荒ぶる季節の乙女どもよ。を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
雨上がりの世界は、少し綺麗に見える。炎の文化祭をくぐり抜け、無事”彼氏”を手に入れた青春戦士たち。勝った余裕が優しさを…連れてくるわけねぇだろうが!!!
充実合戦の勝者が踏みつけにする、泥まみれ敗北者達のルサンチマン。まだだ…まだ終わってない!
そんな感じの新章開幕、文芸部には火種満載! な荒乙である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
Honey Worksが似合うスクールカースト上位ピカピカ恋愛に選ばれたものと、クッソ惨めに泥の中を舞うもの。”下”で安定していたはずの文芸部が青春階級闘争によって分断され、裂け目から不和が滲む…寸前でプルプル、というお話である。
雨上がりの光、濡れた紫陽花。和紗の美しい世界から始まった物語は、彼女が知らず踏みつけにする菅原氏の性的ゲリラ戦、選ばれることのない本郷ちゃんの一大決戦の薄暗さで終わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
どちらが世界の真実なのか。人生は晴れ間の昼か、薄暗い夜か。
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リア充のピカピカライトに照らされる浮かれポンチが、見落としてしまう世界の陰り。自分もそこにいたはずなのに、一瞬で蒸発してしまうどす黒い思索。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
それが密閉され、獣めいた性の臭気を満載して走る”箱”。文芸部ダークネス担当の二人が、両方とも乗り物に乗るのは面白い。闇は閉鎖され疾走するのだ
文芸部は彼氏ゲットリア充組(り香、和紗)と、恋とかよく解かんねぇ陰キャ組(もーちん、本郷ちゃん)に分断されていく。その中間点で、果敢で過激な性的テロルをぶっ込んでくるのが菅原氏だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
斜めに傾いだ純潔。”箱”を維持していたモットーが揺らぐ
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シンプルにリア充VS非リア、陽キャVS陰キャ、恋VS友情という対立構造かと言われればそうでもなく、それぞれの感情は個別で複雑な表情をしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
その陰影は恋に浮かれポンチの二人には見えず、だから断絶も広がっていく。しかし部という”箱”、友情という鎹はなかなか堅牢で、簡単には壊れない。
ピカピカライトに目をやられて、自分が何踏みつけてるのか理解できてねぇ無様さも含めて、群像は相変わらず個別に、面白く描かれていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
溢れかえる多幸感。呪いつつ憧れていたカーストに聖剣”彼氏”を引っさげ凱旋した曽根崎パイセンの掌クルックルぷりが、マジで見てらんない。
麻疹のように世界が詩的に見えてる和紗も合わせて、”勝った”人たちは世界に優しい。のぼせ上がった頭は、『わたしたちは当然、あなた達に優しくしてあげるんだよ?』という傲慢を、すぐさま見落としてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
学園祭で依頼された時、そういう無神経さにボッコにされて呻いてたの忘れたの?(忘れた)
恋の成就だけを世界の全てと規定するロマンスなら、描かれることのない敗者のうめき。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
光の届かない、心の薄暗い領域で悪あがきする本郷ちゃんに、ミロ先は大人として、教師として適切な距離を維持し続ける。それが苦しい。
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文学に脳髄やられた人間失格ド変態と思いきや、ミロ先はかなり人間が見えていて、本郷ちゃんが再起不能な折れ方しないように、繊細に関係を運んでいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
綺麗事で拒絶するでも、欲望で押し流すでもなく、本郷ちゃんの中で渦を巻く文学を読もうとしている。良い読者だ。
その分別をぶっ壊し、自分を選んで欲しかったのに。ちんちくりんで起伏のない本郷ちゃんは、ミロ先のストライクゾーンからは外れきっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
だからこそ、二人の関係は良いもので、同時に危うくもなる。行き着く所まで走り切るしかないと理解ったからこそ、ミロ先は挑発に乗っていく。
ここら辺、捻れた読解を助言者っ面で押し付けて、自分の気持ちいいインモラル文学を菅原氏に押し付けようとする三枝とは、好対照である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
ミロ先は現在執筆されている、本郷ちゃんを虚心に読む。三枝は自分が読みたい物語を、菅原氏経由で簒奪しようと企む。良い読者、悪い読者。いい大人、悪い大人。
そう綺麗に切り分けられば楽なんだが、ミロ先だってヤバい橋をぐらぐらしながら渡る”悪い大人”ではあって、真実善悪の基準はいつでも曖昧だ。だから世界には、文学が必要なのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
