ブギーポップは笑わない を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
複数の意図が解け、もつれ、一つの物語を織っていく。
誰にも知られぬまま、淡雪のように溶けていく安能慎二郎の物語。のんきに朗らかに中心に居座る谷口正樹。
そして対決を望みつつ常に周辺に居座る末真和子の探偵物語が、”カミール”織機綺の物語ともつれていく。
そんな感じの、青春探偵出陣のエピソード。先週は『ここで一巻終わり』と描いたけども、順序を入れ替えてここまで、という感じでしたね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
そんなわけで、脳天気な正樹の物語がスイスイ進む中で、安能くんの物語のエンドマークが傍観で描かれたり、末真和子の物語が静かに始まったりした。
最初に安能くんの涙の話をするけども、彼は結局スプーキーEに奪われたロマンスを取り戻せないまま、白紙の記憶に書き込まれた自動的な指令に基づいて高校にたどり着き、そこであまりの白々しさに呆然とする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
どれだけ心を探っても、その虚しさに答えるものはない。幽きこだま、弱々しい涙。
安能くんはやっぱり自分でも意識しないまま涙を流し、それはありふれた青春の曖昧さ、複雑さの表れとして、末真和子の視界に止まる。そして溶けていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
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彼はスプーキーEと二代目イマジネーターが激突する奇っ怪な事件に関わることなく、自分自身どの物語に巻き込まれたかも分からないまま、ありふれた愚者として舞台からはじき出される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
その容赦の無さが、僕は結構好きである。まぁ、そんなものだろうな、と思う。
それでも、例えイマジネーターに幾度も心を白紙にされても、失ってしまったものの曖昧な輪郭だけは残る。だからその根源も判らぬまま、ただ虚しいのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
そんな気持ちが溢れる涙を、このお話はちゃんと描く。そこがありがたいところだ。https://t.co/MCJunie2cH
彼が恋した谷口正樹は、合成人間と渡り合う実力を持ちつつ、記憶を現れ道化のままで居続ける。織機綺がカーミルである事実も知らないままに、道化の衣装を渡され踊ることを選ぶ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
主役っぽいのに、端っこに追い出される空々しさ。その軽薄な明るさが、正樹を描く筆には巧く宿っている気がする。
一般人は物語の奥深い真相にはなかなか踏み込めず、武力を持ってそこに分け入った記憶ごと、異能で洗い流されてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
冒頭、スプーキーEとカーミルが身を置く木陰に、正樹はいない。
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(カーミルの喉を掴む手のひらが、いわゆる喉輪の形で半周回るのではなく、完全に掴み上げてグイッと引っ張り上げているサイズ比の描画、(性)暴力の暗喩が、なかなか異質で好きである。細かくて伝わりにくい興奮であろうけども)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
ブギーポップを演じる理由も分からないまま、正樹は恋に踊る。
彼が自分の意志で、纏うべき衣装、歩くべき物語を選び取る瞬間はまだまだ先で、それまで彼は白々しい嘘の中を踊る。織機綺も織機綺を演じて、明るい表情を作る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
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後に見ず知らずの末真に相談する時とは、全く別種の表情。生き死にの際で、自分を偽る余裕が一切ない真剣さを、カーミルは正樹から覆い隠す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
そういうモノを背負うえるほどに正樹は人間としての足腰が強くなく、末真博士は流石の貫禄である。この女いつでも誰かに相談されとるな…。
末真とカーミルの屋上人生相談を、カーミルの悩みの種である正樹との白々しい道化芝居とカットアップしつつ見せる演出は、なかなかにざわざわ気持ち悪くてよかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
音楽がスパッと切れる不協和の演出も、相変わらずいい仕事をする。座りが悪く、しかしその不安定こそが実相だと突きつけられるような
末真は自分の命を狙った事件が、自分の一切目も手も届かない場所で進行したトラウマから、自分が主役になる瞬間を夢見ている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
正樹が偶然迷い込み、はじき出された薄暗がりに積極的に踏み込む
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飛鳥井仁の不気味なイマジネーション感染、あるいは屋上で待つカーミル。様々な事件の残骸を拾い集めつつ、結局末真和子は”VSイマジネーター”の中枢に関わることはない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
それが”ムーン・リヴァー”の能力故か、生来の間の悪さと人の良さの結果かは、発行後20年経った今も謎のままだ。
さておき、末真和子は琴絵ちゃんの相談を受け、異能に一切接触できないVSイマジネーターとして、自分の事件に踏み込んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
『迷わなくなった』と琴絵ちゃんは仁兄さんの変化を語る。それが悲しいことであるように。
その素朴な直感は、非常に正しい。
末真博士が霧間誠一を引用して語るように、”かくあるべし”という答えを誰かから受け取り、そこに安住してしまう危うさとこのエピソードは戦っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
悩みに満ちていた仁兄さんは、水乃星透子の幻想を己と受け入れた結果、誰かに答えを与えるイマジネーターになった。解答者は悩まない。
末真は『なぜ自分だったのか』と、答えの出ない疑問に悩みつつ、異常心理と殺人事件のご本を山ほど読んで、どんどん疑問を増やしていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
世界はどんな感じで、自殺しかけの女の子にどんな言葉をかけたら良いのか。彼女の言葉は、答えではなく問いに満ちている。
末真は結局、スプーキーEなり飛鳥井仁なりの、異能を備えたイマジネーターと対決などしない。物語に終局をもたらすブギーポップと出会うこともない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
