からくりサーカス 第36話『閉幕』を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
歪んだプラハの街で、男は思い出と出会う。幾重にも重なる鏡の奥に見えるのは、郷愁と懐旧。
あの時の自分みたいで、自分とは全く違う横顔に反射されて、蘇るのは涙。
星が堕ちる。地上を這い回る愚かな人々は、一体何を願うのか。
そして、幕が下りる。
というわけで大・団・円! 色々あったけどもからくりサーカス最・終・回であるッッッ!!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
気合の入ったジュビロ顔、古川登志夫を筆頭に暴れ倒す声優達の好演、乱反射する思い出と憎悪、内省と成長。みっしり詰まった、良い最終回でした。
© 藤田和日郎・小学館 / ツインエンジン pic.twitter.com/f2LECcGCva
見てくれよこの圧力あるジュビロ顔! って感じだが、今回の話は”眼”の話である。思えば勝の”眼”の強さで始まった物語が、心の窓であり口ほどに物を言う器官にクローズアップして終わるのは、なかなか必然的といえる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
フェイスレスは閉じていた目を開けて、鏡を見る。それは世界中に満ちている。
勝ちゃんが地面にアタマこすりつけて差し出した対話を、フェイスレスはやっぱり蹴っ飛ばす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
拗ねているし、退屈だし、本気になるのはかっこ悪い。ここら辺ハーレクインとそっくりで、ディアマンティーナならずとも、まったく人形は造物主の映し身である。
自分でけしかけた人形バトルで熱くなりつつ、フェイスレスは勝に問う。対話を拒絶しつつも、どうしても手に入れられなかった答えを探す衝動を、フェイスレスは廃棄できない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
『なんで、女を譲った』
それは『俺は奪ったのに』という、言葉にならない問いかけの反射である。
勝ちゃんにとってもフェイスレスは鏡で、自分が見たくない歪みばかりが強調される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
人格ダウンロードにより人間の愛憎を流し込まれ、強制的に大人にされた(人形と剣を握って戦う力も、一緒に手に入ってヒロイン廃業したわけだが)勝ちゃんの中には、どす黒い欲望がある。
殴り、犯し、意のままにする。誰かを抱きしめるのではなくて、自分のエゴの虚しく木霊させる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
白金がプラハで爆発させたどす黒い感情を、勝ちゃんも持っている。ディーマンになった鳴海だって、人形殺しの人形でしか無かったしろがねだって持っている。
そういうドス黒さと真っ向勝負を避けて、自分の期限としっかり対話できないと、最後の最後で拳を迷ったブリゲッラとか、嘘の軽さに気づけなかったカピタンとか、道化のスタイルを崩され死んだハーレクインのようになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
内省を己の内面に届け、中に潜む怪物をしっかり見据える覚悟。
そんなもの、誰にだってない。フェイスレスの言葉が初めてのエゴとの対面だったら、勝ちゃんは勝てなかっただろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
だが、それは二度目の問いかけだ。しろがねを抱くのではなくて、散りゆく友の命を見送る決断を、少年は既に果たしている。
そこで問われた言葉が、巡り巡って勝ちゃんを救う。
最強ヒロイン・コロンビーヌが投げかけた最後の言葉がが、勝の胸には既に突き刺さっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
あなたは子供じゃないし、それは身勝手なばかりではなくて、とても強くて美しいものだよ。
そういう遺産を受け取っていたから、勝は歪んだ鏡を『僕もそうかも』と思えるのだ。
ディアマンティーヌの暴走と自壊も、コロンビーヌの言葉が突き刺さって生まれた毒と考えると、マジあの娘仕事しまくっとるわけだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
こういう結果を予測して、勝ちゃんはあの時コロンビーヌを選んだわけではない。ただ、友達だったから、最後を看取ろうと思っただけだ。
無心に勝る強さなし。
歪んだプラハの街、歪なフランシーヌの幻影。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
井戸(あるいはイド)をくぐり抜けた街はフェイスレスの内面でもあって、『何故お前は!』と問うた時、人形たちは跳躍している。