曖昧な場所に立っているのは、性愛だけでなく友情も同じである。つーか、その2つの境界線も明瞭じゃない。
友達の恋人を取る。負けてるのに戦争を続行する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
菅原氏のアンフェアを、もーちんは正しさで糾弾する。自分に言い聞かせるような言葉は上滑りして、菅原氏をせき止めてはくれない。
菅原氏にとって、友情はデカい。そこに嘘はない。
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恋は一人で、友情は二人。小学生以下の算数理論で菅原氏を引き留めようとするもーちんが、哀れで健気だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
多分そこで引き止めたいのは、友情ではなく”須藤百々子”を見てくれる菅原新菜で。
でも、菅原氏はもーちんにセックスを見ないから立ち去っていく。欲動と一体化した自分に素直に行動する。
もーちんは『友達とはセックスできない』という菅原氏の言葉に釘付けになる。足を止めるほどの衝動が、何処から来ているのかわからないまま…わからないからこそ動けない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
もーちんは、菅原氏とセックスしたいのか。泉が生来持っている”男(異性)”というアドバンテージを妬んでいるのか。
それはもーちん自身にも見えないし、これから探求するべき大事なアイデンティティでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
文化祭の間は、キラキラ綺麗な風に遠ざけられていた”性”が、赤黒い脈動を伴い復活してきた感じもある。
それはえすいばつ…性行為だけを内包しない。性的アイデンティティ、己の在り方も含めての”性”だ。
マジョリティに馴染めない少数派。”文芸部”が背負う十字架を性的マイノリティーの方向にも伸ばしていくのは意外だが、誠実でもあると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
生臭く、小狡くもーちんの青春闘争を進めていって欲しいと思う。なんか綺麗な”他人”として、自分がレズビアンであることを発見させないで欲しいと思う。
そこにあるのは一個一個個別の、黄金色の河原とか苦いポッキーとか、具体的で下らない思い出が刻まれていく歩みだから。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
ヘテロ・マジョリティ(の代闘士たる和紗)が思い悩むのと同じ、下らなくて綺麗なエゴと愛のでこぼこ道を、もーちんにも用意してあげて欲しい。
ぶっちゃけこの作品の可否は、今と今後のもーちんの書き方に個人的にかかってきたなぁ、という印象はある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
菅原氏と同じように、もーちんにとっても友情は嘘ではなく。性欲と愛という、未知の獣が自分の中でうねっていたとしても、綺麗なものもまた本当だ。
そういう事を見落とさず進めそう…かな?
そして和紗は、キラキラな登校(オープンエアで展開する公的な振る舞い)と性欲に塗れた密着戦(密室で展開する私的な振る舞い)の落差に戸惑っていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
溢れる麦茶、濡れる水。教科書どおりのLOVEが教えてくれない、自意識のぐるぐる
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お互い認めあった個人が、己の身体と尊厳を相手に差し出して、相互に交流する。責任を伴う一対一の交流に、二人は当然慣れていない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
目玉はぐるぐるし、何を言えばいいか理解らず、そもそも自分が何を求めているかも判然としない。
『恋人は近くに座って、手を繋ぐモノ』
うすボケた規範だけが響く。
形だけなぞって繋がれた手は、母という”外部”の乱入によって突き放され、距離を開けられる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
焦らずじっくり、自分の準備が整うのを待てばいいのだけれども、規範と自意識のギャップはそんなヌルい正解を許してはくれない。恋がヘタクソ!(褒め言葉)
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菅原氏と向き合う泉は、微妙にずれていて、しかし恋人との間に横たわる不器用と緊張はない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
階段の手摺を乗り越えて、菅原氏の企みに無邪気に(無意識に)乗っかる泉の笑顔を、菅原氏は眉をしかめて見つめる。
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新菜はここで、泉に拒絶して欲しかったのだろうか?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
『俺、彼女いるし』と、異性と二人きりになる状況を避ける世知を見せて欲しかったのだろうか?
