HUGっとプリキュアを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月10日
プリキュアが殴るのはモンスターだけじゃない!
自由なる表現闘士・アンリくんを真ん中に据えてお送りするのは、ヒーロー/ヒロインの定義にど真ん中から切り込む、攻めたエピソード。
性別やジェンダーロールの話であると同時に、自分らしさの話、エールの話だったと思う。
異性装や家庭内政治、コンプレックスと抑圧などを大量に含みつつ、かなりわかりやすい形で問題提起してきた切れ味鋭いエピソードだと言える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月10日
プリキュアが常時背負っていくには重たすぎるテーマを、アンリというアウトサイダーを活用することで引き寄せる構造も、よく考えられていると思った。
今回のお話、視聴者のスタンスや前提知識によって大きく見方が変わると思うが、アンリはどんな存在なのだろうか?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月10日
女の装いを好む彼を、ゲイだホモだオカマだと囃し立てるのは簡単だ。しかし性自認だけが人間の根本では無論なく、『女になりたい男』だけが女を装うわけでもない。
アンリのスタンスは常にブレず、ただただ『自分でありたい』と願い続けている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月10日
女の装いをするのも、『男らしく』体を張ってえみるとルールーを守るのも、傷ついたオシマイダーをハグするのも、『そうするのが自分らしい』と、心の底から思っているからだ。
アンリはスケーターとして氷上で己を表現し、他人に厳しく問う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月10日
『自分である』ことが競技的な強みになる局面で鍛えられた結果、彼は逆風の中で己を強く主張する精神を育んだ。
それは社会や共同体、他者との軋轢も生むのだろうが、そこで折れればアンリは『スケーター』ではいられない。
アンリの自認にとって、『女の装いをする男』より先に『スケーター』であることが先に立つし、彼のセックス・アイデンティティがいかなるものかは、(女児アニメであることも鑑みて)未だ描写されていない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月10日
彼の人格の芯には、何より『スケーター』であることが分厚く立っている気がする。
彼は制服を着崩している。社会が要求するラインを自分なりに解釈し、譲歩した上で『自分らしさ』を適応した結果が、あのネクタイとスカートになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月10日
彼の要求はあくまで自己に向かうので、着崩すことを周囲に強要はしない。校則(共同体で承諾されたコード)にも、着崩しを禁じる条文はないようだ。
『自分らしくある』ことは、常に自分の外部と衝突する。共同体や他者が理想化するシェイプから、『こうありたい』という欲求は常にはみ出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月10日
『それで良いじゃないか。それが良いんじゃないか』と逸脱を受け入れているのがアンリで、えみルーはまだそこまで開き直れない感じか。
少なくともあのランウェイの上では、男が女の装いをし、女がヒーローになる価値転倒(あるいは価値正常化)は肯定されている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月10日
そういうリベラルな価値観を共有することが、あの場(が象徴化する『プリキュア』)での『則』であるなら、異物はやはり兄貴、ということになる。
アンリはあくまで自分の好きなように振る舞うわけだが、彼の堂々とした振る舞い、『スケーター』としての華は彼個人をはみ出し、色んな人に影響を与える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月10日
えみるやルールーは彼(や、割って入ったはな)の振る舞いを見て、『女の子がヒーローになれる』価値観へと踏み出す。その決断を果たす。
それは凄く身勝手で自分本位で、だからこそ嘘のない行動であり、同時にそれが他者に働きかけるエールにもなっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月10日
『真実人を動かすエールは、結構身勝手なものだ』というのは、HUGっとが始まって以来ずっと語ってきた気がする。アンリと周囲の変化も、その一環であろうか。
えみる兄はえみるを縛り付けることで正調の、アンリに文句をいうことで男女さかしまになった『プリキュア』の価値観に、頑なな否定をぶつけてくる立場だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月10日
彼が『こうでなければいけない』とあそこまで拘る原点を、しっかり見たかった気持ちもあるが、別の話になってしまう部分か。
アンリの行動がえみるやルールー(や兄自身)を変えたように、兄の行動もまた無から生まれたわけではないだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月10日
『こうでなければいけない』とえみるに、アンリに、あるいは自分自身に押し付ける行為が、一体何への共感と反発から生まれたか。そこを描いて、ただの悪役にしないほうが好みではある。
それは今後、えみるがプリキュアとなる話の中心に収まった後で、また掘り下げられる物語かもしれない。語られない背景かも知れないし、そんなものはなく、ただ彼は『彼らしく』頑ななのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月10日
しかしそんな彼もまた、変化(あるいは自分らしさへの帰還)を果たすことは出来る。
最悪の夢の中で、綺麗なものを見た。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月10日
その憧れが、かれの頑なさをほぐし、他人と自分の適切な境界線を引き直して、自分の価値観に他人(と世界)を引きずり込もうとする行動から、彼を開放するのか。
これもまた、先を見ないと分からん部分ではある。しかし、光明のある終わりだった。
凡人に埋もれられない個性と才能を持った星(エトワール)は、勝手に放った光で人の心を照らし、変えていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月10日
アンリが今回見せた光景は、ほまれが追い求めるべき失ってしまった輝きにも通じてるし、『エール』という作品の軸にも関わっている。そういう意味でも、今回は結構大事な寄り道だと思う。