地上の泥から離れ、清廉な答えにたどり着いている。
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その輝きに暗黒の太陽を引っ張り上げたのは勝で、彼と向き合うことでフェイスレスは時間を遡っていく。鏡を見据えることで、どんどん始原に立ち戻っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
それは盲目故にいちばん大事なものを見つけられた、鳴海の旅路にどこか似ている。勝ちゃんはバカな大人を、どんどん導くなぁ…。
鏡は到るところに用意されている。傍に寄り添ってくれたはずのしろがね犬の瞳に、殺意に歪んだ己の瞳が反射する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
押し付けるだけの愛の醜さを、歪んだ角度でディアマンティーナが見せつける。
なるほど、幸せにはなれねぇわ。
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しろがね犬は髪型もよく似た、もう一人の白金だ。フェイスレスが振り下ろしたナイフは、自分自身を刺す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
これはディアマンティーナ最後の凶行として、もう一度再現される。しろがねOの体を捨て、生身の人間に戻った彼にとっては、身体的にも心理的にも致命傷である。
自分だけ抱きしめて、他人を抱きしめられない愛は虚しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
その事実を、かつてフェイスレスは認められなかった。ズレてしまった歯車から目を背けて、運命の車輪を歪んだ方向に回転させた結果、女を殴り、愛は得れず、全ては虚しく燃え盛った。
失ってなお学ぶことが出来ず、むしろ過去の鎖が妄執を強く縛り付けて、男は間違え続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
似た顔の誰かに、失った誰かの面影を投影しながら、その違いを認められず暴走するエゴイズム。世界の全てを巻き込んで、暴れ狂う独善の黒い炎。
勝はフェイスレスとの同質性を肯定しつつ、差異を強調する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
誰かの笑顔のために唇をかみしめて、笑顔を作って闘いに赴くのは、虚しいことじゃない。
誰かを殴り飛ばして手に入れた充足は、僕を幸福にしない。
僕とお前は違う。でも、どこか似ていて、だから話し合えるかもしれない。
神話級のクッソ童貞の捻れきった根性を見せられても、勝ちゃんは言葉を届ける努力を止めない。糸を重ねて、バラバラだからこそ繋がりあえる鏡合わせから、目を背けない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
それが勝ちゃんの強さで、白金もフェイスレスも掴めなかった、当たり前の善良さなのだ。それは、とても掴むのが難しい花なのだ。
己の殺意、醜さを反射する鏡。己の中に潜む善意と郷愁を反射する鏡。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
フェイスレスは過去、自分を助けてくれた兄との思い出を自分と重ねながら、勝との共同作業に自分の過去を重ねていく。その不思議なシンクロが、ようやく最古のしろがねの心を溶かしていく。
アイツ物質的には不死なんで、心を溶かしてやんないと成仏しないんだよね…ゾナハ病っていう、世界規模の暴力をぶん回すくせに、暴力を反射させても勝てない相手。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
亡霊を解き放つには、鏡を見せて自分が人間だったことを思い出せる以外ないのだ。
勝ちゃんはこれも、別に狙って行動してるわけじゃない。目の前の悲しさを少しでも和らげられるように、かつて鳴海が自分の涙を止めてくれたように、一瞬一瞬無心で行動しているだけなのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
それがクリティカルに、悪霊の鏡となって呪いを解いていく。イノセンスへの信頼…信仰みたいのを感じるね。
無論それは無条件にすべてを救うわけではなく、高値の対価をたっぷり払うわけだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
フェイスレスにフラれ、エレオノールに袖にされ、グリポンくんも最後の最後で寝取られる辺り、勝ちゃん本当に哀しい子供だよ…。だが何も持たないからこそ、完璧な勝利者でもあるというね…。
最後の最後で、あの時言えなかった兄への謝罪と、人の証たる涙を流して、フェイスレスは光に消える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
