅立ちを決意する流れは、境界線にある此花亭の存在意義を巧くスケッチしていて、気持ちが良かった。
他にも自分が死にかけであると気づいた瞬間、紅鮮やかな時期外れの彼岸花が飛び込んできたり、さりげない演出が効いていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月23日
今回は『気づきの喜び』が通奏低音になっている回なので、ああいう感じでハッとする体験を仕込んでおくと、奥行きが出ていいやな。
境界線は色んな所で飛び越えられていて、例えば少年とその本性。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月23日
なるほど、狐が女に化けている主役を考えれば納得の配置ではあるが、気付きまでは巧くブラインドされている。
彼が気軽に『こっち』に来るのは、獣の目は別の世界を見ているからか。とすれば、盲導の仕事につく未来も納得がいく。
あっという間に大人になる少年、先日流れ着いた少女が職業作家になっている不思議。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月23日
時間という境界線も、此花亭では曖昧に流れる。でもそんな不思議が、温かな未来を教えてくれもする。
何もかもかっちり決めてしまうことだけが、幸福の形ってわけじゃない。
オッサンは此花亭と対話して、綺麗に死ぬより、情けなく生き延びることを選び取った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月23日
盲た新しい世界には惨めさも不安もあるが、それを導いてくれる新しい友もいる。その役割が、親に捨てられたと思い込んだ幼い魂を、また導きもするだろう。
そんな感じで、決断と幸福は不思議にリンクしている。
あちらとこちら。道を定める前の一瞬の迷いをすくい上げ、休ませ、一歩踏み出す後押しをする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月23日
此花亭はそういう、境界線上の休憩所として機能していて、意味を持っているのだと、スッと得心できるいいお話でした。柚個人ではなく此花亭という『場』に救済者が広がったのも、いい感じだったな。
あ、オッサンとお母さんの中の人が、幽助と螢子だったのは面白かったです。『伊達にあの世は見てねぇぜ』ってか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月23日
Aパートの波打ち際加減はセイレン第4話っぽかったし、こういう作品の境界を超えた妄想が広がる楽しみも、今回のエピソードっぽくて良いかもしれんな。