しかしそれらと対峙する時の”答え”となるような、解答のない問いかけ…VSイマジネーターは、末真の中に一番色濃く焼き付いている。
正樹は恋と異能に踊らされて、カーミルが差し出す道化芝居を迷わず答えにした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
安能くんはいったい自分がどんな存在であるか、問いただすヒントになりそうだった思いを焼き切られ、青春探偵・末真の事件簿の背景として自分の物語を終えていく。
あるいは裸体で胸の中の薔薇を弄ってもらって、不安をなくした少女たち。あるいは死ぬことで闘争を回避しようとするカミール。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
VSイマジネーターたる資質を備えているキャラクターは、非常に少ない。異能と接触出来ない宿命に有る末真博士だけが、その天性を有している。
末真は琴絵ちゃんの相談を侠気一発引き受けたときと同じように、余計な厄介事を背負い込み、他人のために道を作っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
屋上。生と死、正常と異常が交錯する”際”は今回もやっぱり、出会いと対話のステージとなる。竹田くんとブギーポップ、イマジネーターとブギーポップ、合成人間と博士。
カーミルはかつて水乃星透子が墜ちた岸、そこに近い闇の中に足を据えている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
末真は白々しい日常に足場を置く。そして、どんどん踏み込み、立ち位置を変えていく。
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分かったような分からないような、あやふやで曖昧な言葉を”VSイマジネーター”から受け売りしつつ、末真博士は自殺を止める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
それはイマジネーターの残滓に引き寄せられ、天から落ちようとした少女を止めたブギーポップの冷淡さと少し似ていて、全然違う。全く自動的ではない。
末真は根本的に人間が太く、おせっかいで賢い少女だ。眼の前で人が苦しみ死にそうなら、戦士の怒りを燃えたぎらせてそこに踏み込んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
大きなおせっかいと知りつつ、自分が動員できるものを全て使い倒して、頑張って距離を詰めようとする。醒めているようで、異常に活動的なのだ。
この間合の詰め方、相手の領域に踏み込んで境界性を的確に侵犯し、真相を知らないままに実相を捕まえて必要なアドバイス…誰かのイマジネーションの代理ではなく、そのイマジネーションが向き合うべき問を指し示すようなヒントを与えていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
正樹が捕まえるべき、主人公の資質であろう。
主役ならぬ末真博士は無論、そういうヒントだけを与えて核心には迫れないわけだけども、しかしそのヒントがなければ物語は解決しない。VSイマジネーターはイマジネーターに勝利できない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
紙木城直子がエコーズに果たしたような、決定的に遠くて致命的に的確なおせっかいを、末真はまた乗りこなす。
それがカミールの心を揺らして、死に逃げる心持ちから何かと戦う決意へと変えていく様子は、身体的距離、光と影の境界線をまたぐ様子でよく伝わってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
やっぱアニメブギーポップの、明暗がくっきりとした画面の作り方は好きだなぁ…小津安二郎的というか。
結局末真博士は、カーミルの事情を一切知らないまま、彼女を崖から引きずりあげてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
超人アクションでその元凶(に、一応一番近い怪人)と対峙しつつ、カーミルのイマジネーションを一切拾い上げれない正樹の空回りとは、綺麗に正反対だ。
死の壁から少し離れ、やっぱり薄暗い場所に帰っていくカーミルを、白々しい日常で見守る末真が少し寂しそうで、僕は好きだ。大したことをしているのに、誰も褒めてはくれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
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自分がなにか特別なことをしているという自覚がないまま、自分が主役になるような物語を追い求める。そんな彼女の孤独が、鳥瞰で切り取られた光と影のダンスには、巧く焼き付いているように思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
今回展開したややこしいダイアログは、直接怪事件に関わるわけじゃあない。
しかし怪事件を駆動させている心の隙間を埋める、あるいはそのためのヒントを出すのは、徹底的に末真である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
そういう曖昧な無力なものの中にしか、世界を揺るがす危うさへの解答…つまりはけして答えの出ない問いかけに続く道はない。そこに親しいからこそ、末真和子は主役にならない。
そんな彼女の空回りを、しかし奇妙な清潔感と誇り高さで追う今回のエピソードは、地味で動きが少なく、僕には大変面白かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
末真和子というキャラクター(と、彼女の真っ直ぐな歩みに対置される正樹の空回り)が、なかなか素直に描かれていたと思う。
今後も青春探偵の事件簿は、世界の真相に蠢く派手な異能力とは接触しないまま進む(少なくとも、パニックキュートの出ない”VSイマジネーター”ではそうだ)。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
事件の中心にいるのに、イマイチグリップを得れないまま空転する正樹とは、正反対で、しかし奇妙に似通った歩みで。
それは結局、より善い答えではなく問いを求めている仁兄さん(だからこそ、この事件の後彼は作中最大の”VSイマジネーター”、統和機構の敵にもなっていく)が、歩き直すべき道でも有るのだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
カーミルの落下を止めたように、誰かが二代目イマジネーターの墜落を止めうるのか。中心なき物語は続く。
まだしばらく合成人間と主人公野郎の戯けた恋は踊るし、小粒なイマジネーター達の対決も続いていく。その果てにある決着はしかし、何かが終わったという確かな手応えを淡雪のように溶かしつつ、同時に確かな終わりでもあり…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月4日
そういう複雑な読後感を、どうアニメにしていくか。来週も楽しみです。