『おめー、最後の最後でキレイになってもクソ童貞こじらせて顔面ボッコにした女とか、ゾナハ病で死んだガキとか、しろがねになった復讐者とか許しちゃくれねぇゾ!』と、思わなくもない。
のだが、黒い太陽にも一滴の赤い血が残っていて、それを受け止めてやらなきゃ人類も救えないし、話も終わらないのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
巨大な”許し”のストーリーであるし、繰り返す業を断ち切る特別さ、全てを飲み込む純粋さを背負うからこそ、勝ちゃんが主人公なのだ。
エピローグはやや短め、三人の主役の六年後だけを描く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
必死に助けを求める子供を受け止められる、強くて優しいくまさん。勝は思い描いた未来を、しっかりその手に掴み取った。
恋を譲った恩人は、ディーマン顔が嘘のように朗らかに芸人をやってる。それこそが、彼らの闘い最高の報酬なのだろう。
エピローグを短くしても、カーテンコールをリッチに取ったのは素晴らしい演出だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
敵も味方も、人間も人形も、みな特別な舞台を作り上げたカンパニー。人の強悪も美しさも、全てひっくるめて書き切ろうという野心が、物語と役者への強い感謝に繋がる。それに報いる、長いカーテンコール。
僕はTRPGという遊びをやっているので、物語を俯瞰で見るクセが結構付いている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
大事なのは楽しい物語を卓のみんなと共有することで、善悪両方なければお話は成立しない。悪役には悪役の、英雄には英雄の仕事があって、ときにそれは複雑に混じり合う。鏡の中で乱反射する。
不遜ながら、そういう認識を藤田先生も持っているから、この長く特別なステージを一緒に走りきってくれたカンパニー全員を笑顔で退場させたのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
その思いをアニメ製作者も共有すればこそ、あの長い、最高の余韻漂うカーテンコールをアニメにも焼き付けたのだろうと、僕は思う。
というわけで、長い長い物語が終わった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
全てを語るには短すぎ、省略と口惜しさがどうしても生まれるしかない物語に、果敢に挑んだアニメだった。
いろいろすっ飛ばされて、時折作画はヘニャって。作品とのハーモニーが上手くつかめなくなって、視聴が中断してしまった事もあった。
でもこうして終わってみると、やっぱりとても良い物語で。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
泣く泣く切り落とした物語の全てに、とても素晴らしいものがこもっていることを、僕は知っている。その欠落を見据えてなお、やっぱりいいアニメだったし、とても面白かった。
どうすれば伝わるか、よく考えて頑張ってくれたアニメだった。
からくりサーカスという長い物語を、アニメにすること自体が間違いだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
僕はそんなことを、絶対に言いたくはない。その軋みに耐えかねて、一回アニメ視聴から目を背けてしまったからこそ、そしてそれでもやっぱり最後までこのお話を見て、凄く満ち足りた気持ちを感じているからこそ。
とても良いアニメであり、良いアニメ化だったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
足りない部分はある。山ほどある。でも、精一杯やってくれた。しっかり届けてくれた。それは嘘ではない。おためごかしでもないし、長い市長体験に払ったコストを慰めるための、自己憐憫の褒め言葉でもない。
かつて原稿用紙に、地の混じったインクで刻み込まれたものはしっかりすくい上げられて、3クールのアニメという表現に相応しい形に整えられ、焼き付け直された。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
作品が描きたかった宿命の輪廻、人間の明暗、継承される憎悪と勇気、突破する愛と未来は、ちゃんと描けていた。
つくづくそう思う。視聴と感想を停滞させてしまって、楽しみにしていただいた方には本当に申し訳ない。でも、たとえ歯車をズレさせる綻びがあったとしても、やっぱりいいアニメだな、と思いました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
お疲れ様、ありがとう。色々あったけど、楽しかったです。幕引きまで見られて、とても良かった。