キャロル&チューズデイを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月2日
有名DJでバズる作戦がポシャり、ポンコツ四人組はAIプロデューサーに奇跡を祈る。
素人の思いつきをガラクタに投げ込み、生まれてくるトンチキ作戦。過去と未来の右往左往、ガスの元妻との苦目の関係。
火星を舞台に吹き荒れる、PV作成から騒ぎの顛末は!?
というわけで脚本うえのきみこ! 佐武宇綺声のポンコツロボ! ゾンビ! スペダン風味濃くお送りする、ドタバタコメディ回である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月2日
明るく賑やかに転がしつつ、ガスの過去や二人にかける情念の重さ、大人の苦さなんかがジワジワ滲んできて、なかなか複雑な味わいだった。面白い。
今回は”陰”担当のアンジェラ&タオの出番がなく、人生の裏通り感はガスの担当となる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月2日
元妻・マリーを壁役に、過去の挫折、だからこそ二人に掛ける思いなどが、いい塩梅に浮き彫りになってくる。
ガールズが徹頭徹尾明るいからこそ、いい感じの影を添えるのは大事なバランスだ。
マリアは過去のガスとよく似た外見をしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月2日
音楽業界からドロップ・アウトしてしまったガスに対し、優秀なヘアメイクとして業界に残った彼女は、スタイルを維持している。体型の緩みを、気の緩みとして見せる筆が結構好き。
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二人を本気でマネジメントするべく、酒を絶ったガス。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月2日
既にマリーと離れた時の自堕落と距離を取っているのだが、過去を知る彼女は早々油断しない。
頼んだのはマルガリータ。塩を淵にまぶすスノースタイル、ライムとテキーラ。
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これ製作者サイドが狙ってるのかは分かんないけど、明らかに警戒を意味するこのカクテルが、前回四人の距離を縮めていたピザと同じ名前なところに、まだガスを信じているから呼びかけに応えたマリーの”情”が見える感じもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月2日
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四話にしてキャロチューの私室に踏み込み、パーソナルな空間を共有した二人。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月2日
マリーもキャロル&チューズデイを仕事場に招き、パートナーとの親愛のキスを披露する。一緒に仕事しながら、ガスが共鳴した可能性を、間近で感じていく。
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インチキAIに詐欺られつつも、酒に溺れず汗を流し、背景を手作りするガス。その仕事ぶりと二人の人格を見て取って、マリーは元夫の”今”をしっかり認める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月2日
仕事が終わった後、頼むのはランプ・オブ・アイスの入った(恐らく)バーボン
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角をとった円形の氷は、酒の中でじっくり溶けて、時間だけが生み出す美味さを高めてくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月2日
時は流れる。二人の間に入った亀裂は、あの時気づいていなかった性自認の壁だった。自分を見つけ直したマリーは、バイクで駆けつけた”今”のパートナーに身を預ける。
過去は過去、時は戻らない。
でも苦い酒に溺れた後見つけた”今”は、お互いそれなり以上に真剣で幸せで、苦いばかりじゃない。時間は無駄な肉を付けるけど、酒を巧くもする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月2日
色んなモノを飲み込んで、ガスは元妻の幸福を祈る。最初から、自分が隣にはいられなかった関係。そこから離れた愛しい人に、愛を込めてサヨナラを。
バーテンがマリーと同じく、ランプ・オブ・アイスの入った盃を差し出してくるのが泣ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月2日
それは去っていった愛の味、過ぎた時間の残り香だ。真剣に生き直すために断酒を宣言しても、今夜ぐらいは飲んでくれ。その盃を干してくれ。
アフロバーテン…良いやつだなお前…。
キャロチューを招いた時に『彼氏、あるいは彼女とかいるの?』と聞いているように、火星は色んな性自認の人が、結構肩の力を抜いて生きていける世界のようだ。少なくともガスの周辺は、現在の視点から見るとリベラルである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月2日
まぁAIが詐欺やらかす時代だもんな、そこら辺は先進的か。
マリーがガスと離れてから見つけた生き方を、サラッと書く筆は結構好き。バーテンの『え~~~!』は、時代差を埋めきれない視聴者の代弁をやってくれた感じか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月2日
そういう場所、そういう時代を描くために、”火星”という舞台が必要だったのだと思う。黒人女性とスタートレック的な。
さておき、苦くて美味いエイジドな関係性を縦軸に、ポンコツAIにぶん回されるMV作成が、縦横無尽に暴れまわる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月2日
バグルスの”ラジオ・スターの悲劇”はMTVが最初に流したMVなので、今回のサブタイトルにはもってこいだろう。サンプリングも多いしな!
