ブギーポップは笑わない を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月26日
かくして、イマジネーターの残照は飛鳥井仁に届いた。
これから紡ぐのは、また別のお話。ありふれたボーイミーツガールと、ボーイミーツボーイのお話。英雄の弟らしくまだまだ続く物語と、四月に振った雪のように奇妙で、曖昧で、虚しく溶けていくばかりの恋の話。
そんな感じのVSイマジネーター、第二話である。今回でPART1を大体疾走しきり、役者が全部登場といった塩梅だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月26日
急に”統和機構”とか出てきて初見の人はびっくりだと思うが、エコーズをボロカスに研究しマンティコアを製造した組織であります。色んな所に根を張っている。
お話は正樹のエピローグと、安能くんのお話がだいたい全部である。複数視座をパッチワークして物語を生成していくブギースタイルが、今回は1エピソード内で完結することになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月26日
時間は幾度も巻き戻り、主観と視座を変えて同じシーンが描かれる。重ねるごとに、その味わいはかなり変わる。
例えば路地裏の闘争。例えばデートの約束。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月26日
キャラクターの立場と感情によって、その色合いは大きく違う。それぞれの色彩、それぞれの恋がつづれ織りに編まれていく。
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正樹の大仰でどっか空回りし、大時代で真っ直ぐな恋。作品が刊行された90年台には既に時代遅れになっていた、朝日ソノラマ的現代伝奇テイストと、青春小説のさわやかさの奇っ怪な合わせ技は、なかなか良い書き方だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月26日
彼はいかにも主人公のような陽性で、真っ直ぐ物語を走る。
しかしラノベ世界は奇っ怪に屈折していて、彼の真っ直ぐさは道化の仕草を付着させる。不良少年とのやり取りの大時代っぷりは、青春小説通り越して時代劇の風情すらある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月26日
彼が恋する不思議な少女は当然人間ではなく、統和機構の合成人間”カミール”であると解って、このエピソードは次回に続く。
帰国子女の転校生、ギクシャク生きてる合成人間、そしてホモセクシャルの少年。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月26日
当たり前の背景に埋没できず、しかしその異質性の扱い方を知らない不気味な泡たちは、完全に共感融和するでもなく、冷たくすれ違うだけでもなく、奇妙に触れ合い、そして別れていく。
正樹は世界の真実、織機の真実を何も知らない。ネアカな太陽で照らしても、カミールの影はけして消えないし、共有もされない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月26日
それでも、少女と少年は出会って、運命は動き出した。
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織機が沈んでいる陰りを共有することは、つまり統和機構が支配する世界の真実を知ることで、もう普通には生きられない、ということだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月26日
姉たる霧間凪が父の死によって奪われた、愛おしき当たり前の日々。それを喪失する宿命を、義弟たる谷口正樹も背負っている。
今回のエピソードはその最後の名残、空回りし恋に浮かれること、致命的に間違えることをまだ許されていた谷口正樹の物語だと言える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月26日
英雄的な存在になる特権を持った彼の物語は、その不格好な触りだけを描いて、まだまだ続く。正義の味方ごっこも、熱いアクションもやってないからな!
これに対し、安能慎二郎の物語は今回で大体終わりである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月26日
怪人・スプーキーEに、あるいはイマジネーターに心を弄られ、”端末”として利用されるただの犠牲者、モブ視点の物語。
最後お話をまとめ上げるラストが描かれるかが残っているし、それがアニメの評価を決めるとすら思っているが、まぁ終わりだ
””笑わない”の紙木城にしろ、前回のジャンキーな少女にしろ、事態を決定的に動かす権限は異能力者ではなく、力のないモブにある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月26日
その捻れた物語力学が僕はとても好きだが、安能くんはそういう不可思議な力点の仕事も果たさない。いかにスプーキーEが不気味か、飛鳥井先生が変わったかを見せる鏡だ。
しかしそこには、なんだか言葉にも形にもならない切な痛みが、みっしりと埋まっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月26日
彼の初恋は相手たる正樹にも、恋敵たる織機にも意識されることはない。やれるのはモブらしく遠巻きにストーキングするだけだ。物語の真ん中で踊る奇妙なボーイミーツガールとの、無様な対比。
抱え込んだ思いをどう表現し、どう伝えればいいか分からないまま、彼は(当然)スプーキーEに見つかって心を操作され、誰にも言わなかった恋心を簡単に忘れてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月26日
織機と正樹の恋はまだまだ続く風情で、たっぷり起伏を含んで進展していくのに対し、安能くんのホモ・セクシュアリティは”切断”される
それが屈折した友情だったのか、青春の気の迷いだったのか、はたまた彼自身を構成するアイデンティティの一つだったのか分からないまま、彼は都合のいい”端末”として整理される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月26日
心の中のグラデーションが愛と憎悪、友情と性愛、どこに位置しているのか精査する権限は、彼に与えられない。
その残酷さは、ど真ん中ラノベ主人公として恋だの運命だのにたっぷり悩める正樹が恋の相手であるが故に、より強調される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月26日
彼が背負うヘテロセクシュアルは話しの真ん中に居座り、安能くんの恋は夾雑物としてあっさり、あまりにも唐突に切り捨てられる。
でも、そういうものなのだろう。
ここで安納くんの視点を入れてくる所、特別に選ばれた特別なヒーローが認識すらしない、でも確かにヒーローと同じくらいの切実さで感情を抱え込んでいた少年を主役に一章書く所が、ブギーポップだなぁ、と思うのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月26日
世の中の大半の切実さは、こういう唐突さで残酷にぶった切られ、急に終わる。