泉にはそういう賢さはない。ないから、菅原氏も好きになったのだと思う。でもその無防備は、彼女のゲリラ戦を成功させてしまう。望み通り、望みに反して
光に満ちた時間が終わり、危うさが歩みを始める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
脅迫(ごっこ)でも、性的誘惑(ごっこ)でもなんでも使って、ミロ先の視線を自分にとどめておきたい本郷ちゃん。
手に入れた”勝利”に緩みつつ、恋とは別の新しい出会いに、構えず向き合うり香。
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そして泉にごっこじゃない誘惑を仕掛ける菅原氏。バックを使った、分かりやすいメタファー止めろッ!!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
”星の王子さま”をテキストに、陰キャとギャル、友達の彼氏と微笑む悪魔の関係性がぐるぐると回っていく。
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曽根崎パイセンが十条さんと、文学で繋がれたのは良いことだと思う。異質なエイリアンだと見下していた(ことで、それに憧れ届かない自分を守っていた)存在が、同じ本を読むと知ること。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
それは”彼氏”を探す旅の思わぬ副産物で、もしかすると恋より実りの多いものを彼女にもたらすだろう。
異質な二人を静かに結ぶテキストは、別の場所では火種ともなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
和紗じゃ対応しきれない泉の性欲を、自分に引き寄せる菅原氏。それを外側からコントロールして、退屈を紛らわせる山羊髭の悪意。
オメーの問題点はロリコンってことではなく、他人に敬意がないことだと思うよ…。
三枝の”星の王子さま”読解を、嫌悪しつつ飲み込んでそのと降り行動してしまっていること…自分なりの文学読解がないことが、今の新菜の問題だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
彼女は自分の性欲と友情と愛情を、もう一度素直に読むべき…なんだけども、自分や世界というテキストを虚心坦懐で読めるなら、そいつは賢者である。
賢者。思春期ど真ん中のクソバカどもには、一番遠い存在である。でも賢くならなければ、自分も他人も傷つけて、望みは遠のいていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
賢さにたどり着くためには、たっぷり愚かさに浸らなければいけない。じっとり情と欲の滲む目もしなきゃならない
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少女たちは、己を取り巻く文学を正確に読めるのか。その読解から、どのような行動を導き、己をインクにより強い文学を描けるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
”性”が再び赤黒い炎を作品にともしたことで、生まれたダイナミズム。それが状況をぐらりぐらりと揺らし、熱を高めてくるエピソードでした。
勝って終わったつもりの曽根崎パイセンが,部内の不穏をさーっぱり見ていないところが、彼女らしくていい。浅はか上等ッ!!!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
和紗も相変わらず、自意識と幼さに挟まれて上手く動けない感じで、その間隙を菅原氏が狙う。もーちんが睨む。
薄暗い側道を、本郷ちゃんとミロ先の乗った”箱”が走る。
先週あんなにHoney Worksが似合うキラキラだったのに、森田童子とか山崎ハコとか筋肉少女帯のオーラがムンムン出てきて、まだまだ物語は終わっていないと思わされる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
影から出ていくもの。影を思い切り吸い込むもの。色んな連中が入った”箱”が、内圧を上げる。
爆発の瞬間はいつか。どんな花が咲くか
キツネノカミソリはヒガンバナ科の有毒植物で、日陰に生える。花言葉は『妖艶』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月30日
菅原氏が泉に投げかけた、誘惑という毒。三枝が撒き散らす、欲望の毒。
性の毒気が、どう広がっていくのか。文芸部の断絶はどう軋むか。来週も楽しみ。