メガロボクスを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月8日
泪橋に雨が降る。裏切りの雨、後悔の雨。ようやく手が届いたように思えた、世界のてっぺんへの梯子は、かけられた時から既に腐っていた。
肩を寄せ合い登ってきた仲間が、バラバラに離れていく。運命のゴングを前に、チーム番外地が見据える『あした』とは…。
そんな感じのスーパー溜め回である。己の身一つで孤独に戦いつつ、けして独りではなかったジョーを丁寧に追っただけに、贋作の諦めと告白、サチオの絶望は痛ましい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月8日
同時に贋作が、蠍の毒針を仲間以外の背中に向ける素振りを見せてもいて、苦々しいだけではない。
毎回そんな感じであるが、今回は特に画面が喋って台詞で言わないシーンが多い。ムッツリと言葉を噛み締め、瞳で通じ魂で魅せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月8日
そんな不器用なストイシズムがカッコいいのだと信じて進んできたアニメは、キツめのコーナーも静かに激しく曲がっていく。どっしり腰を落として、行間を読むことになる。
物語は三ヶ月前、贋作と権藤が仕組んだイカサマを軸に回る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月8日
手を取り合い、明日を信じ、過去と未来に半分ずつ体重を載せて進んできたはずの道は、偽物の階段だった。
現実なんてこんなもん、また次に賭ければいいとうそぶいて、燃えたぎる魂をだまくらかす。そんなイカサマ。
差し出されたイヤーセットは捨て去ったはずの首輪であり、青年を『ジョー』ではなく『ジャンクドッグ』に戻す呪いだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月8日
偽物のIDでも、仕組まれた罠でも、ジョーは名を問われて自分で名乗った。己が己であることの証明を、『ジョー』という響き、拳一つに賭けたのだ。
それは他ならぬ贋作が必死に駆けずり回り、自分の命をジョーの背中に乗せて手に入れた切符だった。カエルはサソリを信頼して、背中に載せたのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月8日
その贋作が、もう一度『ジャンクドッグ』に戻れとささやく。そうする以外に道はねぇ、現実を前に妥協しろ、と。
ジョーは贋作にすがりつかない。殴って背中を向け、ムッツリと黙り込むだけだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月8日
しかしその一撃は、血のションベンが出るほど殴られた体より遥かに、ジョーを痛めつける。
しょせん、そんなもんか。
そう言いたくなくて、信じた自分を信じたくてリングに上ったのに、信じるなと言われる。
そこで全部ひっくり返しちまえるパワーは、ジョーにはない。樹生にハメられたときと同じように、拳しか持ってない野良犬のままだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月8日
ジョーが贋作に泣きつかないのは、巨大すぎる社会…『階級』との戦いでどういうステップを踏めばいいのか、まだよく見えないからかもしれない。
見捨てられた子供として孤独に震えるのは、サチオも同じである。薄暗い階段の隅っこで、トレードマークの帽子を脱いで座っていると、贋作がやってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月8日
過去をほじくり返し、その原点を問いただし、抜身のナイフ(蠍の棘)を手渡して問う。
お前の『あした』はどこにある、と。
贋作の少し唐突で、あまりに苛烈な問いかけは、ある種の教育のように見えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月8日
むき出しの暴力で、直接的に恨みをぶつけ、自分も相手も殺す道か。
偶然船に乗っかるのではなく、自分の意志で自分の夢を、信じた相手に預けるか。
どっちのほうがマシな生き方か、掴みたい『あした』なのか。
無力な子供として、コーナーでジョーを支え続けたサチオは、今回自分の恨みと夢をどう扱うのか、決定の主体になる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月8日
憎たらしい金持ちは、自分と同じ子供に慈しみを与える人間だった。
その顔を見てしまったら、サチオの復讐は直接的な暴力の形を、もう取れない。ナイフ以外の針がいる。
ジョーの拳、メガロボクスというスポーツは、そういう剥き出しで実りのない現実を、ある意味純化していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月8日
勝者と敗者しかいない厳しいリングに、自分と誰かの夢を乗せて。騙し騙され、裏切って裏切られての『現実』を超えた、もっと理想的な『勝ち負け』を掴める場所。
そういう純粋さを、サチヨは信じて選び取る。その表情を見て、贋作は自分たちのIDをサチヨに預ける。失われたかつての家族と、今の仲間。サチヨの大事なものは、前と後ろに半分ずつ、帽子の毛布で守られている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月8日
ジョーに先んじて、番外地の子供が一つの希望、一つの正解を選んだシーンだった。
贋作はサチオをゆき子に預けることで、権藤との剥き出しの現実から保護してもらう。刺すか、刺されるか。蠍どうしの生々しい現実は、夢を選び取った少年には相応しくないと言わんばかりの行動。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月8日
贋作の胸の中で『あした』への憧れは死んでいないように思える。綺麗だからこそ、遠ざけたかったような。