水乃星透子が急に”終わ”り、取り残された人々の処世は後の物語で幾度か語られることになるけども、世界の中心で暴れまわる巨大な物語にコミットできない人々の無様さと困惑を、この物語は結構大事にしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月26日
紙木城はあっさり死ぬし、その死体を凪が見つけて弔うことも出来ない。
そういうものなのだ
安能くんの名前のない恋は、”手のひらから出る電磁波”という超即物的な能力で書き換えられ、白紙にされる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月26日
…はずなんだが、四月に降る雪を見て感動したり、知らず涙を流したり、恋もする。
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安能くんを媒介に、スプーキーEという”即物的イマジネーター”と仁兄さんという”叙情的イマジネーター”が対決する話でもある今回。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月26日
心を操る能力は全て完全ではなく、一瞬の純白に世界を覆い尽くしても、雪のように溶けていく。押し殺して忘れた感情は、涙となって溢れていく。
そこにある種のロマン主義というか、『本当に大切なものが、決定的に勝ってしまう』結末への崇拝みたいなものを感じ取りもする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月26日
無力で主人公ではない安能くんは、自分だけの恋すら守ることは出来ない。囮のついでとしてブギーと出会い、さっくり交流して分かれる。案外面倒見がいいよね泡…。
水乃星透子の落下から始まったVSイマジネーター、ブギーは未だ”ストレンジ・デイズ”と出会えない。代理品を落下から救い、その因果をせき止めはしても、根源にはたどり着けない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月26日
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全てを決着させる超常的な力を持っていても、むしろだからこそ、ブギーポップはクライマックスの要諦が整った時に自動的に出てきて、エンドマークを付けるだけの存在でしかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月26日
流れていく運命の中で自分を変え、世界を見据え、恋を掴み取るのは正樹のような人間的ヒーローの仕事だ。
そしてそんなヒロイズムの影には、明るい愚かさに見落とされその存在すら認識されない、淡雪のような恋がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月26日
それは弱くて脆い。世界を支配する組織、その具現たる怪人に出会ってしまえば、一瞬で消える。でも、消し切ることは出来ないのだ。その、残酷な浪漫の描き方が、僕は凄く好きだ。
安能くんの成就しない(意識すらされない)恋の消失を追ったことが、正樹と織機の真っ直ぐなボーイミーツガールに陰影をつけ、正樹主役のヒーロー物語に奥行きを与えてもいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月26日
そういう視座でもイイ話なんだが、たただただ僕は安能くんの無力さと愚かしさに、ビリビリと共感してしまう。
だから結構しっかり描いてくれたのは嬉しかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月26日
”端末”として余計なことを切り捨てられ、誰かに与えられた目的のために邁進する。”棘”を取り払った安能くんのほうが、彼を取り囲む社会のウケが良い描写は、ひどくグロテスクで真実味がある。
誰も、心の中の花など見ないのだ。
仁兄さんはそれが見えてしまうからこそどうにかしたくて、どうにも出来なくて、イマジネーターと成り果てていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月26日
今回の仁兄さんはすっかりダークヒーロー異能者の貫禄を身に着けていたが、安能くんも正樹も織機も、その背景を知ることはない。”四月に降る雪”がひどく人間的な風景であることを。
それらを俯瞰でつなぎ合わせ、表層と深層の奇っ怪なダンス、盲目のまま自分の物語をフラフラ彷徨う者たちのぶつかり合いを見守り、意味を見出す特権は、ブギーポップと同じように物語の外側に押し出された僕ら視聴者だけにある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月26日
安能くんの恋を覚えていられるのは、僕らしかもういないのだ。
この読者を突き放しているように見えて、凄くリリカルな特権を預ける執筆姿勢も、この物語の好きなところである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月26日
これは複数キャラクターの物語をつなぎ合わせる形式故の実感であり、形と内容がしっかりシンクロしている所が良いところだ。分かりにくい所でもあるが。
世界は一端末人間の迷走など忘れ果てて、異能と恋に邁進していく。正樹はその主人公(の一人)として、彼なりのヒロイズムを追って道化のように走る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月26日
そしてそんな”主役の話”の影には、百万の安能くんの物語がある。淡雪のように消えるとしても、そこには意味がある。なければならない。
”イマジネーター”と決定的に対決(VS)するのは、ブギーのワイヤー捌きでも正樹のどこか戯画じみたラノベ主人公っぷりでもなく、誰もが持ちしかしはっきりと見据えることは出来ない、柔らかで脆い感情と温もりだからだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月26日
安能くんはイマジネーターに負けた。せめてもの抵抗は一筋の涙だけだ。
世の中そういうモノで、大概の人は主人公でもヒーローでもない。だけどその物語はただ犠牲者の、ただ”端末”の自動的な物語では終わらず、そうするためにブギーポップはワイヤーを操るのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月26日
悠木ブギーのほんわか口調はアオリ力強くて、スプーキーEの執着といらだちが分かりやすくなると思う
自覚ないまま自動的に、深陽学園にたどり着いた安能くんは”あがり”だ。彼が真っ白なまま過ごした春の中を、彼が好きだった谷口正樹は少女の手を取って駆け抜けていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月26日
これから描かれるのはその過程、安能くんを置き去りにした一つの帰結だ。
物語の中心にいるヒーローにも、悪役にも、巻き込まれただけのモブにも、それぞれの切実さと悲しみがある。愚かさと無様さをないまぜに、自分の行く末など定められないまま流される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月26日
その色彩をどうまとめ上げ描いてくれるか、来週も楽しみですね。