アンリだけがエールを送っているわけではなく、ルールーがえみるを信じて言葉と笑顔を投げかけたり、はなちゃんが最高のタイミングで前に出たり、人間相互の働きかけが色んな角度から切り取られる回でもあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月10日
アンリが決定的な踏み込みをするには、はなの迷いのない特攻が必要だったのだ。
はなちゃんは今回、卑屈にアンリに頭を下げたり、えみるに『先輩を敬えッ!』とふんぞり返ったり、俗な部分がたくさん出ていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月10日
しかしえみるの手を取り、一つの真実を堂々と宣言する高邁さも見せる。アンリのようなスターには成れないけど、そういう輝き方もまたある。
はなが兄貴の『ヒロイズム』に反発したのは、自分自身なんにも出来ない自分へのコンプレックスが強くて、それを跳ね返す夢として『ヒーロー』を抱きしめてるからだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月10日
おかしいと思われることがあると知ってても、そこで譲れば自分がなくなる。そういう必死さは、アンリが折れない理由と共通だ。
『お前は出来ない』『こうでなければいけない』『それはおかしい』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月10日
世界から、他人から、自分自身からチャレンジされ続けて、心が摩耗思想になった時に、はなもアンリも『ヒーロー/ヒロイン』という自画像を抱きしめることで、なんとか踏ん張ってきた。
自分をなんとか立たせる足場を、『男らしい/女らしい』という線引で外側から奪われたんじゃ、とても生きてはいられない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月10日
兄貴の踏み込みに二人が強く反発したのは、そういう自己イメージが関わってるんじゃないかと、僕は思った。そういうプライドの持ち方は、とても普遍的なものだろう。
えみるを信じると強く言い切ったルールーも、パップルさんに押し付けられた線引を思い出し、胸を張って『えみるはヒーローです!』とは言えない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月10日
二人はまだまだ、自分の中のヒロイズムを強く確信できる段階にはなかったのだ。そんな揺籃期を超えて、ふたりはプリキュア宣言をする。
凸凹コンビのえみルーは、お互いを尊いものと見上げる視線と、自分を見下げる視線、両方を持っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月10日
ロボット、無力な女の子、悪の手先。色んなセルフイメージが自分をしばり、あるいは外側から押し付けられる中で、それに負けずに自分を保てる『ヒーロー』のイメージ。
それを今回の冒険は与える。
ひとりきりだとズブズブ沈んでいきそうな危うさが、HUGっとの子たちにはあって。だからこそ、『あなたは素敵』と思い出させてくれる仲間の言葉は大事になる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月10日
自分を強く強く保ち続けてるアンリは、結構例外的なキャラだ。しかし彼もまた、はなの勇姿を見て震える拳を握りしめていた。
自分の外側にいる、あるいは内側で眠っている『ヒーロー』を見つめることで、そこからエールを受け取ることで『ヒーロー』になれるのだという、か細い祈り。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月10日
『プリキュア』がずっと語り続けてきたテーマを、15年目の今作でこうダイレクトに、わかり易く書き直したのは、とても良いことだと思う。
それは性別で縛られるものではなく、規範を押し付けられるものでもなく、苦しみに満ちた世界で人間が生き延びていくための必死のあがきとして、広範に開かれたものだから。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月10日
『こうあるべき』という鎖に、極力『プリキュア』は抗ってきたし、今後も抗っていくのだろう。
(とはいうものの、一大コンテンツとなった『プリキュア』が望むと望まざると、別種の規範を作り出し別種の束縛となってしまう可能性、もしくは事実は、常に付きまとう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月10日
その舵取りに気を取られすぎると、エンタメとしての活力がなくなったりするので、なかなか難しい話である)
その上で願わくば、兄貴もまた自分なりの『ヒーロー』を、綺麗な夢から受け取ってくれたら良いなと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月10日
別に開放主義を自分の哲学とする必要も、規範への愛着を捨てる必要もない。石頭のままでも、他人と自分を大事に、自由にすることは可能だと思う。そういうところに、巧く転がると良いなと思う。
多分まぁそこまで書くスペースはHUGプリにはないんで、兄貴がどんな『ヒーロー』になったかは、僕が想像する部分なんだろうけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月10日
でもなんらか、自分なりの『ヒーロー』を掴めたんじゃないかと思える終わりだったのは、凄く良かったと思う。
女という特権、変身というパワーを持たないプリキュア…。
そんな変奏曲を引き継いで、次回は変身アイテム回。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月10日
『バンダイ様の寵愛だけが、ヒーローになる資格か!』という角度から『プリキュア』に突っ込む回…考えすぎだな。ジェンダーロールや規範意識より、もっと厄介で生臭いものにツッコみそうだし、そのテーマ。
えみルーは非常に丁寧に、コンビとしての繋がり、お互いがお互いを見つけ合う視線の熱さを描いてきたので、遂に変身となれば否応なく盛り上がると思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月10日
もうちょっと、『プリキュアではないプリキュア』なふたりを見たかった気持ちも正直あるけど、来週が楽しみですね。
…今回のアンリの振る舞いは、やっぱ過去回ではなやほまれ相手に自分の規範意識をぶつけて『失敗』し反省したからこそ、より適切な形で『自分らしくある』自由を使いこなせるようになった結果かな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月10日
兄貴のマチズモの奥に哀れみを見たのは、過去の自分が重なったからな気もする。『感情』じゃんオイ。