イカサマをするのは贋作の性。毒を流し込むのは蠍の習性。現実を前にまぶたを閉じるのが、負け犬の生き様。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月8日
そううそぶきつつも、贋作は自分なりの『あした』を信じ、カエルではなく別の誰かに、毒針をぶっ刺すべく計略を張り巡らせているように、僕には思える。
あるいは思いたい、か。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月8日
ジョーをリングに立たせるために、あいつの拳に『あした』を見た南部が走り回ってる姿を見ているから、ここで諦めちまったんだとは思いたくない。
いつものように最強のペテンで、青臭い夢がどこまでも走り抜ける手助けをしてくれる、贋作オヤジの不屈を信じたいのだ。
それは権藤にも言えて、知的でクールな彼がもう一手、ロマンスを抱え込んでいると信じたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月8日
眼の前のゼニを迷わずカッパぐ、職業犯罪者のリアリズムではなく。
負け犬が輝けるてっぺんにのし上がるロマンで、デカいゼニを稼ぐ夢を抱えて、権藤も同じ船に乗ってくれると、思いたいのだ。
現実にすり潰された大人たちがどうなるかは、来週を見てみないと判別がつかない。苦い現実と甘い夢が混じり合い、どちらとも取れる表情を明滅させる裏で、ゆき子はちょっと、チーム番外地に歩み寄ってくれた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月8日
下々の暮らしが分からなくても、不正は不正と認め、厳密に対応する。
ユーリの一体型ギアは、ゆき子の夢なのだろう。(エースが樹生の夢だったように)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月8日
そえが人の命で贖われたと知って、彼女は引き返すのではなく更に踏み込むことを選ぶ。軍人へのプレゼンをし、より大きな舞台へ一体型ギアが羽ばたける準備をする。
資金力や背景、動機や熱量は違えど、夢をリングに乗せ、その先に羽ばたかせるために必死なのは、ゆき子も贋作も同じだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月8日
そんな二人がカードを切り合い、サチオの身柄を巡って交渉する中で、信頼は生まれたのだろうか。ゆき子は贋作を、どんな存在と見たのだろうか? 気になるところだ。
そんな二人のトレーナーに見守られて、ユーリはリングに上がり、ジョーはそれを見つめる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月8日
亜音速で蜘蛛を叩き潰したユーリは、彷徨えるジャンクドックと再度の邂逅を果たす。牙をむき出しに吠え合うのではなく、しっとりと魂を預け合うような。
狼犬がジョーになつくのは、第8話での樹生への対応を考えると味わい深く、面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月8日
それはイヌ科特有の共感であり、飼い主の魂を反映もしている。捨てられ、支えられ、ここまで来た。多くは語られないが、ユーリの過去とジョーの過去は似通っているようだ。
しかし二人の野生犬が、リングに求めるものは違う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月8日
ジョーは自分のために立つと吠え、ユーリは誰かのために立つと言い切る。すれ違う答えを前に、ジョーが言葉に詰まったのは何故か。
自分を見ていないライバルに苛立ったか、はたまた『誰か』を見落としていた自分に気付かされたからか。
ジョーが『ギアレス』であることに意味を見出していたのは、とても大事だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月8日
最初は言われるがまま、宣伝のためのハッタリだった。だが己の拳一つで道を切り開き、背負うものが出来た今、『ギアレス』はジョーのプライドを支える掛け替えのない武器であり、防具になった。
そんな生き方を教えてくれたのは、やっぱり贋作だったはずだ。そんな自分をリングに上げてくれたのも。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月8日
そんな男が、もう一度首輪をつけろと言ってくる。現実を前に、『あした』を諦めろと言ってくる。
アブハチに足を向け、『道に迷ったかい?』と問われるのも無理はないだろう。
アブハチの親父は名言しか言えない最高のキャラだが、旅立つジョーに問うた『どっちに賭ければいい?』は、迷妄と光明入り交じる今回を締めくくるのに相応しい、いいセリフだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月8日
それは親父の迷いであり、ジョーの迷いであり、贋作の迷いでもあるのだろう。あしたはどっちだ。
運命のサイコロは三ヶ月前既に振られていて、目は『現実』と出た。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月8日
その結果を踏まえての、メガロボクス一戦目。二度目のサイコロもゴングと一緒に振られることになる。勝敗が決まる前に一天地六、どっちに歩みだすかを決めなければいけない。
ここで試合ではなく、信念に軸足を置くのは、とても面白い
ここまでジョー達の歩みを支えてきたものが儚い夢か、掴み取るべき『あした』か。ヤバイ橋を渡ってでも、ぶっ殺されてでも貫きたいものか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月8日
そういうモノを問われるゴングが、いよいよ鳴る。ジョーの拳は何を叩き、贋作の毒針は誰の背中を刺すか。来週も楽しみですね。