原曲では”彼等はあなたのシンフォニー第2番を自分の手柄にした
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月2日
新しいテクノロジーの装置で書き換えたんだ”と、ヴィデオエイジの文化窃盗を軽く糾弾する。
そこを超え、今や”Streaming Killed the MTV”な状況で、このアニメは大量の引用や本歌取りをぶっこむ。
MVに革命をもたらした”スリラー”、”ボディーガード”や”アルマゲドン”や”アヴェンジャーズ”といった映画、あるいはロディのナードな趣味。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月2日
イデアにバラバラな欲求を流し込むシーンは、四人の好みが見えていい感じだ。
サンプリングは当たり前、過去作への目配せもアリアリ。
そういう時代に打って出る、Netflixの意欲作としてこのお話はある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月2日
お金の単位はウーロン(ビバップ)だし、イデアが見てる”アニメ”にはQT(スペダン)写ってるし。
ナベシン印の思い出と、ポップな文脈を編んで、新しいジュブナイルを作る
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とはいうものの、ド素人のボンクラとポンコツAI詐欺師が編むMVは、ガッタガタの生煮えごった煮なのだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月2日
エキストラは映り込む。ピントはボケる。ピアノ線は見える。合成線はバレバレ。ホントヒデェな…。
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あんまりにもテキトーなプロデューサーっぷりだが、人間様はAIの詐術には気づかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月2日
ミネルヴァの遣いとして、時を告げ目を光らせる機械のフクロウだけが、その本性に気づいている。だが、ホーホー言うだけの鳥さんは、意思を伝えられない。
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言葉巧みに(あとポンコツに宿る妙な圧力で)丸め込むAIもいれば、チームに迫る危機を必死に伝えようとする健気な仲間もいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月2日
今回のお話は、火星に生きるAIがどういう隣人なのか、巧く描き出してくれた。なかなか面白そうな世界だ…厄介事には巻き込まれたくないけど。
他にもクレーター・ファベーラとか、都市化されてない赤い大地とか、色んな景色が見れた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月2日
日常描写を積み重ねるうち、今ではない時代、ここではない場所でなければならない理由も、ジワジワ染みてきた感じだな。面白い。
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イデアが家にやってきた時、チューズデイは手に停まっていたフクロウを投げ捨て、新しい仲間(≒玩具)に夢中になる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月2日
ここら辺の浅はかな感じは、前回見せたトンパチな部分とも繋がるチューズデイの個性であり、魅力でもあろう。
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そうやって投げ捨てた仲間が、危険な闖入者の本性に唯一気づいている(のに、フクロウは言葉を伝えられないし、人はそれを聞く智慧を持たない)のが、童話っぽい教訓譚の匂いがあって好きである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月2日
痛い目を見ないと、人は学べない。今回の失敗は果たして四人の関係を、どう変えていくのか。
ポンコツな失敗話の中でもキャロチューは一生キャッキャしてて、マリーのドレッサーでじゃれ合う二人の多幸感は相変わらず”ヤバ”だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月2日
『鏡を見る』というモチーフが、ダンス特訓のロディと重なってるのが、距離が縮まった表現として秀逸
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ポンコツAIに踊らされつつ、皆んななりに真剣で、楽しみつつ何かを目指していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月2日
ギクシャク噛み合わないアンジェラ&タオとは違う、陽性の歩みがみっしり詰まったお話だと言える。
ガスもロディも、伝えるツテをすべて使って、キャロチューにガラスの靴を履かせたがっている所が、チャーミングでいい
前回そっけなく二人を袖にしたアーティガンだって『お前の頼みならしょうがない』と車を貸してくれた。いやまぁ、結果は黒焦げだけどさ…アレ、洒落ですむのか?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月2日
主役の壁役で好感度下がりそうなところを、ジワジワケアするのは巧いところだ。いつチョロるんだろーなー。
ポンコツ四人がもっと世知に長けていれば、イデアの詐欺には引っかからなかったろうし、出来たMVももうちょいいい感じ(例えば、先週の”Round & Laundry”みたいな)だったろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月2日
しかしこれが今の四人の身の丈、火星の光の実像だ。
間が抜けていて、邪気がない。笑顔があって、前を向いている。
二人が持っている”陽”の気配に可能性を感じることで、ガスは元妻に認められ、苦いけども幸福な別れ(と再開)を果たした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月2日
お互いを認めあったあとなら、後悔に満ちた過去を乗り越えて、また合うことだって出来るだろう。その時隣りにいるパートナーがお互いでなくても、そこには幸福がある。
そしてそれは、ガスが二人と、二人がお互いと出会わなければ動き出さなかった運命だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月2日
そういうちっぽけで、完璧ではなくて、でも明るくて楽しい出会いと変化を、キャロル&チューズデイは連れてこれる。舞台で歌う主役だけでなく、それを支える仲間にだって、いい影響が響いていく。
そういう良い噛みあわせを、アップテンポなトンチキでグイッと呷らせてくるエピソードでした。コメディとしても、キャラクターの陰影を付ける意味でも、とても良かったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月2日
第二回バズり会議も失敗に終わり、チームがサクセスを手に入れるのはまだ先になりそう。でも、そこには笑顔が満ちている。
そこに”陰”のチームがどう絡んでくるかも、個人的には非常に気になっています。未だ主役描写なし、ざっくりとしたスケッチだけなのに、妙に惹かれるんだよなタオ&アンジェラ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月2日
AI詐欺師に、元妻の妻。色んな人がいる火星で、人々はどんな音に、輝きと陰りに出会うのか。来週も楽しみ。